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あれから12年
震災が私にくれた
“つながり”
池田正行
95年初めの私
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38歳,医師として13年目
重症心身障害者の生活を支える仕事
施設勤務3年目
診療と地域社会の関係を意識
パソコン通信を始めた
災害医療
– 国境なき医師団やAMDAの活動
– 1993年北海道南西沖地震
私と神戸のつながりはなかった
• ハイカラな港町
• 関西は縁遠いところ
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中高の修学旅行で京都・奈良
学会で大阪を一度だけ訪問
箱根以西には親戚なし
阪神地域出身の大学同級生が4人
神戸には訪問歴なし
では,なぜここへ来たのか
• 災害医療への関心
– 日常診療以外に社会貢献ができないか
– 一生に一度の貴重な機会
• 職場環境
– 診療に比較的余裕があった
– 職場の同僚の伝手
– 上司は無理解
• 家族
– 妻:そんな“危ないところ”,“何もあなたが”
– 父:“行け!”
つながりのはじまり
• 職場の同僚:高木俊治医師(10歳年上)
– 大阪出身,関西に友人多し,土地勘あり
– クリスチャン:YMCA関連のボランティア
• すでにクリスチャン関連の団体が西宮体
育館に
• 高木医師が先に:1/23-25
• 私:1/26-31
“つながり”に大きな影響を与える
情報配送(ロジスティック)の問題
• 大災害時、情報は“生もの”となる
→すぐ腐ってしまう(古びて使えなくなる)
• だから、送り手、受け手、配送手段が、す
べてタイミングよく動く必要がある
• しかし、大災害時には、全てが機能不全
– 被災地の中は命と生活の維持で精一杯
– 間をつなぐ交通路・通信手段の途絶
– 被災地の外からは中の様子がわからない
情報配送の問題の具体例
• 物:援助物資
– いつ、どこで、何が、どのくらい足りないのか?
• 人:ボランティア
– いつ、どこで、どんな職種が、何人必要なの
か?
• サービス:医療、福祉
– どこの診療所で、何科の診療が、何時から
– どこの銭湯が、何日に、何時から何時まで
意味のあるつながりの必要条件
• 送り手と受け手が揃っている
• 送り手と受け手のつながりがある
– つながりとは単なる通信線ではない
– 間に立つ人やその間の信頼関係
• つながりの中を流れる情報の内容
• 情報が流れるタイミング
情報配送体制
の問題点
送り手,受け手,仲介者
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送り手側の人手・時間・手段不足
送り手側の受け手に関する理解不足
間に立つ部門の双方に関する理解不足
受け手側の人手・時間・手段不足
受け手側の送り手側に関する知識不足
情報品質管理の基本方針
• 情報自体が生物(なまもの)
• 腐ったものは使い物にならないだけでなく損
害を起こす
• 傷んだ情報,傷みそうな情報は出さない
• 送り手、受け手の両方に吟味の目が必要
救援物資:鳥取県が断る方針
仕分けで本来業務に支障
災害の発生直後に被災地に届く救援物資について、
鳥取県は、個人からの物品提供を原則として断る方
針を決めた。義援金での支援を求めることとし、改定
作業中の地域防災計画に盛り込む。新潟県中越地
震(04年10月)で、自治体職員が大量の物資の仕
分けなどに追われて本来の活動に支障が生じたこと
や、無償で配られる物資が被災者を助ける半面、地
元経済の復興を妨げたことを踏まえた方針。同様の
措置は複数の自治体が検討中で、「善意」の届け方
を再考する動きが広がりそうだ。
小千谷市では、個人からの救援物資がピークだった11月上旬ごろには、職
員約440人中、約30人が物資の対応に追われた。それでも人手は足りず、各
地から来たボランティアや被災者救援に派遣された自衛隊員ら計約50人も加
わって、団体からの救援物資の開封や仕分け、搬入作業にあたったという。ま
た、同市では県内外から届いた大量の物品が無料で配られ、一部商店の売り
上げが落ちるなど被災地の経済復興に影響を与えたという。
鳥取県はこうした問題を独自に調査。人手が足りなくなる緊急時、個人の救援
物資を仕分けし、被災者のニーズに応じて配布するのは不可能と判断した。
「善意を無にすることは極力避けたい」として、無駄なく配分可能な義援金によ
る支援を求めることにした。
災害時に必要不可欠な物資は、他の自治体や企業との応援協定に基づき調
達を図る。また、被災地の経済復興を後押しするため、物品、食料品は「できる
だけ地元から調達する」方針だ。
長岡市も、中越地震の経験を踏まえて、同様の方針を地域防災計画に明記
することを決定済み。同じく新潟県南魚沼市でも検討が進んでいる。鳥取県防
災危機管理課は「せっかくの善意が無駄になっている。義援金での協力を願い
たい」と話している。【竹内良和】 (毎日新聞 2007年1月7日)
救援物資よりも義捐金
義捐金よりも観光旅行
2004年中越地震と私
密接なつながり
• 父の実家,池田家の墓は新潟
• 1999年-2003年に新潟勤務
• 多くの友人,知り合いが新潟に
知らせを聞いた時の私の気持ち
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また行くの?と聞かれて
行ってはみたいが
現地で自分が何ができるか?
被災地で所属できるチームがない
1週間以上の休みが簡単に取れない
まず現地の状況を知る必要がある
– 自分の居場所があるかどうか
私個人から見た比較
震災
現地入り
滞在
現地伝手
活動内容
足
通信手段
携帯電話
東灘
1995/1/17
9日後
1週間
組織
医療
徒歩+バイク
パソコン通信
なし
小千谷
2004/10/23
13日後
3日間
個人
医療+他
自家用車
ウェブ+メール
あり
通信手段普及の変遷
世帯普及率
携帯電話
パソコン
インターネット
1995 2004
10.6 93.6
15.6 77.5
0 88.1
数字は%
つながりの基本
道路状況が
知りたかったが
• TV,新聞では有用な情報なし
• ポータルサイトでも道路情報なし
• ネットは?国土交通省→道路局→北
陸地方整備局→長岡道路事務所は後
日判明
情報がなかった?見つけられなかっ
た?
• 被災地内での内的因子:心理と行動の問題
– 現地実況優先:倒壊家屋,犠牲者,避難所
• 被災地内での外的因子:時間と人手の問題
– リアルタイムで更新するマンパワーの欠如
• 被災地外での認識の問題:情報発信側と受信側
通信インフラの整備だけでは対応不可
能!
情報不足の中で役立ったつながり
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新潟で開業している大学の同級生:28年前~
兄弟子(大学の先輩の存在):25年前~
住之江公民館救護所の経験:10年前~
家庭医メーリングリスト(TFC):8年前~
いざという時役立つのは,
長年育ててきたつながり
いくつかの提案
• 国道事務所以外の役所が道路情報を集めて,
定期的に報道発表する
• 完全なものは期待しない(発信・受信双方で)
• 道路・地理関係者幅広く募集し,活動してもらう
→自分でもできることを発見してもらう
– JAFに仕事をしてもらいながら
– ゼンリンなどの地図会社
– 運送会社
コーディネーター
人と情報のつながりの交通整理役
• 医師・看護師とコーディネーターの類似点
– ふだんから,様々な立場の人の調整役
– 大切な命やお金が絡むリスクの多い仕事
– マニュアルが通用しない仕事
• 診療ではなく,支援活動の調整役として
• 機能分担の問題
• 引継ぎの問題
情報の配送体制と品質管理:
災害コーディネーターと同様の悩み
• 中の人間と外の人間の利点と欠点
• どういう人がいいか?
– 背景(職業、性別、年齢、家族構成、被災度)
• 固定制?交代制:引継ぎの問題
• 複数の分担制?
• “災害コーディネーター”との兼任の問題
実際の診療:地域医療の問題が短期
間に凝縮した形で現れた
• 急性期の診療はすでに終息
• 公衆衛生学的問題
– インフルエンザ
• 生活習慣病のコントロール悪化
• 避難所での生活の質の低下
– プライバシーの欠如
– ストレス:騒音,睡眠不足
• 高齢者・精神障害者の介護問題
災害医療対策の鍵
• 地域外のバックアップ勢力確保:普段からの
交流
– 自治体レベル:災害姉妹都市
– 個人レベル:地域OB・OG
• 地域の外を知る
– 明日は我が身と災害現場を訪れる
– どこに誰がいてどんなことを考えているか
結局は,地域医療の余力をネットワークの力で高めて
いくこと
救護所で生まれたつながり
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全国いろいろなところから
いろいろな職種の人が来た
志を同じくする人々との出会い
困難な状況の中で一緒に仕事をした
→信頼関係の確立
住之江公民館の後に生まれた
疑問点と展望
• ずっと重症心身障害診療だけいい
の?
– “専門性”の弊害への懸念
• 閉ざされた世界での一人医長の限界
– より広い地域医療へ
• 別の診療現場で,
新しいことを学ぶ
95年以降の私
• 96:ホームページ作成:BSE問題情報提供
• 99:国立犀潟病院(新潟県)
– 重症心身障害者,精神疾患患者の内科診療
– 病理解剖
– BSE問題への関わり
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01:日本で狂牛病パニック
03:医薬品医療機器審査センター
04:医薬品医療機器総合機構(PMDA)
04:中越地震
医学教育地方巡業のあゆみ
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学生時代からの憧れ:武者修行,他流試合
2003年7月:広島(開業医中心の勉強会)
2004年:5回(名古屋3,岡山1,横浜1)
2005年:9回(広島1,新潟1,静岡1,名古屋2,
山口1,香川1,東京1,岡山1)
• 2006年:16回(広島2,名古屋2,島根1,香川
2,新潟1,山口1,福岡1,岡山1,埼玉2,東
京1,札幌1,大阪1)
開催地と回数
地域
回数 地域
名古屋
7 札幌
広島
4 松本
岡山
3 静岡
高松
3 横浜
防府
2 大阪
新潟
2 福岡
東京
2 島根
埼玉
2
回数
1
1
1
1
1
1
1
2006.9月-の巡業予定
2007/1/13:松本(長野中央病院+松本協立病院)
2006/12/2-3:高松(TFC高松)
2006/11/25-26:広島(広島市民病院)
2006/11/11-12:大阪(家庭医療学会講演)
2006/11/3-4:札幌 (勤医協中央病院)
2006/10/22-27:ダブリン(コクランコロキウム)
2006/10/21: 埼玉(東埼玉病院)
2006/10/14-15: 名古屋(PCFMネット)
2006/10/7:東京(I-CUBE:医学生・研修医)
2006/9/30-10/1:岡山(岡山大学医学部学生)
2006/9/23-24:福岡(飯塚病院)
2006/9/16-17: 防府(自治医大山口県人会)
2006/9/1-8:グラスゴー(欧州神経学会議)
今に生きているつながりの数々
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父の実家、墓、新潟
家族、小中高学校の同窓
大学の同級生、同窓生
転々とした職場の縁
90-92年のスコットランド
95年の住之江公民館
それ以降もたくさん
心の傷は消すことはでき
ないかもしれないが,
癒すことはできる。
震災が自分にくれたもの
を考えることは、癒しの有
力な一手段になりうる。
震災が私にくれたもの
時のつながり,人のつながり
知恵のつながり(教育)
世代のつながり(永遠の命)