発表用スライド - 高エネルギー原子核実験グループ

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LHC-ALICE実験のための
TRDプロトタイプの性能評価
筑波大学自然学類物理学専攻
200410443 横山広樹
指導教員 中條達也
QGPの物理
2

量子色力学(QCD)の特徴


クォークの閉じ込め
漸近的自由度
•ハドロンの高温高密度状態を作るとクォークは核子による閉じ込めから
解放され、クォークとグルーオンが自由に飛び回る状態に相転移する
•QGP(クォーク・グルーオン・プラズマ)状態
加速器による高エネルギー重イオン衝突実験において実現できる
LHC-ALICE実験
3
LHC加速器


CERNに建設された世界最大の加速器、2008年夏開始
核子対あたりの重心系エネルギー5.5TeVの鉛+鉛衝突,
重心系衝突エネルギー14TeVの陽子+陽子衝突が可能
ALICE実験
 鉛+鉛衝突によるQGP研究に特化した実験プロジェクト
ALICE
実験
LHC-ALICE実験によってQGP相で起こる現象について
明確に調べることができると期待されている
研究背景
4


重イオン衝突実験において検出器への要求の一つに、粒子識
別・飛跡検出がある
電子の識別と飛跡の検出のためにALICE実験では遷移放射検出
器(TRD)がインストールされている
•QGP生成
•カラー電荷によるデバイ遮蔽:J/ψや
Υ生成の抑制
•J/ψやΥのdi-electronへの崩壊
TRDは1~100GeV/cの運動量を持つ電
子と大きなバックグラウンドとなるパイ中
間子との識別に適している
TR(遷移放射)
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
相対論的な荷電粒子が誘電率の異なる物質間を通過する際のX線放射


通過前後での荷電粒子の作る電場は不連続となるので、その電場を補うとき
に放射が発生する
全放射エネルギーはローレンツ因子γに比例する
TR-photonの効果が顕著
TR強度
αz 2 ℏω
W=
γ
3
遷
移
放
射
強
度
運動量
•大きいγでは放射光の干渉が起こるため強度の飽和が起こる
•運動量1GeV/c以上の電子によって遷移放射が起こる
z : 入射粒子の電荷
 : プラズマ振動数
ローレンツ因子の違いにより
1~100GeV/cの電子とそれより重い荷
電粒子の識別にTRは効果的である
TRD-prototype
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•radiator部/drift chamber部
1. Radiator部でTR-photonが発生する。
2. Drift regionでTR-photonと一次荷電粒子が電離を起こし、
電子が発生する。
3. 電子がanodeに向かいドリフトし、anode wireに吸収される。
4. 3のときcathode padsに誘起されたシグナルを検出する。
シグナルの波高とパッドの位置、
時間から飛跡を算出する
6
FTBL実験
7

KEK(高エネルギー加速器研究機構)、富士テストビームライン

2007/11/29-12/6

3GeV/c電子ビーム
ビームエリア
•宇宙線実験では遷移放射を起こす
1GeV/c以上の電子はとても少ない
•TRDの性能をみるためには1GeV/c以
上の運動量を持つ電子ビームが必要
TRDの
•ドリフト電圧依存性
•アノード電圧依存性
•ガス依存性(Ar,Xe)
•TR-photonの吸収
•位置分解能
の評価を行った
セットアップ
8

ST1:5×5cm両読みシンチレーションカウンター

ST2:5×5cm方読みシンチレーションカウンター

ST3:8×10cm方読みシンチレーションカウンター

DF1,2:8×24cm両読みシンチレーションカウンター

Pb-Glass:鉛ガラスカウンター(EMカロリーメータ)
トリガー
シグナル
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すべてのイベントについてパルスの時間分布の平均を求め、
そのグラフから、各パラメータ(ドリフト時間、増幅領域での波高など)を決定する。
1イベントのパルスの時間分布
Xe+CO2(85,15)ガスの
ラディエータあり/なしの平均波高
波
高
青:without radiator
赤:with radiator
時間
TR-photon
増幅領域での波高
平
均
波
高
ドリフト時間
さまざまなパラメータを
9
取りだすことが可能
Drift Region
Amplification Region
アノード電圧依存性
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アノード領域での波高と増幅率は比例関係があるので、波高とアノード電圧の相
関を見る。
アノード電圧vs増幅率
Ar+CO2(85,15)
アノード電圧
黒:1500V
赤:1450V
緑:1400V
青:1350V
黄:1300V
平
均
波
高
時間
増
幅
領
域
で
の
波
高
青:Ar+CO2(85,15)
赤:Xe+CO2(85,15)
アノード電圧
電子雪崩による増幅率はアノード電圧の指数関数として近似することができる
10
ドリフト電圧依存性
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電子のアタッチメントによる
シグナルの減衰
ドリフト速度
a/bをattachment
の指標とした
b
a
a/b
ド
リ
フ
ト
速
度
青:Ar+CO2(85,15)
赤:Xe+CO2(85,15)
ドリフト領域の電場
ドリフト速度とドリフト領域での電場との線形
性が見え、Arガス中のほうがXeガス中に比
べ、電子のドリフトが3倍速い
電子の滞在時間
水素や酸素によるシグナルの減衰は電離電子の
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チェンバー内に滞在する時間に大きく依存する
TR-photonの吸収
青:without radiator
赤:with radiator
before
12
after
•シグナルの減衰による効果を補正
•ラディエータありのグラフとなしのグラフの差を
取り、時間軸をDetectorの厚みに変換した
(TR-photonによる波形)
•指数関数によるfitのSlopeからそれぞれのガス
でのabsorption lengthを計算した
TR-photonの吸収
吸収長(absoption length)は
89mm(in Ar) 
 

10mm(in Xe)
青:Ar+CO2(85,15)
赤:Xe+CO2(85,15)
検出器の厚み(mm)
TRDはPIDの要求より多くのTR-photonを吸収
する必要があるのでガスの選択としてはXeの
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ほうが適当である。
飛跡検出器としてのTRDの性能
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入射角度20°
入射角度20°
重心計算に
よって位置
を求める
パッド番号
パ
ッ
ド
番
号
時間
時間
入射角度20°
入射角度
1pad(=8mm)
分解能
0°
391.0±10.7um
10°
604.5±28.4um
20°
1071±22um
30°
1614±45um
この点で飛跡を引く
この点と飛跡の差
のばらつきを見る
パッド方向の位置分解能は
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入射角度0度で391umとなった。
まとめと今後の課題
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

まとめ
ALICE実験のためのTRD prototypeの性能を調べた





価格
シグナルの増幅率はアノード電圧の指数関数として近似
することができる。
ドリフト速度
ドリフト速度は、電場とガスの種類に依存する。
減衰
シグナルの減衰はドリフト時間に依存する。
TR-photonの吸収長はXeで10mm、Arで89mmであった。
吸収長
位置分解能は入射角度0度で391umとなった。
Arガス
Xeガス
50yen/L
2500yen/L
×3
×1
×1
約×3
89mm
10mm
Xeガスの方が適しているが、シグナルの減衰が大きいため
ガスの純度に注意を払わねばならない

今後の課題
ガス中の水素や酸素による吸収が大きかったため、それを
除去したうえでより良い実験を行う。
 PIDの能力を定量的に評価する。

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BACK UP
PRF
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Energy Deposit
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Xe
Ar
Energy deposit (zone)
18
Xe
Ar
Resolution
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Angle vs resolution
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FTBL
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Beam
Area
Absorption length
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Gain vs anode voltage
23
質量とローレンツ因子の関係
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  1 1  2
p E
 
p 2 m2  1
2000(electron)
 (@1GeV / c)  
10( pion)
運動量が同程度の電子とパイ中間子のローレンツ因子
は、
1GeV/c以上で200倍違う
One event
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
g\gpaperfig\TRDpulse.mov