コケを用いた屋上緑化の ヒートアイランド緩和効果に関する屋外実験 ―熱収支と蒸発効率による比較検討― 1083140 上野 卓哉 1083451 吉岡 恒太 研究背景 ヒートアイランド緩和を目的として屋上緑化が実用化 しかし、荷重やメンテナンスなどが問題 施工が容易でメンテナンスフリーなコケ緑化が登場 実際にヒートアイランド緩和効果があるのか? 実測した例はほとんどない コケ緑化のヒートアイランド緩和効果の検証 実験概要 試験区リスト 試験区 植生 土壌厚 芝区 芝 80mm セダム区 キリンソウ、コーラルカーペット、 サカサマンネングサ、ツルマンネ ングサ、メキシコマンネングサ 80mm スナゴケ ― (屋上スラブむき出し) スナゴケ、人工芝 スナゴケ、ミズゴケ 80mm 80mm ― ― ― スナゴケ ― コケ区 土壌区 無処理区 MG区 コケ緑化 BB区 製品 MT区 実験概要 実験場所 小試験体 無灌水区 (500mm×500mm) 東京都江東区 東京都環境科学研究所屋上 気象塔 給水栓 灌水区 測定 芝区 セダム区 コケ区 土壌区 無処理区 (屋上面) 試験区(2000mm×2000mm) MG区 BB区 MT区 コケ緑化製品 クーリングタワー 塔 屋 排気口 コケ緑化製品 ・ほとんど灌水のいらない、ローメンテナンス性 ・土壌を使用しないため、植栽基盤の環境を選ばない ・一定以上成長しないので、手入れが楽である MG区 BB区 MT区 人工芝、スナゴケ ミズゴケ、スナゴケ スナゴケ 測定方法 各試験区を区切り、小試験体を作成 重量変化から蒸発散量を算出 蒸発散量から熱収支・蒸発効率を算出し評価を行う 灌水区と無灌水区を作り、灌水区は指定日の夕方に灌水 蒸発効率β:同じ表面温度の水面からの蒸発量に対する比率 灌水・測定の実施日 測定機器設置状況 気象塔 風車型風向風速計 精密赤外線放射計 小試験体 精密赤外線放射計 温湿度計(縦型強制通風筒) 試験区断面 正味放射計・赤外線熱電対 土壌表面 放射収支計 屋上面 赤外線熱電対 熱電対 熱流板 熱収支の算出式 大気を加熱 基盤に蓄熱 (式1) Rn = H + LE + G 表面が受け取る 放射量 蒸発散で消費 Rn:正味放射量[W/㎡] H:顕熱フラックス[W/㎡] LE:潜熱フラックス[W/㎡] G:伝導熱[W/㎡] L = 2.5 × 10
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コケを用いた屋上緑化の ヒートアイランド緩和効果に関する屋外実験 ―熱収支と蒸発効率による比較検討― 1083140 上野 卓哉 1083451 吉岡 恒太 研究背景 ヒートアイランド緩和を目的として屋上緑化が実用化 しかし、荷重やメンテナンスなどが問題 施工が容易でメンテナンスフリーなコケ緑化が登場 実際にヒートアイランド緩和効果があるのか? 実測した例はほとんどない コケ緑化のヒートアイランド緩和効果の検証 実験概要 試験区リスト 試験区 植生 土壌厚 芝区 芝 80mm セダム区 キリンソウ、コーラルカーペット、 サカサマンネングサ、ツルマンネ ングサ、メキシコマンネングサ 80mm スナゴケ ― (屋上スラブむき出し) スナゴケ、人工芝 スナゴケ、ミズゴケ 80mm 80mm ― ― ― スナゴケ ― コケ区 土壌区 無処理区 MG区 コケ緑化 BB区 製品 MT区 実験概要 実験場所 小試験体 無灌水区 (500mm×500mm) 東京都江東区 東京都環境科学研究所屋上 気象塔 給水栓 灌水区 測定 芝区 セダム区 コケ区 土壌区 無処理区 (屋上面) 試験区(2000mm×2000mm) MG区 BB区 MT区 コケ緑化製品 クーリングタワー 塔 屋 排気口 コケ緑化製品 ・ほとんど灌水のいらない、ローメンテナンス性 ・土壌を使用しないため、植栽基盤の環境を選ばない ・一定以上成長しないので、手入れが楽である MG区 BB区 MT区 人工芝、スナゴケ ミズゴケ、スナゴケ スナゴケ 測定方法 各試験区を区切り、小試験体を作成 重量変化から蒸発散量を算出 蒸発散量から熱収支・蒸発効率を算出し評価を行う 灌水区と無灌水区を作り、灌水区は指定日の夕方に灌水 蒸発効率β:同じ表面温度の水面からの蒸発量に対する比率 灌水・測定の実施日 測定機器設置状況 気象塔 風車型風向風速計 精密赤外線放射計 小試験体 精密赤外線放射計 温湿度計(縦型強制通風筒) 試験区断面 正味放射計・赤外線熱電対 土壌表面 放射収支計 屋上面 赤外線熱電対 熱電対 熱流板 熱収支の算出式 大気を加熱 基盤に蓄熱 (式1) Rn = H + LE + G 表面が受け取る 放射量 蒸発散で消費 Rn:正味放射量[W/㎡] H:顕熱フラックス[W/㎡] LE:潜熱フラックス[W/㎡] G:伝導熱[W/㎡] 6 L = 2.5 × 10 - 2400 ×θ s L:気化の潜熱[J/kg] θs:表面温度[℃] (式2) 芝区 9 10 11 12 13 14 15 16 17 時刻 熱収支による比較(灌水区) 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 -200 9 1011121314151617 時刻 フラックス(W/㎡) 無処理区 9 1011121314151617 時刻 コケ区の潜 熱フラック スが、芝区 に比べて半 分程度 9 1011121314151617 時刻 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 -200 コケ区 フラックス(W/㎡) 芝区 フラックス(W/㎡) 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 -200 フラックス(W/㎡) フラックス(W/㎡) 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 -200 700 600 500 400 300 200 100 0 -100 -200 MG区 正味放射量 顕熱 伝導熱 潜熱 9 1011121314151617 時刻 表面温度と気温の温度差 表面温度と気温の温度差(℃) 55 MG区 50 45 40 無処理区 35 30 25 コケ区 20 コケ区は午前中 無処理区よりも 温度差が大き いが、午後は小 さくなる 15 10 芝区 5 0 9 10 11 12 13 14 15 16 17 MG区は温度差 が大きく、最大 で54℃にもなる 時刻 表面温度差は顕熱フラックス:H に比例する 熱画像による比較 芝区 日付 2011.8.12 11:00 コケ区 午前中なので、コケ区表面 温度が屋上スラブ面よりも 高い MG区は表面温度が屋上 スラブ面より高くなっている! MG区(コケ緑化製品) 蒸発効率の算出式 β= β:蒸発効率 E (式3) k (xs - xa ) E:蒸発速度[kg/㎡・s] xa:外気の絶対湿度[kg/kg’] xs:表面の絶対湿度[kg/kg’] k= α (式4) 0.83 C α:対流熱伝達率[W/㎡・K] α= k:物質伝達率[kg/(㎡・s・(kg/kg’))] C:湿り空気の比熱[J/kg・K] H θs ― θ (式5) a θs:表面温度[℃] θa :外気温度[℃] 蒸発効率による比較(灌水区) 8月12日 灌水区 0.20 芝区 蒸発効率 0.15 0.10 コケ区 0.05 0.00 MG区 -0.05 9 10 11 12 13 14 15 16 17 時刻 芝区は常に0.12前後なのに対し、コケ区は0.03前後と低い MG区は0.00でほぼ蒸発散を行っていない 日平均蒸発効率(灌水区) 日積算日射量 35 コケ区 芝区 0.3 30 MG区 25 20 0.2 15 10 0.1 5 9/15 ◎ 9/14 9/12 ◎ 9/13 8/24 ◎ 8/18 ◎ 8/17 ◎ 8/16 8/15 8/11 8/10 ◎ 8/12 灌水日 ◎ 8/9 0 8/8 0.0 ◎ 日付 芝区は全体を通して安定している コケ区、MG区は夕方灌水を行った翌日は蒸発 効率が高いが、次の日には下がってしまう 日積算日射量 (MJ) 蒸発効率(日平均) 0.4 降雨後の蒸発効率の変化(無灌水区) 多量の降雨 があった 50 20 40 15 30 10 20 5 10 0 0 9/6 9/7 9/8 9/9 25 日付 蒸発効率(日平均) 60 日積算降水量(mm/day) 日積算日射量(MJ) 30 0.7 MG区 0.6 0.5 0.4 コケ区 0.3 0.2 0.1 芝区 0.0 9/7 9/8 降雨直後は、コ ケ区、MG区の蒸 発効率が芝区よ り高い しかし、その翌 日は芝区より低 くなっている 9/9 日付 コケ区、MG区の 水分保持能力は低い 結論 コケ緑化は、芝ほどヒートアイランド緩和の効果はな いが、屋上スラブ面と比較すればある程度の効果は 期待できる 土壌を有しないコケ緑化製品は、屋上スラブ面よりも 表面温度が高くなる場合があり、逆にヒートアイラン ドを助長させてしまう可能性がある 植栽基盤の材料や、施工方法により ヒートアイランド緩和効果は大きく異なる