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認知行動療法:CBT
Cognitive Behavioral Therapy
☆心理療法の1つ。感情的な問題を軽減するために
主に認知(思考)や行動の変容を目指す。
感情的
苦痛
☆認知行動療法 →
CBT
↓
認知・行動
の変容
実は「感情」が最重要
☆そのためのノウハウ,その集合体:認知行動療法
認知行動療法の構造
☆認知行動療法の基本的な構造 (田中, 2012)
生活の中で見つける
特定の状況
生活の中で試す
苦痛を生む
思考・行動
感情・行動・
身体反応
別の新しい
思考・行動
感情・行動・
身体反応の変化
☆生活の中で発見し,生活の中で試す
→面接は作戦会議や報告ための場となる
認知行動療法
・Cognitive Behavioral Therapy:CBT
・行動療法に「認知」くっついた:「認知」=思考・記憶等
→1970年代:行動主義心理学から認知心理学へ
・バンデューラ A:認知行動療法への道を開いた
…社会的学習理論:観察学習(モデリング)
→他者の行動を見て学習する際の認知の働きに注目
…自己効力感:自分が「出来る」と感じる程度
→行動の選択や気分に影響を及ぼす
自己効力感を強めることで,行動変容を導く
☆背景には「学習性無力感」という考えがある
認知行動療法以前
・D.マイケンバウム「自己教示訓練」
…自己陳述(心のつぶやき)が気分や行動に与える影響
→ネガティヴな自己陳述を見つけ,変えていく
・A.エリス「論理情動療法」
…イラショナル・ビリーフ:不合理で不適応的な信念
→イラショナル・ビリーフを論駁することで治療
・A.T.ベック「認知療法」
…エリスの「ABC図式」をうつ病に応用
A:Activating event → きっかけ
B:Belief → 信念・考え
C:Consequences → 結果としての行動や気分
→「同じAでもBによってCが違う」→Bに介入する
認知行動療法の方法
CBTの方法を,3つに分けてみる
1.問題を見極めるための方法
・CBTモデルによる問題の整理
・質問紙による症状の把握
・セルフモニタリング
2.問題解決的に面接を行う方法
・セッションの構造化
・協働的実証主義
・心理教育の重視
・ホームワークの多用
3.症状にアプローチする各種の方法
認知行動モデル
人間の精神活動を認知/感情/行動/身体に区別する
入力:刺激
認知
身体
行動
感情
状況
出力:反応
それぞれが互いに影響し合い,行動として出力されることで,
現実的な状況とも影響し合う → その様子を記述する方法
問題を見立てる:ケースの概念化
☆クライアントと協働で,認知行動モデルに当てはめていく
・仕事での失敗を気に病んでうつ状態になったCさん
入力:刺激
認知
身体
自分は無能だ
次も失敗する
強い疲労感
そわそわ感
行動
感情
上司を避ける
仕事を休む
落ち込み
不安・焦り
状況
仕事でミスした
出力:反応
→一緒にまとめていくことで,動機づけが高まる
⇒協同的実証主義:まとめも介入法も共に検討する
質問紙による症状の把握
・症状の程度を,数値で捉えるようにする
→客観的な評価を行う
→ClとThが全く同じ情報を共有できる
→変化が数値に反映されるので成果が見える
→毎回同じ尺度を実施して,評価していく
ダイエットするときの体重計と同じ
・例)BDI-II
セルフモニタリング
・問題を,生活の中で確かめてもらう
→いくら面接で詳しく説明したところで,
それが本当かどうかは分からない。
実際の生活の中でどうか,を自分の目
で確かめてきてもらう方法
☆自分を客観的に観察するスキルを獲得
→セルフモニタリングの本当の目的
問題解決的に面接を行う方法
・問題解決モードと嘆き破局化モード
問題解決モード
なにが問題なのだろう。
この問題に対して何が出来るのだろう
問題
問題の分析,解決への焦点化
嘆き破局化モード
どうしてこんなことになったんだ!
最悪だ!もうどうにも出来ない!
原因の追求,苦痛への焦点化
問題解決的に面接を行う方法
セッションの構造化
・CBTの面接では,アジェンダを決定する
アジェンダ…話し合うべき話題のこと
・タイムマネジメントの強調
→必要な話を必要なだけ行う。時間を有効に。
・例)うつ患者とのCBT3回目のアジェンダ
①復習と,セルフモニタリングの確認 (5分)
②CBTモデルから自分の問題を整理する (20分)
③行動活性化の心理教育 (10分)
④行動実験の設定 (10分) ⑤まとめ (5分)
問題解決的に面接を行う方法
協同的実証主義
・何が正しくて,何が有効か,誰にも分からない
・実際に試して,結果を検討してみる
→行動実験:方法を試し,結果を記録する
・ThとClが同じ問題を共有し,知恵を出し合う
→問題に取り組むチームメイトのような関係
心理学の専門家と自分自身の専門家のチーム
ClとThの
チームで
取り組む
問題
問題解決的に面接を行う方法
心理教育の重視
・心理教育:治療に必要な情報を提供すること
→症状の特徴やから,治療方法の特徴まで
・CBTの目標:自分の治療者になってもらう
→仕組みや公式を全て学んでもらう
・インフォームド・コンセントの重視
→Clのモチベーションにも直結する
問題解決的に面接を行う方法
ホームワークの多用
・面接一回50分。週に一回。
→168時間のうちの,たった1時間だけ。
・Between Sessionの活用
→167時間で体験し,1時間をまとめに使う
→生活の中で根付かさせていく!
・とはいえ,無理のない実行可能なものにする
→動機付け面接法:やる気を引き出す技術
スモールステップ:小さな事からコツコツと
☆ClがHWをやってこなかったらThの責任!
症状にアプローチする各種の方法
・認知行動療法には多くの手法がある
→しかし,面接が上手くできてないと使えない
ラポールはここでも重要:作業同盟
・CBTモデルでまとめ,適切な査定に至る
→その上で手法を選択する
・そして協同的実証主義
→その方法が妥当かどうか話し合う
行動実験の結果を見て判断する
☆ここまでに述べてきた事柄がとても重要
…続きは次回へ
今日のまとめ
• CBTの方法は,①問題を見極める方法,②問題解決的に面
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接を行う方法,③症状にアプローチする各種の方法に分けら
れ,その全てが重要
問題を見極める方法:①CBTモデルによる整理,②セルフモ
ニタリング,③質問紙尺度による客観的評価
問題解決的に面接を行う方法:①セッションの構造化,②協同
的実証主義,③ホームワークの多用
嘆き破局化モードから,問題解決モードへ導く
アジェンダを設定してセッションを構造化する
CBTでは心理教育を重視している
査定や方法の有効性は行動実験によって確かめる
ホームワークでBetween Sessionを活用する
CBTの手法は,査定と協同的実証主義に基づいて選ぶ