高齢者の「生きがい」と地域社会 -生活実態と関わって・京都府舞鶴市
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Transcript 高齢者の「生きがい」と地域社会 -生活実態と関わって・京都府舞鶴市
高齢者の「生きがい」と地域社会
-生活実態と関わって・京都府舞鶴市におけるケーススタディから-
山田 一隆 ・ 石見 利勝
立命館大学大学院政策科学研究科
1999年11月13日 社会・経済システム学会第18回大会
本研究の目的
本邦高齢化問題は,大きく分けて2つ.
人口構成上の変化
平均寿命の伸長に伴うライフデザインの再構成
約8割を占めるという「元気なおとしより」を対象に.
平均寿命の伸長に伴う生涯時間の増加を受けて,高齢期を
「人生の主要な段階」の一つと位置づけた上で,
社会的貢献の実態,潜在的ニーズ,参加と満足感の関連を明らかに
すること.
高齢者の「生きがい」創造の地域社会の中での仕組みを構築してい
くこと
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
研究のながれ
高齢者生活実態
調査の実施
国勢調査データに基づく
地域区分
実証データの収集と
分析前処理
地域特性別にみた高齢者像の分析
「社会的貢献」と生活満足の
関連分析
社会的貢献に関する実態,
潜在的ニーズ,参加と満足
感の関連に関する分析
生活の充実感と生活満足の
関連分析
高齢者の「生きがい」創造の
地域社会での仕組みの検討
1999年11月13日
政策射程の再構成の
必要性の検討
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
研究対象地域
京都府舞鶴市
大都市圏から比
較的離れている.
農村部と都心部
の両方を内包して
いる.
人口94,784人,65
歳以上人口17,964
人.
高齢者人口比率
19.0%.
第1図 研究対象地域
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
高齢者生活実態調査
調査の概要
調査項目
舞鶴市に在住する65歳以上
の男女のうち,層化二段階
(年齢*性別)無作為抽出に
よって選ばれた510名.
アンケート調査票を郵送配
布,郵送回収.
回収数332,回収率65.1%.
調査に当たっては,舞鶴市
役所の協力を得ている.
1999年11月13日
回答者の基本属性
経済的条件
生活の時間と空間
健康状態
生活への意欲
仕事と家庭・余暇との両立
地域社会との関わり
生活の充実
生活の見通しと幸せ感
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
地域区分
第2図 舞鶴市 の小地区 別従業者割 合
1 00 %
8 0%
6 0%
4 0%
2 0%
0%
3 5%
2 5%
1 5%
5%
1 東大浦
2 西大浦
3 朝来
4 志楽
5 倉梯
6 与保呂
7 祖母谷
8 新舞鶴
9 余部上
1 0 余部 下
1 1 旧舞 鶴
1 2 余内
1 3 四所
1 4 高野
1 5 中筋
1 6 池内
1 7 岡田 上
1 8 岡田 中
1 9 岡田 下
2 0 八雲
2 1 神崎
0 0 舞鶴 市
産業別 就業者比 率
1995年国勢調査小
地域別データによる,
年齢階級別人口,
産業別就業15歳以
上人口.
若年人口比率,高
齢者人口比率,産
業別(3分類)就業
者15歳以上人口比
率,および地理的な
まとまりを考慮して
設定.
年齢階 級別人口 比率
データ
小地区 (旧村)
第一次
第二次
第三次
6 5 歳以 上 人 口 比 率
1 5 歳未 満 人 口 比 率
資料:1995年国勢 調査
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
地域区分
データ
1995年国勢調査小
地域別データによる,
年齢階級別人口,
産業別就業15歳以
上人口.
若年人口比率,高
齢者人口比率,産
業別(3分類)就業
者15歳以上人口比
率,および地理的な
まとまりを考慮して
設定.
第1図 研究対象地域
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
地域特性別にみた高齢者の特徴
若い頃の職業
仕事
1999年11月13日
周辺部A
周辺部B
0
20
40
60
80
1 00
1 20
人
農林漁業
自営業
サ ラ リー マン
公 務 員 ・教 員
無 職 ・ そ の他
無回答
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
現在の年収
人
経済的状態
現金収入は,「市街地周辺部」,
「都心部」,「農村部」の順に高い.
定年退職(引退)前の職業に依存
している.
農村部
1 20
\ 24 0
1 00
\ 23 0
80
\ 22 0
60
\ 21 0
40
\ 20 0
20
\ 19 0
0
平均( 単位は万円)
農村部では「未だ現役」層が約3
分の1.他地区は半数以上が「無
職」.
若い頃は,都心部では,「商工
サービス」,市街地周辺部では,
「サラリーマン」.
地域区分
都心部
\ 18 0
都心部
農村部
周辺部A
周辺部B
地域区分
1 0 0万 円 未 満
1 0 0~ 1 5 0 万 円
1 5 0~ 2 0 0 万 円
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
2 0 0~ 2 5 0 万 円
2 5 0~ 5 0 0 万 円
5 0 0~ 7 0 0 万 円
7 0 0万 円 以 上
無回答
平 均 (単 位 は 万 円 )
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
地域特性別にみた高齢者の特徴
働く意欲
趣味・余暇
日常生活での最も大きな楽しみは,
「趣味」.
「気楽に働きたい」,「ゆっくりした
い」.
家庭か仕事か
地域区分
都心部
農村部
周辺部A
周辺部B
0
20
40
60
80
1 00
やる ことがな い
趣味
ゆっ くりし た い
その他
無回答
1 20
人
社会に貢献
気楽に
経済的事 情
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
1 20
2.80
1 00
2.75
80
2.70
60
2.65
40
2.60
20
2.55
0
仕事人間 度
人
「サラリーマン」は,やはり「仕事人
間」?
「自営業」は,家族との結びつきを
大切にしている.
家庭か仕事か
2.50
都心部
農村部
周辺部A
周辺部B
地域区分
仕事一筋
仕事重視
同 じ ぐ らい
家庭重視
その他
無回答
仕事人間 度
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
地域特性別にみた高齢者の特徴
都心部・農村部では「家族」.
周辺部では「家族と社会」.
都心部
地域区分
家庭・社会での信頼・役割感
信頼されているか?
農村部
周辺部A
周辺部B
0
地域との関わり
20
40
60
80
1 00
1 20
人
頼 られ て いな い
その他
無回答
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
地域の相談相 手か?
都心部
地域区分
農村部では「老いてもなお」よき相
談相手.
周辺部では「相談なし」「つきあい
なし」が3割.
社 会 も家 族 も
社会的には
家 族 か らは
農村部
周辺部A
周辺部B
0
20
40
60
80
1 00
1 20
人
よ く相 談 さ れ る
と きど き相 談
相談なし
つ きあい なし
その他
無回答
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
地域特性別にみた高齢者の特徴
都心部
未だ現役の自営業とサラリーマン・シニアが混在.
家族や地域との関係性を感じつつ,「趣味」も楽しんでいる.
農村部
第一次産業従事者が多い.経済的事情もあって「未だ現役」.
家族や地域との関係性を強く感じている.
市街地周辺部
サラリーマン・シニアが多い.
家族との同居率は比較的低いが,家族の「絆」は強い.
「社会的貢献」への意欲はあるが,地域に「場」が見いだせない.
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
4つの高齢者像
「未だ現役」の高齢者
家族や地域社会に支えられた「働きがい」.
自営業者,農業従事者に多い.
都心部,農村部に多い.
健康上の不安は大きい.
「趣味を謳歌する」高齢者
第二の人生を「趣味」に生きることに決めた有閑層.
サラリーマン・シニアで比較的富裕な層.
周辺部,都心部に多い.
「地縁」よりも「テーマ」.
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
4つの高齢者像
「社会的貢献」に関心を示す高齢者
新たな活動の場を求める「欲求不満」層.
リーダーシップを発揮してきたサラリーマン・シニア.
周辺部に多い.
地域の生活情報から断絶された状態?
「テレビ・ラジオ」を楽しむ高齢者
後期高齢者を中心とした健康上の制約が大きくなってきた層.
いずれの地域にも多くみられる.
つつましく,平穏な暮らしを志向.
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
社会的貢献と生活満足の関係
生活の充実感
「社会的貢献」への関心,地域社会での相談相手となっていることが,
「生活の充実感(多忙感)」を高めている.
1 00
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
3.30
3.10
3.00
2.90
2.80
2.70
社会的貢 献
それ以外
割合( %)
3.20
1 00
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
3.2
3.1
3.0
2.9
2.8
2.7
2.6
2.5
2.4
2.3
2.2
相談される
働く意欲
忙しい
そ れ なり
無難
何となく
相談されない
相談相手
その他
無回答
充実度
忙しい
そ れ なり
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
1999年11月13日
充実度
相談の有無別 にみた生活の充実感
充実度
割合( %)
働く意向別 にみた生活の充実感
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
無難
何となく
その他
無回答
充実度
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
社会的貢献と生活満足の関係
生活の見通し
「社会的貢献」への関心を持っている人,地域社会での相談相手と
なっている人のほうが,「生活の見通し」が明るい.
相談の有無別 にみた生活の見通し
3.5
3.4
3.3
3.2
3.1
社会的貢 献
それ以外
1 00
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
3.4
3.3
3.2
3.1
3.0
2.9
2.8
相談される
働く意欲
ま すま す 充 実
ま ずま ず無 難
何とか
心配
相談されない
相談相手
と て も心 配
その他
無回答
明 る い老 後 得 点
ま すま す 充 実
ま ずま ず無 難
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
1999年11月13日
明る い 老後得点
3.6
割合( %)
1 00
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
明る い 老後得点
割合( %)
働く意向別 にみた生活の見通し
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
何とか
心配
と て も心 配
その他
無回答
明 る い老 後 得 点
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
社会的貢献と生活満足の関係
幸せ感
「社会的貢献」への関心を持っている人,地域社会での相談相手と
なっている人のほうが,「幸せ感」が高い.
相談の有無別 にみた幸せ感
3.35
3.25
3.20
3.15
3.10
3.05
社会的貢 献
それ以外
割合( %)
3.30
1 00
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
3.30
3.25
3.20
3.15
3.10
3.05
3.00
相談される
働く意欲
幸せ
ま ずま ず
あまり
ま っ たく
相談されない
相談相手
その他
無回答
幸せ得点
幸せ
ま ずま ず
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
1999年11月13日
幸せ得点
1 00
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
幸せ得点
割合( %)
働く意向別 にみた幸せ感
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
あまり
ま っ たく
その他
無回答
幸せ得点
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
生活の充実感と生活満足の関係
生活の充実感=忙しくしていること,役割を持っていること
「充実している」と感じている人のほうが,明るい生活見通しを持って
おり,「幸せ感」も高い.
3.4
3.3
3.2
3.1
3.0
2.9
2.8
充 実 し て いる
充 実 し て いな い
1 00
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
3.4
3.3
3.2
3.1
3.0
2.9
充 実 し て いる
生活の充実感
ま すま す 充 実
ま ずま ず無 難
何とか
心配
充 実 し て いな い
生活の充実感
と て も心 配
その他
無回答
明 る い老 後 得 点
幸せ
ま ずま ず
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
1999年11月13日
幸せ得点
3.5
割合( %)
1 00
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
生活の充実感 の別からみた幸せ感
明る い 老後得点
割合( %)
生活の充実感 の別からみた生活の見通し
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
あまり
ま っ たく
その他
無回答
幸せ得点
資料:舞鶴市高齢者生活実態 調査,1997年.
まとめ-実態調査からわかったこと
同一の各種行政サービスを受けている単一自治体において
も,地域特性によって「高齢者像」が大きく異なる.
高齢者の現在の生活意向には,若年・壮年期の生活意向
や職業状態が大きな影響を与えている.
高齢者の「社会的貢献」への潜在的なニーズは依然として
高いが,それに応えうるだけの「場」がない.
「社会的貢献」や地域社会への参加は,高齢者の明るい生
活見通しや幸せ感の向上に寄与しうる.
高齢者の「生きがい」創造を地域社会で実現するためには,
彼らの「役割意識」を担保する仕組みが重要である.
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
まとめ-政策射程の再構成に関わって
これまでの高齢者施策
保健・福祉・医療のいわゆる「お世話施策」.
2割の要介護高齢者を主な政策対象として.
これからの高齢者施策
介護保険制度の開始.
8割の「元気なおとしより」も対象として.
本当の「老人保健施策」=「生きがい」施策への転換が必要.
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
まとめ-政策射程の再構成に関わって
「高齢者」という年齢による
「くくり」からの開放が必要.
「ヨコ」割りから「タテ」割りへ
「社会的貢献」に限定すれ
ば,若年・壮年層にも共通
した政策課題となっている.
世代間の「交流」から世代
「一体」へ.
「タテ」割りから「ヨコ」割りへ
施策間の連携による「場」
のストックと「情報」のフロー
を作る枠組みの必要性.
1999年11月13日
山田一隆・石見利勝(立命館大学)
終
Ikigai and community for elderly people
--a case study in Maizuru-shi, Kyoto pref.
Kazutaka YAMADA and Toshikatsu IWAMI
Gaduate School of Policy Science, Ritsumeikan University
JASESS 18th Annual Symposium, Nov. 13, 1999