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債権総論講義
2003年4月11日~2004年1月7日
名古屋大学大学院法学研究科
加賀山 茂
1
講義計画

Ⅰ 講義の目的





1. 講義の範囲
2. 講義の目標
3.債権法の世界
Ⅳ 契約の流れ



Ⅱ 債権とは何か



債権総論-契約法総論



4. 物権と債権の区別
5. 債務の目的と目的物
Ⅲ 債権総論と債権各論
との関係
6. 弁済の場所と代金の支
払場所
7. 弁済の費用と契約費用
8. 契約の成立
9. 契約の履行
10. 契約の不履行と救済



A. 強制履行
B. 危険負担と解除
C. 損害賠償
Ⅴ 契約の履行確保





11. 債権者代位権
12. 債権者取消権
13. 債権譲渡
14. 保証債務
15. 連帯債務
2
講義の範囲

債権総論



債権の目的
債権の効力
多数当事者の債権






債権各論


不可分債務
連帯債務
保証債務
弁済,相殺,更改,
免除,混同
契約総論







契約の成立,契約の効力,
契約の解除
契約各論

債権の譲渡
債権の消滅

契約
贈与,売買,交換,
消費貸借,使用貸借,賃貸借,
雇傭,請負,委任,寄託,
組合,終身定期金,
和解
事務管理,不当利得,不法行為
3
民法の各野における
条文の適用頻度
相続
親族
6% 4%
不法行為
26%
事務管理・不
当利得
契約
2%
17%
総則
19%
物権
7%
担保物権
3%
債権総論
16%
4
民法の条文の適用頻度
709条
23%
その他
40%
415条
7%
1条
6%
601条
2% 541条 90条177条 722条 710条
4%
2%
3% 3%
4%
715条
6%
条文
709条
415条
1条
715条
710条
722条
177条
90条
541条
601条
110条
612条
95条
719条
703条
482条
416条
723条
717条
770条
その他
適用件数 適用頻度
23.76%
6,800
6.51%
1,862
6.15%
1,759
5.65%
1,618
3.75%
1,072
3.59%
1,028
2.75%
788
2.52%
722
2.42%
693
2.32%
663
2.29%
655
1.94%
556
1.52%
436
1.46%
417
1.41%
403
1.32%
379
1.32%
379
1.32%
377
1.25%
357
1.22%
349
25.52%
7,304
5
練習問題1
債権法総論の適用頻度
民法は,5つの編に分かれている。


総則,物権,債権,親族,相続
講義では,これを以下の5つに分けて行うことが多い。






1.
2.
3.
4.
5.
総則
物権
債権総論・契約(契約法)
事務管理・不当利得・不法行為(契約外債権法・民事責任法)
親族・相続(家族法)
このうち,第3の中の債権総論に関する条文の裁判所による適用
頻度は,民法の全条文の中でどの程度の割合であろうか?



(1) 10分の1(10パーセント),(2) 6分の1(17パーセント)
(3) 5分の1(20パーセント),(4) 4分の1(25パーセント)
6
講義の目標
法適用のメカニズムの習得
法適用の
メカニズム
要件事実・先例に基づく
事実の発見
(トップ・ダウン方式)
新しい要件事実の
発見と法体系の修正
事実に適合する
法の発見と正当化
(ボトム・アップ方式)
具体的事件の解決案
の発見と検証
7
ルールに基づく事実の発見と事実
に基づくベタールールの再発見
ルール 2
ルール 1
事実の発見 ルールの発見
他のルールの発見
と他の事実の発見
事実 1
事実 2
事実 3
8
Better Rule 適用の原則



1.立法政策上の判断にミスがある条
文は制限的に適用する。
2.多様な法律効果・救済手段を提供
する条文は拡張・類推適用する。
3.Better Rule を排斥する契約条項
は,制限的に適用する。
9
刑法と民法との関係
行為の規制と結果の救済
犯罪類型
暴行
その他の
犯罪類型
特別類型
暴行
×罪刑法定主義
刑罰
その他
の類型
一
般
不
法
行
為
救済
特別類型
傷害
犯罪類型
傷害
個別規制
一般法と特別法との組み合わせ
10
民法における一般規定と
特別規定との関係
特別類型
使用者責任
その他の
類型
特別類型
動物占有者責任
救済の容易化
過失の証明不要
一
般
不
法
行
為
すべて救済されるが,
過失の証明が必要
救済
救済の容易化
過失の証明不要
11
物権と債権との区別
物権
人
支配
物
債権
人
請求
人
債権:ある人が他の人に対して
作為又は不作為(給付)を請求
する権利
物権:人が物(有体物)を直接
かつ排他的に支配する権利
12
債権の効力と担保物権
の意味
人
請求
強制執行
(掴取力)
人
支配
請求
人
強制執行
(掴取力)
物
旧民法 債権担保編第1条
①債務者ノ総財産ハ…其債権者ノ共同ノ担保ナリ
②其債権額ノ割合ニ応シテ之ヲ各債権者ニ分与ス
但其債権者ノ間ニ優先ノ正当ナル原因アルトキハ此限ニ在ラス
13
債権と請求権との関係

請求権の定義


ある人が他の人に対してあることをすること(作為)又は
しないこと(不作為)を請求する権利
債権の定義


1. 請求権のうち,その発生原因が契約,事務管理,不
当利得,不法行為のいずれかであるもの
2. 特定人(債権者)が特定の義務者(債務者)に対して
一定の給付を請求し,債務者のなす給付を受領し保持
すること(給付のもつ利益または価値を自己に帰属させ
ること)が法的に認められている地位(権利)
14
物権と債権における
目的物の比較

物権の目的物は有体物に限定される


民法85条 本法ニ於テ物トハ有体物ヲ謂フ
債権の目的物は有体物に限定されない



無体物の典型は権利である
権利の売買は,当然に認められている
例えば,債権譲渡とは,債権の売買又は贈与
のことをいう
15
債権の目的と
債権の目的物
義務者
文法
主語
英文
Obligo
r
具体
例
義務
動詞
ought
目的
目的物
作為・不作為
有体物・無体物
動詞の目的語 不定詞の目的語
to do
not to do
something
売主は 義務を負う 移転する
目的物の財産権を
買主は 義務を負う 支払う
代金を
16
練習問題2
(債権の目的と目的物の区別)

債権の目的と目的物とが区別されているかどうかチェック
しなさい。


第400条〔特定物引渡債権における保存義務〕
債権ノ目的カ特定物ノ引渡ナルトキハ債務者ハ其引渡ヲ為スマ
テ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ其物ヲ保存スルコトヲ要ス
第401条〔種類債権〕
債権ノ目的物ヲ指示スルニ種類ノミヲ以テシタル場合ニ於テ法律
行為ノ性質又ハ当事者ノ意思ニ依リテ其品質ヲ定ムルコト能ハサ
ルトキハ債務者ハ中等ノ品質ヲ有スル物ヲ給付スルコトヲ要ス
(2)前項ノ場合ニ於テ債務者カ物ノ給付ヲ為スニ必要ナル行為ヲ
完了シ又ハ債権者ノ同意ヲ得テ其給付スヘキ物ヲ指定シタルトキ
ハ爾後其物ヲ以テ債権ノ目的物トス
17
練習問題3
(債権の目的と目的物の区別)

債権の目的と目的物とが区別されているかどうかチェックしなさい。


第402条〔金銭債権〕
債権ノ目的物カ金銭ナルトキハ債務者ハ其選択ニ従ヒ各種ノ通貨ヲ以テ
弁済ヲ為スコトヲ得但特種ノ通貨ノ給付ヲ以テ債権ノ目的ト為シタルトキハ
此限ニ在ラス
(2)債権ノ目的タル特種ノ通貨カ弁済期ニ於テ強制通用ノ効力ヲ失ヒタル
トキハ債務者ハ他ノ通貨ヲ以テ弁済ヲ為スコトヲ要ス
(3)前二項ノ規定ハ外国ノ通貨ノ給付ヲ以テ債権ノ目的ト為シタル場合ニ
之ヲ準用ス
第419条〔金銭債務の特則〕
金銭ヲ目的トスル債務ノ不履行ニ付テハ其損害賠償ノ額ハ法定利率ニ依
リテ之ヲ定ム但約定利率カ法定利率ニ超ユルトキハ約定利率ニ依ル
(1)前項ノ損害賠償ニ付テハ債権者ハ損害ノ証明ヲ為スコトヲ要セス又
債務者ハ不可抗力ヲ以テ抗弁ト為スコトヲ得ス
18
債権の発生原因と
請求権の種類
債権の
発生原因
一次的請求権
二次的又は
例外的請求権
1
契約
2
事務管理
費用償還請求権 報酬請求権
3
不当利得
利得返還請求権 損害賠償請求権
4
不法行為
損害賠償請求権
履行請求権
形成権
損害賠償請求権 取消権,解除権
介入権
(商法41条2項)
原状回復請求権
差止め請求権
19
契約の流れ
START
契約成立
契約不成立
No
Yes
不当利得
契約有効
契約無効 (取消) No
Yes
効力発生
条件・期限
No
Yes
契約履行
Yes
強制履行
No
免除・
時効等 Yes
No
債務不履行
損害賠償
契約解除
END
20
契約の流れと民法における
位置づけ
契約の流れ
民法の位置づけ
講学分類
追加すべき項目
契約の成立
民法521条以下
契約総論
要物契約の成立
契約の内容
民法549条以下
契約各論
無償・有償契約総論
有効・無効
民法4条以下,
民法90条以下
民法総則
意思無能力
履行・不履行
民法412条以下
債権総論
担保責任
契約の解除
民法540条以下
契約総論
不完全履行の解除
21
練習問題 4
パンデクテン方式

パンデクテン方式の説明として適切なものはどれか?





(1)ローマ法の学説提要の編纂方式。
(2)ローマ法の学説彙纂の編成方式であって,共通部分を総則
として,前に置く方式。
(3)ドイツ民法の編纂方式であって,総則の次に債権法が配置さ
れる方式。
(4)共通部分を前に出して総則とするため,各則では,その部分
を繰り返す必要がなくなり,法典の条文数を減少させ,法典をコ
ンパクトにまとめることができる編纂方式。
(5)契約の流れと対比させると,最初に考慮すべき契約の成立
が後の方に配置されるなど,わかりやすさという点からは,理想
に程遠い編成方式。
22