Transcript 修論発表2
数値シミュレーションを用いた
魚群のダイナミクス
京都大学大学院 人間・環境学研究科
相関環境学専攻 阪上研究室M2
金山 太知
1
もくじ
・研究の動機
・魚と群れの性質
・魚のモデル
・シミュレーション結果
・魚群の回転曲線
・まとめ
2
研究の動機
生物の群れに物理学はどこまで迫れるか
群れの形状や行動をどこまで予測できるか
魚群には様々なサイズや状態が存在する
魚を運動方程式により記述し、群れの振る舞いを再現できるか
3
Swimming speed(BL/sec)
魚と群れの性質(魚の速度)
魚の遊泳速度
burst
(BL = body length )
normal speed
定常遊泳速度: 1~2 BL/sec
捕食者等の
外部刺激に対して加速
最高速度(burst): 10 BL/sec
Time to fatigue(min)
T. Y. Wu. Introduction to the scaling of aquatic animal locomotion. In J. T.
Pedley, editor, Scale Effects in Animal Locomotion, pp. 203-232. Academic Press,
4
1977.
数秒~数十秒持続可能
魚のモデル(Boid model)
魚 : self propelled particle(spp)
3つのルー
ル
1. 衝突回避
( 反発領域𝑅𝑟 )
2. 整列
3. 吸引作用
( 整列領域𝑅𝑜 )
( 吸引領域𝑅𝑎 )
1.衝突回避のため
逆方向に逃げる
Reynolds (1987)
𝑅𝑜
𝑅𝑟
𝑅𝑎
2.整列領域内にいる個体の 3.吸引領域内にいる
平均速度に合わせる
個体の重心に向かう
5
魚のモデル(Boid modelの結果)
𝑝𝑔𝑟𝑜𝑢𝑝 : 重心の速さ
(A)swarm
(B)torus
(C)dynamic
parallel
(D)highly
parallel
IAIN D. Couzin. (2002) Collective Memory and Spatial
Sorting in Animal Groups. J. theor. Biol. 218, 1-11.
6
𝑚𝑔𝑟𝑜𝑢𝑝 :全角運動量
の大きさ
Boid modelから分かった
torusやswarm等の魚群の状態を再現できる
torusは整列領域は小さく、吸引領域が
大きい時に現れやすい
魚のモデル(運動方程式)
𝑑𝒗
𝑚
=𝑭
𝑑𝑡
Newtonの運動方程式
粒子に力が働くと加速度が生じ、運動が変化する
𝜑0
𝑭 = 𝑭𝑠𝑝𝑝 + 𝑭𝑎𝑡𝑡𝑟𝑎𝑐𝑡 + 𝑭𝑟𝑒𝑝𝑢𝑙𝑠𝑖𝑣𝑒 + 𝑭𝑜𝑟𝑖𝑒𝑛𝑡𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛 + 𝜼
𝑭𝑠𝑝𝑝 = 𝑘 𝒗 − 𝑘 𝛽 𝒗2 𝒗
[推進力と水の抵抗]
[吸引力]
[反発力]
[整列力]
𝑭𝑎𝑡𝑡𝑟𝑎𝑐𝑡
1
=
𝑁𝑖,𝑎
𝑭𝑟𝑒𝑝𝑢𝑙𝑠𝑖𝑣𝑒
−1
𝑗∈𝑆𝑖,𝑎
1
=
𝑁𝑖,𝑏
𝒙𝑗 − 𝒙𝑖
c1
𝑟𝑖𝑗 𝑐2
𝑗∈𝑆𝑖,𝑟
𝒙𝑗 − 𝒙𝑖
−c3
𝑟𝑖𝑗 𝑐4
𝑭𝑜𝑟𝑖𝑒𝑛𝑡𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛 = 𝐽(< 𝒗 >𝑖 − 𝒗𝑖 )
7
𝛽
1
𝛽
𝑣
[ノイズ]
Gaussian white noise
< 𝜼𝒊 𝑡 >= 0
< 𝜼𝒊 𝑡 ∙ 𝜼𝒋 𝑻 𝑡 ′ >= λ𝛿𝑖𝑗 𝛿 𝑡 − 𝑡 ′ 𝑰
魚のモデル(運動方程式)
・運動方程式のモデルは速度一定ではない
体長(BL)、時間(t)が定義出来ていない。
35
14
30
12
カウント数
カウント数
最近接分布
25
20
15
10
8
6
10
4
5
2
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
最近接分布実験結果
(BL)
Torus状態で一周するのにかかる時間
0
0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
最近接分布実験結果
0.30
[最近接分布のピーク]
実験結果:0.28BL
シミュレーション:
0.065
[一周にかかる時間]
実験結果:~50sec
シミュレーション:
~15
8
魚のモデル(解析方法)
1. 数値シミュレーション
確率微分方程式を数値的に解く
t=t0における位置と速度の情報
t=t0+Δtにおける位置と速度
[Euler-Maruyama法]
Wiener Process
𝒙 t + ∆𝑡 = 𝒙 t + 𝒗 t ∆𝑡
𝒗 t + ∆𝑡 = 𝒗 t + 𝑭 t ∆𝑡 + 𝜆 𝑾(t + ∆𝑡, 𝑡)
平均0、分散Δtの
正規乱数
2. Kramers方程式
確率微分方程式を一粒子分布関数で記述
𝑑
𝜕
𝜕
1 𝜕2
1 2
𝜀
=
𝜆
𝑓 𝒙, 𝒗, 𝑡 = − 𝒗𝑓 −
𝑭 𝒙, 𝒗, 𝑡 𝑓 +
𝜀𝑓
2
2
𝑑𝑡
𝜕𝒙
𝜕𝒗
2 𝜕𝒗
9
シミュレーション結果(torusの時間
発展)
1
𝑁
𝑖=1
𝒓𝑖 × 𝒗𝑖
𝒓𝑖 𝒗𝑖
v
r
mag
重心の速さ
torusの指標 mag =
𝑁
time
time
10
シミュレーション結果(magの時間発
展)
Ro=0.6(2.5BL)
Ra=4(17BL)
Ro=0.4(1.7BL)
パラメー
タ
・N=1000
・k=0.5
・𝑐1=1
・β=1
(𝑘 𝒗 − 𝑘 𝛽 𝒗2 𝒗)
Boidでtorusが出来る条件
・𝑐2=1.2 c1 (𝒙𝑗 − 𝒙𝑖 )/𝑟𝑖𝑗 𝑐2
−c3 (𝒙𝑗 − 𝒙𝑖 )/𝑟𝑖𝑗 𝑐4
・𝑐3=0.2 Ro~4BL
・𝑐4=4
Ra=5(21BL)
・𝐽=1
Ra~18BL
𝐽(< 𝒗 >𝑖 − 𝒗𝑖 )
・𝑅𝑟 = 0.3 ・𝜆 = 0.02
11
Ro=0.8(3.4BL)
魚群の回転曲線
[ 銀河の回転曲線問題 ]
1980年代に明らかになった天文学の問題
理論予測(A)では観測結果(B)を説明できない
ダークマターの存在!?
Galaxy rotation curve
[ 魚群の回転曲線問題 ]
Velocity
??
回転速度は中心からの距離とともに
どのように変化するか?
Boidモデルでは説明できない?
運動方程式によるモデルでは
説明できるのか?
Distance
Fish rotation curve
12
魚群の回転曲線(実験観察結果)
12BL
佐世保の九十九島水族館
「海きらら」
[場所]
[対象] マイワシ約4000匹(2012年3月)
マイワシ約3000匹(2012年9月)
[方法] カメラを底に設置し、
22BL
真下から動画撮影
Velocity BL sec
Velocity BL sec
Velocity BL sec
Velocity BL sec
2.0
2.0
2.0
2.0
1.5
1.5
1.5
1.5
1.0
1.0
1.0
1.0
0.5
0.5
0.5
0.5
0.0
0.0
00
55
2012年9月
2012年3月
1010
15 15
20 20
Distance BLBL
Distance
25 25
3月撮影(102匹)
0.0
0.0
Velocity BL sec
2.0
1.5
1.0
0.5
00
55
1010
15 15
20 20
Distance BL BL
Distance
25 25
9月撮影(90匹)
0.0
0
5
10
15
20
3月撮影+9月撮影
25
Distance BL
13
魚群の回転曲線(シミュレーション結
果)
パラメー
タ
・N=1000
・k=0.5
・β=1
(𝑘 𝒗 − 𝑘 𝛽 𝒗2 𝒗)
・𝑐1=1
・𝑐2=1.2
c1 (𝒙𝑗 − 𝒙𝑖 )/𝑟𝑖𝑗 𝑐2
・𝑐3=0.2
・𝑐4=4
−c3 (𝒙𝑗 − 𝒙𝑖 )/𝑟𝑖𝑗 𝑐4
𝐽(< 𝒗 >𝑖 − 𝒗𝑖 )
・𝐽=1
・𝑅𝑟 = 0.3 ・𝜆 = 0.02
Velocity
Velocity BL sec
1.2
0.8
1.0
0.6
0.8
0.6
0.4
0.4
0.2
0.2
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
Distance
14
5
10
15
Distance BL
魚群の回転曲線
(実験観察結果とシミュレーションの比較)
Velocity BL sec
2.0
1.5
simulation
実験(12年9月)
1.0
実験(12年3月)
0.5
0.0
0
5
10
15
20
25
Distance BL
結果
R<10BLではよく合っている
R>10BLではsimulationの方の
傾きが落ち、上手く合わない。
重心から離れたところでは回
転面に垂直なz方向にも比較的
大きく動いている….
15
まとめ
・Newtonの運動方程式によるモデルでも魚群の様々な状態
(swarm ,torus ,parallel)を再現することが出来た。
・実験観察結果より、魚群の回転速度は
重心からの距離とともに大きくなることが分
かった。
・魚群の回転曲線に関して、シミュレーション結果と実験結果は
重心からの距離Rが大きくないところでは上手くフィットした
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