Transcript 第1章 水
ビッグバンから生命誕生まで
● 万物は物質からできている
● 物質はどうしてできたのか?
すべては ビッグバン から
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宇宙の歴史⑴
素粒子
から
分子へ
2013年3月 ヒッグス粒子(質量の根源)を確認。通常の物質(標準理論の17種類
の素粒子、全て発見)は宇宙の5%。残りは暗黒物質等。超対称性粒子か?
図、田口寿一
宇宙の歴史⑵
現在の宇宙は密度、温度がほぼ均一: 説明するものが「インフレーション理
論」(佐藤勝彦); ビッグバン理論では説明できない。
物質の誕生
●ビッグバン(大爆発): 140億年前; 全ての始まり;
数百兆℃; 光子だけ
●3分後: 陽子(H+ )、中性子、電子の誕生 ; 10 億℃
●十数分後まで: 重水素とヘリウムの原子核の生成; 1億℃
● H、He の核融合(百万℃以上) → C、 N、O
ガス雲 → 星
● C、N、O の核融合(6-30 億℃) → Na, Mg, Al, Si, Fe
光 → 電子、陽子、中性子 → 水素原子 → He
→ やや重い原子 (→ 重い原子)
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物質の誕生(2)
● 鉄( 核エネルギーが最少; 最も安定)
● 鉄より重い元素(コバルト~ウラン):
超新星元素合成(Fe +中性子; 中性子数が多いと原子核のβ
崩壊(電子放出)で、原子番号が上がる。)
不安定
原
子
核
の
エ
ネ
ル
ギ
ー
安定
水素爆弾: 水素原子の核融合
核融合
不安定
核分裂
もっとも安定
鉄
原子爆弾: ウラン核分裂
原子の大きさ
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太陽系の誕生
●「ビッグバン宇宙論」の根拠
(1) 宇宙が外側ほど速く膨張 (空間の発生⇒
1点での物質の生成を示唆)
(2) 宇宙空間から電波
(3) H:He= 3:1(ビッグバンの理論値)
●元素の存在比: H 86%、 He 13.7%、その他 0.3%
●太陽系の誕生: ビッグバンの百億年後(46億年前)
●水星、金星、地球、火星: 質量小(弱い引力) ⇒
H2 と Heの喪失 ⇒ 二酸化ケイ素と鉄が主成分
●水星: 水も喪失
●金星: CO2 が多く気温が 470℃ ⇒ 水は気体
●地球: CO2 減少(下式) ⇒ 水の惑星 ⇒ 海での生命の誕生
H2O(液体)+ CO2 + Ca2+ → CaCO3 + 2 H+
●火星: 水も喪失?
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物質研究の歴史
● 化学: エジプト ⇒ ギリシャ ⇒ アラビア ⇒ ヨーロッパ
● ギリシャ人の元素観
一元素説(タレス:万物は水から形成 、他に土、空気、火)
⇒ 四元素説(エンペドクレス) ⇒
アリストテレス: 四元素+第五元素 ⇒錬金術 ⇒ 化学、薬学
● 第五元素(元素変換の媒体) → 賢者の石(哲学者の石)
● ギリシャ人の実験観
● 賢者の粉: 銅貨 ⇒ 銀貨 ⇒ 金貨 (実験)
● 19 世紀:科学の世紀 ← 18世紀:哲学の世紀
● 近代科学の属性:
① 実証性(経験、実験の尊重)
② 論理性(合理的思考)
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水の惑星の条件
● 液体の水の存在: 地表の平均気温が 0~30℃
● 大気の主成分が 水素、ヘリウム以外
(宇宙の構成要素: H 86% He 13.7% その他 0.3% )
● 体重当りの水: 年齢と共に減少
● 幼児: 80% 成人: 70% 高齢者: 70%以下
● 55%(成人女性)~ 60%(成人男性)
● 脂肪を除と、共に約 70%
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人の体液と海水の組成
● 組成が類似 ⇒ 生命体は海で生まれた!
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環境問題としての水
● 地上の水
海水
液体の淡水 河川水
97.5
0.3
0.01
固体の淡水(氷)
2.2
(%)
● 日本: 食糧の60%を輸入
⇒ 640 億トン/年の水(仮想水)を輸入と同等
日本の総水資源使用量(900億トン/年)の 2/3
● 生産に必要な水:
小麦: 2000 ℓ/kg 米: 3600 ℓ/kg 牛肉 2万ℓ/kg
● 国内の農業用水は 570 億トン/年
●日本人の生活用水=137m2/年・人 : 英国、中国の4倍
● 世界での水不足 ⇒ 日本での食料不足
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水の存在場所
水の利用形態: 農業用水 7割; 工業用水 2割; 生活用水 1割
国交省 08
世界の小麦・米の生産量/1人
1985年以降、増えていない。
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世界の耕地面積と穀物反収
1980以降は耕地面積が減少: 灌漑用水不足のため
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灌漑と水不足
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世界の穀物消費量と在庫率
人口増、肉類消費量の増加により、穀物在庫率は減少傾向
米農務省
急増する水需要
水利用の7割は農業。平均滞留時間: 河川水 十数日、 地下水 830年
世界の水需要の増加
水利用をめぐる争いが増加(インダス川、メコン川、ナイル川、中央アジアの川など)
UNESCO
世界の水使用量
予測量を実現できるのか?
ユネスコ
1人当たりの水資源量の減少
21世紀の紛争は水をめぐるものになる?
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主要国の食料自給率(2002、カロリーベース)
日本の穀物自給率= 28%; 173カ国中で124番目
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将来の食料事情
三菱UFJ投信
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生産に必要な穀物量/ 1 kg
肉類を生産するには多量の穀物が必要。
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結合の種類結合エネルギー
結合の種類 結合エネル 方向性 ずれに 物質例
ギー (kJ/mol)
イオン結合
764
なし 弱い
食塩
共有結合
718
あり 弱い ダイヤモンド
金属結合
165
なし 強い
鉄
水素結合
20
あり 弱い
氷
ファンデル
ワールス力
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なし 弱い ドライアイス
● 結合エネルギーが大きいことは、強度が高いことの必要条件
● 方向性がある結合は、ずらすと切断される。
● イオン結合結晶と金属については、後のスライド。
強い結合
● イオン結合:
Na+ Cl-(結合に方向性なし、
ずれに弱い)
● 共有結合: 水素分子 (H-H)、酸素分子(O=O)
(結合に方向性)
(量子力学によって説明される もの)
(1928年: H2に波動方程式を適用)
● 金属結合 : (結合に方向性なし)
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共有結合 (H-H) のモデル図
全体として引力
eHa+
反発力
Hb+
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金属結合
+に帯電している金属イオンがーに帯電している電子
と静電引力で引き合っている。
静電
引力
引力
自由電子
金属イオン
金属結晶とイオン結晶に力を加えた場合
金属結晶
イオン結晶
強い
壊れにくい
加工しやすい
水分子の特色
① 水素結合を作る。
② 分極している
(分子内に電気的に+の部分とーの部分と
がある)
+
ー
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電気陰性度
元素
電気陰性度
(原子が電子を引き付ける力の指数)
H
2.1
C
2.5
N
3.0
O
3.5
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水分子の分極(電子の偏り)
非共有電子対: 結合を
形成していない電子対
電気陰性度= 2.1
電気陰性度=3.5
ー
+
分子全体の電荷
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弱い結合
● 水素結合:
δ+
δー
H-O … H-O
|
|
H
H
● O、H、O の3原子が一直線上にある
● O は δ- に H は δ+ に帯電
(δ+ の H は H+ ( 内部に電子がない)に類似 ⇒
水素結合をつくる。)
● ファンデルワールス力: 分子間の引力
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水分子の水素結合
www.thuisexperimenteren.nl /verdamping.htm
www.lbl.gov/MicroWorlds/Kevlar/KevlarClue4.html
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凍ると体積が増える 水の性質 (1)
● 凍ると体積が増える
→氷は水に浮かぶ、水中生物に好都合、風化作用
● 水素結合の割合:
氷 100%
液体の水 50%
水蒸気
0%
● 水素結合している水:
● O-H ・・・O が一直線 ⇒
規則性が高くすき間が大きい
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体積 VS 温度
密
度
最
大
凍ると体積
が増える
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水による風化作用
岩石
水
入口の氷が水を
閉じ込める
これが凍ると体積が増える
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氷の結晶構造
炭化水素
基が隙間
に入る
H2O (10 ml) + CH3CH2OH ( 5 ml) → 14.6 ml
水
エタノール
15 ml ではない
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メタンハイドレートの結晶構造
氷状の固体物質(理論化学式:CH4 ・5.75 H2O)
1m3のメタンハイドレートからメタン 172m3(1気圧、0℃)が得られる。
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2006EnergyHTML/html/i1240000.html
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日本付近のメタンハイドレートの分布
産業技術研究所
メタンハイドレート:メタンと水の包接化合物;燃える氷
日本近海のメタンハイドレートの分布
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(2000)
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復氷現象
糸の上部: 圧力が低く凍りやすい
糸の下部: 圧力が高く融けやすい
ルシャトリエの法則
「自然は変化を嫌う」: なるべく変化
が起こらないように平衡が移動する)
スケートはなぜ滑るのか
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最大密度がある 水の性質(2)
通
常
の
物
質
は
、
温
度
が
高
い
ほ
ど
体
積
が
大
き
い
。
密
度
最
大
水
が
表
面
か
ら
凍
る
の
を
助
け
る
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最大密度がある理由
高温ほど: 水素結合している水の割合が低い ⇒ 体積減
水分子の熱運動が盛ん ⇒ 体積増
水
の
体
積
熱運動による傾向
水素結合による傾向
温度
4℃
縦方向の水温分布へ影響。 表面から凍りやすい。
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比熱が全物質中で最大 水の性質
物質
比熱(cal K-1 g-1)
水
エタノール
ベンゼン
1.00
0.55
0.34
花崗岩
石英
0.19
0.17
ガラス
0.14
氷や水蒸気の比熱は小さい
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対流(⇒上昇気流)
高温
流体の流れ:
高温だと軽い
一般に、気体や液体は、
高温ほど熱膨張し、軽くなる。
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季節風の原因
アジア大陸(土、石)
夏: より高温(上昇気流)
冬:より低温
日
本
列
島
太平洋(水)
夏: 陸より低温
冬: 陸より高温(上昇気流)
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融解熱が大きい 水の性質(4)
● 氷( 0 ℃ )の融解熱: 80cal/g
● 水素結合をしている割合
氷の水分子
100%
液体の水分子 約50%
水蒸気
0%
●水素結合の切断: 多量の熱が必要
形成: 多量の熱の除去が必要
●気温: 北極(下が海)は南極(下が大陸)より
20℃高い。
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気化熱(蒸発熱)が大きい 水の性質(5)
● 気化熱: 540cal/g
水素結合している割合: 液体の水 約50%、 水蒸気 0%
⇒ 気化: 水素結合の切断に大きなエネルギーが必要
● 水の大きな気化熱
海洋性気候。スチ-ム暖房。高い消火力。
● 発汗による体温調節
0.5 -1 ℓ /h の発汗 ⇒ 1ℓ の発汗で12 ℃の体温降下
満1才まで: 汗腺未発達 ⇒ 発汗による体温調節 不可
● ラクダのコブ
脂肪30㎏ +空気中の酸素 →
脂肪(C, H, O)中のH O2
→
水40㎏ + エネルギ-
H2O
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状態変化と熱
加熱
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水の性質(6) 溶解力が大きい
●水(分極している)は、極性物質をよく溶かす
●理由: イオンや極性物質への水和
陽イオン
への水和
陰イオン
への水和
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結合水(不凍水)
● 凍る温度
結合水
準結合水
< -20
0 ~ -20
自由水
≒ 0 (℃)
● 植物の耐寒性の差
● 砂糖の防腐作用、干物
(自由水の減少 ⇒ 微生物の増殖抑制)
● 冷凍食品の劣化
冷凍庫内( -18℃)でも凍っていない水が 10%
50
結合水、準結合水、自由水
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硬水と軟水
● 硬水: Ca2+ , Mg2+ の多い水
● Ca2+ : 適度に含まれるとおいしい
● Mg2+ : 苦味、渋味。下痢の原因
● 硬水中では石けんが使えない
RCOONa + Ca2+ → (RCOO)2Ca (カルシウム石鹸)
Mg2+ →(RCOO)2 Mg(マグネシウム石鹸)
水に不溶
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水の味
◎ おいしい水
● CO2 、 O2 が多い ⇒ さわやか
● 一部のミネラル分(Ca2+, K+)
● 温度が 10-15 ℃(地下水の温度)
低過ぎ → 舌が麻痺 高過ぎ ⇒ 清涼感がない
◎ まずい水
● 湯ざまし: CO2 、 O2 がない ⇒ 清涼感が弱い
● 下水処理水:アンモニア、有機物、大腸菌群が多い
● 塩素殺菌の水道水は臭いがあってまずい。
煮沸、活性炭で除ける。
● オゾン殺菌(コスト大)の水道水はおいしい。
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水使用量/1日・1人
①
③
②
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国連開発計画(06)
慢性的な栄養不足の人口
8億5千4百万人が慢性的な栄養不足
FAO(06)
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履修上の注意
● 出席はとるか ○
● 出席点はあるか ?
● 「可」はあるか → 「不可」へ
● 単位をどう考えるべきか
● 私語
学友の勉強を邪魔する行為
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