液体アルゴン TPC検出器の開発

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Transcript 液体アルゴン TPC検出器の開発

液体アルゴンTPC検出器の開発
早稲田大学,KEKA,岩手大学B,ETHZC
岡本飛鳥,岡本迅人,長坂優志,永野間淳二,三谷貴志,寄田浩平,
笠見勝祐A,木村誠宏A,小林隆A,田中雅士A,西川公一郎A,
長谷川琢哉A,牧宗慶A,丸山和純A,吉岡正和A,
内藤祐貴B,成田晋也B,
A.BadertscherC,A.CurioniC,S.DiLuiseC,U.DegundaC,L.EpprechtC,L.EspositoC,
A.GendottiC,S.HorikawaC,L.KnechtC,C.LazzaroC,D.LussiC,A.MarchionniC,
A.MeregagliaC,G.NattererC,F.PetroloC,F.ResnatiC,A.RubbiaC,C.StrabelC,T.ViantC
2011年5月13日(金)高エネルギー物理 春の学校@彦根ビューホテル
Introduction
TPC(Time Projection Chamber)とは
• 荷電粒子による電離電子の読み出しによ
り、その飛跡を3次元で高精度に再構成で
きる検出器
• 電離信号の大きさから、液体アルゴン中で
のdE/dxを測定することも可能
Ionization
Electron
E
Cherenkov Light
液体アルゴンの特徴・性質
•
•
•
•
電離電子(~5×104個/cm MIP)
シンチレーション光(~4×104photon/cm MIP 128nm)
電子捕獲をしない(O2の除去、純度が重要)
密度 1.39g/cm3,沸点-186℃
Physics Motivation
 νμ→νe振動におけるCP位相の測定
 陽子崩壊 p→ νK+ (250LArTPC,K1.1BR実験)
 暗黒物質探索(10LArTPC,早稲田開発研究)
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Charged
Particles
Scintillation Light
液相
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Outline
• J-PARC K1.1BR実験
– 研究動機
– 250LAr検出器とデータ、ビームライン
– 取得信号例、シミュレーションデータ
– 純度測定
• 10LArTPC開発研究@早稲田大学
– 研究動機
– シンチレーション光観測
– 電離電子増幅
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J-PARC K1.1BR 実験
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研究動機
• 核子崩壊
– 核子の寿命は新しい物理に対して重要なパラメーター
LAr検出器はp→K+νのK+の信号を直接検出可能(SUSY GUTで大きな分岐比)
シミュレーション
K+340MeV/c
Ar中の飛程~ 20 cm
停止直前のK+のdE/dxは大きい!
Simulation Study(JHEP 0704:041,2007)
Background reduction ~105
Kaon efficiency ~97%
K1.1BR実験では
LAr検出器のdE/dxによるK/π分離能力を実験的に検証する
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250LAr検出器とデータ
時間
ADC count
Anode
入射粒子の飛跡
75ch
0ch
Particle
Drift
e e
z
Real Data
Scintillation light
e
Ionization
e
Electric field
停止点
(崩壊点)
LAr
Cathode
z
y
x
崩壊粒子の
飛跡
PMT
x
• dE/dxによって、K/π分離能力を測定するために…
– Tracking Algorithmの確立(荷電粒子の飛跡、停止点の決定)
– 減衰による電荷補正←宇宙線μによる純度測定
– チャンネル間補正(電場補正、アンプ特性)
…それぞれシミュレーションデータによる検証が必要。
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取得信号例
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Beam Line Setup
Fitch Cherenkov
(π-ring,K-ring)
250LArTPC
LArBDC
BDC=Beam Defining Counter
…Beam’s Final Focus (FF)
Gas Cherenkov
TOF2
particle
TOF1
Degrader
K,π,p,e
空気
• K1.1BRのビーム
– 運動量:800MeV/c (+degrader)
– K/π~1/4、3個/1 beam bunch(6s)
• 粒子同定
– TOF1、TOF2
– Fitch Cherenkov(K/π)
– Gas Cherenkov
• トリガー条件
BDC & TOF1 & TOF2 & LArBDC
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Simulation Setup (Beam Line)
~5.3m
Degrader
BDC
K Beam
TOF1
Fitch Cherenkov(FC)
物質
厚さ
[mm]
Fitch
Cherenkov
アクリル
40
BDC
プラスチック
5
TOF
プラスチック
20,25
Degrader
鉛ガラス
125
鉛ブロック
25
LArBDC
プラスチック
5
250LAr
SUS304(蓋*)
50
液体アルゴン
836.4
TOF2
250LAr
• 250LAr検出器とBeam Line上のそれぞれの
検出器をGeant4を用いてSimulationに実装。
黒い部分は空気で満たした。
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検出器
検出器の物質と厚さ
*ただし、中心のビーム窓(210×210mm2)はハニカム構造
になっている…放射長が短い(radiation length ~ 0.16X0)
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Simulation (K+→μ++νμ)
μ+
250LAr
K+
νμ
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Geant4によるシミュレーションイベント例
10
Simulation Data
Simulation
Real
TPC Ch10
TPC Ch10
シミュレーションデータでTracking Algorithm等の評価を行っている。
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純度解析
• LAr中の不純物によりドリフト電子が捕獲される
– N (t Dri )  N 0 exp  t Dri  e 
– 40cmのドリフトには1ppb以下の純度が必要!
(1ppb ⇔ e=300s)
ある1事象の電荷とドリフト時間の関係
• 解析方法
– 容器内PMTコインシデンスによりトリガー
– 電荷とドリフト時間の関係をプロットし、
τeを見積もる。
• 純度解析結果
実験を通して(7日間)、τe>300μsを達成!
→1ppb以下の純度を常に保持!
実験開始時 : τ≒670μs( 約 0.45ppb )
実験終了時 : τ≒385μs( 約 0.78ppb )
毎時 0.002ppb 程度の純度の悪化
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純度と液体Ar注入からの時間の関係
Preliminary Plot
τ = 671 – 1.90 ( t - t0 )
ここまでのまとめ(まだ終わりません)
• LArTPC検出器での核子崩壊探索感度の実験的検証のために
J-PARCにてビームテストを行った。
• Simulation data(K1.1BR 、宇宙線信号)を作成
• 宇宙線信号から液体アルゴンの純度を測定
– 全実験期間で必要な純度(<1ppb)を達成
• Simulation dataを用いて、Tracking Algorithm等の評価
–
–
–
–
ノイズの影響
崩壊点の決定
dE/dxの見積もり
入射粒子と崩壊粒子の決定
• 実データに、Tracking Algorithmを適用し、dE/dxを算出し、
K/π分離能力を評価する。
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10LArTPC開発研究
@早稲田大学
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暗黒物質探索
• 暗黒物質探索
2相型ArTPCで2種類のシンチレーション光
を捉えることにより、直接暗黒物質探索を
行うことが出来る。
2種類のシンチレーション光
 入射粒子との反応で発生
1次シンチレーション光 ・・・
S1
 電離電子が高電場中で加速されたときに発生
2次シンチレーション光 ・・・ S2
e,γ
WIMP
anode
-
e-e e- S2
grid
particle
drift time
( S2 / S1 ) WIMP
<<
e-
drift time
( S2 / S1 ) e,γ
cathode
E
PMT1
S1・S2の比で背景事象を取り除くことができる。
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ee- S1
PMT2
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シンチレーション光観測のセットアップと信号例
 ガスAr中でのS1・S2信号の確認
anode
0.8cm
grid1
波長変換剤(TPB)を用い、Arのシンチレーション光
grid2
(128nm)を検出する。
S2
induction
field
低温で動作可能なPMTを使用。
MEG実験で使用されたものの改良版
使用したガス:純Ar(G1,純度99.9999%以上)
真空引きを行った後、ガスを流入。(常温、1気圧)
3.2cm
S1
drift field
0.7cm
e-
cathode
α線源
E
2.0cm
PMT self triggerで信号取得
PMT
信号例
induction
field
S2
grid1
S1
~8μs
grid2
α線源
Cathode(grid)
16
S2信号の電場特性
Drift E = 500 V/cm(fixed)
S2
それぞれの電場で500事象ずつデータを取得。
Averageを取りS2信号の電場特性を確認した。
S1
Induction電場とS2の関係
Induction電場 大
↓
Ar分子を励起する電離電子の数 増加
↓
S2が増加する!
Induction 電場とS2の関係
Induction E = 2.6 kV/cm(fixed)
Drift電場とS2の関係
Drift 電場 大
↓
電離電子の再結合 低下
電離電子のdrift速度 大
↓
S2が増加しピーク時間も早くなる!
………定量的な解析は現在遂行中である。
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S2
S1
Drift 電場とS2の関係
GEM + Wire読み出しセットアップ
• 暗黒物質探索を行うために、
微小な電離電子信号を取得したい。
→GEM+Wire読み出しのゲイン測定
• 使用したガス:純Ar(G1,純度99.9999%以上)
真空引きを行った後、
ガスを流入させる。(1気圧、常温、封じ切り)
• GEM間電圧 ΔV を変化させ、
それぞれ200事象ずつ信号を取得した。
grid1
Induction Field
GEM
ΔV
grid2
Drift Field
e-
e- eCondenser
(2.2nF)
Wire
Xe Flash Lamp
Cathode
Resistance
(100MΩ)
-HV
時定数τ=220msのハイパスフィルタ
• ガス増幅によるGainを次のように定義。
anode信号量
Gain 
cathode信号量
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Gain測定結果
(2)
• ワイヤー電圧は2kV/cm、2.5kV/cmとした。
GEM+ワイヤー読み出しによるGainの
ΔVGEM特性は右のようになる。
(1)
放電電圧
2kV/cm (1)
2.5kV/cm (2)
1010V
900V
(1) GEMによる放電
(2) 10L容器での放電
→クエンチャーが入れられないため 放電 しやすい。
放電電圧の直前までで、
Wire 電圧
2.0kV/cm : Gain~508 (ΔVGEM = 1000V)
2.5kV/cm : Gain~568 (ΔVGEM = 900V)
ΔVGEM
参照
現在までに、ガスAr中にて
GEM単体
Gain~89 (ΔVGEM=970V)
Wire単体
Gain~38 (2.5kV/cm)
を達成している。
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Summary & Future Plan
シンチレーション光
電離電子増幅
10L容器、ガス中にてS2を確認!
10L容器、GAr 常温・1気圧中にて、
GEM+Wire読み出しを用いて
Gain ~ 500を達成!
 Induction電場の増加に対する、
S2増幅を確認。
 Drift電場の増加に対して、
S2のピークが早くなり、
信号量が増幅することを確認した。
次の目標
気液2相型でS2を確認する!
次の目標
より高い増幅率に向けて、
 多段GEMなどを試す
 放電対策
※低温でのGain特性も調べる。
低温での高Gain・安定動作を目指す!
これらを組み合わせることで・・・
2相型TPCとして確立させ、暗黒物質探索を行いたい!
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Backup
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探索感度
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Geant4 Simulation(Beam)
sx = 0.8 cm sy = 0.5 cm
@ BDC(FF,by simulation)
from TREK experiment
x_mean=5.2cm,σx=8.2cm
y_mean=0.2cm,σy=8.3cm
@the front of 250LAr Detector
(measurement by scintillation counter)
Beam
Beam Line
~5m
• BDCでのBeam分布から1点、250LAr検出器でのBeam分布から1点をランダムに
選び、直線を結ぶことによってビーム方向を決定した。
→Beamの拡がりをSimulationに実装
• この条件の上で、LArBDCを通過した事象をSimulation Dataとして選択する。 23
擬似データ作成
NQ
1.
2.
3.
粒子のエネルギー損失をストリップ毎に計算。
drift
W値から、生じる電離電子数を見積もる。
N0
ドリフト速度から、ドリフト時間(tDri)を計算。
4.
ドリフトし減少した後に各ストリップで読み出
される電子量(NQ)を見積もる。
5.
6.
7.
NQ と tDriから信号を正規分布で生成。
電子量から、ADCカウントに変換する。
#electron→charge→voltage→ ADC data
デッドチャンネルを考慮した。
ノイズを付加する。


ペデスタルの揺らぎ(σ=2~5ADC count)
or
実データを用いたノイズ
を導入。
40cm
ee e e e e eee
e ee ee e
e
e
e
e
K
e e e
ee
μ
Electric field
Cathode
電子量
N Q  N 0 exp  t Dri τe 
Anode
σ= 3.6μs
NQ
t
tDri
W value[eV]
Drift Velocity[mm/μs]
23.3
0.8
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宇宙線信号例
シャワーが
トリガされた例
宇宙線がほぼ垂直
に抜けた例
(赤線:トリガタイミング)
ほぼ全てのチャンネル
にわたり、まっすぐな
飛跡が見えた例
多重散乱で飛跡
がまがっている例
δ線も見える
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ノイズ除去について
(1)生データ例
(2)FFTによる周波数強度 @ ch8
信号
ノイズ
200kHz以上に
大きなノイズ成分
(3)FFTフィルター前後 @ ch8
(4)FFTフィルタ後
- フィルタ前
- フィルタ後
高周波ノイズが大幅に改善
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飛跡がクリアに
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ヒット・クラスタ探索手順
ヒット1
• 閾値を超える連続した
ACDカウントの数が
一定数を超えた場合
にヒットとする。
(下図の各BOX)
ヒット2
ヒット3
閾値
ヒット3
• 隣接するヒットをつなげ
クラスタを構成
(下図の各色)
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ヒット2
ヒット1
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Comparison with data
Simulation (300事象の重ね合わせ)
0
0
Time[μs]
Real data (300事象の重ね合わせ)
300
200
100
0
20
40
60
TPC Channel
20
40
60
TPC Channel
• Kのデータとの比較
– LAr中のビームの拡がりや,ビームの到達距離などが、
Simulationによって、おおよそ再現できている。
• 今後、このシミュレーションを用いてTracking Algorithmの評価
を行っている(現在進行中)。
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気液2相型のセットアップと結果 anode
 気・液2相のAr中でのS1・S2信号の確認
grid1
extraction
4.4×10-4Paまで真空を引いた後、容器を冷やし
field grid2
ガスArを流入、10L容器を1気圧に保ったまま液化。
• 液面をextraction領域に保持。(誤差1mm以下)
(液面計・白金抵抗)
drift field
cathode
S1
extraction E
6kV/cm
S2信号が見えていない。
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S1
extraction E
0 V/cm
白金抵抗1
0.8cm
0.7cm
白金抵抗2
3.2cm
α線源
•extraction領域に高電場をかける。
(~5kV/cm : 電離電子を気相に取り出すため )
液面 : grid2 から 0.3cm
drift電場 : 900V/cm 固定
液面
2.0cm
PMT
PMT self triggerでそれぞれ
1000イベント データを取得し、
Averageを取った。
純度が悪いため電離電子が液中で
減衰しS2が見えていないと思われる。
今後純度を改善し、2相型で
電子を気相に取り出してS2
S1信号の遅い成分が見えていない。
信号を確認する。
(純度が悪いと考えられる。)
JINST 5:P05003,2010
E
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10LArTPC中のPMT
Hamamatsu R6041-06MOD
変換剤:TPB(テトラフェニルブタジエン)
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ドリフト電場とドリフト速度の関係
31
シンチレーション光(S1・S2に関して)
S2
S1
S1
anode
S2
0.8cm
grid1
S2
grid2
e光電効果
3.2cm
S1
ecathode
0.7cm
α線源
E
2.0cm
PMT
ある頻度でS1がgridに当たり光電効果を起こすと考えられる。
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電離電子増幅
暗黒物質探索を行うために、微小な電離信号を取得したい。
5kV/cm
反跳エネルギーを50keVと仮定すると、
生成される電離電子は、~10個ほど (by ArDM group)
→ 電荷量1.6e-3[fc]
PreAmp(Amptek A250)
input charge 1fC → output height 1mV
1kV/cm
Recoil Energy (MeV)
暗黒物質探索のためには、Gainが~1000必要!
増幅のためのツール
厚型GEM (T-GEM-100-400/700)
穴径 : 300 μm
ピッチ : 700 μm
厚み : 400 μm
自作の読み出し基板
材質 : 金メッキタングステン(金3%)
直径 : 30 μm
ピッチ : 5 mm
張力 : 0.45 N
GEM + Wire読み出しセットアップ
Wire – grid1
6mm
2 or 2.5kV/cm
GEM(top) – Wire
6mm
2 or 2.5kV/cm
GEM(bottom – top)
ΔV = variable
grid2-
GEM(bottom)
7.5mm
500V/cm
Cathode – grid2
10mm
200V/cm
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