第2章 界面活性剤

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Transcript 第2章 界面活性剤

溶解の原則

● (構造、性質が) 似たものどうしは 溶け合いやすい。 Likes like likes.

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● ● 極性物質どうし: 水と塩類など 非極性物質どうし: 有機溶媒と油類など ● 界面活性剤を使うと: 性質が異なる油類も水に分散する。 1

表面エネルギー:表面が持つエネルギー

● 内部の粒子: 働く引力の和が0 合力=0 ● 表面の粒子: 外向きの引力がない →内部向きに力が働く 高エネルギー エネルギーの高い表面の粒子の数を減らして安定化する ⇒ 表面張力、焼結現象 の原因 2

表面張力とは

● 表面張力: 表面積を縮小して、表面エネルギ-を下げようとする力 ● 比表面積(表面積/重さ)を小さくするには: ① 形を球形にする ② 粒を大きくする ● 焼結現象: 固体のままで(融点以下の温度で) 比表面積の小さな大きな組織になる現象 ① 焼き物 ② 粉末冶金 3

焼結現象: 固体のままで大きな組織になる 融点以下の温度 で加熱 ⇒ 焼結 焼物 原料粒子は表面積大 ⇒ 表面エネルギー大 (不安定) 融点まで加熱 ⇒ 液体 ⇒ 円盤状 焼物:組織大 ⇒ 表面積小 ⇒ 表面エネルギー小(安定) 4

表面張力

粒子間の力の強さを反映

(金属結合は強い) (水素結合はやや強い) (ファンデルワールス結合は弱い) 5

1円玉

水の表面

表面張力の方向 1円玉 水相 重力 ● 水は表面張力が大 ⇒ 縁で上向きの力 ⇒ 重くても浮かぶ ⇒ アメンボウ、アヒルなどが水に浮かぶ ● 石けん水を加える ⇒ 表面張力 小 6

界面活性剤: 界面張力を激減させる 表面張力の方向 1円玉 重力 小さい 界面活性剤 を加える 離れる 沈む 7

石けんの構造と加水分解

(親油性) (親水性) 炭化水素基 カルボキシル基の塩 石けんの加水分解 ⇒ 水溶液がアルカリ性 RCOONa + H 2 O ⇆ RCOOH + Na + + OH 8

陰イオン(陽イオン)界面活性剤

洗濯用合成洗剤 高級アルコール系洗剤 (台所用、シャンプー) 陰イオン 陽イオン 合成洗剤: 強酸と強塩基の塩 ⇒ 水溶液が中性 9

石けんと合成洗剤

● 石けん: ① ② 硬水中で カルシウム石けん( (RCOO) 2 Ca ) マグネシウム石けん( (RCOO) 2 Mg ) になり沈殿 加水分解して弱アルカリ性 ⇒ 羊毛、絹を傷める ③ 微生物が分解しやすい ● 合成洗剤: ① ② ③ 硬水中でも洗浄力がある 加水分解をせずに中性 冷水にも溶けやすい ④ ⑤ ⑥ さらさらの粉末にできる 石けんよりも微生物が分解しにくい 安価 10

陽イオン界面活性剤

● タンパク質の表面: マイナスに帯電 (構成アミノ酸にグルタミン酸が多い)

HOOC CH (NH 2 )(CH 2 ) 3 COOH

重合 COO - グルタミン酸 ポリペプチド鎖 COO - ⇒ 陽イオン界面活性剤と結合しやすい 11

陽イオン界面活性剤の利用 ● 病院用石けん: 細菌表面のタンパク質と結合 ⇒ タンパク質を凝固 ⇒ 殺菌作用 ⇒ 洗剤兼消毒剤 ● リンス: 陽イオン部分が髪(ケラチン)に結合 ⇒ 炭化 水素基部分が外側に向く ⇒ 油を塗ったたよう感じ ● トリ-トメント: リンスに類似(浸透性大) ● ソフタ- 12

界面活性剤の濃度と表面張力

表面が炭化水素基 炭化水素基 親水基 水 ミセル CMC (Critical Micel Concentration) : ⇒ 臨界ミセル濃度 (界面活性剤分子の集合体ができ始める濃度) CMC以上の濃度で表面張力が激減 13

界面活性剤の濃度と洗浄力等

洗濯時 油の乳化 ● 推奨使用量: 洗剤濃度がCMC になる洗剤量(十 分な洗浄力が得 られる最小量) ⇒ それ以上の量の 使用は無駄使い ● 可溶化量: 溶かすことのできる 油類の量 14

界面活性剤(まとめ) ● 作用: 少量で界面張力を激減させる ● 構造: 分子内に親油基と親水基がある ● 陰イオン界面活性剤: 石けん、合成洗剤 ● 陽イオン界面活性剤: タンパク質と結合する ⇒ 殺菌作用、リンスなど 15

洗濯のプロセス

油汚れ 繊維 入浴時に、脂肪が 人体 から 器壁へ : 皮膚の脂肪 + CMC以上の濃度の洗剤 ⇒ ミセル形成 ⇒ CMC以下の濃度 ⇒ ミセルが壊れる ⇒ 脂肪が遊離 16

商品としての合成洗剤

● ● 界面活性剤 + 洗浄促進剤 洗浄促進剤 ● ゼオライト : イオン交換作用 Ca 2+ , Mg 2+ ⇒ Na + ● 蛍光増白剤 : 紫外線 ⇒ 青紫色(黄色の補色)の 可視光線 ⇒ 白色、増光 ● アルカリ性で働く酵素 タンパク質、脂質、デンプンを分解する酵素 セルロース分解酵素: セルロースの非 結晶質部分の汚 れを落とす 17

界面活性剤の利用

● 化粧品(乳液、クリーム) ● 起泡剤(アイスクリ-ム、ケ-キ) ● 界面活性作用をもつ天然物 ● レシチン(細胞膜、卵黄): 食品、化粧品の乳化(マヨネ-ズ、米のとぎ汁) ● 胆汁酸: 脂肪の消化、牛の胆汁で羊毛を洗浄 ● ウグイスの糞(胆汁酸塩) ● 水溶性タンパク質(卵白アルブミン等) 18

乳濁液 (エマルション) の種類

水中油滴型 (水の性質が強い) 油中水滴型 (油の性質が強い) マヨネーズ、牛乳 界面活性剤 バター、マーガリン 界面活性剤が親水基を水側、親油基を油側に向けて界面に並ぶ ⇒ 界面張 力と界面エネルギ-が低下 ⇒ 界面の安定化 ⇒ 乳化状態の安定化 起泡 : 泡 は表面積 大 ⇒ 界面活性剤があると、泡があっても比較的安定 19

ゴキブリに界面活性剤水溶液をかけたら ゴキブリの気門(呼吸器): 表面が親油性固体 ⇒ 水をはじく 界面活性剤をかけると 親油性物質 気門 表面が親水 性に変わる 水滴 水 気門に入らない ので 死なない 水滴が気門 に入り 窒息死 水滴 20

昆虫の気門の詰り

● ゴキブリ: 灯油をかけると? ● ツマグロヨコバイ: 水に落ちても平気。 田に石油の油膜を張り、落とすと死ぬ (農薬がない時代の殺虫法) ● アブラムシ、蚊、ブヨ、甲虫: 台所用洗剤水溶液をかけると 死ぬ ⇒ 万能の殺虫剤? (安全、殺虫剤耐性がでない ) 洗剤水の噴霧で蚊が瞬間的に 落ちるのは、羽と胴体が水濡れして くっつくから(水では落ちない) 21

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