Transcript FIT発表用スライド(改):概要
ユビキタスコンピューティングを実現するための ルールに基づく入出力制御デバイス
2002.9.27
塚本昌彦 *1 、寺田努 *2 、早川敬介 *3 、柏谷篤 *3 *1 大阪大学大学院情報科学研究科 *2 大阪大学サイバーメディアセンター *3 NECインターネットシステム研究所
本プロジェクトは、 NEC・阪大の共同研究(2001年度)として推進し、 NECの連携ラボ(2002年度)として推進中 のものである。
因果律に従う時間的継起の原則: 一切の変化は原因と結果とを結合する法則に従って生 起する 相互作用或は相互性の法則に従う同時的存在の原則: およそ一切の実体は空間において同時的に存在するも のとして知覚される限り完全な相互作用をなしている カント「方法序説」
生活のなかの些細な問題
• なくしたものが見つからない – 時計、財布、鍵、書類、ホッチキス、クレジットカード • 汚れ・故障・賞味期限切れに気づかない – たんすの上の埃、古くなった電球、ベランダの手すりのねじ、冷蔵庫の中の食品 • 子供はなんでもつけっぱなし、開けっ放し – トイレの電気、2階のテレビ、扇風機、冷蔵庫のドア、その他多数 • ほかさまざま些細な問題は多数 「3GHz」でパソコンが動作するこんなに「すごい」時代に何でこんなに「簡単 な」ことが問題になるのか? – ごく身近なところでのごく簡単な「コンピューティング」が実現できていない!
HAVi、Jini、TRON?いや、そんな“たいそう”な話ではない …
けして“たいそう”な話ではない。 実はすごく身近な話なのです …
ユビキタスコンピューティングとは ubiquitous
[同時に]いたる所に存在する.遍在する.遍在的 な.(旺文社 Comprehensive) • いたるところにコンピュータがある(遍在). • ユーザはいつでもどこでもそれを利用できる.
• ユーザがいなくても自律的に動作できる.
ユビキタスコンピュータの源流
実世界にはすでに「ユビキタス」のもとがいっぱい!
• 「場所」型コンピュータ :場所に備え付けられたコンピュータ – ホットスポット、ネットカフェ、ステーションオフィス、ゲームセンター、 プリクラ、コンビニ端末、自動販売機、改札機、エレベータ、信号機、 監視カメラ * 、ガス漏れ警報機 * 、エアコン、冷蔵庫 * • 「もの」型コンピュータ :ものに組み込まれたコンピュータ – スーパーの商品タグ *、 盗難防止タグ *、 マイコン内臓xxx • 「人」型コンピュータ :人に装着されたコンピュータ – ノートパソコン、PDA、携帯電話、デジカメ、携帯型音楽プレーヤー *今はコンピュータではない!
従来型コンピュータの動作原理
• 人間が机の前で使うもの – ディスプレイとキーボード・マウスを備える。 – GUIやCUIによりユーザが操作する。 • しかしユビキタスコンピュータは、 – 「場所」や「もの」が使う。 – 「人」も普段の生活のなかで使う。 →ディスプレイ、キーボード、GUIなんか使わない!
ユビキタスコンピュータの動作原理 ユビキタスコンピュータは、周りの状況を 察知して、他のユビキタスコンピュータと 情報交換をし、自律的に動作する。
ポイント
自律性 :勝手に動く。 汎用性(柔軟性) :何にでも使う。 有機性 :他のものと連動して動作する。 この点に的を絞りできるだけ本体を小さくでき るように不要な機能を排除する。 →ユビキタスコンピュータの基本形を見出す!!
やりたいのは「スーパー」コンピューティングではなく 「プチ」コンピューティング
提案モデル
• ユビキタスコンピュータは多数の単純な外部インタフェースを もつ。 • その動作は単純なルールによって記述する。 • ユビキタスコンピュータはルールを常に監視し、ルールに基 づき入出力の制御を行う。 • ルールは可変。動作を止めずに書き換えられるようにする。 入力 入力 入力 入力 入力 ユビキタスコンピュータ ルール ルール ルール ルール 出力 出力 出力 出力 出力
機能
自律性・汎用性 ( 柔軟性 ) ・有機性に注目して基本機能を抽出 <基本機能> • 入出力の制御 • メッセージング(通信) • タイマ • ルールの追加・書換 • 識別 この5点に絞ったことが 本発表のポイント <オプション機能> • データ蓄積 • ディスプレイ • ユーザ入力装置 • インターネット(IPv6) • その他
入出力①
• 駅に着いたらシステムが勝手に切符を購入する. • ぶつかり警報機.人ごみでほかの人にぶつかりそ うになると警報ブザーが鳴る. • 子供が乗ってますランプ.後ろに車が近づくと点灯 する. • ごみ箱いっぱい警報ランプ.一定量を越えるとラン プがつく. • 黒板消しカウンタ.使用回数をカウントして一定回 数に達するとクリーニングを促すランプがつく. • 人体検出扇風機.人が近づくと動作する. • ドッキリカメラ[StartleCam].心拍数が上がるとカメ ラのシャッターがおりる.
入出力②
• 薬の服用を促す薬箱.食後に忘れないように警告 ブザーがなる. • ユーザ行動にあわせて調光する電灯.アベックには ムードを出し,本を読むときには本にスポットを当て る. • 天気のいい日には日光浴をしたがる植木鉢. • 安全性を監視するネジ. • 街角ジョギング演奏[塚本01].街角石畳を踏む場所 によってなる音が変わる. • 絵が傾いていることを検出するセンサ • 公園のベンチやオフィスの椅子で体重や体脂肪率 が量れる.
メッセージング
• 共通の知人を持つ人が近くにいるとブザーが鳴る. • 知人が近くにいるとブザーがなる. • たくさんのコップをPCで制御して音楽を演奏する. • 家の中のあらゆるものを外からインターネット経由 で制御する. • 街角監視カメラを使って記念撮影し,インターネット に画像をアップする. • 街角の石畳を手元のパソコンの入力手段として利 用する.
タイマ
• 一定時間冷蔵庫を開けっ放しにするとブザーが鳴る. • 商品の賞味期限が近づくにつれ警告のインジケー タが点灯する. • 期限を過ぎると悪臭を放つ回覧板. • 窓閉め忘れ警報ブザー • 水出しっぱなし警報ブザー • 黒板マグネットや貼り付けメモ,クリップにToDoを書 き期限を設定してあちこちに貼り付けておくと,期限 間近の警報が鳴る.
ルールの追加・書換
• 日ごろ通行者を監視している道路センサを使って, 待ち合わせに遅れたA君がこの道を通りかかった らメッセージを伝えるようにしておく. • 祭日のイベントで,街中の踏切をそのまま使って, アトラクションゲームをする. • 通常オートロックのモードで使っているドアを一時 的に合言葉であくようにしておく. • 生体センサを使って居眠り防止の振動機能をつ けている椅子を踏み台に使う.そのとき振動機能 を停止させておく. • 教室におかれた自立走行型の机と椅子をすべて, スクール形式のモードからシアター形式のモード に切り替える.
識別
• 商品情報や合計金額を提示する買い物篭. • 冷蔵庫内のものの管理.賞味期限の近いも のを使った料理を示唆してくれる. • 財布ロスト検出. • 商品単位での流通の管理. • 廃棄物の処理方法の追跡・監視.
「有機的」な連携に向けて
心のエージェントたちは,一つひとつをとってみれば, 心とか思考をまったく必要としないような簡単なこと しかできない.それなのに,こうしたエージェントたち がある特別な方法でいろいろな社会を構成すると, 本当の知能にまで到達することができるのである. ミンスキー「心の社会」 仮説:単純なルールで動くユビキタスコンピュータが連携する ことで、全体として複雑で知的な動作が行えるようになる。
まとめ
• • • • ユビキタスコンピュータの基本モデルを提案 ユーザが操作するのではなくセンサ情報などにより勝手に動作するた めのもの ルール形式で入出力を制御するシンプルなエンジン 複数のエンジンが互いに通信し合うことで複雑な機能を果たす. ごまつぶ大の実装も可能なモデルを目指した. この後の発表 – ルールの記述法(寺田) – 試作機器・ハードウェア(早川) – 試作機器・ソフトウェア(義久) – PC連携環境(岸野)