2 国際収支と国際貸借

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2 国際収支と国際貸借
• 2-1 国際収支と国際収支表
• 2-2 国際収支と国民経済
• 2-3 国際収支と国際貸借
2-1-1 国際収支の概念
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ある期間
居住者と非居住者間の経済取引
発生主義(取引=所有権移転時点で)
複式簿記の原則(1つの経済取引が,貸方
(受取勘定)と借方(支払勘定)に同時に計
上される)
2-1-2 新しい国際収支表
• 日本は1996年1月,IMFの新基準準拠
• 貿易収支,貿易外収支→貿易・サービス
収支に.サービス収支の細分化.投資収
益収支は所得収支として独立.
• 経常移転収支と資本移転収支
• 資本収支の長短を廃止し,機能別分類へ.
• 自国通貨建て表示へ.
2-2-1 国民所得勘定と経常収支
• 総供給=国内総生産(GDP)+財・サービスの輸入(M)
(1)
• 総需要=消費(C)+投資(I)+財政支出(G)
+財・サービスの輸出(X)
(2)
• 貿易・サービス収支(X-M)=GDP-(C+I)-G
(3)
• 経常収支(X-M+Z)=国民総生産(GDP+Z=Y)ー
(C+I+G)
(4)
• 経常収支(X-M+Z)=民間純貯蓄(S-I)+財政黒字(T-G)
(5)
2-2-2 開放経済における
所得決定
• 経常収支(X-M+Z)=民間純貯蓄(S-I)+財政黒字(TG) GDPが均衡するためには事前成立必要
• 輸出と所得・移転収支は外生変数,輸入は所得の
増加関数→左辺は所得の減少関数(右下がり)
• 投資と財政黒字を外生変数,貯蓄を所得の増加関
数→右辺は所得の増加関数(右上がり)
• 経常収支黒字削減策としての内需拡大→所得増大
• 同上
としての円高誘導→所得減少
2-2-3 経常収支の短期理論
(1)弾力性アプローチ
• 円高→日本製品競争力低下→輸出減少・輸入増大
• 1%の円高→輸出品ドル建て価格1%上昇.
輸出の価格弾力性e.円表示輸出額e%減少.
輸入の価格弾力性e*.円輸入額(1-e)%減少.
• 貿易赤字化のためには,輸出減少>輸入減少
マーシャル=ラーナー条件: e+e*>1
• Jカーブ効果:
• 輸出入動向は,両国の所得の動きにも影響を受ける.
2-2-3経常収支の短期理論
(2)アブソープション・アプローチ
• 国内総支出合計(C+I+G)=Aを(4)式に代入.
(X-M)=GDP-A
(6)
• 為替切下げ→価格競争力上昇→外国からの需要
増大→国内総生産増大
• 国内総支出増加<国内総生産増加のとき,経常収
支改善 (生産拡大の余裕のないとき,変化なし).
• 為替切下げ→輸入物価上昇→消費抑制
2-2-4 経常収支の中・長期理論
(1)IS(貯蓄・投資)バランス・アプローチ
• 景気循環や政策の影響を取り除き,趨勢
的(構造的)な経常収支の不均衡を民間の
貯蓄・投資バランスに求める. (5)式から
• 経常収支(X-M+Z)=貯蓄・投資バランス
(S-I)
(7)
• 為替相場変化は,貯蓄・投資バランスに影響
せず,中長期的な経常収支調整には無力
2-2-4 経常収支の中・長期理論
(2)国際収支発展段階説
• 1国の経済発展に,貯蓄ライフサイクル仮説
• 未成熟債務国 国内貯蓄不十分で経常赤字を資本
流入でファイナンス
• 成熟債務国 貿易黒字,債務利払い
• 未成熟債権国 経常黒字,資本輸出,投資収益受取
• 成熟債権国 貿易赤字,投資収益で経常黒字を維持
• 債権取崩国 赤字を過去の対外債権取崩で補填
• 単線的歴史観 米日の経常赤字・黒字を弁護
2-3-1 ストックとしての国際貸借
• 国際貸借 一定時点における対外資産負
債残高というストックの記録
• 理論上は,経常収支の黒字(赤字)と対外
純資産の増加(減少)額は一致するはず.
しかし統計上の誤差脱漏,為替相場変動
による評価増減などのため,一致しない.
• 外貨建ての資産負債はその時点での為替
相場で評価する.
2-3-2 日米の対外純資産
• 日本の1997年末対外資産負債残高 純資
産126.4兆円 GDPの4分の1に相当.
• 資産356兆円.内訳 債券投資97兆円,貸
付126兆円,直接投資35兆円.
• 負債231兆円 うち株式36,債券40,銀行借
入65,直接投資3.5兆円.
• アメリカ 世界最大の純債務国 94年以降
は所得収支も赤字に転落.自国通貨建て.
2-3-3 国際資金循環と
基軸通貨国
• 国内の資金循環表 flow of funds は,各部
門別(家計,企業,政府など)の経常取引
における資金過不足(貯蓄・投資バランス)の,
金融取引によるファイナンスの状況を示す.
• 各国の国際収支表を統合し,世界全体の
資金循環表 global flow of funds を描く.
• 基軸通貨国 その国の対外取引のあり方
だけでなく,国際通貨制度の安定にも重要