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第5回
第5回
株主平等の原則(復習と補足)
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株主平等の原則
I. 意義
1. 基本的な意義
① 株式の内容の平等(現行会社法では廃棄)
② 同じ株式を有する株主の取扱いの平等
2. 「平等」の内容
 基本的には出資額(株式数)に応じた比例的平等
– 1株1議決権(308Ⅰ)
– 配当基準(454Ⅲ)、残余財産分配請求(504Ⅲ)
※株主総会での質問権をどう考えるかには議論あり
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3. 株主平等原則の例外
i. 株式の内容に基づく例外
① 種類株式(108)
② 株式の属人的定め(109Ⅱ)
ii. 株式のコンディションに基づく例外
① 基準日後に取得された株式(124)
② 単元未満株式
iii. その他の例外
① 単独株主権、少数株主権の行使
② 不利益を被る株主が任意に不平等な扱いを承諾した場合
③ 株主共同の利益、企業価値が毀損される場合(後述)
4. 株主平等原則の効果と機能
 効果:株主平等原則に違反する行為は一律無効
 多数決の濫用から少数派を保護
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II. 株主平等原則の適用範囲
i.
分配可能額のない会社が一部株主に財産を贈与するこ
とは株主平等原則違反で無効(最判S45.11.24百(1)-12)
ii. 株主優待制度については見解が分かれるが、現在の多
数説は(少なくとも現在の上場企業が行う程度であれば)
株主平等原則には違反しないと解している
III. 株主平等原則の限界
・・・株主平等原則は常に絶対の原則なのか
1. 差別的行使条件付新株予約権
• 買収防衛策として、新株予約権を株主割当発行(あるい
は株主無償割当)で既存株主に交付するが、買収者につ
いてのみ新株予約権の行使を認めないというもの。結果
的に買収者以外の株主の持株数が増大して買収者の持
株比率低下
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2. 差別的行使条件付新株予約権と株主平等
 新株予約権の行使条件は会社と新株予約権者の債権
的な契約内容に過ぎないので株主平等とは無関係(ス
トック・オプションを想定せよ)だが、株主割当発行や無
償割当による差別的行使条件付新株予約権発行は、
実質的には一部の株主を除外した新株発行と同じ
3. ブルドックソース事件(最決H19.8.7百-99)
i. 事案
敵対的買収の開始後に会社が差別的行使条件付新株予約権を株
主無償割当てで交付し、買収者には予約権行使を認めずに価格補
償を行おうとした事案
ii. 判旨
① 新株予約権が株主無償割当される場合には、その使条件に株
主平等の原則の趣旨は及ぶ
② 株主平等原則は会社の存立を前提とするから、企業価値、株
主共同の利益が毀損される場合には、衡平の理念に反し相当
性を欠くものでなければ、特定の株主に対する不平等な取扱
いが許される
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第5回
株主の権利の行使に関する
利益供与
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会社法120条の意義
I. 立法趣旨
① 総会屋対策(贈収賄罪の空文化)
② 浪費の防止
③ 議決権歪曲の防止(健全性確保)
対象が狭い
対象が広い
・・・当初は①が強調されていたが、現在は②③がメインで、
特に近時は③に焦点があたっている
II. 要件
1. 何人に対しても
・・・供与の相手方(被供与者)は株主に限られないし、総会
屋等の反社会的勢力である必要もない
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2. 株主の権利の行使に関して
i.
通説は会社に主観的な目的があれば足りるとする(客
観的な影響力を要件とする見解もある)
ii. 権利の行使・不行使を含む幅広い態様を含む(モリテッ
クス事件参照)
iii. 株式の譲渡または譲受けに関して利益を供与する(取
得資金の供与や手放したことへの謝礼、取得しないこと
を確約した謝礼)ことも含まれる
※「会社にとって好ましくない株主」の権利行使を回避する目的での
供与が株主の権利に行使に関するものとする判例(最判H18.4.10
百-12)があるが、好ましくないとはいえない株主の権利行使を回
避する目的(=多数派工作目的)での資金提供が本条に該当する
かどうかは見解が分かれる(東京高判H22.3.24)
iv. 株主に対して、無償または著しく低い対価で利益が供
与された場合には、株主の権利の行使に関するものと
推定(120Ⅱ)
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3. 会社または子会社の計算で
i.
取締役等のポケットマネーの供与は本条の対象外
ii. 実務上は利益供与は総務担当部長等が「独断で」行っ
たこととされおり、取締役は当該利益供与は横領行為で
あり会社の計算ではない、と主張することがあるが、そ
のような主張は通らない
4. 財産上の利益の供与
i.
財産の形態は問わない
ii. 対価が均衡していても財産上の利益を供与したことにな
る(例:総会屋の機関誌の購読)
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III. 効果
1. 供与行為自体の効果
供与行為は当然に無効。議決権行使に関して利益供与がな
された場合には、決議方法の法令違反(モリテックス事件)
2. 被供与者の返還義務
i.
行為が無効であることから利益は不当利得だが、不法
原因給付等による返還の困難にそなえ返還義務法定
ii. 返還義務はすべての利益だが、引換えに会社に給付し
たものがあれば会社に返還請求可
3. 取締役等の支払義務
i. 供与した取締役、執行役は無過失責任
ii. その他の取締役、執行役は過失責任
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4. 責任追及等
i.
被供与者、取締役等に対しては株主代表訴訟による責
任追及が可能(役員でない者に対する例外的な訴権)
ii. 取締役等の支払責任は総株主の同意がなければ免除
不可。被供与者の義務の免除については規制なし(ただ
し免除自体が利益供与、あるいは取締役の任務懈怠と
なる可能性大)
iii. 被供与者、取締役等の責任は不真性連帯債務(120Ⅳ
参照)
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「株主の権利の行使に関す」るか否か
立法目的
理由付け
禁止される
供与目的
「好ましく
支配権争い
ない株主」
への適用
総会屋対策
/浪費の防止
立法の経緯
反社会的勢力へ
の資金の供与
客観的
原則なし
支配権維持規制
条文の文言
会社資金での
議決権歪曲
主観的
原則あり
権利行使への
影響(意図)
主観的
客観的
客観的
書誌
事件名
対象行為
判決
供与の態様
理由
最判H18.4.10
蛇の目事件
株式譲渡
○
反社会的勢力
会社から見て好ましくないと判断され
る株主の議決権行使回避目的での
利益供与は120条違反
東京地判H19.12.6
モリテックス事件
議決権行使
勧誘
○
多数派工作
(MBO)
会社提案に賛成する議決権行使の
獲得をも目的とするもので正当な目
的とはいえない
東京高判H22.3.24
グランド東京事件
株式譲渡
(保証)
×
多数派工作
(相続争い)
亡オーナーの相続人は「会社から見
て好ましくない株主」に該当しない
会社の行為と利益供与該当性
行為
120条該当性
備考
隠れた利益配当
原則違法
同時に利益配当規制違反
株主優待
社会通念上許容される範囲であれば適法
(高知地判S62.9.30)
控訴審は主観的意図を強調して消極
株主平等違反のおそれ
従業員持株
会社の意向を議決権行使に反映できないので
福利厚生目的(福井地判S60.3.29)
株主平等原則違反にもならない
第三者割当増資
理論的には本条該当の可能性はあるが、なぜ
か議論されていない
主要目的ルールとの棲み分けの議論
が深化していない
自己株式取得
「会社から見て好ましくない人物からの取得」は
違法(前掲蛇の目事件)
第三者割当増資との整合性を要検討
買収防衛策
ブルドックソース事件の買収者への支払いの適
法性について議論あり
立案担当者・・・「供与」にあたらない
予約権割当自体が違法との見解あり
委任状勧誘工作
勧誘に際して利益を供与することは違法
勧誘のための株主把握等の費用は適法
前掲モリテックス事件の実質はこちら
総会の「おみやげ」
社会通念上相当なら適法
特定の議決権行使を勧誘するなら違法(前掲モ
リテックス事件)
何を以て特定の議決権行使を勧誘下
と言えるかの事実認定が問題
第5回
株式の譲渡(頭出し)
本来の株式は有価証券たる株券に表章されて流通するもの
株式流通の態様
株券不発行
振替なし
採用手続
なし
株券発行
振替制度採用
発起人全員の同意または取 定款規定(会214)
締役会決議(振替128Ⅱ)
※譲渡制限株式は振替不可
譲渡の効力 意思表示の合
発生要件
致(会127)
意思表示の合致+譲受人振 意思表示の合致+株券
替口座簿の記載(振替140)
の交付(会128)
対会社の対 共同申請の名
抗要件
義書換(会
130,133ⅠⅡ)
原則は総株主通知(振替
152)による名義書換。少数
株主権については個別株主
通知(振替154)
譲受人の請求による名
義書換(会130,133ⅠⅡ,
会施規22Ⅱ①)
対第三者対 名義書換(会
抗要件
130Ⅰ)
(振替口座簿の記載)
※振替161Ⅲ
(株券の所持)
※会130Ⅱ
権利者推定 なし
あり(振替143)
あり(会131Ⅰ)
善意取得
あり(振替144)
あり(会131Ⅱ)
なし
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株券不発行(振替不採用)
会社の株式譲渡
会社
名義書換請求
(原則共同申請)
意思表示の合致
譲渡人
株式
譲受人
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株券発行会社の株式譲渡
名義書換請求
(譲受人)
①意思表示の合致
譲渡人
②株券の交付
譲受人
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振替制度採用会社
の株式譲渡
振替機関
総株主通知
名義書換
発行会社
②振替通知
(振替132)
振替口座
③
③
振替口座
買
売
譲渡人
甲証券会社
(口座管理機関)
証券取引所
①取引成立
乙証券会社
(口座管理機関)
譲受人
個別株主通知
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株式振替制度の概要
① 基本的には、銀行の口座振替のイメージ(現金を
直接相手方に渡すのではなくて、銀行口座の残高
の操作で相手方に金銭が渡るという減少の株式
版)
② 譲受人口座の残高の増加が株式譲渡の効力発生
要件(振替140。一般承継等は例外)
※振替の申請は譲渡人側が行う
③ 理論的には超過記載(発行済株式総数を口座の
残高総数が超過する)可能性があるが、その場合
には振替機関等が株式を取得し権利を放棄して
調整(その間は超過分だけ一般株主の権利が縮
減)。
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譲渡以外の移転の効力要件
株式に固有の移転の効力要件の要否
移転の原因
株券の交付
振替口座の記載
①一般承継(相続・合併)
不要
不要と解される
②弁済代位(民500,501)
不要
不要と解される
③詐欺取消
不要
不要と解される
④取得請求権の行使
請求権行使要件(必然的に効力 振替申請が請求権行使要
発生要件)(会166Ⅲ)
件、振替が効力発生要件
(振替156)
⑤全部取得条項付種類株式、
取得条項付株式の取得
効力要件ではないが株券提供と 効力発生要件(振替
対価交付は同時履行(会219Ⅰ 157ⅡⅣ)
③④、Ⅱ)
⑥自己株式の処分
不要(会209、128)
必要?(振替140)
※株券不発行振替不採用会社の場合は、いずれについても株式の移転に特
段の効力要件はない
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