やる気を引き出す保健指導 ~アプローチの小技~

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Transcript やる気を引き出す保健指導 ~アプローチの小技~

21.5.16

勤労者の生活習慣病予防に向けた 保健指導の検討

独立行政法人 労働者健康福祉機構 大阪労災病院 勤労者予防医療センター 保健師 米山 貴子

保健指導を実施するにあたって

一人ひとりに応じた個別の指導

問診票や聴取した情報も必要であるが、 その指導対象者が置かれているライフ ステージを理解しておくことが基本

ライフステージにおける課題

青年期 両性の友人との交流と新しい成熟した人間関係を持つ対人関係スキルの習得 男性・女性としての社会的役割の達成 自分の身体的変化を受け入れ、身体を適切に有効に使うこと 両親や他の大人からの情緒的独立の達成 経済的独立の目安を立てる 職業選択とそれへの準備 結婚と家庭生活への準備 市民として必要な知的技能と概念の発達 社会人としての自覚と責任、それに基づいた適切な行動 行動を導く価値観や倫理体系の形成 壮年期 配偶者の選択 配偶者との生活の学習 第一子を家庭に加えること 育児の遂行 家庭の心理的・経済的・社会的な管理 職業に就くこと 市民的責任を負うこと 適した社会集団の選択 老年期 肉体的な力、健康の衰退への適応 引退と収入の減少への適応 同年代の人と明るい親密な関係を結ぶ 社会的・市民的義務の引き受け 肉体的に満足な生活を送る為の準備 死の到来への準備と受容 中年期 市民的・社会的責任の達成 経済力の確保と維持 十代の子どもの精神的な成長の援助 余暇を充実させること 配偶者と人間として信頼関係で結びつくこと 中年の生理的変化の受け入れと対応 年老いた両親の世話と適応 < ハヴィガーストの発達課題( 1953 )より >

年齢別の死因順位

年齢 順位 1位 2位 3位 4位 5位 30 ~ 39 歳 自殺 40 ~ 49 歳 悪性新生物 悪性新生物 不慮の事故 心疾患 自殺 心疾患 肝疾患 脳血管疾患 肝疾患 50 ~ 59 歳 悪性新生物 60 ~ 69 歳 悪性新生物 心疾患 心疾患 脳血管疾患 脳血管疾患 自殺 自殺 肝疾患 肺炎 平成 18 年 厚生労働省 人口動態調査

性・年齢階級別、高血圧既往者

40 35 30 25 % 20 15 10 5 0 男 女 30-39歳 40-49歳 年齢 50-59歳 60-69歳 厚生労働省「第 5 次 循環器疾患基礎調査」( H12 )

40 35 30 25 % 20 15 10 5 0 性・年齢階級別、高脂血症(脂質代謝異常)既往者 男 女 30-39歳 40-49歳 50-59歳 60-69歳 年齢 厚生労働省「第 5 次 循環器疾患基礎調査」( H12 )

年齢階級別:糖尿病の有病率 厚生労働省「国民健康・栄養調査」( H19 )

年齢階級別:メタボリックシンドローム該当者 平成 19 年 厚生労働省 国民健康・栄養調査

事例1:30代男性A氏の場合

身長 体重 BMI 腹囲 赤血球 血色素 中性脂肪 HDL-cho LDL-cho GOT GPT γ-GTP 空腹時血糖 HbA1c 家族歴 H20 170 79.0

27.3

89.0

598 万 16.8

H19 170 77.5

26.8

87.0

580 万 16.3

294 32 195 61 150 33 110 55 150 45 100 47 67 122 60 100 59 99 127 98 95 6.7

6.4

祖父:脳卒中 6.2

父:糖尿病 H18 170 76.0

26.3

85.5

565 万 16.1

< 保健指導対象者 > A氏 男性 妻と子ども (6 歳・ 3 歳 ) の4人暮らし 地方公務員:事務職 20 歳の体重 :65kg ・ H20 に係長になり、中間管理職 として忙しい日々を送る ・夫婦共働きで、育児や家事を 分担する毎日 ・面談には、上司に行けと言われ、 しぶしぶ来た

事例1:A氏の業務内容

・係長 部下3名 ・最近、全国的な目玉のイベントの主担当になった。 ・イベント開催期間までタイムリミットがあるため、毎晩 遅くまで残業している。帰宅が22時を過ぎることもある。 ・係長という立場のため、予算経理や住民の問い合わせ 対応などもこなす日々。 ・基本は座り仕事。たまにイベント会場に車で赴く程度。 ・イベントの開催まで、時期を問わず多忙。

事例1:

A

氏の通勤経路

●電車の場合 自宅 → 最寄り駅 → 大和八木駅 → 大和西大寺 → 近鉄奈良駅 → 職場(所要時間約1時間10分) ●車の場合 自宅 → 職場近辺の駐車場(約40分)

事例1:A氏の生活

< 食事 > 1日3食 夕飯は 21 時を過ぎることが多い。 毎晩ビールを2缶程度飲む。 昼食から夕食までかなりの時間があり、空腹を紛らわ す ため、 18 時ごろおやつを食べる(チョコレートが好き) < 運動 > 10代の頃より運動習慣がなく、今は車が足代わり状態 < 休養 > 忙しいときは睡眠時間が5時間切ることもある。 < 喫煙 > なし < ストレス > 昇進後大きくなったとの自覚あり。

事例1:面談

保健師:健診結果をみて、どう感じましたか? A氏 :また太ったなぁと・・・。痩せようかなと思いつつ、 時間がなくて。自由な時間がないものですから。 今は 自分の体に気をつけている暇がない のです。 保健師:自由な時間がないのですか? A氏 :仕事は繁忙期で、土日出勤も多いです。妻にも 働いてもらっているので、子どもの世話も大変で・・・。 運動するなんて無理だから、とりあえず、血糖値が 下がるお茶を飲んでいます。これで 様子を見ようと 思います。

健康行動に対する5つのステージ

• • • • •

無関心期(前熟考期) 関心期(塾考期) 準備期 実行期(行動期) 維持期

事例1:面談(続き)

保健師:大変な毎日をお過ごしなのですね。それだけお忙し いとお体が心配ですね。血糖値を下げるお茶とは? A氏 :テレビで宣伝しているお茶です。 保健師:そうですか。コストはどうですか?効果は? A氏 :一本が高いんですよね。あまりおいしくないし。 効果はよく分かりませんね。 保健師:そうですか。続きそうですか? A氏 :うーん・・・。毎日買うのはちょっと・・・。

A

氏は関心期の入り口に!

保健師の、 「続きそうですか」「コストはどのくらいですか」の 質問に対し、 「はっきりした効果はあまり・・・」 「結構高いんです」 などの言葉が聞かれる 自身の健康法に疑問を感じている、 感じはじめている

事例1:関心期へ移行した後

自身の健康法に疑問が生まれると、本来提案 したかった話に対し、自然と関心が湧く。 → 自覚症状がないまま、身体の中では何が起 こっているのか、何が気がかりなのか伝える。 あとは、本人が行動変容するための障害となる 『抵抗要因』を解消していく

事例1:A氏の抵抗要因

こちらが面談中に把握したA氏の抵抗要因を 直接聞いてみる ① お忙しくて、 ② 仕事や家事育児にお疲れで、 ③ 時間がないことが気になっておられるの ですね。

事例1:抵抗要因を取り除く

では、 ① 忙しくても、 ② 疲れも取ってくれるような、 ③ 時間をとらない方法ならいかがでしょうか? 「そういう方法があるなら・・・」との答えが あれば、後は目標設定! それでも拒否されるなら、他にも抵抗要因が あるかもしれない。

指導する側は焦らないように

☆関心期への入り口が見えても焦らない! 「生活習慣を見直さなければいけません」 「食べる量を減らしてください」 「運動する必要があります」 と押し付けてしまうと、また最初に戻ります・・・ 「何とかしないといけないとは思うけど・・・」 と。

事例1:目標設定①

目標は、 ① 「努力は必要だが、頑張れば達成できる」 程度 → 『自己効力感』が一番高まるレベル ②中期目標を設定 → 達成期限が遠い先にある目標では、すぐに始めよ うとする気になれない ③確実な目標を設定 → たくさんの「できそうなこと」から、一番自信のある 目標を設定

事例1:目標設定②

• A氏が問題だと思って いること • 加えて、保健師から本 人に確認したこと ① 遅い時間の夕食 ② 早食い ③ 移動は常に車 ④ イライラすると甘いも のが食べたくなる ⑤ 休肝日無しの晩酌 (ビール) ⑥ ゆっくりと入浴できて いるか ⑦ 睡眠時間が遅いよう に思うがどうか 本人が食事・運動のみに とらわれないように

事例1:目標設定③

< 問題だと思うことを見直すため、本人が出来そうだと思うこと > ①遅い時間の夕食 ②早食い ・ 18 時に食べるチョコを、バナナか おにぎりに変更 ・食事は野菜から食べる ・ゆっくり食べる(噛む回数を増やす) ③イライラすると甘いものを食べる ④移動は常に車 ⑤休肝日無しの晩酌(ビール) ⑥ゆっくりと入浴できていない ⑦睡眠時間が少ない ・階段を使う(エレベーターやエスカ レーターは使わない) ・毎日ストレッチをする ・歯磨きしながらスクワットをする ・週に一度は電車通勤 ・湯船につかる時間を5分増やす ・12時には布団に入る ・毎日体重を測る

事例1:目標設定④

○大目標 ・1年で 3kg 減量する ・ズボンのサイズを小さくしたい ○中目標 ・1ヶ月後体重が増えていないようにする ・半年後 1.5kg

減量できている ○小目標 ・毎日体重を測る ・階段を使う ・野菜から食べる

事例1:目標設定から半年後

身長 体重 BMI 腹囲 赤血球 血色素 中性脂肪 HDL-cho LDL-cho GOT GPT γ-GTP 空腹時血糖 HbA1c 家族歴 H20 ② 170 77.0

26.6

87.0

574 万 16.3

210 39 150 32 195 53 61 61 67 102 122 110 127 6.5

6.7

祖父:脳卒中 H20 170 79.0

27.3

89.0

598 万 16.8

294 H19 170 77.5

26.8

87.0

580 万 16.3

150 33 110 55 60 100 98 6.4

父:糖尿病 45 100 47 59 99 95 6.2

H18 170 76.0

26.3

85.5

565 万 16.1

150 • • • 体重は目標より早い ペースで減っている 全体的な検査数値も 改善の方向へ 目標の再設定も検討 してみる A氏「実際減ってくると 楽しい。これからも 続けたい」

事例1:体重変化の推移

79.5

79.0

78.5

体重 78.0

77.5

77.0

76.5

76.0

面談日 1週目 2週目 4週目 経過週数 8週目 12週目 半年後

事例1:目標の達成度

目標に掲げたこと 中目標 (◎よくできた 達成度 ○まぁできた △難しかった) ◎再度目標設定を(自己効力感を利用) 1ヵ月後の体重増加なし ◎減少 半年後 1.5kg

減量 小目標 ◎ 2kg 減量 ◎中目標同様、再設定を 毎日体重を測る 野菜から食べる 階段を使う ◎測らないと落ちつかないほど習慣化 ○たまに野菜料理がないときがあった ◎職場・自宅・通勤時等、階段を利用

事例1:保健指導のまとめと評価

< 面談前 > ・時間がない、疲労感 ・このまま様子を見たい < アプローチ > ・知識の提供 → 生活を見直す必要性を 自ら気づく ・抵抗要因の解消、軽減 ・身体の中で起こっている ことと疾病リスクについて、 分かっているつもりだが、 抵抗要因により生活習慣の 見直しが考えられない状態 ・とりあえず血糖値の上昇を 緩やかにするお茶を飲む 行動変容 ☆本来なら治療勧奨 ☆もう少しハードルを上げた 目標が好ましいが、自己 効力感を上げるために低め の目標を設定

30代女性の場合

• 近年、夫婦共働きの世帯が増え、勤労女性と 妻、母親役割を担う女性が増加。 • 心身ともにストレスの付加も多種多様なもの になる。 • 乳がん、子宮がんのリスクが急増する。 → 多忙により、婦人科健診を受検しないことも

事例2:40代女性B氏の場合

身長 体重 BMI 腹囲 血圧:収 血圧:拡 赤血球 血色素 中性脂肪 HDL-cho LDL-cho GOT GPT γ-GTP 家族歴 H20 158.0

H19 159.0

67.0

60.0

26.9

91.0

156 100 430 万 12.2

290 27 198 112 60 97 28 58 20 25 78 40 母:心筋梗塞 23.8

86.0

128 72 380 万 9.8

H18 160.0

64.0

154 45 108 32 30 63 25 89.5

138 86 410 万 11.3

< 保健指導対象者 > B氏 女性 独身 一人暮らし 地方公務員:事務職(課長補佐) 20 歳の体重 :53kg ・減量とリバウンドの繰り返し ・昨年、母が心筋梗塞を起こし、 心配 ・「痩せたい」が口癖 ・生理が不順になってきた ・料理は自炊 ・移動はほとんどが車

事例2:B氏の業務内容

・総務担当課長補佐 部下7名(総務・庶務係) ・担当係の業務は、予算と、住所変更や旅費の申請処理 が多い。 ・女性管理職という事で、セクハラ相談の窓口となって いるため、あまり席を外せない。 ・繁忙期は予算の時期。その時期は22時頃帰宅する。 ・座り仕事でほとんど動かない。職場は5階でエレベー ターを使用している。 ・出張はほとんどない。

事例2:

B

氏の通勤経路

●電車の場合 自宅 → 最寄り駅 → 近鉄奈良駅 → 職場 (所要時間:約30分) ●車の場合 自宅 → 職場近辺の駐車場 (所要時間:約20分)

事例2:B氏の生活

< 食事 > 1日3食を自炊、間食は洋菓子をほぼ毎日摂取 ダイエットは主に食事量を減らして実践していた。 < 運動 > 運動は苦手。運動による減量はしたことがない。 < 休養 > 睡眠は5時間程度で、休日はほとんど家で過ごす。 < 喫煙 > なし < ストレス > 肩こりや頭痛、胃痛はしばしばある。

事例2:面談

保健師:健診結果をみて、どう感じましたか? B氏 :絶対太っていると思っていたけど、数値を見たらショックで。 せっかく去年痩せたのに、過去最高まで太ってしまいました。 保健師:体重を測定するのは 1 年ぶりですか? B氏 :そうですね。ダイエット中は測っていましたけど、痩せたら 安心してしまって。でもまたダイエットを開始しました。 保健師:そうですか。どのような方法でされているのですか? B氏 :肉と糖分は極力避けています。 野菜中心で、炭水化物もあまり摂らないようにしています。

事例2:B氏のステージ

• • • • •

無関心期(前熟考期) 関心期(塾考期) 準備期 実行期(行動期) 維持期

????

実行期とは 生活習慣病予防のために何かをはじめた イコール 実行期に入った、 ということではない !! 実行期・・・適切な行動を始めるステージ

事例2:面談(続き)

保健師:食事を大幅に減らすと、身体の調子はどうですか? Bさん : 仕方がないけど 、お腹がすいてイライラします。あと、 ボーっとすることもありますね。 保健師:それは困りますね。それだけ辛いダイエットなら、目標体重 を達成した後、イライラを解消したくなりませんか? Bさん :なります。ご褒美とか言って、逆に食べてしまうことが多い です。それがまずいのでしょうね。 保健師:そうですね。今回はそうならない方法を考えてみませんか。 Bさん :食事を 我慢する 以外だと、運動は嫌なので 無理 だと思うの ですが・・・。

事例2:理解してもらうこと

• • 体重の急激な増減は、体にとって大変負担であること → なぜ負担なのか・・・エネルギーのしくみや血管のこと B氏は更年期にさしかかっているため、今後の体調管理は より一層の注意が必要 → ホルモンバランスが変わってくると、どのような変化が 見られる可能性があるか・・・今気をつけること • 体重ばかりにとらわれず、体組成に着目すること • → 減ったのは何か・・・筋肉が落ちていないか 運動=スポーツ、ではない → 日常生活上で出来ることから始めてみる

事例2:本人の気づき

B氏: 「自己流ダイエットでは、脂肪も筋肉も、もしかすると骨の 量も落ちて、次に体重が増えたときは脂肪だけが 増えている可能性があるのですね」 「そうならないようにするにはどうすればいいのでしょう」 新しい生活習慣の見直しの受け入れ態勢

事例2:運動への抵抗感

「運動する時間がない」 「運動は苦手」 「運動は手間」・・・・・・よく対象者から耳にする言葉 運動というと、ジムに通ったりウォーキングをしたり、 プールに通ったり・・・というイメージが強い場合がある → だからといって運動をあきらめるのはもったいない 運動はスポーツだというイメージからまず脱却!

事例2:運動への抵抗感

• 日常生活活動を見直す → 毎日必ずしている動作を一工夫 B氏の場合 ・食材の買出し ・家事 ・通勤 ・趣味(休日の過ごし方) ・・・・などに、アプローチできる部分が ありそう

ヘルス・ビリーフ・モデル

・行動しない ・行動する デメリット メリット デメリット メリット メリット:疾病の予防が出来る等 デメリット:面倒等

事例2:日常生活活動の見直し

保健師側からアイデアを出してみる

→ 運動習慣のない方は、日常生活活動の何を見直 せばよいか分かりづらく感じることも多い → 「例えばこのような工夫をしてされてみるという のはいかがですか」というように、 「~してください」形式にならないよう注意

あくまで提案、あくまで本人決定

事例2:目標設定①

< 目標設定のポイント > ① 体重はゆっくり落とす ② 必要な栄養素はきちんと摂取する ③ 食事に加えて日常生活活動を見直すことで リバウンドしにくい体作りを目指す

事例2:目標設定①

• 本人が問題だと思うこと ① 食事を急に減らすこと ② お菓子が大好き ③ 見た目だけにとらわれ ている ④ 休日に外出しない ⑤ あまり体を動かさない • 保健師より付加え ① 趣味を見つける (ダラダラ間食の予防) ② 入浴方法の提案 (リラックス効果と循環を よくする) ③ 23時(遅くても24時) には就寝できるように

事例2:目標設定②

< 問題だと思うことを見直すため、本人が出来そうだと思うこと > ①食事を急に減らさない ②お菓子が大好き ・夕食を一割カット。朝昼しっかり食べる ・お菓子は 1 日 1 回まで。食べるのは午前 ・ゆっくり食べる(噛む回数を増やす) ③見た目だけにとらわれている ④休日に外出しない ⑤あまり体を動かさない ・犬を飼う(必ず散歩に行く必要がある) ・階段を使う(職場は5階、自宅はマンショ ンの3階。公共施設も階段を利用) ・朝に歩く(15分早く起きる) ・車通勤をやめる(電車では立つ) ・ストレッチをする(入浴後) ・食材の買出しは徒歩か自転車で行く ⑥趣味を見つける ⑦ゆっくりと入浴する ⑧早めに眠る ・汗ばむくらいまで湯船につかる ・23時までに布団に入る

事例2:目標設定③

○大目標 ・1年で 3kg 減量する ・入らなくなったスーツを着られるようになりたい ○中目標 ・1ヶ月後目標を全て言える位、意識して実践する ・半年後 1.5kg

減量できている ○小目標 ・階段を使う(職場と自宅マンション、スーパー等) ・犬を飼って毎朝毎晩散歩に行く ・お菓子は1日1回まで、食べるのは午前中のみ

事例2:目標設定から半年後

身長 体重 BMI 腹囲 血圧:収 血圧:拡 赤血球 血色素 中性脂肪 HDL-cho LDL-cho GOT GPT γ-GTP 家族歴 H20 ② 158.0

H20 158.0

65.0

26.1

67.0

26.9

89.0

142 90 450 万 91.0

156 100 430 万 12.6

197 52 102 27 50 58 65 78 母:心筋梗塞 12.2

290 27 198 28 H19 159.0

60.0

23.8

86.0

128 72 380 万 9.8

112 60 97 20 25 40 H18 160.0

64.0

25 89.5

138 86 410 万 11.3

154 45 108 32 30 63 • • • 体重は目標より早めの ペース 全体的な検査数値も改 善 このままの生活を維持 する B氏「焦らないようにと自 分に言い聞かせてい ます。今度こそリバ ウンドしないよう、慎 重に頑張ります。」

事例1:体重変化の推移

67.5

67.0

66.5

体重 66.0

65.5

65.0

64.5

面談日 1週目 2週目 4週目 経過週数 8週目 12週目 半年後

事例2:目標の達成度

目標に掲げたこと 中目標 (◎よくできた 達成度 ○まぁできた △難しかった) ◎再度目標設定を(自己効力感を利用) 1 ヶ月後も意識して実践 ◎ 1 ヶ月でペースをつかむことが出来た 半年後 1.5kg

減量 ◎ 2kg 減量 小目標 ◎中目標同様、再設定を 階段を使う 犬の散歩を毎朝毎晩 ○ほぼ階段を利用できた ◎楽しく実践できている お菓子は 1 日 1 回午前に ○出されると、食べないわけにいかない

事例2:保健指導のまとめと評価

< 面談前 > ・急激に痩せてはリバウンド の繰り返し ・とにかく食事を減らす ・運動は苦手 < アプローチ → > ・知識の提供 減量方法の誤りに気づく ・運動に対する抵抗要因の 解消、軽減 ・減量目的の明確化が必要 ・今後更年期を過ぎてリスク が高まる疾病予防のため にも、減量=食事を抜くと いう方法から脱却する必要 がある 行動変容 ☆犬を飼ったのが大きいが、 全ての人が飼える訳でなく、 命が関わるものなので強要 しない。 ☆ごほうび癖があるため、 減量後要注意(続フォロー)

事例3:50代男性C氏の場合

身長 体重 BMI 腹囲 血圧:収 血圧:拡 赤血球 血色素 中性脂肪 HDL-cho LDL-cho GOT GPT γ-GTP 家族歴 H20 174 H19 174 H18 174 77.2

25.6

76.0

25.2

74.0

24.5

92.0

150 92 570 万 90.5

134 80 545 万 87.5

128 76 510 万 16.1

376 30 190 69 16.0

202 45 136 65 15.3

154 63 108 62 73 66 54 260 232 190 祖父:胃がん 兄:狭心症 ・ C 氏 男性 子どもは独立し、妻と二人暮 らし(最近孫が誕生) 地方公務員:事務職(課長) 20 歳の体重: 59kg ・若いときは痩せていた ・元高校球児で体力には自信 がある ・高カロリーで濃い味付けが 大好き ・病院が大の苦手

事例3:C氏の業務内容

・課長 部下35名 (実務は部下) ・その地域のブランド肉の周知活動や開発、動物公園の 管理業務を担う ・鳥インフルエンザが国内で確認されると、情報収集や 対応に手が取られる ・繁忙期は議会開会中。待機が夜中まで続くこともある。 ・月に一度程度、防災の当直がある ・座り仕事

事例3:

C

氏の通勤経路

●電車 自宅 → 最寄り駅 → 大和八木駅 → 大和西大寺 → 近鉄奈良駅 → 職場(所要時間:約1時間15分) ●車 自宅 → 職場(所要時間:約40分)

事例3:C氏の生活

< 食事 > 朝なし。昼は外食。週に2回は飲み会がある。塩辛 いもの、こってりしたものが大好きで、食べられなく なるくらいなら、病気になっても仕方がないという。 < 運動 > 運動神経はいいと感じている。体力には自信があ る。体を動かすのは嫌いではない。 < 休養 > 睡眠は7時間程度。 < 喫煙 > あり。 1 日40本 < ストレス > 人並みには感じているが、ストレスのコントロール は出来ていると思う

事例3:面談

保健師:健診結果をみて、どう感じましたか? C氏 :特に何も。いつもと変わらず健康です。 保健師:体重が増え、検査項目も基準値からはずれ、異常を示して いるように思うのですが、いかがでしょうか。 C氏 :自分の体は自分が一番分かっています。元気です。 ご飯も美味しいしよく眠れます。 保健師:お食事も美味しく召し上がり、よく休めておられ、健康と感じ られているのですね。確かに検査の数値が全てではありま せん。ただ、生活習慣病の多くが、ご本人様の気づかぬう ちに変化が起こるのです。この健診結果がそれを示してい るとは考えられないでしょうか。 C氏 :それは多少はあるでしょうけど・・・。でも今は元気なのです。

事例3:知識の提供

• 自覚症状と検査結果の違いについては、 口頭で説明されても想像しづらい 図表やグラフを駆使して、自分の状態をより イメージしやすくする ※ このとき、対象者の健診結果の推移と同じような 経過をたどっているグラフが好ましい

事例3:理解してもらうこと

• 今の生活を続けると、今後考えられる身体の変化 → 血糖値が上がりますよ、動脈硬化が進みますよ、 では不十分 → 生活と身体の変化のつながりをわかりやすく 『なぜそうなるのか』『なぜそうなるといけないのか』を 明確に伝える。

事例3:理解の確認

• 知識の提供をして、本人がどう感じているか 確認する。 • まだ無関心期を脱しない場合、理解が不十分 だったり、抵抗要因が隠れていることが考え られる。

事例3:抵抗要因

嫌なことを言われるのだろうと思いながら 面談に来る人が多い

C氏も、 「きっと痩せろといわれるのだろう。食べる 量も減らせといわれるに決まっている。」 と思われていた。

事例3:抵抗感へのアプローチ

・嫌なことを言われるだろう・・・と感じている ことを逆手に取る 保健師:生活習慣の見直しとなると、かなり努力して 我慢して、というイメージがありませんか? 私は無理のない方法を一緒に考えていけたら と思っているのです。 対象者に「あれ?」と思ってもらえたら◎

事例3:抵抗感へのアプローチ

• 生活習慣を見直す → 生活習慣を変えると考えると抵抗感が増す

あくまで「一工夫する」という考え方

事例3:行動変容を促す

ヘルス・ビリーフ・モデルも使いながら、本人の 「できないかも」「続かないかも」という不安を払拭する デメリット 小さく ↑ メリット ↑ 大きく 「病気を予防すると、病院の受診回数がぜんぜん違いますよ」 「高校時代の部活に比べたら、楽ではないですか?」 「健康長寿で、お孫さんの成人式に一緒にお酒なんていかがで すか?」 「生活習慣の見直しがうまくいかなければ、また違う方法を考え たらいいのですよ」 など・・・

事例3:目標設定①

本人が問題だと思ったこと ① お腹一杯食べる ② 濃い味付けが好き ③ 若い頃と同じくらい食べ ている ④ 喫煙する ⑤ 嫌いではないのに、運 動していない。 でも①~④は変えたくない・・・ 保健師より付加え ⑥ 美味しいものをゆっくり と食べることで、満足感 が得られる ⑦ 味付けはソースから香 辛料へ。使い方も工夫 ⑧ 煙草は節煙より禁煙が 楽 ⑨ 運動はまずこまめに動 くことから

事例3:目標設定②

< 問題だと思うことを見直すため、本人が出来そうだと思うこと > ①おなか一杯食べる ②濃い味付けが好き ③若いときと同じくらい食べる ④喫煙 ⑤運動していない ・奥さんに頼んで、おかずを少なめにする ・食事はよく噛んで、ゆっくり食べるよう心 がける(奥さんが遅いので合わせてみる) ・ソースはかけずにつけるようにする (ゆず胡椒が好きなので、代わりに使うことも 考える) ・禁煙は他の目標を実践してから考える ・週末は孫の世話を手伝う ・テレビの CM の間はスクワットをする ・昼休みに散歩をする ・階段を使う(エレベーターやエスカレーター は使わない) ・毎日ストレッチをする ・部下にダイエット宣言をする

事例3:禁煙に向けた支援①

「たばこを吸っていない頃に戻ったら、もう一度 たばこを吸い始めますか」 「お孫さんの前でタバコが吸えますか」 「お孫さんをいつでも抱っこできますか」 「Cさんにとってはただの吸殻でも、お孫さんが 誤飲すれば致死量なのですよ」

事例3:禁煙に向けた支援②

• C氏の禁煙挑戦 C氏「応援は多いほどいい。 一人で禁煙を続ける自信がない」 → 禁煙外来を勧める C氏「病院は苦手だが、禁煙できる確率が高い なら行ってみたい」 → 禁煙挑戦開始!!

事例3:目標設定③

○大目標 ・1年で1 kg 減量する ・卒煙 ○中目標 ・禁煙外来の決められたスケジュールを守って きちんと受診する ・半年後、禁煙続行し、できるだけ太らない ○小目標 ・週末は孫の世話を手伝う(外に遊びに出る) ・おかずを少なめにするよう奥さんに頼む

事例1:体重変化の推移

78.5

78.0

77.5

体重 77.0

76.5

76.0

75.5

面談日 1週目 2週目 4週目 経過週数 8週目 12週目 半年後

身長 体重 BMI 腹囲 血圧:収 血圧:拡 赤血球 血色素 中性脂肪 HDL-cho LDL-cho GOT GPT γ-GTP 家族歴

事例3:目標設定から半年後

H20 ② 174 77.5

25.7

92.0

142 H20 174 77.2

25.6

92.0

150 H19 174 76.0

25.2

90.5

134 88 515 万 15.1

196 70 92 570 万 16.1

376 30 80 545 万 16.0

202 45 90 190 58 69 59 73 60 260 祖父:胃がん 136 65 66 232 兄:狭心症 H18 174 74.0

24.5

87.5

128 76 510 万 15.3

154 63 108 62 54 190 • • 体重は微増したが、禁 煙挑戦中なので、コント ロールはまずまずかと 思われる。 禁煙の効果もあってか、 検査結果はゆるやかに 基準値あたりまで低下 している。 C氏「身体の軽さを実感し ている。皆にも迷ってい るならやってみるといい と言いたい。」

事例3:目標の達成度

目標に掲げたこと (◎よくできた 達成度 ○まぁできた △難しかった) 中目標 ◎再度目標設定を(自己効力感を利用) 禁煙外来をスケジュール どおりに受診 ◎決められた期日にきちんと受診した 半年後も禁煙続行 ◎禁煙続行中 小目標 孫の世話を手伝う ◎目標の再設定及び継続 ○孫を抱っこして散歩するのが楽しみ おかずを少なめにする ◎おかわりしたいとも思わない 昼休みに散歩 ( 追加 ) ○晴れの日は必ず15分

事例3:保健指導のまとめと評価

< 面談前 > ・明らかな自覚症状がなく、 元気だと一点張り ・元々体育会系で体力には 自信がある ・健診結果と自分の体の中で 起こっていることが繋がって いない ・健診結果は自分の身体の 変化だと気づく必要性がある ・自ら行動変容を決定できる 支援が必要 < アプローチ → > ・知識の提供 自分自身の問題だという 認識を持つ ・抵抗要因の軽減 行動変容 ☆学生時代運動経験がある ため、今後は活動強度を 強めに目標設定をする ☆禁煙続行のための支援は 今後も必要

メンタルヘルス不調の事例

• • 生活習慣改善の必要性はある メンタルヘルスの不調も気にかかる メンタルヘルス不調者を、この面談で把握でき、 関わることができてよかったという認識を持つ → 生活習慣を是正することで、メンタルヘルス アップにつながることも多くある

メンタルヘルス不調の事例

• • • • • 生活習慣とくにタイムスケジュールが崩れていないか 睡眠時間の確保 運動(反復運動やストレッチ) 入浴 冷えの解消 ☆不安を与えるような説明方法は避ける ☆早急に専門科に受診する必要や、悪化する恐れが ある事例については、そちらを優先 ☆主治医から特別な指導を受けていたり、内服している 場合は、主治医に要相談(薬の影響で体重増加して いることも)

過重労働者の面接①

・ D 氏 35歳 男性 ・公立病院の医事課に平成 18 年4月から勤務 ・平成 19 年に救急搬送の受け入れに対する制度の 見直しが図られ、その平成 20 年から、組織編制委員を 務める。 ・緊急性を求められる職務にて、ほとんど家に帰らず、 職場で寝泊りする生活が続く( 100h/ 月を越える) → 平成 20 年度の健診で高血圧( 150/100 )を指摘される ※ 平成 18 年度: 120/74 平成 19 年度: 118/68 その他項目異常値なし

過重労働者の面接②

• 産業医よる面接の実施 本人:疲労感・倦怠感が強い。 常に焦燥感があり、イライラしている。 いっそ倒れたほうがいいのではとも思う。 ○心身ともに疲弊しており、本人には十分な休息と 受診の必要性を伝える。 ○所属には、業務分担の再検討と本人の休暇取得の 勧奨をしてもらうよう指導。

過重労働者の面接③

• 1ヶ月後 面談後3日の休暇取得と残業軽減により、血圧は安定して きた( 140/88 )。 産業医より:血圧が安定したからといって再度無理をしない こと。健康な体あっての仕事だと認識するように。 本人:限界間近で休む必要性に気づけた。 自分では休むどころではないと思っているので、周りが 止めてくれることは大切だと感じた。燃え尽き症候群に なることなく今仕事が出来ていてほっとしている。