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裁判所からの
「勉強会のテーマ」
についての説明
辰巳ダム
治水関係
2013年2月20日
進行協議形式勉強会
原告説明者: 上野鉄男
1
治水の勉強会のテーマ
(1)基本高水ピーク流量の算定過程
・①対象降雨量の算定と、②対象降雨波形の選定(異
常な降雨波形を棄却するための基準の設定)の共通
点と相違点
・上記①と②の両段階における確率分布モデルの選択
及びジャックナイフ推定の意義と共通点と相違点
(2)基本高水ピーク流量の検証
・検証方法としての比流量検討の意義と妥当性
・流量確率評価計算において必要となる流量観測資料
の質と量
(3)旧基準所定のカバー率50パーセント以上の定め
・新基準における理解
・一定の計算過程を経て算出された流水量のカバー率
50%をもってピーク流量とすることの合理性
2
(1)基本高水ピーク流量の算定過程
①対象降雨量の算定と、②対象降雨波形の選定(異常な降雨
波形を棄却するための基準の設定)の共通点と相違点
対象降雨量の算定
対象降雨波形の選定
(棄却基準の設定)
共通点
推定するもの
確率降雨量
同左
根拠
中小河川計画の手引き(案)
同左
確率分布モデ
ルの選び方
①適合度を評価
同左
②安定性を評価
同左 ※1
※1:被告らは安定性を評価
していない。
相違点
求める推定値
計画降雨量(2日雨量)
不偏推定値(ジャック
ナイフ法)
棄却基準降雨量(3時間雨量)
不偏推定値(ジャックナ
イフ法)+推定誤差(同)
3
(1)基本高水ピーク流量の算定過程
①適合度評価と②安定性評価の両段階における確率分布
モデルの選択についての共通点と相違点
対象降雨量の算定
対象降雨波形の選定
(棄却基準の設定)
共通点
①適合度評価
一定水準の適合(SLSC
0.04以下)するモデル
同左
②安定性評価
ジャックナイフ推定誤差
が最小となるモデル
同左 ※2
相違点
なし
なし
※2:被告らは安定性を評価していない。
4
(1)基本高水ピーク流量の算定過程
①適合度評価と②安定性評価の両段階におけるジャックナイフ
推定の意義の共通点と相違点
対象降雨量の算定
共通点
推定値
推定誤差
対象降雨波形の選定
(棄却基準の設定)
統計量の偏倚を補正し
た不偏推定値
同左
大小でモデルの安定性
を評価
同左 ※3
相違点
求める数値
確率分布モデルで推定
される確率水文量の推
定値
サンプルを評価する尺
度である上限値(不偏
推定値+推定誤差)
※3:被告らは安定性を評価していない。 5
(1)基本高水ピーク流量の算定過程
①対象降雨量の算定
確率分布モデルの数
安定性を評価
被告
原告
極値3分布
12分布
有り
同左
6
対象降雨量
100年確率の基準点流域平均2日雨量
250mm
300mm
SLSC=0.040
Gev 272
SLSC=0.024
原告の主張
12分布のうち
0.04以下
Gumbel 314mm
21.0の推定誤差
30.4の推定誤差
LN3Q 284mm
LP3Rs 284
LogP3 267
IshiTaka 284
平均値に近く
信頼性が高い
350mm
SLSC=0.035
被告の主張
極値3分布のうち
0.04以下
孤立した数値
LN3PM 284
21.6の推定誤差
30.3の推定誤差
30.2の推定誤差
27.6の推定誤差
7
27.3の推定誤差
(1)基本高水ピーク流量の算定過程
②対象降雨波形の選定(棄却基準)
確率分布モデルの数
安定性を評価
被告
原告
12分布
12分布
無し
有り
8
対象降雨波形の選定(棄却基準)
100年確率の基準点流域平均3時間雨量
被告の主張 下限
81.0mm
10分布の合算の中央
111.45mm
27.3%の
推定誤差
原告の主張
上限
141.9mm
27.3%の
推定誤差
誤差の範囲が
大きく、
安定性が悪い
Gumbel分布
108.4mm 117.0mm 125.6mm
7.4%の
7.4%の
推定誤差
推定誤差
誤差が小さく
安定性がよい
9
(2)基本高水ピーク流量の検証
検証方法としての比流量検討の意味
計画洪水のピーク流量を流域面積で除したものである。
流域の面積に応じた傾向をみるだけである。
降雨と流域の特性は含まれない。
降雨特性:降雨量、時間分布や地域分布
流域特性:流域の形状(細長いか放射状か)、河道の勾配など
数値単独では妥当かどうかわからない
「基準」では、「比流量を用いて、本支川バランス、上下
流バランスや流域の気候特性や計画規模が同規模の
他河川とのバランスを考慮する」
上下流、本支川、類似河川間で整合性に留意するための配慮
生起確率をチェックできない → 治水安全度がわからない
→ 基本高水ピーク流量の妥当性を判断できるものではない!
10
(2)基本高水ピーク流量の検証
内川ダム計画時点の比流量→妥当な範囲のうちにある
→辰巳ダムは要らない?→検証にはならない
2030 m3/秒
1280 m3/秒
辰巳ダム計画時点
1750m3/秒→11.7
内川ダム計画時点
1600m3/秒→10.7
検証する際の上下限の幅が大きい。
例えば、1280 ~ 2030 m3/秒(750 m3/秒)の幅がある。
⇒ 検証にはならない。
51
11
11
流量確率評価計算において必要となる流量観
測資料の質
犀川での流量観測
観測者: 石川県河川課
観測地点と観測開始年:
桜橋測水所(犀川大橋地点)昭和44~46年の3年間
下菊橋測水所(犀川大橋地点) 昭和53年~
犀川ダム 昭和41年~
内川ダム 昭和49年~
浅野川放水路 昭和50~
桜橋測水所と下菊橋測水所のデータの合算:
同質のデータと判断できる、合算できる。
下菊橋データ年数+桜橋データ年数3年
12
(2)基本高水ピーク流量の検証
流量確率評価計算において必要となる流量観測資料の量
被告の主張
宝教授の回答(北陸地方整備局の質問に答えて)
「統計的にある程度の精度(正確さ)を持って確
率分布関数を定めるためには30~40年程度
のデータ数が必要であることが国内外の水
文統計学の研究によって知られています。」
ある程度の正確さという意味は、
13
流量確率評価計算において必要となる流量観測資料の量
ある程度の正確さとは?
(琵琶湖流域の極値降水量データへの適用)の場合
50~200年確率水文量
データ数(年最大)
推定誤差
20
13~14%
30~40
10%以内
70
6~7%
140
4~5%
統計的にある
程度の精度
(正確さ)
計画策定の平成16年7月時点で26あるいは29年間のデータ
(年最大)があった。推定誤差が10%に近い推定ができた。
14
寶・高棹:水文頻度解析における確率分布モデルの評価規準,土木学会論文集,1988.
(3)旧基準所定のカバー率50パーセント以上の定め
新基準における理解
旧基
【改定概要】複数のハイドログラフ群からカ ※1
準と同じ
バー率により基本高水を決定する従来の
方法から、※1地域分布と時間分布の検討
から対象降雨の棄却を行い、それらにより ※2 最大
算定されたハイドログラフ群の中から※2 値を採用
ピーク流量が最大となるハイドログラフを基
本高水とする方法に変更。また、この方法
で決定した基本高水のピーク流量の妥当
性を合理式や※3流量確率で検証する旨
※3 検証
あわせて記載。(新基準p.226)
を要求
15
(3)旧基準所定のカバー率50パーセント以上の定め
新基準における理解
【改定理由】カバー率は過去に幾つかの水系で基本高水を算
出した際、基本高水のピーク流量が検討に用いた全ハイド ※1
妥当な意
ログラフ群のピーク流量をどの程度充足しているかを結果と
味がある
して算出したものであり、 ※1過去60~80%のものが多い
ことを示しているにすぎない。従って、そもそもこの値をもっ ※2
決め方が
て基本高水を算出するものではない。
あいまい
現在、カバー率で基本高水を決定していないにもかかわ
らず、解説の中に記述されている※2カバー率の実績(60
~80%)があたかも基本高水決定の根拠の一つであるか
のように誤解されているため、表現の適正化を図った。なお、
カバー率の記載に代えて、対象降雨の地域分布と時間分布
の検討から基本高水を決定する方法を明記した。(新基準
p.226)→ カバー率の考え方そのものを排除したのは問題
16
(3)旧基準所定のカバー率50パーセント以上の定め
新基準における理解
対象降雨量 1/100
↓
ピーク流量 生起確率?
【流量の生起確率の判断基準の変更】
旧基準 ピーク流量を、カバー率(50%以上)で決定
新基準 ピーク流量の最大値を採用し、流量確率で検証
生起確率の検証方
法が変わった
17
新基準では
降雨量の生起確率を100年確率とし、流量の生起確率を100年確率とするために
降雨量は100年確率としたが、
降雨の生起確率が分からない
地域分布、時間分布による検討
引き伸ばし後の対象降雨群
棄却後の対象降雨群
ハイドログラフ群
棄却後に残った最大値を
無視することはできない
犀川では24個
降雨の生起確率が分からない
流量の生起確率が分からない
最大のピーク流量値
検証(流量確率評価、比流量)
流量の生起確率が分からない
流量の生起確率を検証
比流量で生起確率が分からない
基本高水の決定
18
旧基準では
降雨量の生起確率を100年確率とし、流量の生起確率を100年確率とするために
引き伸ばし後の対象降雨群
降雨量は100年確率としたが、
降雨の生起確率が分からない
地域分布、時間分布による検討
棄却後の対象降雨群
統計的手法で解決。
ハイドログラフは少なくとも
10個以上、犀川では24個、
ピーク流量の集団を代表する、
尤もらしい値を中央値と想定
カバー率50%以上
降雨の生起確率が分からない
ハイドログラフ群
カバー率50%値以上
カバー率50%の流量の生起
確率はほぼ100年確率
基本高水の決定
19
(3)旧基準所定のカバー率50パーセント以上の定め
一定の計算過程を経て算出された流水量の50%以上の
流量をもってピーク流量とすることの合理性
降雨の3要素のうち、2要素の確率水文量が決まらない
→引き伸ばし降雨の数だけ、ピーク流量値が求まる
→100年確率流量がわからない
→解決手法の一つが「カバー率」
ピーク流量値の候補を大きいもの順に並べると、ピー
ク流量とカバー率がほぼ直線関係にあるので、平均
的なピーク流量値、つまり、カバー率50%の中央値が
尤もらしい100年確率流量の値と考えられる 。
20
中小河川計画の手引き(案)の検討例での
基本高水の決め方
計画規模の決定
降雨量
対象降雨量
引き伸ばし
実績降雨群
対象降雨群
地域分布、時間分布による検討
棄却後の対象降雨群
ハイドログラフ群
流量確率による検証なし
カバー率50%値以上
既往洪水規模のチェック
基本高水の決定
21
中小河川計画の手引き(案)の検討例での
基本高水の決め方
カバー率
50%程度
22
(3)旧基準所定のカバー率50パーセント以上の定め
一定の計算過程を経て算出された流水量の50%以上の流
量をもってピーク流量とすることの合理性
①旧基準のカバー率を使わないで
②新基準を用いて、最大値を採用すると、
③棄却基準を厳格にして、流量確率評価による
検証をしないと、
④実績降雨の「引き伸ばし」によって、
⑤異常な降雨による洪水を排除できないことが
ある。
犀川の例で説明
23
(3)旧基準所定のカバー率50パーセント以上の定め
一定の計算過程を経て算出された流水量の50%以上の流量
をもってピーク流量とすることの合理性
犀川の大雨と洪水の特徴
犀川の雨量データには、降雨の原因(台風と前線性)の異な
るものが混在
→降雨の原因で降雨の3要素が違うが、いずれも大きな雨の
原因である。引き伸ばすとどうなるか?
前線型のピーク流量は小さく、台風時のピーク流量が大きい
→引き伸ばしで、前線型が台風型に変わることはないのか、台
風型になるとピーク流量が大きくなる!
24
犀川の例
実績2日雨量
前線性の大雨
H.8.6.24型
267.3mm
ダム調節無し
最大流量
大洪水にならない
346m3/s 弱い雨が広く長時間続く
台風型の大雨
S.36.9.15型
(第二室戸台風)
169.5mm
700±50
H.10.9.21型
(台風7号)
181.5mm
864
S.47.9.16型
(台風20号)
低気圧の雨
H.7.8.30型
197.3mm
156.6mm
強いが短時間の豪雨
大洪水になる
389
210
やや強い雨がやや長時間続く
小さな出水
25
犀川の例
2日雨量を314mmに引き伸ばした後の流量
実績2日雨量
前線性の大雨
ダム調節無し
最大流量
実績流量
314mm
H.8.6.24型
267.3mm
346m3/s
引き伸ばし後流量
711m3/s
実績流量に比較してピーク流量が大きくない
台風型の大雨
S.36.9.15型
169.5mm
2倍
700±50
2,729m3/s
H.10.9.21型
S.47.9.16型
181.5mm
197.3mm
864
実績流量に比較してピーク流量が著しく大きい
2,195m3/s
3~5倍
389
1,852m3/s
低気圧の雨
H.7.8.30型
156.6mm
210
8倍
1,741m3/s
26
実績流量に比較してピーク流量が極端に大きい
計画降雨波形図 H.8.6.24型
出典:平成14年度 犀川水系河川整備計画検討業務委託報告書(1-56頁)
27
計画降雨波形図 S.47.9.16型
出典:平成14年度 犀川水系河川整備計画検討業務委託報告書(1-52頁)
28
計画降雨波形図 H.7.8.30型
出典:平成14年度 犀川水系河川整備計画検討業務委託報告書(1-56頁)
29
犀川の例
2日雨量を314mmに引き伸ばし後
前線性の大雨
H.8.6.24型
引き伸ばし後の
3時間雨量
52mm
ダム調節無し
ピーク流量
711m3/s
台風型の降雨を引き伸ばすと、
異常な流量が算出される
台風型の大雨
S.36.9.15型
168mm
2,729
H.10.9.21型
196mm
2,195
S.47.9.16型
137mm
1,852
低気圧の雨
138mm
1,741
H.7.8.30型
時間分布が台風型
流量も台風型になる
30
犀川の例
ダム調節無し
最大流量
2日雨量
前線性の大雨
314mm
H.8.6.24型
267.3mm
346m3/s
711m3/s
台風型の大雨
S.36.9.15型
H.10.9.21型
S.47.9.16型
低気圧の雨
H.7.8.30型
169.5mm
棄却
181.5mm
棄却
197.3mm
156.6mm
棄却
台風型に変化した異常
な流量(実績の8倍)が
残った
210
1,741m3/s
31
計画ハイドログラフ群の24のピーク流量
--ピーク流量を降順に並べる--
棄却される
べき
カバー率50%値
統計的に最も確か
らしい
32
37
32
おわり
33