臨床研究のための情報検索

Download Report

Transcript 臨床研究のための情報検索

DBEJ講習会Part 2
2003 June
実践・EBM PubMed+α
EBM仕様の文献検索
医学情報センター
2003.6.17
Evidence Based Medicineとは、
個々の患者の医療における意思決定に
おいて、現行で最良のエビデンスを良心
的、明白かつ思慮分別をもって利用する
ことである。
(Sackett、1996)
EBM(Evidence Based Medicine)とは、
「診ている患者の臨床上の疑問点に関して、
医師が関連文献等を検索し、それらを批判
的に吟味した上で患者への適用の妥当性
を評価し、さらに患者の価値観や意向を考
慮した上で臨床判断を下し、専門技能を活
用して医療を行うこと」と定義できる実践的
な手法です。
[わかりやすいEBM講座 厚生科学研究所 2000年 より]
Evidence Based Medicine (EBM) +
Nursing(EBN) とは、
・これまでの医療のあり方への批判としては
じまった。
・機械論、経験論に基づく医療にかわり、研
究を科学的に評価し、適用しようとする。
・偶然や偏りを制御する臨床疫学の上にたっ
た実践。
・科学的な評価には、良質な情報の検索と吟
味が必要。
文献=医療情報=エビデンスが根拠にあたる。これを上手
に活用するためには、3つの情報運用能力が必要。
①情報を広く求める能力(情報・文献検索能力)
②情報の信頼性を見極める能力(情報吟味能力)
③情報の現場での適用性や価値判断を行う能力(情報の
適用能力・情報に基づいた判断能力)
情報(Evidence)の3つのプロセス
つくる 生産
つたえる 流通
つかう 消費
実践にあたっての5つのステップ
EBMの実践手順、5つのステップ
①目の前の患者に関して臨床上の疑問点を抽出する。
⇒ 疑問の定式化
②疑問点に関する文献を検索する。 ⇒ 情報収集
③得られた文献の妥当性を自分自身で評価する。
⇒ 情報の批判的吟味
④文献の結果を目の前の患者に適用する。
⑤自らの医療を評価する。
[わかりやすいEBM講座 厚生科学研究所 2000年 より引用]
Step 1
臨床上の疑問点を抽出する。疑問の定式化
Patient: どういう患者に、
Intervention (Exposure): 介入をした場合、
Comparison: 介入をしなかった(あるい
は別の介入をした)場合に比べ、
Outcome: 結果はどう異なるか.
Step 2
文献を検索する。(情報収集)
一次資料 PubMed
医学中央雑誌
二次資料
など
Cochrane Library
ACP Journal Club
Clinical Evidence など
教科書
UpToDate
Step 3
文献の妥当性を自分自身で評価する。
(情報の批判的吟味)
Structured Abstract 構造化抄録
Systematic Review
Publication Type 研究デザイン
研究デザイン
Case report 症例報告
弱い
Case series 症例集積
Case control study 症例対照研究
Cohort study コホート研究
evidence
Controlled clinical trial 比較臨床試験
Randomized Controlled Trial ランダム化比較試験
Double blind-RCT 二重盲検・・・
Meta-Analysis = Systematic Review
強い
EBM情報源
PubMed
When less is more: a practical approach to searching for evidence-based answers.
Grandage KK、 Slawson DC、 et al. J Med Libr Assoc. 2002 July; 90 (3): 298-304.
EBM情報源でのPubMedの位置
Step 2 二次情報源の次の選択肢
1.二次情報源のタイムラグを埋める
最新情報を収集する。
2.二次情報源で取り上げられていない
一次情報(原著論文)を収集する。
3.二次情報源が利用できないときの
次善策として活用する。
PubMedの特徴






1966年以降、世界70ヶ国、4000誌以上の文献
主要誌からは発行とほぼ同時期に収録
構造化抄録(Structured Abstract)が増えている
電子ジャーナルへのリンク
ACP Journal Clubのコメント
Cochrane Library (Cochrane Database of
Systematic Reviews)の収録
EBM仕様のフィルターを使ったPubMed検索
Publication Type(PT)
Clinical Queries
研究デザインをフィルターとして検索結果を
導く
・治療 診断 病因 予後
・感度sensitivity と 特異度specificity
Step1からStep2の間の作業
検索方針の決定




Step1で定式化しただけでは検索できない。
定式化した疑問からキーワードを選択し、優先
順位を決定しておく。
選択した情報源に合わせて、キーワードの優
先順位や関係を反映した検索式を作成する。
これらはOutcomeや情報源によって様々。
サンプルケース
閉経後、更年期障害に悩む55歳の女性に対し、ホルモン
補充療法を行おうと考えている。しかし、この治療法は心
(冠動脈)疾患を予防するといわれたり、予防するどころか
疾患になる確率が増えるといわれたりする。本当はどちら
だろうか。
定式化
Patient - 閉経後(更年期障害)の55歳の女性
Intervention(Exposure) - ホルモン補充療法を行うと
Comparison - ホルモン補充療法を行わない場合と比べ
Outcome - 心疾患(冠動脈疾患)になる確率は増えるか
サンプルケースの検索1
1 Hormone Replacement Therapy
2 Cardiovascular Diseases あるいは Coronary
Diseases
3 Menopause あるいは Postmenopause
4 1 and 2 (and 3)
多かったら
5 Limits機能 ⇒ 年齢や性で限定する
6 〃
Publication Typeで限定する
例えば Randomized Controlled Trial
Meta-Analysis
実際に検索してみましょう!
Limits限定機能
Publication type
とMeSH
選んだ文献に対して
ACP Journal Clubなど
にコメントがある。
サンプルケースの検索2
PubMed
Clinical Queriesの利用
Clinical Queries using Research Methodology
Filters
Category: therapy diagnosis etiology prognosis
Emphasis: sensitivity specificity
Systematic Reviews
試します!
Filterをみる
どちらかをチェック
文献検索の方針1







結果の絞り込み
1.キーワードを追加
2.年齢・性別で限定
3.検索年代で限定
4.データの種類で限定
5.使用言語で限定
6.その他 (フィールド、重み付け)
文献検索の方針2






検索範囲の拡大
1.キーワードの変更
(組み合わせ方の変更)
2.検索年代の拡大
3.データベースの変更
4.その他(参考文献、関連文献)
The Cochrane Library( コ ク ラ ン ラ イ ブ ラ リ ー )
http://www.cochranelibrary.com/
Systematic ReviewのデータベースThe Cochrane Database of
Systematic Reviews(CDSR) や ラ ン ダ ム 化 比 較 試 験 な ど の
データベースThe Cochrane Central Register of Controlled
Trials(CENTRAL)が含まれ、みずからが設定した疑問点に関
するエビデンスの有無を手早く知ることができるEBMの代表的
なデータベース。CD-ROMまたはインターネットを通じて発行さ
れ、年4回更新される。 医学情報センターではインターネット
版を契約している。詳しくは下記サイトを参照。
JANCOC
( JApanese
Collaboration)
informal
Network
http://cochrane.umin.ac.jp/
for
the
COchrane
Clinical Evidence(クリニカル・エビデンス)
http://www.clinicalevidence.org/
BMJ Publishing Group(英国医師会出版部門)発行。
1999年6月以来、エビデンスに基づいた医療の実践を
支援するツールとして世界中で使用されている。臨床
の現場から出てきた各科にわたる診療上の疑問、そ
の治療的介入や予防的介入にどのような効果がある
のかについて、臨床と疫学の専門家がチームを組ん
で情報収集と批判的吟味を行い、現在知り得る最良
のエビデンスを、その強さや不確実さの程度も含めて
記載している。適切なエビデンスが見つからない場合
や、進行中の研究プロジェクトがある場合にはその旨
記載されている。発刊以来何度も改訂され、新し疾患
や問題についての疑問とエビデンスを加えるという作
業が続けられている。インターネット版とプリント版が
ある。日本語版(日経BP社)も出版されている。
ACP Journal Club
http://www.acpjc.org/?in
Annals of Internal Medicineの補遺として1991年にAmerican
College of Physicianから発刊。1995年からは隔月の独立し
た雑誌となった。一般内科医を対象として必要度が高い原
著論文を多くの医学雑誌から定期的に拾い出し、内容を編
集者が吟味した質の高いレビュージャーナルである。100
誌以上の医学雑誌に掲載された原著論文のなかから一定
の基準を満たした論文を編集者が選択し、なかでも一般内
科の臨床に幅広く適応されると判断された約25タイトルを
structured abstractsの形で要約しcommentaryがつけられ
て掲載される。 2000年からは、内科領域に加えて家庭医学、
産婦人科、小児科、精神科、外科などの領域もカバーされ
ている。 臨床上重要な情報を比較的高い確率でとらえてお
り、内容も編集者が妥当と認めたものである。 プリント版と
インターネット版がある。
Evidence-Based Medicine
http://ebm.bmjjournals.com/
ACP Journal Clubのコンセプトを継承し、ACPとBMJ
Publishing Groupとの合併事業で1995年11月から出版
されている。 内科領域に加えて外科、精神科、産婦人科、
小児科領域の雑誌からあらかじめ決められた基準を満た
した論文を掲載する。一般内科医よりさらに幅広い領域
を受け持つ家庭医などを読者に想定。内科領域は同時
期刊行のACP Journal Clubと共通内容で約半分を占め、
残りの半分がほかの領域の論文となる。 プリント版とイ
ンターネット版がある。
BMJ Publishing Groupにはほかに以下のEvidence Based
Journalsがある。
Evidence Based Mental Health
Evidence Based Nursing
http://www.bmjpg.com/template.cfm?name=bmjprod_ebp
UpToDate EBM仕様の電子版教科書
内科系19領域について、各領域のエキスパートが診療・治療・予
防に関して平易な文章で書き下ろした指針を収録。
収録領域
・Adult Primary Care ・Allergy and Immunology ・Cardiology ・Critical Care
・Drug Information ・Endocrinology ・Family Practice ・Gastroenterology
・Gynecology ・Hematology ・Hepatology ・Infectious Diseases
・Nephrology ・Neurology ・Obstetrics ・Oncology ・Pediatrics
・Pulmonology ・Rheumatology ・Women's Health
収録数:5000 トピック(2002/12/20現在)
更新頻度:年3回: 2月・6月・10月(毎回全体の約30%が内容改訂)
利用形態:CD-ROM、オンライン
製品案内はhttp://www.usaco.co.jp/products/uptodate/index.html
EBMの現状・EBMへの批判
一部の者が直輸入しているにすぎない。
知識のレベルにとどまっている。
指導者不足。
とっつきにくく、わかりにくい。
支援システムが確立していない。
大規模臨床試験の結果を個々の患者に適用できるか。
日本の医療風土になじまない。
RCTの困難
外国との医療環境の違い
日本語のエビデンスの不足ー英語が障壁。
これらにどうこたえるか
⇔
医療現場での普及