研究の倫理 - 文学部心理学専攻

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日本行動分析学会第28回年次大会 2010/10/9
シンポジウム「行動分析家が人を対象とした研究ならびに臨床
的活動を実践するときに必要な倫理的配慮
IRBとしての
「人を対象とした研究倫理委員会」
を立ち上げるとき
-行動分析学あるいは対人援助学
の立場から-
立命館大学
望月 昭
1
コンテンツ
1. 大学における研究倫理委員会:
研究者の属する組織による研究倫理審査
2. R大学の「研究倫理委員会」設立のいきさつ
3. 立命館大学(衣笠C)「人を対象とする研究倫
理審査委員会」
4. 批判・問題・課題
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1. 大学における研究倫理審査
● IRB: 研究者の所属する組織による、
「自己審査」機能
● 「大学」という組織
外的状況
・コンプライアンス中心の危機管理
・上位(?)組織からの指示指導(文科省など)
内的状況
・学生(学部生・院生)の研究、教育(授業)
・多領域を有する組織 (人を対象とする・・・)
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2.R大学でのいきさつ
97年から設置希望
文学部動物実験委員会 08
0) 人文系(心理)・社会系(法、経営)
1)応用人間科学研究科(Human Services) 2001~
「対人援助(学)」:援助者による“2人称”的研究
2)先端総合学術研究科(Core Ethics) 2003~
「生存学」;当事者による“1(1.5?)人称”的研究
●研究、授業内容における倫理的課題
●研究対象としての「研究倫理」
4
Making 倫理委員会
2006: 「研究倫理WG」(人間科学研究所)
基本論点:
・倫理とコンプライアンスの分離
・研究者倫理から研究(行動)倫理へ
『テキスト』:
坂上貴之(2004) 倫理的行動と対抗制御
-行動倫理学の可能性.行動分析学研究,19
(1),5-17.
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研究倫理と研究者倫理?
●研究費流用などの不祥事の中で、
研究に関わる諸問題が、研究者個人のモラルに
もっぱら帰属するかのような状況(研究者の
倫理)」。
●そして、研究に関する倫理規定は、
「非倫理的行動を、罰、不の強化で減少させるため
のルール」(坂上,2004参照)
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研究者と対象者
• 「非倫理的行動をしない」という消極的な意
味づけの中では、ともすると研究倫理のた
めの作業は、 「研究(者)」と「対象者」が、
対立的な構図として位置づけられてしまう。
研究促進と対象者の利益が
ともに増大するための仕組みを追求
=「研究の倫理」(?)
またそのような研究行動を強化する仕組みを具体的に
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工夫することが、研究倫理行動(?)
三大原則(侵襲性)・利益相反
研究行動の倫理
コンプライアンス
研究費不正
研究者と対象者のコ
ラボレーション
対象者・研究者
の保険・補償
技法の妥当性
ハラスメント
剽窃・著作権
安全対策
実験機器等の
管理
f-MRIなど
研究倫理の居場所と戦略
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3. 立命館大学(衣笠C)「人を対象とする研
究倫理審査委員会」
2009年7月から
•
•
•
•
•
•
1)学生も「研究者」である。
2)学生に指導教員の記載をとくに義務づけない。
3)対象者と同時に研究者も守る(保険等の確認)
4)「発表しない研究はない」(発表促進も倫理)
5)審査申請は、義務ではなく申請制
6)委員会は、研究事前のみでなく、中途でも、あ
るいはトラブルが生じたときの相談にも乗る。
• 7)審査は極力、迅速に(最大1ヶ月で結論)。
• 8)審査プロセスは極力公開
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立命館大学における人を対象とする「研究倫理指針」
●研究者とは:
「研究者」とは、本学の教員のほか、本学で
研究活動に従事する学部生、大学院生お
よび研究員等を含む。
「安全」を担保
●研究とは:
問題に!
「人を対象とする研究」とは、臨床・臨地人
文社会科学の調査および実験をいい、個
人または集団を対象に、その行動、心身も
しくは環境等に関する情報を収集し、また
はデータ等を採取する作業を含む。
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研究者による自己チェック
(規程等は各自がダウンロード)
申請対象外
申請対象
大学HPへ
検討コメントと
共に公開
申請せず
申請書記入・事務局提出
人を対象とする研究倫理
審査委員会
判定原案の作成および論点の集約
(暫定審査)
簡易審査
事務局と月当番委
員(10名)
人を対象とする研究倫理審
査委員会における審査
審査の判定と研究者への通知
(1)承認
(2)
条件付
承認
(3)
変更
の勧告
(4)
不承認
(5)
非該当
他の倫理委員会
による審査
(場合による)
立命館大学
研究倫理委
員会へ審査
結果を報告
する
研究開始
委員長による
条件充足結果
の確認
計画変更
審査せず
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する
疑義申出
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学生(教員)への教育
• 院生による1回生向けのマニュアル製作
• 心理学:2回生時に「基礎実験」の授業で
研究倫理の講義
• 大学院(応用人間科学研究科)
1回生時に研究法として講義
----------------------------------------応用人間(臨床・対人援助)ではFDなど
文学部教授会、その他オンデマンド
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研究法の一部としての研究倫理
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・先行研究の網羅
先人へのRespect 4)
最新・最適のトリートメントや
調査か?
研究目的・目標の
設定
・以降の研究活動における倫理
的諸項目についての具体的プ
ラン(研究公表まで
研究方法の確定
研
究
活
動
ここまでに1)インフォームト・コンセント
研究の実施
・参加者(組織)が途中でも参加拒
否を表明する機会を設ける
・実施・発表中のプライバシー保護
存の機密性の保護
2)資料保
・実施過程でのSV
研究の公表
参加者(組織)と社会へ向
けた報告発表公表3)
・危機管理・損害補償
・公正な分析と表現(integrity)5)
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大学院授業
対人援助における研究の倫理
• 研究(実践)とは「援護」としての発表を前提とする。
• 研究倫理は手続き上の「留意点」ではなく、研究の目
的あるいは研究することがすでに倫理的判断の結果
である。
●対象者の利益(選択肢拡大)に対して研究内容が一
致しているかどうかが、まず問題。
●「援護」(公表)することが倫理的である。
そして、その役割を果たしうる表現であるか?
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大学院授業
対人援助だから危ない点
・「援助」している研究者の“信念”が、公正さ(integrity)を阻
害する。
無意識の改ざん・データの選択
→ 長期的には「援護力」を失う
・目標達成の“信念”から、対象となる「本人」の援助要請の
有無さえ確認しないで作業を継続する
(パターナリズム)
・対象者ではなく「他の援助者」(親・組織)の要請に統制さ
れてしまう(クライエントが当事者ではない場合)
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大学院授業
当事者と「善意」の研究者(援助者)
の関係のチェックシステム
・直近の援助者(代理人)ではなく、
対象となる当事者自身から、援助実践に関する
「対抗制御」(counter control)の回路を保証する。
●坂上貴之(2004) 倫理的行動と対抗制御-行動倫理学の可能性行動分析学研究、19(1)、5-17.
●Nozaki & Mochizuki (1995): Assessing choice making of a
person with profound disabilities. The Journal of the Association
for Persons with Severe Handicaps, 20(3),196-201.
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大学院授業
当事者(被援助者)・環境・援助者
既存環境
当事者
研究対象
実践・研究
宗教・信条
市場原理
組織の規制
(^,モ,^);
援助者
研究者
個人的利益
締め切り!
「人称と臨床」(07/6/02)シンポジウム指定討論より
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結果(経過):申請数と提案内容
2009年7月~2010年9月
• 承認
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• 条件つき 21
• 変更勧告 3
• 不承認
0
• 非該当
1
• 取り下げ
1
---------------------計
42件
学生(学部)
1
院生 博士
修士
5
15
21
教員・PD等
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心理学
社会学(社会調査)
その他
2010年9月
2010年8月
2010年7月
2010年6月
2010年5月
2010年4月
2010年3月
2010年2月
2010年1月
2009年12月
2009年11月
2009年10月
2009年9月
2009年8月
2009年7月
2009年6月
申請件数(領域別)
4
心理学
社会学(社会調査)
その他
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
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4. 問題・批判・課題
●問題: 申請数・審査コスト
●批判:「安全」と「倫理」のすり替え?
●全学的な認識:
コンプライアンス・ハラスメントとの区別
○審査委員会と研究倫理コンサルテーションを
別立てにしなければならないか。
(神里彩子・武藤香織(2010)研究コンサルテーションの現状と今後の課題.
生命倫理,20(1),183-193参照
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