第10&11回講義資料

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Transcript 第10&11回講義資料

法学部 1年生配当科目 民法入門
第10-11講
不法行為
大阪大学大学院国際公共政策研究科
教 授
大久保 邦彦
1
財産法の基本構造
給付利得
事務管理
支出
利得
D
管理
無効
取消し
A
交換
支
配
物権法
甲
契約法
B
物権的請求権
侵害利得
支
配
乙
不法
行為
侵害
C
2
公法と私法
3
公法と私法
国家
公 法
公 法
私人
私人
私
法
4
他人の物を壊した
5
器物損壊罪
刑法261条(器物損壊等)
前3条に規定するもののほか
、他人の物を損壊し、又は傷
害した者は、3年以下の懲役
又は30万円以下の罰金若し
くは科料に処する。
6
不法行為(民709)
故意又は過失によって
他人の権利又は
法律上保護される利益を
侵害した者は、
これによって生じた損害を
賠償する責任を負う。
7
交通事故の責任
〔ケース〕
Xは酒酔い運転をしていて、
歩行者Yをひき殺してしまった
。
出典: 山本敬三『民法講義Ⅰ』10頁
8
刑事責任・行政責任
民事責任
国家
司法権 行政権
刑事責任
X
行政責任
民事責任
Y
9
不法行為
10
不法行為(民709)
故意又は過失によって
他人の権利又は
法律上保護される利益を
侵害した者は、
これによって生じた損害を
賠償する責任を負う。
11
不法行為の要件・効果
故意・過失
責任設定的 因果関係
要
件
権利侵害
責任範囲の 因果関係
損害発生
効
果
損
害
賠
償
請
求
権
12
不法行為法の目的
①損害の填補(原状回復)
②違法行為の抑止(予防)
③制 裁⇒×懲罰的損害賠償
④権利保護
13
刑法(刑罰)の目的
①応 報
②一般予防
③特別予防
14
所有主が危険を負う
casum sentit domius
登山していて落雷に見舞われた。
野道を散歩中、つまずいて負傷した。
所有主が危険を負う
不法行為制度はその例外
15
不法行為制度
帰責根拠が必要
転嫁
所有主
損害
他 人
16
自己責任の原則
自由な活動の結果は、
良きにつけ、悪しきにつけ、
自ら引き受けなければならない、
という原則
(ex) 過失責任の原則、帰責原理、
契約信義、加工(民246Ⅰ但)
出典: 河上正二「民法総則編の見取り図」法学セミナー592号74頁(2004)
17
自己責任の原則 は、
①ある特定主体(A)の自らの行為・不作為に
より特定の他人(B)に生じた結果や、
②ある主体(A)にすでに法的に帰属している
利益領域・支配領域から
特定の他人(B)に生じた影響が、
その責任主体(A)に他の主体(B)の利益に
帰責されうることを要求する。
18
帰責原理
①過失責任
②危険責任
③報償責任
19
過失責任の原則
加害者に過失がなければ、
損害賠償責任を負うことがない。
「過失なければ、責任なし。」
「過失があれば、責任を負う。」
★「過失」=故意・過失を含む
20
過失責任と無過失責任
1. 過失責任:加害者の過失が必要
①原則:被害者が加害者の有過失を
主張・証明しなければならない。
②例外:加害者が自己の無過失を
主張・証明しなければならない。
⇒中間責任
2. 無過失責任:加害者の過失は不要
21
中間責任
過失責任
過失が
証明されない限り、
責任は発生しない。
709
中間責任
無過失が
証明されない限り、
責任が発生する。
714、715、
717Ⅰ本、
718
無過失責任
無過失であっても、
責任が発生する。
717Ⅰ但
22
危険責任
危険源(危険な活動・物・人)を
支配する者は、
その危険が現実化して、
損害が発生した場合、
それを負担しなければならない。
23
報償責任
利益の帰する者に、
危険が帰する。
cuius commodum,
eius periculum
24
大気汚染防止法25Ⅰ
工場又は事業場における事業活動に伴う
健康被害物質の大気中への排出により、
人の生命又は身体を害したときは、
当該排出に係る事業者は、
これによつて生じた損害を賠償する
責めに任ずる。
25
外国法
26
ドイツ民法
823条1項 故意又は過失により他人の生命、身体、
健康、自由、所有権その他の権利を違法に侵害し
た者は、その他人に対して、これにより生じた損害
を賠償する義務を負う。
2項 他人の保護を目的とする法規に違反した者も
同一の義務を負う。法規の内容によれば、その法
規の違反が過責なくして可能な場合には、過責が
ある場合にのみ、賠償義務が生ずる。
826条 良俗に反する仕方で故意に他人に損害を加
えた者は、その他人に対して賠償する義務を負う。
27
フランス民法
1382条 他人に損害を生じ
させるすべての行為は、
フォート(faute)によって損
害を生じさせた者に対して、
その賠償義務を負わせる。
28
違法性
29
不法行為の要件・効果
故意・過失
責任設定的 因果関係
要
件
権利侵害
責任範囲の 因果関係
損害発生
効
果
損
害
賠
償
請
求
権
30
違法性理論
故意・過失
責任設定的 因果関係
要
件
権利侵害
違法性
責任範囲の 因果関係
損害発生
権利侵害を
違法性の
判断枠組が
違法性に
読み替える
必要となる
相関関係理論
31
相関関係理論
違法性の有無は、
被侵害利益の性質と
侵害行為の態様との
相関関係において
判断すべきである。
32
違法行為の類型
①絶対権侵害
②取締法規違反
③刑罰法規違反
④公序良俗違反
権利濫用
33
絶対権侵害
故意・過失
責任設定的 因果関係
要
件
絶対権侵害
責任範囲の 因果関係
損害発生
効
果
損
害
賠
償
請
求
権
34
取締法規違反
故意・過失
責任設定的 因果関係
要
件
取締法規違反
責任範囲の 因果関係
損害発生
効
果
損
害
賠
償
請
求
権
35
取締法規違反の例
〔ケース〕Xは、Z銀行の取締役Yが公告した
虚偽の貸借対照表を信じてZ銀行に預金し
たところ、 Z銀行が破産して、Xは預金の
払戻しを受けることができなくなった。
〔解決〕正しい貸借対照表の公告を命ずる商
法の規定は、一般の公衆の利益をも保護
するために設けられたものなので、Xの損
害は、当該規範の保護目的内にある。
36
刑罰法規違反
故意・過失
責任設定的 因果関係
要
件
刑罰法規違反
責任範囲の 因果関係
損害発生
効
果
損
害
賠
償
請
求
権
37
公序良俗違反
要
件
公
序
良
俗
違
反
故
意
・
過
失
損害発生
効
果
損
害
賠
償
請
求
権
38
有責性
39
加
害
者
の
所
為
に
で
き
る
違法性と有責性
正しくない行為だ
有責性
加害者の行為
帰責
帰責 違法性
加害者
被害者
40
違法性と有責性
行為が違法であれば、
その行為を差し止めることができる。
違法行為をしたことにつき、
行為者を非難できれば、
損害賠償を請求することができる。
41
有責性(責任)
①故意・過失
②責任能力
③違法性の認識可能性
④期待可能性
42
責任能力
712条 未成年者は、他人に損害を加えた場合にお
いて、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能
を備えていなかったときは、その行為について賠償
の責任を負わない。
713条 精神上の障害により自己の行為の責任を
弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を
加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、
故意又は過失によって一時的にその状態を招いた
ときは、この限りでない
43
「相当因果関係」
44
「相当因果関係」
①事実的因果関係
②損害賠償の範囲
③損害の金銭的評価
に分解すべきだ(平井)。
出典: 平井宜雄『損害賠償法の理論』
45
「相当因果関係」
損害
①事実的因果関係
があるか否か?
権利侵害
損害
②賠償される損害と、
賠償されない損害と
を分ける
損害
③損害の
金銭的評価
損害
46
事実的因果関係
“あれなければ、これなし”
あ れ
こ れ
原 因
結 果
47
損害論
48
「損害」概念
「損害」とは、
権利侵害により被害者に
発生した不利益をいう。
損害は、金銭か事実か?
差額説と損害事実説の対立
49
「損害」に関する学説

損害=金銭説
差額説
 現実損害説(所得喪失説)
 損害=事実説(実体的価値説)
 死傷損害説
 労働能力喪失説
 包括損害説

50
差額説
「損害」とは、
加害原因がなかったとしたら
あるべき利益状態と
加害がされたために
現在置かれている利益状態との
「差」を「金額」で表現したもの
51
損害事実説
「損害」とは、
債権者に生じた不利益な「事実」
である。
52
損害=事実説に立つと
賠償されるべき損害の範囲
と
損害の金銭的評価
が分離する。
53
差額説に対する批判
①精神的損害が説明できない。
②制限賠償原則に適合しない。
③代償請求権の事例が
説明できない。
54
代償請求権
Z
放
X
所
火
金
Y
55
死傷損害説
生命・身体侵害(死傷)自体を
損害と捉える説
損害=事実
56
労働能力喪失説
人間は潜在的・顕在的に労働し
収入を得る能力(労働能力)を持っており、
生命・身体侵害により、
その能力が失われたことを
損害と見る説
損害=事実
57
包括損害説
被害者が被った社会的・
経済的・精神的被害の
すべてを包括する総体を
損害として捉える。
出典: 吉村良一『不法行為法〔第4版〕』163頁
58
損害の分類

財産的損害
積極的損害
 消極的損害
(得べかりし利益・逸失利益)


非財産的損害(精神的損害)
59
損害の分類(四宮説)
①侵害損害
②後続損害
=後続侵害+結果損害
③結果損害
出典: 四宮和夫『不法行為』435-436頁
60
侵害損害
権利侵害(身体傷害)と
不可分に結合している損害(負傷)
出典: 四宮和夫『不法行為』435頁
61
結果損害
結果損害=総体財産的後続損害
権利侵害が被害者の総体財産に
波及して生ずる損害
(例)転売利益の喪失、弁護士費用
出典: 四宮和夫『不法行為』435頁
62
後続侵害
第1次権利侵害が原因となって、
同一被害者または第三者に生じた
さらなる権利侵害
(例)Yの過失によって交通事故に遭い
負傷したXが、入院した病院で医師Z
の過失によって、さらに侵害を受けた。
出典: 四宮和夫『不法行為』435頁
63
侵害損害・後続侵害
結果損害
故意・過失
権利侵害
侵害損害
結果損害
後続侵害
結果損害
64
損害賠償の範囲
65
損害賠償法の考え方
損害賠償責任の成否
損害賠償責任の範囲
66
「相当因果関係」
損害
①事実的因果関係
があるか否か?
権利侵害
損害
②賠償される損害と、
賠償されない損害と
を分ける
損害
③損害の
金銭的評価
損害
67
損害賠償の範囲
①民416類推説(判例)
★富喜丸事件(大判T15・5・22)
②保護範囲説(義務射程説)
③危険範囲説(危険性関連説)
68
民法416条
① 債務の不履行に対する損害賠償の請
求は、これによって通常生ずべき損害
の賠償をさせることをその目的とする。
② 特別の事情によって生じた損害であっ
ても、当事者がその事情を予見し、又
は予見することができたときは、債権者
は、その賠償を請求することができる。
69
民416と相当因果関係
民法416条
×
イギリス
富喜丸事件
相当因果関係
ドイツ
70
保護範囲説
権利侵害が、行為者の違反した
義務規範の保護目的の範囲内
にあるものでなければならない。
義務射程説、規範目的説
ともいう。
71
保護範囲説(具体例①)
〔ケース〕Xは、Z銀行の取締役Yが公告した
虚偽の貸借対照表を信じてZ銀行に預金し
たところ、 Z銀行が破産して、Xは預金の
払戻しを受けることができなくなった。
〔解決〕正しい貸借対照表の公告を命ずる商
法の規定は、一般の公衆の利益をも保護
するために設けられたものなので、Xの損
害は、当該規範の保護目的内にある。
72
保護範囲説(具体例②)
〔ケース〕遊覧船の船長が定員以上の客
を乗せたところ、その混雑のため、すり
が乗客のポケットから財布をうまく盗む
ことができた。
〔解決〕定員順守という規則は、乗客の財
布の盗難防止とは無関係なので、船長
は乗客の被害について責任を負わない。
73
後続侵害の帰責基準
×保護範囲説(義務射程説)
○危険範囲説(危険性関連説)
自動車による追越を制限する規範は、
他の交通関与者を衝突による身体傷害から
保護するという目的を持つが、
さらなる侵害(入院先で流感にかかって死亡した)は、
自動車事故の典型的な危険性と直接の関連がない。
出典: 四宮和夫『四宮和夫民法論集』300頁
74
危険範囲説
第1次権利侵害によって設定された
①「特別の危険」が実現したとき
後続侵害は加害者に帰責される。
②「一般生活上の危険」が実現したとき
被害者が危険を負担する。
75
危険範囲説(具体例)
交通事故で病院に担ぎ込まれたところ、
①医師の医療過誤によって、死亡した。
「特別の危険」の実現
②入院先の病院で流感に罹った。
「一般生活上の危険」の実現
76
結果損害の帰責基準
結果損害の帰責のためには、
損害発生の
①「確実性」または
②「必要性」が要求される。
77
結果損害の帰責基準①
「確実性」
★消極的財産損害に関する
〔ケース〕競走馬が傷害を受けたところ、
「ダービーに出走していれば1着になり、賞
金を獲得できたはずだ」と被害者が主張。
〔解決〕賞金獲得の確実性がないので、
賠償は認められない。
78
結果損害の帰責基準②
「必要性」
★積極的財産損害に関する
〔ケース〕母親が交通事故で瀕死の重傷を
負った場合に、外国留学中の娘の一時
帰国のための旅費を母親が支出した。
〔解決〕娘が母親の許に往復するための
旅費は、必要不可欠のものなので、賠償
されるべきだ。
79
損害の金銭的評価
80
損害額の証明
《原則》
損害額の証明責任は、被害者が負う。
《例外》
慰謝料:裁判官の裁量による。
 民事訴訟法248条

81
損害額の認定(民訴248)
◆◆◆平成民訴の新規定◆◆◆
損害が生じたことが認められる場合
において、損害の性質上その額を立
証することが極めて困難であるとき
は、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及
び証拠調べの結果に基づき、相当な
損害額を認定することができる。
82
人身損害の金銭的評価
人身損害は、
①医療費、
②逸失利益又は労働能力の喪失・減少、
③精神的損害(慰謝料)
に分けて算定されるのが、実務の通例である。
①②の算定は技術的制約のため、ある程度
実費主義を採らざるをえないので、
現実的には、結果損害の帰責基準に類する
算定基準が採られる。
出典: 四宮和夫『不法行為』461頁注(1)
83
逸失利益の算定方法
逸失利益
=得べかりし年間収入
×稼働可能年数(18~67歳)
-中間利息(ホフマン方式・ライプニッツ方式)
(-生活費(年収の30~50%)〔死者の場合〕)
84
損害計算の方法
《原則》具体的損害計算
《例外》抽象的損害計算
85
具体的損害計算
出典: http://www.ion-sw.co.jp/view-qq-l.htm
86
抽象的損害計算
(賃金センサス)
出典: http://www5d.biglobe.ne.jp/~Jusl/IssituRieki/Chingin.html
年
男女計
学歴計
2008年(平成20年)
4,860,600
2007年(平成19年)
4,882,600
2006年(平成18年)
4,893,200
2005年(平成17年)
4,874,800
2004年(平成16年)
4,854,000
2003年(平成15年)
4,881,100
2002年(平成14年)
4,946,300
2001年(平成13年)
2000年(平成12年)
1999年(平成11年)
性別
学歴計
中卒
高卒
短大・高専卒
大卒
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
5,503,900
3,499,900
5,547,200
3,468,800
5,554,600
3,432,500
5,523,000
3,434,400
5,427,000
3,502,200
5,478,100
3,490,300
5,554,600
3,518,200
5,659,100
3,522,400
5,606,000
3,498,200
5,623,900
3,453,500
4,275,500
2,490,800
4,312,400
2,495,300
4,395,400
2,551,800
4,382,000
2,544,300
4,521,100
2,680,100
4,598,600
2,665,200
4,649,600
2,712,100
4,852,300
2,728,000
4,854,800
2,742,300
4,873,800
2,701,500
4,877,200
3,011,600
4,924,000
3,005,200
4,926,500
2,971,700
4,903,400
2,961,500
4,901,300
3,123,400
4,972,700
3,118,100
5,027,100
3,167,400
5,197,800
3,230,300
5,193,300
3,233,500
5,204,400
3,217,500
4,954.80
3,845,700
4,913.10
3,774,600
5,019.60
3,781,700
4,939,500
3,787,000
4,838,500
3,769,300
4,936,600
3,791,200
5,011,200
3,833,400
5,018,300
3,791,600
4,934,700
3,779,100
5,009,500
3,750,800
6,686,800
4,384,300
6,807,600
4,461,200
6,767,500
4,401,100
6,729,800
4,429,000
6,574,800
4,374,800
6,587,500
4,458,900
6,744,700
4,465,000
6,804,900
4,530,100
6,712,600
4,485,400
6,774,400
87
4,450,900
年
男女計
学歴計
2008年
4,860,600
2007年
4,882,600
2006年
4,893,200
2005年
4,874,800
2004年
4,854,000
2003年
4,881,100
性別
学歴計
大卒
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
男
女
5,503,900
3,499,900
5,547,200
3,468,800
5,554,600
3,432,500
5,523,000
3,434,400
5,427,000
3,502,200
5,478,100
3,490,300
6,686,800
4,384,300
6,807,600
4,461,200
6,767,500
4,401,100
6,729,800
4,429,000
6,574,800
4,374,800
6,587,500
88
4,458,900
財産以外の損害の賠償
(民710)
他人の身体、自由若しくは名誉を侵
害した場合又は他人の財産権を侵
害した場合のいずれであるかを問わ
ず、前条の規定により損害賠償の責
任を負う者は、財産以外の損害に対
しても、その賠償をしなければならな
い。
89
慰謝料(民710)
被害者に生じた精神的損害を填補するもの。
その額は精神的損害の大きさによって決まる。
 慰謝料の算定は、
裁判官の裁量に委ねられる。
 法人には精神的苦痛はないが、
非財産的損害(無形損害)が発生しうるので、
法人も慰謝料を請求できる(判例)。

90
慰謝料の機能
①填補的機能
精神的損害の填補
②補完的(調整的)機能
財産的損害賠償の補完・調整
③制裁的(満足的)機能?
91
賠償額算定の基準時
1. 判例の立場
① 基準時は不法行為時
② 騰貴価格による逸失利益=特別損害
③ ②の予見可能性の証明責任は被害者が負う。
2. 判例に対する批判
賠償額算定の基準時の問題は、
損害賠償の範囲の問題ではなく、
損害の金銭的評価の問題だ。
92
責任無能力者の
監督者の責任
93
責任能力
712条 未成年者は、他人に損害を加えた場合にお
いて、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能
を備えていなかったときは、その行為について賠償
の責任を負わない。
713条 精神上の障害により自己の行為の責任を
弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を
加えた者は、その賠償の責任を負わない。
ただし、故意又は過失によって一時的にその状態
を招いたときは、この限りでない。
94
責任無能力者の監督者の責任
(民714)
① 前2条の規定により責任無能力者がその責任を
負わない場合において、その責任無能力者を監
督する法定の義務を負う者は、その責任無能力
者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったと
き、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべき
であったときは、この限りでない。
② 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する
者も、前項の責任を負う。
95
民714の帰責根拠
中間責任
責任が加重される根拠は危険責任
責任無能力者は、判断能力が低くて
加害行為を行いやすい。
それを監督する義務ある者に、
人的危険源の継続的管理者として、
民709よりも重い責任が課される。
96
監督者責任(民714)
監督者
714条
責任無能力者
× 709条
被害者
97
使用者責任
98
使用者責任(民715)
(使用者等の責任)
外形標準説
① ある事業のために他人を使用する者は、被
用者がその事業の執行について第三者に
加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、使用者が被用者の選任及びその事
業の監督について相当の注意をしたとき、
又は相当の注意をしても損害が生ずべきで
あったときは、この限りでない。
99
使用者責任(民715)
②使用者に代わって事業を監督す
る者も、前項の責任を負う。
③前2項の規定は、使用者又は監
督者から被用者に対する求償権
の行使を妨げない。
100
使用者責任(民715)
使用者
715条
被用者
○
709条 被害者
101
民715の帰責根拠
中間責任
責任が加重される根拠は、
危険責任と報償責任
102
報償責任
使用者は、その支配圏内にある者
(被用者)に、自己の利益のために
事務を処理させるのだから、
被用者の活動によって他人に与え
た損害については、使用者も責任
を負うべきである。
“利益の帰する者に危険が帰する“
103
危険責任
人を使用して自己の活動範囲を拡
大する場合には、社会に対する加害
の危険が増大される。
その増大された危険の実現としての
加害については、事業活動に従事す
る被用者を支配する立場にある使用
者が、危険を支配する者として、賠
償責任を負わなければならない。
104
使用者責任(民715)
使用者
X
被用者Aの取引行為が、
職務権限内において適法に
行われなかったことにつき
Yが悪意・重過失のときは、
使用者責任は発生しない。
民715
被用者
A
民709
相手方
Y
105
使用者責任
使用者
715条
被用者
709条 被害者
106
使用者責任
使用者
715条
弁済
被用者
709条 被害者
107
使用者責任
使用者
弁済
求償権
715条
被用者
709条 被害者
108
求償権の制限
(最判S51・7・8)
使用者が、その事業の執行につきなされた被用者
の加害行為により、直接損害を被り又は使用者と
しての損害賠償責任を負担したことに基づき損害
を被つた場合には、使用者は、その事業の性格、
規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条
件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防
若しくは損失の分散についての使用者の配慮の程
度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担
という見地から信義則上相当と認められる限度に
おいて、被用者に対し右損害の賠償又は求償の請
109
求をすることができる。
関連問題
110
注文者の責任(民716)
本文は715の注意規定
注文者は、請負人がその仕事につ
いて第三者に加えた損害を賠償する
責任を負わない。
ただし、注文又は指図についてその
注文者に過失があったときは、この
限りでない。 但書は709の注意規定
111
暴力団対策法
(指定暴力団の代表者等の損害賠償責任)
15条の2 指定暴力団の代表者等は、当該指定暴力団と他
の指定暴力団との間に対立が生じ、これにより当該指定
暴力団の指定暴力団員による暴力行為(凶器を使用する
ものに限る。以下この条において同じ。)が発生した場合
において、当該暴力行為により他人の生命、身体又は財
産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する
責めに任ずる。
② 一の指定暴力団に所属する指定暴力団員の集団の相
互間に対立が生じ、これにより当該対立に係る集団に所
属する指定暴力団員による暴力行為が発生した場合にお
いて、当該暴力行為により他人の生命、身体又は財産を
侵害したときも、前項と同様とする。
112
代表者の行為についての
損害賠償責任(法人法78)
支配人は含まない
一般社団法人は、
代表理事その他の代表者が
その職務を行うについて 外形標準説
第三者に加えた損害を
代表機関
(清算人)
賠償する責任を負う。
法人の免責可能性がない(cf.民715Ⅰ但)
113
法人法78条の責任
法 人
法人法78条
理 事
○
709条 被害者
114
国家賠償法1条
① 国又は公共団体の公権力の行使に当る
公務員が、その職務を行うについて、故意
又は過失によつて違法に他人に損害を
加えたときは、国又は公共団体が、
これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、公務員に故意又は
重大な過失があつたときは、国又は公共団
体は、その公務員に対して求償権を有する。
115
国賠1の責任
国 家
国賠1
公務員
○
709条 被害者
116
国賠1の責任
国 家
求償権
公務員
弁済
国賠1
公務員に
故意・重過失があれば
被害者
117
人身侵害についてのみ適用される
自賠法3条
自己のために自動車を運行の用に供する者
は、その運行によつて他人の生命又は身体
を害したときは、これによつて生じた損害を賠
償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者
が自動車の運行に関し注意を怠らなかつた
こと、被害者又は運転者以外の第三者に故
意又は過失があつたこと並びに自動車に構
造上の欠陥又は機能の障害がなかつたこと
を証明したときは、この限りでない。
118
自賠3の責任
運行供用者
自賠3
無関係
運転者
709条 被害者
119
法人の不法行為
120
法人の不法行為
①使用者責任(民715)
②代表者の行為による法人の
不法行為責任(法人法78←197)
③法人自身の不法行為に
基づく責任(民709)
121
民709による企業責任
《理論的問題点》
①法人の行為を観念できるか?
-大気汚染防止法25条
②法人の過失を観念できるか?
-過失=行為義務?
③法人の責任能力を観念できるか?
122
大気汚染防止法25Ⅰ
工場又は事業場における事業活動に伴う
健康被害物質の大気中への排出により、
人の生命又は身体を害したときは、
当該排出に係る事業者は、
これによつて生じた損害を賠償する
責めに任ずる。
123
土地工作物責任
124
土地工作物責任(民717)
① 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があ
ることによって他人に損害を生じたときは、
その工作物の占有者は、被害者に対して
その損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するの
に必要な注意をしたときは、所有者がその
損害を賠償しなければならない。
125
瑕
疵
土地工作物責任
126
民717の帰責根拠
①占有者の責任=中間責任
責任が加重される根拠は危険責任
②所有者の責任=無過失責任
帰責根拠は危険責任(+報償責任)
127
営造物責任
128
国家賠償法2条
① 道路、河川その他の公の営造物の設
置又は管理に瑕疵があつたために他
人に損害を生じたときは、国又は公共
団体は、これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、他に損害の原因
について責に任ずべき者があるときは、
国又は公共団体は、これに対して求償
権を有する。
129
製造物責任
130
製造物責任法3条
製造業者等は、その製造、加工、輸入又
は前条第3項第2号若しくは第3号の氏名
等の表示をした製造物であって、その引き
渡したものの欠陥により他人の生命、身体
又は財産を侵害したときは、これによって
生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただ
し、その損害が当該製造物についてのみ
生じたときは、この限りでない。
131
開発危険の抗弁(PL4①)
前条の場合において、製造業者等は、
次の各号に掲げる事項を証明したときは、
同条に規定する賠償の責めに任じない。
① 当該製造物をその製造業者等が引き
渡した時における科学又は技術に関す
る知見によっては、当該製造物にその
欠陥があることを認識することができな
かったこと。
132
動物占有者の責任
133
動物の占有者等の責任
(民718)
① 動物の占有者は、その動物が他人に
加えた損害を賠償する責任を負う。
ただし、動物の種類及び性質に従い相
当の注意をもってその管理をしたとき
は、この限りでない。
② 占有者に代わって動物を管理する者も、
前項の責任を負う。
134
動物占有者の責任
135
民718の帰責根拠
中間責任
責任が加重される根拠は危険責任
136
共同不法行為
137
(狭義の)共同不法行為
138
共同不法行為者の責任
(民719)
① 数人が共同の不法行為によって他人に損
害を加えたときは、各自が連帯してその損
害を賠償する責任を負う。
共同行為者のうちいずれの者がその損害
を加えたかを知ることができないときも、同
様とする。
② 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共
同行為者とみなして、前項の規定を適用す
る。
139
共同不法行為
加害者
加害者
加害
被害者
140
狭義の共同不法行為の要件
(旧通説)
①各人の行為は、それぞれ
独立して、不法行為の要件
を具えていなければならない。
②行為者の間には、
関連共同が必要である。
出典: 加藤一郎『不法行為』207頁
141
Aの放火⇒半焼
放
A 火
142
Aの放火⇒全焼
放
A 火
143
A・Bの放火
A
B
144
A・Bの放火⇒全焼
A
B
145
交通事故
146
「実行共同正犯」
加害者A
加害
被害者X
関連共同性
加害者B
被害者Y
147
「共謀共同正犯」
加害者A
加害
被害者X
関連共同性
加害者B
148
共同不法行為の帰責根拠
自己の行為と因果関係の
ない結果にまで責任を
負わせる根拠が必要だ。
 それを担うのが、
「関連共同性」の要件だ。

149
関連共同性
①客観的共同説(判例)
②主観的共同説
③主観・客観併用説
150
新主観説(前田達明)
① 各自が当該権利侵害を目指して他人の
行為を利用し、他方、自己の行為が利用
されるのを認容する意思のある場合
② 各自当該権利侵害以外の目的を目指し
てそのために他人の行為を利用し、他方、
自己の行為が他人に利用されるのを認
容する意思のある場合
出典: 前田達明『民法Ⅵ2(不法行為法)』(青林書院新社・1980)181-182頁
151
吉村良一
共同行為の意思がある場合、
共同行為者は相互に他人の
権利を侵害しないようにする
「拡大された注意義務」を負う。
出典: 吉村良一『不法行為法〔第3版〕』(有斐閣・2005)234頁
152
加害者不明の不法行為
153
共同不法行為者の責任
(民719)
① 数人が共同の不法行為によって他人に損
害を加えたときは、各自が連帯してその損
害を賠償する責任を負う。
共同行為者のうちいずれの者がその損害
を加えたかを知ることができないときも、同
様とする。
② 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共
同行為者とみなして、前項の規定を適用す
る。
154
具体例
性病者
性病者
被害者
155
効 果
156
不真正連帯債務
①絶対効の規定(民432-439)
が適用されない。
②負担部分がなく、
求償が認められない。
最近は当然に求償を認める見解が通説化している。
157
共同不法行為
加害者
過失
加害者
加害
過失
損 害
158
共同不法行為
加害者
求償権
加害者
弁済
被害者
159
求償権の成立要件
①連帯債務
免責を得た額が、自己の負担部
分を超えなくても、求償できる。
②不真正連帯債務
自己の負担部分を超えて賠償し
なければ、求償できない。
160
損害賠償請求権の主体
161
胎児の権利能力
《原則》
権利能力はない(民3Ⅰ)
《例外》
①不法行為(民721)
②相 続(民886)
③遺 贈(民965)
162
胎児の権利の行使
《前提》
胎児は自分で権利を行使できない。
①代理可能性肯定説(通説)
解除条件説
②代理可能性否定説(判例)
停止条件説
163
法 人
法人には精神的苦痛はないが、
非財産的損害(無形損害)が
発生しうるので、
法人も慰謝料を請求できる(判例)。
164
間接被害者
165
不法行為(民709)
故意又は過失によって
他人の権利又は
法律上保護される利益を
侵害した者は、
これによって生じた損害を
賠償する責任を負う。
166
ドイツ民法823条1項
故意又は過失により他人の生命、
身体、健康、自由、所有権その他
の権利を違法に侵害した者は、
その他人に対して、これにより
生じた損害を賠償する義務を負う。
167
不法行為の要件・効果
故意・過失
責任設定的 因果関係
要
件
権利侵害
責任範囲の 因果関係
損害発生
効
果
損
害
賠
償
請
求
権
168
侵害損害・後続侵害
結果損害
故意・過失
権利侵害
侵害損害
結果損害
後続侵害
結果損害
169
学説概観
① 従来の通説
相当因果関係説
② 現在の多数説
【原則】直接被害者のみが賠償請求できる。
間接被害者の賠償請求は、
例外的にのみ、認められる。
(例)民711
170
近親者に対する損害の賠償
(民711)
他人の生命を侵害した者は、
被害者の父母、配偶者及び子
に対しては、
その財産権が
侵害されなかった場合においても、
損害の賠償をしなければならない。
171
間接被害者の諸類型
①企業損害
②近親者の損害賠償請求
172
生命侵害の賠償権者
173
判例・学説
① 相続説(判例)
a. 財産的損害
b. 精神的損害
意思表明説⇒当然相続説
② 固有損害説(多数説)
a. 相続期待侵害説
b. 扶養侵害説
174
相続の一般的効力
(民896)
相続人は、相続開始の時から、
被相続人の財産に属した
一切の権利義務を承継する。
ただし、被相続人の一身に専属
したものは、この限りでない。
175
意思表明説
(大判M43・10・3)

民法第710条の規定に依り他人の身体を害したる者が被
害者に対して財産以外の損害に対して賠償を為す可き場
合に於て、財産以外の損害の賠償が被害者の慰藉に係
るとき、被害者が其受けたる損害を填補せしむる為めに
加害者に対し其慰藉料を請求する意思を表示したるとき
は、其請求権は金銭の支払を目的とする債権に外ならず
して、被害者が如上の意思を表示したる後依然生存した
らんには其請求に因りて得る金額は、相続の場合には財
産として存し、相続人の取得す可きものにして、其相続に
於て之を被害者の一身に専属するものと云うを得ず。
176
意思表明説(裁判例)
○「残念、残念」(大判S2・5・30)
○「向うが悪い、向うが悪い」 (大判S12・8・6)
×「助けて呉れ」(東京控判S8・5・26)
177
当然相続説
(最判S42・11・1)

ある者が他人の故意過失によって財産以外の損
害を被った場合には、その者は、財産上の損害を
被った場合と同様、損害の発生と同時にその賠償
を請求する権利すなわち慰藉料請求権を取得し、
右請求権を放棄したものと解しうる特別の事情が
ないかぎり、これを行使することができ、その損害
の賠償を請求する意思を表明するなど格別の行為
をすることを必要とするものではない。そして、当該
被害者が死亡したときは、その相続人は当然に慰
178
藉料請求権を相続する
過失相殺
179
過失相殺の規定
民418 不法行為の加害者に厳しい
債務の不履行に関して債権者に過失があっ
たときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠
償の責任及びその額を定める。
民722Ⅱ
被害者に過失があったときは、裁判所は、こ
れを考慮して、損害賠償の額を定めることが
できる。
180
過失相殺
加害者
被害者
過失
過失
損 害
181
責任能力と事理弁識能力
0
歳
5~6
歳
11~14
歳
事理弁識能力
被害者「側」
↓
の過失
過失相殺可
責
任
能
力
182
被害者が
責任無能力者のとき
加害者
過失
被害者
加害
危険
損 害
183
被害者側の過失
加害者
過失
50
親
加害
損 害
100
過失
50
184
被害者側の過失
加害者
親
50
被害者
185
被害者側の過失
共同不法行為と見うる
加害者
加害者
加害
被害者
親
子
186
加害者が先に弁済すると
加害者
50 求償権
100
加害者
100
弁済
被害者
187
親が先に弁済すると
加害者
50 求償権
100
加害者
100
弁済
被害者
188
求償の循環回避
加害者
加害者
50
弁済
被害者
189
被害者の素因
加害者
過失
被害者
加害
危険
損 害
190
自然力の競合
加害者
過失
加害
損 害
191
損益相殺
192
損益相殺
不法行為の被害者が当該不法行為に
より利益を受けた場合には、損害賠償
額の算定に際し、その利益を損害額
から控除しなければならない。
損害
不法行為
利益
193
逸失利益の算定方法
逸失利益
=得べかりし年間収入
×稼働可能年数(18~67歳)
-中間利息(ホフマン方式・ライプニッツ方式)
(-生活費(年収の30~50%)〔死者の場合〕)
194
賠償者代位
195
損害賠償による代位
(民422)
債権者が、損害賠償として、
その債権の目的である物又は
権利の価額の全部の支払を
受けたときは、債務者は、
その物又は権利について
当然に債権者に代位する。
196
債務不履行(民422)
賠償
寄託者
填補賠償請求権
返還請求権
所有権
窃盗犯
受寄者
所有権
197
不法行為
所
有
者
所
毀 損
加
害
者
損害賠償債務 金
198
請求権代位
199
請求権代位(保険法25条)
保険者は、保険給付を行ったときは、次に掲げる額のうち
いずれか少ない額を限度として、保険事故による損害が
生じたことにより被保険者が取得する債権(債務の不履行
その他の理由により債権について生ずることのある損害
をてん補する損害保険契約においては、当該債権を含む
。以下この条において「被保険者債権」という。)について
当然に被保険者に代位する。
1. 当該保険者が行った保険給付の額
2. 被保険者債権の額(前号に掲げる額がてん補損害額に
不足するときは、被保険者債権の額から当該不足額を
200
控除した残額)
請求権代位(保険法25条)
保険者
加害者
保険金請求権
損害賠償請求権
火事
弁済
被害者
201
加害者が弁済すると
保険者
加害者
弁済
被害者
202
相殺禁止
203
相 殺(民505)
「相殺します」
X
X
自働債権
100万円
相
殺
権
A
受働債権
100万円
B
相
殺
権
204
民法509条
(不法行為により生じた債権を
受働債権とする相殺の禁止)
債務が不法行為によって
生じたときは、
その債務者は、相殺をもって
債権者に対抗することができない。
205
相殺禁止(民509)
不
法
行
為
者
損害賠償請求権
被
害
者
相
殺
権
206
消滅時効・除斥期間
207
不法行為による損害賠償
請求権の期間の制限(民724)
不法行為による損害賠償の請求権
は、被害者又はその法定代理人が
損害及び加害者を知った時から3年
間行使しないときは、時効によって消
滅する。 除斥期間
消滅時効
不法行為の時から20年を経過した
ときも、同様とする。
208
最判H1・12・21
出典: 金山直樹「消滅時効法の改正に向けて」NBL887号41-42頁(2008)

民法724条後段の規定は、不法行為によって発生した
損害賠償請求権の除斥期間を定めたものと解するのが
相当である。けだし、同条がその前段で3年の短期の時
効について規定し、更に同条後段で20年の長期の時効
を規定していると解することは、不法行為をめぐる法律
関係の速やかな確定を意図する同条の規定の趣旨に沿
わず、むしろ同条前段の3年の時効は損害及び加害者
の認識という被害者側の主観的な事情によってその完
成が左右されるが、同条後段の20年の期間は被害者側
の認識のいかんを問わず一定の時の経過によって法律
関係を確定させるため請求権の存続期間を画一的に定
209
めたものと解するのが相当であるからである。
最判H1・12・21

これを本件についてみるに、被上告人らは、本件事故発
生の日である昭和24年2月14日から20年以上経過した
後の昭和52年12月17日に本訴を提起して損害賠償を求
めたものであるところ、被上告人らの本件請求権は、すで
に本訴提起前の右20年の除斥期間が経過した時点で法
律上当然に消滅したことになる。そして、このような場合に
は、裁判所は、除斥期間の性質にかんがみ、本件請求権
が除斥期間の経過により消滅した旨の主張がなくても,右
期間の経過により本件請求権が消滅したものと判断すべ
きであり、したがって、被上告人ら主張に係る信義則違反
又は権利濫用の主張は、主張自体失当であって採用の限
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りではない。
消滅時効と除斥期間
消滅時効
除斥期間
援 用
必 要
不 要
中 断
あ り
な し
停 止
あ り
あ り
起算点 権利行使可能時
遡及効
あ り
権利発生時
な し
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