関係省庁連絡会議 建築構造物 3.設計用の長周期地震動の策定に係る

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平成18年度長周期地震動対策
に関する調査
建築構造物編
北村春幸(東京理科大学)
建築構造物編
•
•
•
•
検証用スペクトルの設定に向けて
建築構造物の耐震性評価
耐震性能向上に向けての方策
避難計画の課題
長周期地震動の応答スペクトルとエネル
ギースペクトルによる評価
• 長周期地震動は「特定の周期帯」で大きなピークが
現れるが,それ以外の周期帯では速度応答スペクト
ルSVは標準波・告示波とほぼ同じ値を示し,エネル
ギースペクトルVEはそれをかなり上回った値を示す。
• ただし現状では,予測波は,最大値,入力エネル
ギー,卓越周期とも1/2~2倍程度のばらつきがある
ことを前提に利用すべき。
• 予測波を直接用いることより,多くの予測波を総合し
た検証用の応答スペクトルSVとエネルギースペクト
ルVEを設定する。
速度応答スペクトル (h=5%)
標準波・告示波
300
h=0.05
300
EL CENTRO NS
HACHINOHE EW
ART HACHI
JMA KOBE NS
250
200
150
150
100
50
50
1
2
3
4
5
PERIOD(sec)
6
7
8
TOMAKOMAI NS
KK_OSA_NS
KK_WOS_EW
TS_TOK_NS
TS_YKL_NS
C_SAN_EW
ART TOMA
200
100
0
0
h=0.05
250
Sv(cm/s)
SV(cm/s)
長周期地震動
0
0
1
2
3
4
5
PERIOD(sec)
6
7
8
エネルギースペクトル (h=10%)
標準波・告示波
700
h=0.10
700
EL CENTRO NS
HACHINOHE EW
ART HACHI
JMA KOBE NS
600
500
400
300
400
300
200
100
100
1
2
3
4
5
PERIOD(sec)
6
7
8
TOMAKOMAI NS
KK_OSA_NS
KK_WOS_EW
TS_TOK_NS
TS_YKL_NS
C_SAN_EW
ART TOMA
500
200
0
0
h=0.10
600
VE(cm/s)
VE(cm/s)
長周期地震動
0
0
1
2
3
4
5
PERIOD(sec)
6
7
8
検証用スペクトルの設定に向けて
• 超高層建物に対する長周期地震動は,標準波・告
示波との比較に基づき, 「全体的」なレベルと「特定
の周期帯」のレベルに分けて,それらの値に幅を持
たせた設定。
表1 超高層建物に対する長周期地震動の想定レベル
巨大地震による長周期地震動
標準波・告示波
全体的
(周期0~10sec)
特定の周期帯
速度応答スペクト
ルSV(cm/s)
SV=80~
120cm/s
SVm1=80~
120cm/s
SVm2=120~
180cm/s
エネルギースペク
トルVE(cm/s)
VE=120~
180cm/s
VEm1=180~
270cm/s
VEm2=270~
400cm/s
A.「全体的」と「特定の周期帯」の2つのレベルでBilinear形状の速度応答スペクトルとエネルギースペ
クトルを規定する.
B.Bi-linear形状の速度応答スペクトルとエネルギー
スペクトルに特定の周期帯で「山」を作ったスペクト
ルで規定する.
SVm2,VEm2
SVm2,VEm2
SVm1,VEm1
SVm1,VEm1
A.Bi-linear 形状の方法
特定の周期帯
B.Bi-linear 形状に「山」を作る方法
図-4 目標スペクトルの形状
検証用スペクトルの設定に向けての課題
検証用スペクトルを速度応答スペクトルとエネルギー
スペクトルで設定する方法を提案。
• 予測波は、大きなピークを持つ「特定の周期帯」の存在が共
通の特徴であるが、地域や地点を限っても研究者によりピー
ク値と卓越周期に大きな違いが見られる。
• 予測波は最大値,入力エネルギー,卓越周期とも1/2~2倍
程度のばらつき幅を持ち、「特定の周期帯」を特定することは
現在のところ困難。
• 地域ごとにスペクトルを設定できるほど十分な長周期地震動
が予測されていない。
ここで、提案した検証用スペクトルは、提供された予測波に
基づき、長周期地震動に対する建築物の耐震安全性を検討
するはじめの一歩として、目安となるレベルを設定したもの。
地域ごとの速度応答スペクトルと
エネルギースペクトルの比較
600
400
500
300
VE(cm/s)
SV(cm/s)
400
200
300
200
100
100
0
(s)
0
2
4
周期
6
8
10
0
(s)
0
SVスペクトル(h=5%)
2
4
周期
6
8
VEスペクトル(h=10%)
(a) 大阪地域
10
釜江
釜江波 SV
400
350
300
SV(cm/s)
SV(cm/s)
250
200
150
350
300
300
250
250
200
150
100
50
50
0
0
2
4
6
8
10
150
50
0
0
2
4
6
8
0
10
速度応答スペクトルSV
650
500
600
450
550
400
500
関口波 VE
600
200
350
300
250
300
250
150
100
50
50
50
0
0
周期
8
10
10
350
100
6
8
400
200
4
10
450
150
100
8
500
200
150
6
釜江波 VE
550
VE(cm/s)
250
2
4
(h=5%)
400
300
0
2
周期
450
350
VE(cm/s)
VE(cm/s)
200
周期
釜江波 VE
550
釜江波 SV
100
周期
600
400
関口波 SV
350
100
0
鶴木
SV(cm/s)
400
関口
0
0
2
4
6
8
10
0
周期
エネルギースペクトルVE (h=10%)
2
4
6
周期
建築構造物の耐震性評価
長周期地震動の「全体的」なレベルにある超高層建物
• 層間変形などの最大値は,標準波・告示波とほぼ変わらな
いが,累積塑性変形などの累積値は約2倍になる。
• 骨組が塑性変形能力を有する場合には耐力上重大な問題
が発生することは少ないと予測される 。
• やや大きな残留変形が残ることや,設計時の想定を超える
層間変位による外装材の破損等が生じる可能性がある。
長周期地震動の「特定の周期帯」にある超高層建物
• 標準波・告示波の約1.5倍程度の最大応答値と約5倍程度
のエネルギー入力の可能性を想定する必要がある。
• 構造骨組に大きな塑性歪みエネルギー吸収性能を確保する
対策を講じるとともに,これまでの想定を超える層間変位に
対する内・外装材の脱落防止等を考える必要がある。
建築構造物の耐震性評価の課題
• 塑性履歴性状を終局状態に至るまで適切に評価で
きる解析技術の開発。
• 崩壊に至までの荷重変形関係を定量的に予測する
方法の研究。
• 多数の繰り返し載荷を受ける部材の挙動および崩
壊条件を明らかにするための研究。
• 構造骨組の終局状態を評価するには,P-δ効果の
考慮が不可欠。
• 免震・制震構造におけるダンパー・制震部材のエネ
ルギー吸収による温度上昇等の影響を考慮した適
切なモデル化。
耐震性能向上に向けての方策
耐震・制震・免震補強策が提案されているが、実際の
建物に対する有効性と適用性の検討が必要
• エネルギー吸収能力を増加させるための部材の増
強、ならびに特定層への損傷集中を防ぐように架構
の吸収エネルギーの分散を図る。
• 新たに取付けた制振部材にエネルギーを吸収させ
構造体の累積損傷を低減させる制振構造は、極め
て有効な方法。
• 地震による建物への入力エネルギーのすべてを免
震層に吸収させる免震構造が有効。免震層の位置
は最下層のみならず上層部(中間層)に設けること
も可能。
避難計画の課題
現状では、超高層建物の避難計画には地震時の全館
避難を想定していない。
• 階段による全館避難は困難であり、エレベータ利用
などこれからの技術開発に期待するところが大きい。
• 在館者に対する情報の逐次提供が重要であり、避
難経路の容量不足に対する二次被害を防ぐととも
に高層階におけるゆれからの不安を取り除くなどの
ソフト的防災対策を考える必要がある。
エレベータの課題
現状では、超高層建物のエレベータは、地震時
には使用しない。
• 地震時のエレベータ内への人の閉じ込め、地
震後の利用再開の難しさ、耐震性を向上させ
た大地震後にも利用可能なエレベータがない
こと、既存エレベータの耐震改修の未実施な
どの問題点が挙げられる。
• 災害時に安全に利用できるエレベータ(「スー
パー耐震エレベータ」)の開発を考える。
長周期の長時間のゆれに対する課題
超高層ビルにおける非構造部材・設備の耐震補強方
策の検討が必要
• 非構造部材・設備等のうち、地震時の損傷により人
的被害や大きな機能障害に結びつく可能性のある
部材を対象に、有効な耐震補強方法の検討。
室内家具等の固定対策の検討が必要
• 超高層建物の上層階では、床応答が増幅して家具
の転倒・移動・落下被害が大きくなる傾向が見られ、
人的被害や建物機能障害などにも影響を与える可
能性が高い。
• 長周期の長時間のゆれが人間の心理面に与える
影響の検討が必要。