抗Mia抗体黄疸
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Transcript 抗Mia抗体黄疸
生後早期からの経皮黄疸計管理により発見された
抗Mia抗体による新生児溶血性黄疸の1例
○國方 淳1)、安田 真之2)、中村 信嗣2)、小谷野 耕佑2)
日下 隆2)、岡田 仁1) 、磯部 健一1)、伊藤 進1)
1) 香川大学医学部小児科
2) 香川大学医学部付属病院総合周産期母子医療センター
はじめに
不規則抗体が陽性である母体から出生した児には、出生
直後に溶血性黄疸を発症するリスクがある。
妊娠中に母体の不規則抗体スクリーニングを行うことが
推奨されているが、一般的に行われている不規則抗体ス
クリーニングでは検出できない不規則抗体が多数存在す
る。
これらの不規則抗体は一般には溶血の原因にはなりにく
いとされているが、その早期新生児期での管理には一定
の方針は出されていない。
不規則抗体による溶血性黄疸の
発症メカニズム
(「病気が見える 産科」メディックメディア
より抜粋)
症例
在胎38週3日3148gで出生の男児
妊婦の不規則抗体スクリーニングで母の抗Mia抗体陽性
分娩時・出生直後に異常を認めず、正期産新生児とし
て新生児室で管理していた。黄疸管理は、我々の早発
黄疸検出のためのノモグラムを用い、経過を観察して
いた。早発黄疸管理基準になったため、精査・治療を
行なった。
症例の黄疸管理及び治療経過
生後2時間での血清総ビリルビン値
6.1mg/dl
生後1時間の経皮黄疸計測定値が
1.8mg/dlと管理基準(95%tile)を超える値
入院時血液検査結果
WBC
20820
/μl
総蛋白
5.6
g/dl
血液型
AB(+)
RBC
373
/μl
アルブミン
3.8
g/dl
(母の血液型)
B(+)
Ht
38.1
%
BUN
8.7
mg/dl
PLT
33.2
×104/μ
l
クレアチニン
0.7
mg/dl
尿酸
5.6
mg/dl
直接クームス試験
(+)
総ビリルビン
6.3
mg/dl
間接クームス試験
(+)
直接ビリルビン
0.6
mg/dl
抗A抗体
(-)
間接ビリルビン
5.7
mg/dl
抗B抗体
NT
(+)
血液像
桿状核球
1.0
%
分節核球
31.0
%
好酸球
13.5
%
好塩基球
0.5
%
リンパ球
41.5
%
単球
6.5
%
骨髄球
1.0
%
赤芽球
3.0
%
7.91
%
網状赤血球
血球抗原抗体検査
AST
25
U/L
Mia抗原
ALT
6
U/L
血球より抗Mia抗体を解離
ALP
643
U/L
LDH
422
U/L
γ-GTP
179
U/L
症例の黄疸管理及び治療経過
交換輸血を回避する目的で
γグロブリンを投与
抗Mia抗体を原因とする
黄疸は速やかに改善 溶血性黄疸と診断
光療法を開始
以降は治療を必要とせず経過
抗Mia抗体について
赤血球Mi phenotypeに対応する不規則抗体
Mi phenotypeにはMi I, Mi II, Mi III, Mi IV, Mi VI, Mi Xが含
まれるが、最も頻度が高く重要なのがMi III
Mi IIIの発現頻度はアジア人種で高く、台湾の中国系人種
で7.3%, 香港の中国系人種で6.28%, タイ人で9.7%と報告
されている1)が、白人におけるMi III発現頻度は1%未満
抗Mia抗体の中国人における検出頻度は0.28%1)
抗Mia抗体を原因とする溶血性疾患の報告は非常に少なく、
現在の不規則抗体スクリーニング用赤血球に必須の抗原
とはされていない
1) R.E.Broadberry and M.Lin, The incidence and significance of
anti-”Mi” in Taiwan, TRANSFUSION 1994;34;349-352.
産婦人科診療ガイドライン産科編2011より抜粋
文献(1)大戸 斉:新生児溶血性疾患と母児免疫.輸血学(改訂第
3版), 東京:中外医学社, 2004,512-521 (III)
検査赤血球の抗原プロファイル
結論
抗Mia抗体を原因とする新生児溶血性黄疸の報告例はほと
んどなく、今後も症例を蓄積していく必要がある。
すべての不規則抗体を事前に知ることは難しいため、誘
因のない重度の新生児黄疸の原因として、低頻度抗原に
よる溶血性黄疸も念頭におく必要がある。
事前に予測できない溶血性黄疸が生じた場合でも、我々
の使用している経皮黄疸計を用いたノモグラムにより生
後早期に発見することができ、交換輸血を回避すること
ができる。
早発黄疸の発見には、侵襲のない経皮黄疸計の果たす役
割が重要である。
症例の黄疸管理及び治療経過