望月部分の資料

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自己決定の支援は「学校教育」の
核心部分となりえるか?
「知的障害のある児童生徒のWANTSを高める教育
的支援:発達障害者のQOLをめざす教育」
(特教06:自主シンポ12)
立命館大学文学部・応用人間科学研究科
望月昭
[email protected]
1
学校での「自己決定」の文脈
1)要求言語行動(mand)と同じ機能を
持つ社会的行動の獲得:
2)伝統的な「自発的」「主体的」行動の形成
行動選択としてのセルフ・マネジメント
(Wehmeyer)
3)教育サービスの消費者としての権利の確認
2
「自己決定」
(障害のある本人が)自らの環境設定や環
境随伴性の変更について、社会成員にその
実現のための援助を要求する社会的行動
(コミュニケーション)である。
「単独」で行う行動ではない。
(ロビンソンクルーソーの晩飯の選択)
3
具体的な行動目標の例
「自己決定」:
(社会的場面にあって)指定者や援助
者など,他者の存在やその指定によっ
て選択するのではなく,あくまでも選択
肢の内容によって選択している事態
(Goldiamond, 1970)
4
自己決定の援助設定
The proposal is to develop our sensitivity
to the various forms of communication
used by people with severe disabilities so
that we may do more of what they want
and impose on them less of what we
assume they want or want them to want.
Baer, D. M. (1998): Commentary: Problems in
Imposing Self-Determination. JASH, 23(1), 50 - 52.
5
「選択すると期待・予測されるもの」あるいは
「選択そのもの」を押し付けない援助設定
おだやかな
否定選択肢
Choice
option 1
Choice
option 2
Rejection
Yamamoto and Mochizuki (1988): JABA, 21, 57-64.
Nozaki and Mochizuki (1995): JASH, 20, 196-201.
6
従来の教育場面での社会的関係では、模倣(一致依存)行
動、記述(報告)行動が強化されやすいとすれば・・
選択肢
A,B,C
援助者
「Aが良いよ」
選択肢
A,B,C
援助者
「Aが良いよ」
選択
A
選択後に
も援助あり
選択
B
選択後に
援助なし
「自己責任!!」
(涙)
学校教育の「随伴性」と矛盾?
7
学校教育での自己決定
「賢い子」と「元気な子」
賢い子:一致依存型の行動ができる(needsタイプ)
元気な子 既存選択肢否定ができる(demandタイプ)
「賢い」(needs)と「元気」(demand)は
trade-off (相容れない)
「賢く元気な子」:WANTSな子
needs + demand ではない
WANTS:選択肢否定行動ができることが社会的にも
評価される教育の成立
8
学校教育のコアである可能性(1)
WANTSの発生の支援:
重度の障害のある生徒
• 山田岩男(1995):
養護学校における自発的選択
要求言語行動の形成.
行動分析学研究, 8,12-21.
特集:「ノーマリゼーションと行動分析」
9
遊具の展示棚:
活動選択のための「援助設定」
10
自発展示
パス行動
連続的な既存遊具取り出し(選択)から
パス(選択肢否定)そして自発展示へ展開
(山田,1995)
11
「選択」は言葉のない児童にも可能な行為であ
る。そしてその機会を繰り返し呈示していく過程
で、様々な指導者と児童との社会関係が生まれ
てくる。
そして、それは単に連続的な変化ではなく、質
的にも新しいフェイズへ移行したかのような印象
を指導者に与える場合がある。
当実践においては、連続的な行為が一定に固
定した後に、選択を見送る「パス行動」が現れ、さ
らに既存の選択肢以外の選択肢を自発的に他
から持ち込む「自発的展示行動が」みられ、新た
な「要求」行為が認められるという転換がみられ
12
た。
この選択内容と選択方法自体の変化の有り様
こそが、まさにこの児童における「発達過程」であ
るといえるのではないだろうか。
そして、このような「発達」は、本児童の場合、
単に「自由に遊ばせる」とか「遊具を示しておくだ
けの選択」では見られなかったと推測される。
積極的に指導者が介入し、社会的関係を設定
してこそ、このような展開も可能であったと考えら
れる(Baer, 1973)。
13
先駆的である内容
●選択肢の否定を含む行動の成立
「パス行動」と自発的な「選択肢の追加」
●定常選択→パス(選択拒否)→自発追加
「発達」のプロセスとして言及
●社会的関係の中でこそ可能であり、またこの操作
を通じて行動の改善あり
「自己決定」(選択行動)を、社会的関係成立の基礎
とすえる実践。
学校教育のコアとしての可能性
14
学校教育のコアである可能性
「特別支援教育」の中での
自己決定
• 「特別支援教育」の下で、ADHDなどの障害のある
生徒を『一斉授業』の中で対応する
• 「教授」活動に伴う「強制」(選択性のなさ:負の強
化になる)による不適応:「障害性」を拡大
→本人のCounter control(対抗制御)としての
「行動問題」(逃避、攻撃的行動)
→選択機会の導入
15
学校教育のコアである可能性(事例 2)
金山好美ら(2004)の研究
「連続的行動形成」から「選択重視」の発想へ
人間関係や社会性において問題を抱え
るADHD児に対して、集団遊びを逸脱せず
に継続して参加が行えることを目的とした。
その手法として、
第一段階:「漸近的接近」による行動形成
第二段階:「参加する/見学する」という行
動選択の機会を与え承認する
16
※
→
「
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種目決定ボード
決める人
Y
○さん
△さん
□さん
種目
Y君は?
野球
ドッジボール
見学します。
風船バレー
サッカー
金山・望月(2004)日本行動分析学会大会発表論文集
17
結果
種目別反応時間
ベースライン
訓練Ⅰ‐ A
訓練Ⅰ‐ B
訓練Ⅱ
ド 360
ッ 300
ジ 240
ボ
180
ー
ル 120
・ 60
秒 0
ベースライン期
勝った直後のゲームは参加。
負けた直後のゲームは、参
加までに時間がかかった。
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41
360
風
300
船
バ 240
レ 180
ー 120
・
60
秒
訓練Ⅰ‐A
5試行とも、60秒以内に参加。
訓練Ⅰ‐B
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41
360
サ 300
ッ 240
カ
180
ー
120
・
秒 60
ゲーム途中、負点になった時
点で逸脱行動があった。
訓練Ⅱ
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41
1
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3
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9
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41
360
300
野 240
球
180
・
120
秒
60
0
「野球」以外は、「見学します」
を選択。逸脱行動は見られ
なかった。 サッカー29試行
目に途中参加。 32試行目か
らは、自発的参加が見られ
た。
※360秒以上の逸脱は、360秒のラインで表記
○ 勝
● 負
▲ 負・途中逸脱
* 勝敗なし
□ 見学・勝
■ 見学・負
◇ 途中参加・勝
◆ 途中参加・負
図3 . 対象児の種目別反応潜時
金山・望月(2004)日本行動分析学会大会発表論文集
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「参加するか/見学するか」の選択
●集団参加にむけ、連続的に行動形成するのではな
い。(「慣れていく」、「耐える練習をする」、といった発想
ではない)
●本人の「自己決定」の表明とその選択に従った行動
を許容する援助設定を優先する (一種の「穏やかな
否定選択肢」の設定)
WANTS教育?
19
学校教育のコアである可能性(事例 3)
自らの行動選択肢の表明とその選択を許容する
状況設定:(cf. 山田岩男「自己展示行動」)
●金山好美・望月昭(2005)
通常学級に通うADHD児のための選択機会を伴
う受容的環境の検討-逸脱行動に対する「行っ
てきますカード」手続きの効果-
日本行動分析学会第23回大会発表論文集
20
100%
授
業
開
始
時
に
教
室
に
居
た
比
率
投薬あり
投薬なし
投薬あり
投薬なし
0
セッション(全体で約3ヶ月)
データは改変されています(実践障害児教育11月号参照)
21
100%
授
業
開
始
時
に
教
室
に
居
た
比
率
投薬のみ
投薬と
+ 「行き先カード」
+ 教材の改善
投薬と
「行き先カード」の導入
0
セッション(全体で約2ヶ月)
データは改変されています(実践障害児教育11月号参照)
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2つの実践
・生徒自身が自らの行動を「自己決定」す
る機会を設け、それを表明し行動する。
・他者管理から自己管理(Self-management)
注意:「自己管理」といった場合、あくまで
も選択が強化される随伴性が必要
(「自己責任」といったnegativeな随伴性
は避ける)
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学校教育・WANTS・自己決定
WANTS: 基本は行動の強度(生起確率)である。
「自発性」「主体性」といわれてきたものの内容でもある
行動の強度:正の強化子の量ではない(Skinner,1975)
GIVEN ではなく GET
●教育:従来、社会的適応のために、目標に向けて連
続的に行動形成していく方法、と捉えられてきた。
●社会的関係の中で、自らの行動が、より正の強化を
受けるために(=get)、選択肢を拡大し環境変更をす
る行動(自己決定であり:Self-management)の支援の
方法を重視する。(WANTS教育?)
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そもそも「発達」とは何か?
行動の選択肢の拡大
「あそびをせむとやうまれけむ」かな?
これはWANTS
このように考えるメリット
●援助付き行動の成立(strength)は生涯可能な
ものである。
●障害の軽重に関わりなく「いま」実現する。
●どんな状況からの支援行動も強化されうる。
望月(2001)「行動的QOL」、行動医学研究
6(1), 8-17.
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参考文献:URL
• ブログ:「対人援助学のすすめ」
http://d.hatena.ne.jp/marumo55/
• 「実践障害児教育」(1998-1999)
http://www.ritsumei.ac.jp/kic/~mochi/14Mochizuki(1998-1999).pdf
・「実践障害児教育」(2006-
)
連載「対人援助学のすすめ」
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