Transcript pptx

2014年 5月16日 基礎物理学コロキウム
HERMES実験における偏極深非弾性散乱を用いたクォーク・スピン測定
柴田研究室 14M01212 宮﨑 拓人
核子のスピン構造
HERMESスペクトロメータ
FIEL D C L A MP S
クォーク模型による予想
TRIGGER HODOSC OP E H1
m
DRIFT C HA MB ERS
2
・核子は基本的に3つのクォークから成る
・核子もクォークもスピンが1/2
2つのクォーク・スピンが核子と平行
陽子のスピン
1つのクォーク・スピンが核子と反平行
P RESHOWER (H2)
DRIFT
C HA MB ERS
1
27.6 GeV
140 mrad
FC 1/ 2
P ROP .
C HA MB ERS
L UMINOSITY 27.5 GeV
0
beam
しかし、EMC実験の結果
陽子のスピンに対するクォーク・スピンの寄与はたいへん小さい
MONITOR
TA RGET
C EL L
-1
HODOSC OP E H0
B C 1/ 2
140 mrad
B C 3/ 4
STEEL P L A TE
TRD
C A L ORIMETER
RIC H
-2
つまり、陽子のスピン1/2は
e+
MC 1- 3
MA GNET
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9 m
縦偏極した27.6 GeVの陽電子(電子)ビームを
縦偏極した気体標的(水素、重水素)で散乱
・ドリフトチェンバーにより粒子の飛跡を測定
・マグネットにより曲率から粒子の運動量を測定
・4種類の検出器(TRD、 preshower、カロリーメータ、RICH)により粒子を識別
深非弾性散乱(DIS)過程の散乱断面積を測定し、構造関数𝑔1 を導く
偏極深非弾性散乱(DIS)過程
核子のスピン構造を研究
・レプトンと核子の散乱
・レプトンと核子が仮想光子を交換(電磁相互作用)する
・核子の内部構造を探る有効な手段
HERMES実験
1次モーメントの導出
𝑙 𝑘
:レプトン 𝑁 𝑃 :固定標的
𝑄2
𝑄2
𝑥≡
=
(𝑄 2 ≡ −𝑞 2 )
2𝑃 ∙ 𝑞 2𝑀𝑣
Bjorken スケーリング 変数
0.9
・重陽子の統計精度が高い
・𝑥 ≤ 0.05以下で変化が小さい
・0.9 < 𝑥 ≤ 1の領域の積分も考慮
𝑥
𝑙 𝑘 + 𝑁 𝑃 → 𝑙 ´ (𝑘 ´ ) + X(𝑃𝑋 )
𝑔1 𝑥 𝑑𝑥
0.0041 ≤ 𝑥 ≤ 0.9 および 0.18 GeV 2 ≤ 𝑄 2 ≤ 20 GeV 2 で測定
微分散乱断面積
非偏極
縦偏極
2
𝐹
𝑥,𝑄
𝑑 2 𝜎𝑈𝑈 (𝑥,𝑄2 )
4𝜋𝛼 2
2
2
2
= 4 𝐹1 𝑥, 𝑄 ・𝑦 −
2
𝑑𝑥𝑑𝑄
𝑄
𝑥
𝑑 2 𝜎LL (𝑥,𝑄2 )
8𝜋α2 𝑦
𝑦
𝑦2 2
2
=
1
−
−
𝛾
𝑔
𝑥,
𝑄
1
𝑑𝑥𝑑𝑄2
𝑄4
2
4
1
𝜎𝑈𝑈 = 𝜎↑↓ + 𝜎↑↑
2
1
𝜎𝐿𝐿 = (𝜎↑↓ − 𝜎↑↑ )
2
𝑦
2
1− −
−
𝑦2 2
𝛾
4
𝑦 2
𝛾 𝑔2
2
𝑥, 𝑄 2
ビームスピンと標的核子のスピンが
反平行(↑↓)と平行(↑↑)の場合を表す
𝐹1 , 𝐹2 ・・・非偏極構造関数
重陽子の構造関数の
1次モーメント
+
フレーバーSU(3)対称性
||
∆Σ = 0.330 ± 0.039
陽子のスピンに対するクォーク・スピンの寄与
33%
𝑔1 , 𝑔2 ・・・縦偏極構造関数
2
構造関数の𝑄 依存性は対数的であるため弱い
𝐹1 𝑥, 𝑄 2 , 𝑔1 𝑥, 𝑄 2 ⇒ 𝐹1 𝑥 , 𝑔1 𝑥
𝑥
重陽子の構造関数𝑔1 𝑥 の
x から 0.9 までの積分値
将来計画
Callan-Gross の関係式 2𝑥𝐹2 𝑥 = 𝐹1 𝑥
𝜎𝐿𝐿 𝜎↑↓ − 𝜎↑↑
𝑔1 𝑥
=
スピン非対称度 A|| =
が得られる
𝐹1 𝑥
𝜎𝑈𝑈 𝜎↑↓ + 𝜎↑↑
EIC ( Electron-Ion Collider )
・初めての衝突型の偏極深非弾性散乱実験
・ブルックヘブン国立研究所(BNL)と
・ジェファーソン研究所(JLab)で検討中
・電子と核子の偏極深非弾性散乱(DIS)実験
・および電子-重イオン散乱実験
クォーク・パートン模型
クォーク模型+パートン模型=クォーク・パートン模型
更に小さな 𝑥 の領域の研究が可能
・ハドロンの内部にはパートンと呼ぶ点状の粒子がある
・高エネルギーでは、レプトンとパートンとの独立な反応の足し合わせ
構造関数とパートン分布関数
1
𝐹1 𝑥 =
𝑒𝑞2 𝑞(𝑥)
2 𝑞
↑
↓
𝑞 𝑥 =𝑞 𝑥 +𝑞 𝑥
↑
1
𝑔1 𝑥 =
𝑒𝑞2 ∆ 𝑞(𝑥)
2 𝑞
↑
↓
∆𝑞 𝑥 = 𝑞 𝑥 − 𝑞 𝑥
↓
𝑞 𝑥 、𝑞 𝑥 ・・・陽子スピンに平行(↑)と反平行 ↓ な
クォークと反クォークの和
1
1
陽子(𝑝)の場合 +
=
(𝑎8 ± 3𝑎3 + 4𝑎0 )
1次モーメント
中性子(𝑛)の場合
−
36
0
𝑎0 = ∆𝑢 + ∆𝑢 + ∆𝑑 + ∆𝑑 + ∆𝑠 + ∆𝑠 ≡ ∆Σ
𝑎3 = ∆𝑢 + ∆𝑢 − (∆𝑑 + ∆𝑑)
クォーク・スピンの寄与
𝑎8 = ∆𝑢 + ∆𝑢 + ∆𝑑 + ∆𝑑 − 2(∆𝑠 + ∆𝑠)
𝑝,𝑛
𝑑𝑥𝑔1 (𝑥)
重陽子の構造関数の1次モーメントについても
𝑎0 、𝑎3 、𝑎8 の組み合わせで表せる
HERMES実験とHERAおよびEICの
運動学的領域の比較
HERMES実験において
測定可能な運動学的領域
まとめ
・核子のスピンは1/2であり、EMC実験において陽子スピンに対する
クォーク・スピンの寄与はたいへん小さいことが示された。
・深非弾性散乱(DIS)は、仮想光子を交換する電磁相互作用により
散乱する過程である。
・偏極深非弾性散乱を利用し、核子のスピンに対するクォーク・スピン
・の寄与を求める。
・HERMESは偏極深非弾性散乱実験である。
・HERMES実験では、 0.0041 ≤ 𝑥 ≤ 0.9 および 0.18 GeV 2 ≤ 𝑄 2 ≤ 20 GeV 2
の領域で測定され、陽子のスピンに対するクォーク・スピンの寄与は
33%であることが示された。
・将来計画としてEIC ( Electron-Ion Collider )が検討されている。