Transcript 20150627gcp

地方都市「消滅」を乗り越える
~岐阜県山県市からの提言~
シンポジウム
「地方消滅」時代の新しい地域福祉のあり方
求められる協働・教育・協創のメカニズム
2015年6月27日(土)14:00~16:30
美 山 中 央 公 民 館
主催 : 岐阜の地域福祉実践・研究ネットワーク
GCP-Nets
(岐阜の地域福祉実践・研究ネットワーク)
とは
• 設立趣意書より
• 地域福祉とは、私たち一人ひとりが幸せに生きたいという願いと生き方
• 私たち一人ひとりが、持続可能な地域社会づくりに参画し、新しいつながり
を形成していく
• 地域を基盤としたソーシャルワーク実践者の育成
• 実践から抽出されたエビデンスを理論化していく実践者・研究者のつどい
出発点 : 山県市をどのように捉えるのか
• 都市近郊の小規模コミュニティ
• コミュニティ=構成員が何らかの役割をもって活躍できる場
⇒「主体化」した人材が核となって、つながりながら、
コミュニケーションを重ね、住民と行政、企業が互いに働きかけ、
活動するのかを提案していく場
• どこにでもある≒一般化できる≒強みである
調査の視点 : ストレングス(強さと良さ)
•山県市には山県市独自の「豊かな土壌」がある
なので、種を蒔けば、芽が出るし育つ
•コミュニティの「豊かな土壌」とは、
長い歴史の中ではぐくまれた文化、誇り、人へ
の信頼や助け合いの精神などをイメージ
学生による調査(2014夏) : 「良さ」を発見する
• 地域で目指す目標: 山県市の児童センター、学童保育、児童遊園地
など、子どもの集まる場所の安全・安心を確保する方策を提言する。
提言を実現するために学生ができることを具体化し、「新しい公共」
の担い手としての学生の役割を明らかにする。
今回の山県市フィールド調査の概要
期日:9月11日(木)10:00~12日(金)16:00
時
分 主なねらい
A班(ネコにゃん)
9 : 45 山県市役所集合
10 :
C班(チーム梨)
同左。市役所内会議室借用。
0 市役所:久保田課長に挨拶
10 : 30 水栓バルブ企業見学
B班(チームB)
同左。調査の概要とスケジュールの確認後、出発。
オンダ製作所(52-2244)
水生活製作所(23-0571)
花村製作所(52-1316)
12 :
0 昼食休憩・移動
同左。各自。
13 :
0 公的機関調査①
青波福祉プラザ(52-2512)
四国山香りの森公園(22-5400)
文化の里古田記念館(36-1023)
15 :
0 公的機関調査②
高富中央公民館(22-3351)
山県市社協(52-2800)
歴史民俗資料館(36-3339)
18 :
0 グリーンピアみやま
同左
福祉施設等に勤務するゼミ卒業生と交流
19 : 30 卒業生と語る会
6 : 30 起床 ・ 朝食 ・ 掃除
同左
8 : 30 出発
同左
9:
0 公的機関調査③
12 :
0 昼食休憩・移動
13 :
0 公的機関調査④
子どもげんきはうす(23-2323)
伊自良苑(36-1020)
同左
保健福祉ふれあいセンター(22-6838)
ピッコロ療育センター(22-3129)
15 : 30 山県市役所帰着
同左
16 :
同左
0 解散
高富児童館(22-4750)
シンポジストの紹介
• 林 宏優氏 (山県市長)
山
県
市
の
未
来
と
行
政
施
策
• 古田 善伯氏 (中部学院大学学長)
生 涯 健 康 と 運 動
• 飯尾 良英氏 (中部学院大学 人間福祉学部長)
地 域 に お け る 福 祉 実 践 ~ G M T 考
• 丹羽 英之氏 (岐阜の地域福祉実践・研究ネットワーク会長)
ソーシャル・キャピタルとしての市民と山県市地域福祉推進市民会議
私たちの幸福度 :
内閣府の調査の柱
• 日本人の幸福感にかかる尺度で共通するキーワード:
カネ ・ 健康 ・ つながり
• カネ・・・子育て支援事業、地域振興券、前期高齢者のショート就労
• 健康・・・プライマリケア・システムとヘルスプロモージョン
• つながり・・・ソーシャル・キャピタルとエンパワーメント
キーワード①:
カ ネ
医療費抑制の観点から
• 「ケア」志向の在宅医療
患者の思いや価値観を変えることで、客観的状況に沿う健康
観や健康イメージを創造していくことが大切な今後の課題
• コミュニティヘルスのある社会
高齢者も障害者も治らない疾患を抱えた人も子どもも若者も、
誰もが包摂され、自分らしく生き生きと幸せに暮らせる社会
「たまり場づくり」
プライマリ・ケア(家庭医診療)の世界で進展
• 佐久総合病院と佐久医療センター~農村医療のベストプラクティス
• 「暮らしの保健室」・・厚労省の在宅医療連携拠点モデル事業
• コミュニティカフェ「元気スタンド・ぷリズム」・・埼玉県幸手市・・中野
医師の活躍
• コミュニティケアを展開する「心の郷」
キーワード②:
健 康
• ヘルスプロモーション=住民自身のやる気と力を引き出すこと
• 「医学モデル」より「生活モデル」を重視する医療者は、
病院の外に「相談の場」があることが必要だという。
• 今まで病気をもちながら生きてこられたことを賞賛し、これから、何があ
れば安心して暮らせるかを共に考えていく。
• 自分の自信を取り戻し自分のこれからをきちんと設計していけるように
支えることが、プロに求められている。
高齢者が役割をもって輝く エンパワメント
• クリニックの患者である90歳の男性。ここ数年で認知症が進んでき
ているものの、主役を演じるときはシャンとして、役になりきって元気
にセリフを言う。役作りについて自分の意見も堂々と述べる。
• 「場」 と コーディネーター の役割
• 例えば、保健センター、社協、あるいは 山県楽しいプロジェクト!
ITを生かした制御
• 地域のアチコチにある情報を、
鮮度の高いうちに集約してタイムリーに発信する
NPO法人などの大切な役割
• 情報の鮮度を担保する手段としてITを有効に活用し
ていく仕組みを公的に支援
キーワード③:
つながり
• これまでの地域福祉は、福祉の視点で「居場所」、存在する場
所としてのコミュニティを育てようとしてきた
少し枠を広げて
• コミュニティとは、「人が人として生きていくために不可欠
な装置」である。
• コミュニティとは、所与のものではなく、それを必要とする
人々自身がつくりあげていくもの
• コミュニティは、永続的なものではなく、いつか終わりがく
るもの
• コミュニティのオープン性や閉鎖性、構成員の多様性と
いった要素も、健康に影響がありそうだ
ガヤガヤ集う コミュニケーション
• 顔を合わせての勉強会は、回を重ねるごとにテーマや内容がレベル
アップする。
• グループワーク「あったらいいな」
• 市民会議をどこでも
温故知新(歴史):
文化としての冠婚葬祭、例えば「祭り」
• 古来より「祭り」とは、そこに暮らす住民の一体化とコミュニ
ティの活性化をもたらす非日常の営みで、普段の地位や役
割の逆転がある
• 祭りは、人々の自発性、自由、平等からなる世界である「コ
ミュニタス」であり、新しいものを生み出す原動力(ターナー)
私たちの提案:
• エンパワメント(地力) と ヘルスプロモーション
(自力) と コミュニケーション(対話)
• 温故知新(歴史) と 役割(モチベーション)
• 分析・理論化(大学等) と 政策提言(参加・参画)
分析・理論化(大学等)
大学が地域へ出ることの意味の一つは、住民の声をじっくり聞くこと。
住民の声を医療・保健・福祉に反映させる橋渡し役であり、理論的整
理をする。
大学も、地域のプレーヤーの一員として、課題に取り組む
やっぱり「声を聴く」が一番のヒント
みんながエンパワーされるような方向を模索する
まとめ :
これからのコミュニティは
• 「田舎=共同体、都会=集合体」・・・ドミナントな感覚を脱皮
• 緩やかな絆を持った新しい地域社会
=「公共体(自治体を法人・組織とみて、皆で運営)」
• ルールは限定的に決め、絆を強めたり弱めたり、生態学的志向を
持つ地域社会 (ソーシャル・キャピタルの豊かな社会)
• 足りないものは、周辺の市町村と合わせて広域で考える
⇒「ハイリスクなでかいもの」を立てたら運営費等後で困る
• 「プロブレム(問題)」ではなく「ドリーム(夢)」からコミュニティの構築を
• 「身の丈に合う」保健医療福祉の構築を皆で
⇒役割が人を輝かせる
• 「助けて&つぶやき」が言える、巻き込み・巻き込まれコミュニティ力
• 専門家も必要だが、「~もどき」の力、機能を活用する
• 顔を合わせられる「居場所」をあちこちに
⇒お互い様意識の文化化
• 「つぶやき」に相乗りするのは「面白い」、予期せぬ「創発」が起きる
参 考
• 秋山美紀(2013)『コミュニティヘルスのある社会へ‐「つながり」が生み出す「いのち」の
輪』岩波書店
• 大橋謙策・白澤正和編著(2014)『地域包括ケアの実践と展望-先進的地域の取組みから学ぶ-』
中央法規
• 大橋謙策編著(2014)『ケアとコミュニティ』ミネルヴァ書房
• 日本地域福祉研究所編著(2015)『コミュニティソーシャルワークの理論と実践』中央法規
• NPO法人子育てひろば全国連絡協議会編著(2015)『詳解 地域子育て支援拠点ガイドラインの
手引第2版』中央法規
• 森臨太郎(2013)『持続可能な医療を創る』岩波書店
• 田村由美(2012)『新しいチーム医療』看護の科学社
• 髙橋紘士・武藤正樹編集(2013)『地域連携論−医療・看護・介護・福祉の協働と包括的支援』
オーム社
• 葛西龍樹(2013)『医療大転換:日本のプライマリ・ケア革命』ちくま新書
• 本田 美和子・ロゼット マレスコッティ ・イヴ ジネスト(2014)『ユマニチュード入門』医学書院