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第7回ヤマセ研究会 2013.3.8 弘前大
いもち病感染危険度予測へ向けた
観測・モデル研究
山崎剛 (東北大)
菅野洋光,小林隆 (東北農研)
菅野博英 (古川農試)
背 景
・稲をからす病気である葉いもち病は
稲の葉が連続的に濡れることで発
生する。
・やませの影響で葉の濡れる時間が
増加し、さらに低温状態が続くこと
で葉いもち病に感染しやすい。
葉いもち病の症例
現在、アメダスのデータ(降水量、日照時間、風速)を
もとに経験的に葉の濡れを推定し、葉いもち病の感染
危険度を求めている。 → BLASTAM
葉の濡れを推定するのに重要な湿度などのパラメータ
を考慮していない
2
着 想
・物理的な植生熱収支モデル2LM(Yamazaki et al., 1992,
2004)は葉の濡れ(保水量)の推定ができる
・2LMの入力データにNHM予測結果を使い、葉の濡れを推
定できれば、事前に感染危険度を予測できるのでは
・第5回ヤマセ研究会にて
2003年についてアメダス,NHMデータを使った予備研究
良好な感触
3
1次元陸面モデル2LMの概要
1次元 = ポイントスケール 上下方向
入ってきたエネルギーと水をどう配るか?
• 植生の評価
– 樹冠を上層と下層の2層で表現.
– 林床の水・エネルギー交換を表現
– 生理パラメータは,個葉レベル観
測に基づく共通値
• 冬期過程
– 降雪遮断を評価
– 林内積雪・融雪を評価
• 土壌内過程
陸面モデル(2LM)の概念図
(Yamazaki et al., 2004 )
– 土壌多層モデル
– 凍土層の凍結・融解を評価
– 不透水層を2mに仮定.
各層からの流出成分
θsatを超えた分
+ ρw sinα (θ> θsat -0.05)
の和が,分布型流出モデルへ受け
渡される.
やるべきこと
• 2LMでイネの濡れ,いもち危険度を表現できるか
– 気象データ(湿度,下向き大気放射を含め)は入手で
きるとして
– 濡れセンサー,BLASTAM出力との比較
• NHM計算値を入力してうまくいくか
– NHMの地上湿度,下向き大気放射等が適切か?
– 観測との比較が必要
本報告
現在実施中の観測の概要
植生熱収支モデルで葉の濡れを推定した初期結果
観測の概要
科研費にて実施
2012年6月~9月
川渡
古川
宮城県大崎市内 2か所
古川
鹿島台
(川渡 計画中)
2014年まで(3夏)
鹿島台
仙台
観測項目
日射,下向き大気放射,
気温,湿度,風速,降水,
葉面濡れセンサー
6
観測地点
鹿島台
古川
東北大生命科学研究科
宮城県古川農業試験場
湛水生態系野外実験施設
東北農研の機器
気温
観測データ
古川2012
相対湿度
風速
古川では
葉面濡れセンサーの
データが取れなかった
モデル適用は
まず鹿島台で行う
降水量
日射
大気放射
気温
観測データ
鹿島台2012
相対湿度
風速
7/20ころと8/10ころに
低温の時期あり
この時期の
モデル結果を主に見る
日射 →
大気放射 →
降水量
2LMによる葉面保水量 鹿島台
0.8
Liquid water on leaves (mm)
0.7
Kasimadai 2012 Liquid water on leaves
葉面保水量
計算値
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
6/8
6/18
6/28
7/8
7/18
7/28
8/7
8/17
8/27
9/6
9/16
9/26
Kashimadai 2012 LWS_wet
LWS_wet
10
葉面濡れ割合
観測
5
0
6/8
6/18
6/28
7/8
7/18
7/28
8/7
8/17
8/27
9/6
9/16
9/26
60
Kashimadai 2012 Precipitation
Precipitation (mm h -1 )
50
降水量
観測
40
30
20
10
0
6/8
6/18
6/28
7/8
7/18
7/28
8/7
8/17
8/27
9/6
9/16
9/26
2LM葉面保水量 鹿島台7/18~7/27
0.8
Liquid water on leaves (mm)
0.7
Kasimadai 2012 Liquid water on leaves
0.6
0.5
葉面保水量
計算値
0.4
0.3
0.2
0.1
0
7/18
7/19
7/20
7/21
7/22
7/23
7/24
7/25
7/26
7/27
7/28
7/24
7/25
7/26
7/27
7/28
Kashimadai 2012 LWS_wet
LWS_wet
10
葉面濡れ割合
観測
5
0
7/18
7/19
7/20
7/21
7/22
7/23
60
Precipitation (mm h -1 )
50
40
30
Kashimadai 2012 Precipitation
降水量
観測
20
10
0
7/18
7/19
7/20
7/21
7/22
7/23
7/24
7/25
7/26
7/27
7/28
2LM葉面保水量 鹿島台8/6~8/15
0.8
Liquid water on leaves (mm)
0.7
Kasimadai 2012 Liquid water on leaves
0.6
0.5
0.4
葉面保水量
計算値
0.3
0.2
0.1
0
8/6
8/7
8/8
8/9
8/10
8/11
8/12
8/13
8/14
8/15
8/16
8/13
8/14
8/15
8/16
8/13
8/14
8/15
8/16
Kashimadai 2012 LWS_wet
LWS_wet
10
葉面濡れ割合
観測
5
0
8/6
8/7
8/8
8/9
8/10
8/11
8/12
60
Precipitation (mm h -1 )
50
Kashimadai 2012 Precipitation
降水量
観測
40
30
20
10
0
8/6
8/7
8/8
8/9
8/10
8/11
8/12
まとめ
• 植生熱収支モデルによる葉の濡れ推定の試
み
• 入力・検証データの取得
– 古川,鹿島台
• モデルの適用
– モデル ほぼ毎晩 葉が濡れる
– 湿度の観測値が高いことに対応
– 濡れセンサーの観測より頻繁
今 後
• 観測
– 2013, 2014も継続 川渡を追加予定
– 昨年の反省をふまえて
• モデル
– 葉の濡れ時間が長いことの検討
– 必要ならモデルの改良 熱容量の与え方?
– NHM出力妥当性の検討
– 2LM → さらに簡略な濡れ予測式開発
– 実際のいもち病発生状況との比較