netecon010511

Download Report

Transcript netecon010511

カリフォルニアの電力危機
と電力自由化
平成13年5月11日
関西電力株式会社
企画室企画グループ
電気事業における競争形態(イメージ)
2
発送配一貫電力会社
発電機能
発電会社A
発電会社B
卸売市場
送配電(独占)
送電・系統運用等のサービスは卸売・小売市
場への参入者に非差別的に提供。
販売機能
販売会社
小売市場
需要家
販売会社が電気
を市場から調達
し需要家に販売
需要家と直接
契約し販売
電気事業の自由化モデル
任意プール
発電
強制プール
IPP
発電
プール
発電
IPP
小売
需要家
・北欧(Nord Pool)
・ニュージーランド
・英国(現行)
送電
送電
託
送
配電
小売
IPP
第三者アクセス
(託送)
プール
送電
託
送
3
託
送
配電
配電
小売
小売
需要家
・英国(改革前)
・オーストラリア
・米国/加州(3大電力は
プール取引を義務付け)
小売
小売
需要家
・日本
・ドイツ
・フランス
カリフォルニア州電力自由化の背景
米国およびカリフォルニア州における自由化の背景とねらい
背景
[米国全体]
○州間の料金格差の存在
→最高/最低州:2.9倍
(日本の場合1.2倍)
○石油・天然ガス等多様で豊富なエネルギー資源
を産出
・自給率79.7%(1995年)
[カリフォルニア州]
○全米平均よりかなり高い電気
料金(1998年)
→加州:9.9¢/kWh、
全米:6.74¢/kWh
(1.5倍)
ねらい
○州の壁を撤廃して、州外の安い電気を導入
4
米国における電力自由化の経緯
連 邦 大
1978
5
州レベル
公益事業規則政策法(PURPA)
• QF※からの購入義務づけ
※QF:認定施設(qualifying facility)と呼ばれる、再生可能エネル
ギーを使用する小規模電源やコージェネレーターのこと。
1992
電気料金の高い州を中心として、
電気事業再編(小売自由化)の検討開始
エネルギー政策法(EPA)
• IPPの卸売市場への参入自由化
• 送電線へのオープンアクセス義務づけ
1996
FERC ※ Order888,889
1996
カリフォルニア州、ペンシルバニア州等
で電力再編法成立
1998
カリフォルニア州、マサチューセッツ州
小売全面自由化
※FERC:連邦エネルギー規制委員会(Federal Energy Regulatory
Commission)
⇒「卸売市場の自由化」
• オープンアクセスのルール整備、送電
部門の機能分離義務づけ
• 回収不能費用の回収許可
1999
FERC Order2000
⇒「卸売市場の競争環境整備」
• 送電線を所有・運用する事業者に対し、
地域的な拡がりを有する系統運用機
関RTOの自主的設立と参加の要請
•2001/1現在、24州で電力再編法が
成立し、内17州で自由化開始。
•自由化に慎重で、検討を中断する
州もある。
米国の電力自由化の現状
6
VT
WA
ND
MT
NH
MN
OR
ID
NY
WI
SD
NV
CA
UT
AZ
CO
WV
VA
KY
MO
DC
NC
TN
SC
AR
MS
TX
OH
IL IN
OK
AL
GA
LA
FL
AK
HI
CT RI
NJ
DE
MD
PA
IA
KS
NM
MA
MI
WY
NE
ME
(注)
州名の斜体は、電気料金が
全米平均を上回ることを示す。
:小売自由化開始(17州)
:電力再編決定(7州+DC)
:州議会、規制当局で検討中(18州)
出典:EIAホームページ等
:活動なし(8州)
カリフォルニア州電力市場の概要
電 力
会社名
販 売
電力量
需要家
口 数
発 電
設備量
最大
電力
1998年実績 1998年実績 1999年実績 1999年実績
(億kWh)
Ca -
PG&E
★
SCE
★
ISO SDG&E★
3社計
980
(39%)
903
(36%)
184
(7%)
2,067
(82%)
(万口)
454
(35%)
428
(33%)
121
(9%)
1,003
(77%)
(万kW)
(万kW)
1,112
(21%)
343
(6%)
233
(5%)
1,688
(32%)
1,942
(38%)
1,836
(36%)
332
(7%)
4,110
(81%)
その他
☆
(小計)
その他
合
2,522
(100%)
計
1,306
(100%)
5,311
(100%)
4,557
(90%)
517
(10%)
5,074
(100%)
出典: 販売電力量,最大電力…California Energy Commission,
California Energy Demand 2000-2010
需要家口数…1998 Calfornia Electric Utility Retail Sales (http://www.energy.ca.gov/)
発電設備量…Existing Generating Units at U.S. Electric Utilities by State,
Company,and Plant,as of January 1,1999 (http://www.eia.doe.gov/)
★…私営3大電力
☆…Ca-ISO全体の最大電力を示す。
・各社の最大電力は、各社毎の最大電力を示し、発生時刻は一致しない。
・各社の最大電力は、最終需要家での需要であり、ロス除き、自家発含みのデータである。
PG&E :Pacific Gas & Electric
SCE :Southern California Edison
SDG&E:San Diego Gas & Electric
7
カリフォルニア州電力供給システムの枠組み
【州内シェア15%】
州外
電源
PG&E社
水力・原子力
SCE社
原子力
【州内シェア85%】
SDG&E社
原子力
IPP火力
公営、QF等
マストラン電源としてゼロ入札
ISO
•既存3社に火力
発電設備50%売
却要請。
•3社は全ての火
力設備を州外事
業者に売却。
競争移行期間中の措置
(独立系統
運用者)
(2002.3orストランデッドコスト回収まで)
PX(電力取引所)
•既存3社には全量
PXでの電力取引
を義務づけ
PX取引占有率:85%程度
既存3社配電系統
ESP
新規参入
小売事業者
8
PG&E社
配電部門
SCE社
配電部門
SDG&E社
配電部門
3社販売シェア:80%程度
需 要 家
ISO:independent system operator、 PX:power exchange
ESP
新規参入
小売事業者
•既存3社は小売
価格を自由化以
前の水準で凍結
•ストランデッドコス
ト※を回収
※ストランデッドコスト:電力自由化により、新規参入差
に顧客を奪われることで回収が見込めなくなった
先行投資費用。回収不能費用とも言う。
カリフォルニア州卸電力市場の仕組み
取引2日前
PM6:00
数ヶ月~1年前
2時間前
金融的取引(financial)
9
1時間前
電力消費
実物取引(physical)
短期調整市場(スポット市場)
電力取引
先物・先渡市場(futures, forwards)
ブロック先渡市場(1999年6月~)
ほとんど活用されず
系統運用
1日前市場
(Day-Ahead
Market)
1時間前市場
(Hour-Ahead
Market)
リアルタイム
市場
スケジューリング・
コーディネイター(含PX)
系統運用 (CaISO)
補助的
サービス
等
送電権市場
(オークション)
: 情報の流れ
ISOが行うもの
アンシラリーサービス市場
PX(SC)が行うもの
施設取引所、相対取引
決済
精算
カリフォルニア州の発電事業者シェア(2000
年)
非公益事業者
2,123万kW
(40%)
QF他1,175
万kW
(22%)
10
売却された既存3社の火力発電
設備は、州外の事業者が購入
発電設備
5,321万
kW
(2000年)
公営
1,198万kW
(23%)
公益事業者
825万kW
(15%)
PG&E : Pacific Gas & Electric
SCE : Southern California Edison
SDG&E : San Diego Gas & Electric
AES
407万kW(19%)
その他
402万kW(19%)
Southern
307万kW(14%)
非公益事業者
内 訳
Calpine
87万kW(4%)
Duke
295万kW(14%)
Reliant
353万kW(17%)
出典:CPUC 2000.8.2報告書
Destec
117万kW(6%)
Dynegy/NRG/Destec
155万kW(7%)
需給逼迫による卸電力価格の高騰(2000/4-9)
[セント/kWh]
P
X
の
日
最
高
価
格
90
80
5/22:ISO非常事態宣言
ISOが緊急宣言(Stage)を発動した日
ISOリアルタイム市場
上限価格:75セント/kWh
70
7/1:75⇒50セント/kWh
60
ISOは上限取引価格を引き下げ
50
8/7:50⇒25セント/kWh
40
凡例 30
Stage
●
201
■
2
◆
10
3
0
11
予備率
7%以下
対
策
節電の要請
5%以下 需給調整契約発動
1.5%以下
4月
輪番停電
5月
6月
7月
8月
9月
出典:CAL-PXホームページ
SDG&E社の小売電気料金高騰
家庭用電気料金(7月実績)
• SDG&E社は、PXから調達する電力コスト
を小売電気料金にそのまま転嫁したため、
小売電気料金が高騰。
• 州は小売電気料金を再凍結。(前回凍結時
より約15%UP。上限価格枠あり。)
(セント/kWh)
• またSDG&E社には、PX以外の相対取引を
認める。
出典:CPUC 2000.8.2報告書
1998.4 凍結開始
ストランデッドコストの回収を完了したため、
小売電気料金の凍結解除(1999年7月)
12
価格高騰の原因と対策~FERC調査報告~
13
11/1:報告書発表、12/15:改善命令発布
改 善 策
価格高騰の原因
【需 給】
•熱波と好調な経済による需要増大
•北西部の渇水による水力発電の減少
•発電燃料である天然ガス価格の高騰
•加州以外からの電力調達の減少
【市場の欠陥】
•既存3社に対する硬直的な取引システ
ム(相対契約無し、先渡契約にも制約)
•PX/ISO取引におけるプライスキャップ
•利害関係の対立により、PX及びISOの
理事会が機能せず。
【価格操作】
•ISOリアルタイム市場での価格高騰を
狙ったゲーミングの問題(証拠不十分)
• 改善策なし
• 既存3社に対するPXでの取引義務を廃止
• PX/ISO取引における15セント/kWhのソフト・プ
ライスキャップの採用(5/1までの暫定措置)
• PX及びISOの理事会を利害関係のない人員
で再編
• 市場参加者に対し、取引量の95%を前日まで
に調達することを義務づけ
需給逼迫の深刻化(2000/11~)
14
[セント/kWh]
[万kW]
5,000
12/7:初のステージ3発動
最大電力
4,000
3,000
100
150
~
~
1/17,18
輪番停電実施
80
75セント/kWh
2,000
1,000
50セント/kWh
PX日最高価格
0
12/8 :ISOは供給力確保優先
のため上限価格撤廃
60
-1,000
40
上限価格:25セント/kWh
-2,000
-3,000
20
(本年4/25時点)
-4,000
凡例 Stage
予備率 2000 2001
-5,000
対
策
●
1
7%以下 55回 62回
■
2
5%以下 36回 57回 需給調整契約発動
◆
3
4月
5月
1.5%以下 1回 36回
節電の要請
6月
7月
輪番停電
0
8月
9月
10月
11月
※PXは1/30で電力取引を
終了している。(4月に閉鎖)
12月 2001/
1月
出典:CAL-PXホームページ
輪番停電の影響
15
2001年に入り、カリフォルニアISOは、5度の輪番停電を実施している。
1月17日(水) 1月18日(木) 3月19日(月) 3月20日(火)
5月8日(火)
停電時間 11:40~14:00 9:50~12:00
12:00~16:00
9:20~14:00
18:00~19:15
17:00頃~
遮断負荷
約100万kW
約30万kW
約50万kW
約100万kW
州北部のサン 州中部から
フランシスコ
州北部の
対象地域 市内・シリコン PG&Eの供給
バレー周辺 エリア全域
約50万kW
ほぼ州全域
電力危機に対する米国消費者・マスコミの声
消費者の声
住民の多くは、電力が実際に不足しているの
ではなく、人為的に不足を作り出したものであ
り、1/3の人がその責任は電力会社にある
と考えている。(1/7:LAタイムズ世論調査)
• 「僕には、自由化された業者の一部が人為
的に電力不足を作り上げたとしか思えな
い。」
• 「電気が一番必要な時に電力危機が起きる
なんて出来過ぎ。」
• 「政府は何故収用権を行使しないのか。収
用すれば停電することはないと確信。」
• 「電力会社はたくさんお金を持っているのだ
から、この状態がずっと続く筈がない。CEO
の給料が幾らか知りたいものだ。」
• 「PG&Eは固定料金を歓迎していたくせに、
状況が変わると消費者に負担を押しつける
のは虫が良すぎ。」
• 「州は、自分のミスを株主の金で補おうとし
ているのではないか。」
各紙の論評
【ビジネスウィーク(1/22)】
•加州の惨事から、規制緩和を失敗と結論
づけるのはまだ早い。
【エコノミスト(1/20)】
•加州では、部分自由化(卸市場のみ自由
化)という矛盾が混乱を招いた。
【ウォールストリートジャーナル(1/17)】
•加州の混乱が、電力自由化の将来に挽
歌を奏でるという訳ではない。
【ニューヨークタイムズ(1/13)】
•加州からの教訓は、本質的に電力規制緩
和が「誤った考え」ということではない。
【サンフランシスコ・クロニクル(1/17)】
•加州の実験は瀕死の状態にあり、州が一
時的に関与するのは止むを得ない。価
格・供給を安定させた後、州は身を引けば
よい。以前のような規制下に戻すことは不
可能。
16
価格高騰による2大電力会社への影響
[セント/kWh]
40
PG&E家庭料金の例
(1996.6レベルで凍結)
35
• PG&E・SCEの2社は、高騰した卸電力
価格を小売料金に転嫁できず、6月以
降大幅な逆ざやが発生。
• このため両社の返済不能債務は、2000
年末時点で約120億ドルに。
(1/10:LAタイムズ他)
• 1/16、SCEは同日期限の債務約6億ド
ルの支払い一時停止。2社は「投資不
適格」に。
CTC
5.6セント/kWh
卸電力価格
P 30
X
月
平 25
均
価
格 20
送配電費用
固定
(6セント/kWh)
※
廃炉費用
分担金etc
15
17
競争移行費用CTCとして、ストラ
ンデッドコストの回収に充当
10
小売価格の凍結措置
5
0
1
2
3
4
5
6
7
1999
8
9
10 11 12
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12
2000
※月平均価格は、日最高価格の単純平均である。
2大電力会社の経営危機
18
PG&E、SCEの2社は、小売価格を凍結させられているため、需給逼迫により高騰した卸電力
価格を小売料金に転嫁できず、2000年6月以降大幅な逆ざやが発生。
株価[$]
35
9月下旬:
夏場の損失を受け、
格付け機関が格下げ
30
PG&E
1月16日:
• SCEは同日期限の債務約6億ド
ルの支払を一時停止
・両社を投資不適格に格下げ
1月4日 CPUC
• 翌17日、PG&Eも約8千万ドル
は2社の小売料
の社債償還金の支払を停止
金の7~15%値
3月28日:CPUC料金
再値上げ認可
• 更に、一律3セント
/kWh上乗せ。
• 値上げ幅は約40%
上げを認可
2月1日
・カリフォルニア州電力
調達法案可決。
・州が最大100億ドルの
州債を発効し、長期契
約で電力を調達。
25
SCE
20
12月中旬:
・逆ざやが解消せず、損失が拡大
・格付け再引下げ
15
10
5
1月4日:CPUC料金値上げ認可
• 暫定措置として、一律1セント/kWh上乗せ。
• ただし2社の申請幅の約半分。(30%⇒15%)
• 値上げ幅が不十分と判断した格付け機関が、
再々格下げ
2月16日
・州が各社の送電設備
を買い取り直営とする
大手3社に対する救済
案発表。
0
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月6日
・PG$E連邦地裁
に破産申請。
4月
5月
電力危機に対する州・連邦の対応
カリフォルニア州政府
【Davis州知事】
• 「とてつもなく危険な失敗」(1/8年頭教書)
【州議会・州公益事業委員会】
• 2/1、電力2社に代わって州政府が発電事
業者と長期契約を結んで電力を購入し、両
社に販売することを認める緊急対策法を可
決・成立。州政府は、電力の購入資金とし
て最大約100億ドルの州債を発行する権
限が与えられた。
• 2/23、州政府がSCEの送電施設を買い取る
ことで同社と合意。続いて3/2、SDG&Eの送
電施設を買い取ることを同社と合意。
• 3/27 公益事業委員会PG&EとSCEの電気
料金の約40%値上げを承認。
• 5/4 州電力局創立法案を可決。
19
連邦政府
【エネルギー省】
• 12/21、州外の電力会社と天然ガス供給各
社に対し、電力2社に余剰電力と余剰天然
ガスの売却を義務付けた緊急命令を発動。
(2/7までの期間限定措置)
• 連邦政府は、加州の問題は加州独力で解
決すべきであり、連邦政府が容易に援助す
べきではないとのスタンス。
• 4/26 FERCは加州の電力卸売価格に条件
付きで上限を設ける決定。(1年間の限定措
置)
• 5月中に大統領に提出される予定の国家エ
ネルギー政策に、発電所、送電網の建設促
進、ガスパイプラインの整備促進及び原子
力発電の推進を織り込む。
• 冬季の需要が一段落し、2/22にはそれまで連日出されてきた緊急宣言(ステー
ジ)がひとまず解除された。
• 州政府主導の電力供給対策が進められているが、発電・送電設備の拡充には
まだ手がついておらず、供給不安は解消されていない。
需給逼迫の原因 ~加州の需給バランス~
[万kW]
8,000
7,000
•1991年来の経済的活況
•IT関連需要の増
•猛暑・渇水に加え、計画外停止340万kW
•経年30年以上の老朽設備が多い上、保
守点検が不十分なことも要因か。
(FERCスタッフレポート)
20
最大輸入
容
量
6,000
5,000
最大電力
4,000
州内発電
可 能 量
3,000
2,000
州当局の厳しい環境規制や、90年代
の規制緩和の先行き不透明感により、
電力会社は殆ど新設せず。
1,000
290万kWが建設中。
1,060万kWが計画中だ
が、実現性は不透明。
0
1995
1996
連邦:FERC Order888 ▲
加州:電力自由化法成立
1997
1998
1999
▲
小売自由化開始
2000
2001
2002
2003
出典:CPUC 2000.8.2報告書
FERC 2000.11.1報告書
CEC “California Demand2000-2001”
需給逼迫の要因 ~供給力不足~
・米国北西部の渇水による供給力の低下。
・近隣州からの電力輸入量が減少、輸出量増加。
・2000年夏の需給逼迫対応として老朽ガス火力がフル稼働し,
その結果として秋以降の計画外停止が増加。
・発電事業者が卸価格を吊り上げるため,意図的に計画外停
止や発電事業者のガス売りへの転換を行った?
21
需給逼迫の要因 ~送電線運用の制約~
系統の問題点
とゾーン構成
・供給エリア間の連系容量不足
-特に加州北部と南部の連系容量の
制約から北部の渇水による供給力
不足を南部の供給力で補えず。
-知事命令により権限が強化された
ISOは、PG&Eに対して、送電線
(Path15)増強に関してのFSを命令
22
パス15,26がネックと
なり南北間電力融通に
支障をきたしている。
ゾーン
NP15
パス15
・卸市場の自由化により電源立
地場所が不特定となり、送電
線新設が困難化。
・送電線増強計画に関する責任
の所在が不明確。
パス26
ゾーン
ZP26
ゾーン
SP15
需給逼迫要因 ~発電コストの上昇~
・天然ガス価格が以下の要因により急上昇。
(1999年平均 約3ドル/MMBTU → 2000年末 約15ドル/MMBTU)
[要因]
-天然ガス市場の自由化。
-厳冬によるガス需要の増加。
-電力需給逼迫による老朽ガス発電の稼働率上昇。
-新設電源がリードタイムの短いガス発電に集中。
-需要増にパイプラインの増強が追いつかず。
・ガス発電の増加に伴うNOX排出量の増加によるNOX排出権価
格高騰。
23
需給逼迫要因 ~制度設計上の問題~
・予測される需要増に対する長期的供給力確保に責任を負う仕組みの
欠如
→供給力不足
・私営電力に火力発電所の売却を要請し、スポット市場経由の取引を
義務付けると共に、長期契約による調達を禁止
→リスクヘッジが困難に
・発電事業者の意図的な価格操作を招く余地のある取引制度。
(項から草津を期待できるISOリアルタイム市場にシフト)
→卸電力価格の高騰。
・私営電力の小売価格凍結。
→経営破綻。
24
電事連 現地調査団報告のまとめ
• 電事連は2/20~3/4にかけて、加州電力危機に関する現地調査団を派遣した
(1)供給の安定
①単純な市場メカニズムのみでは、供給責任が希薄化し安定した供給力が確保されず、価
格の急騰や供給支障の不安は払拭されない。
② 卸市場の自由化により取引量(電気の移動量) が増加し、日々変動することや電源立地
場所の不確定さ等から送電線建設計画策定が困難化。
さらに、電源と送電線の効率的設備形成が困難化する恐れ。
(2)価格の安定
①十分な供給力がないと市場メカニズムは働かない。
②スポット市場への依存度が高くなると価格変動が大きくなる。
③電源の多様化は、価格の安定に寄与する。ただし、市場に任せたときには一つの燃料に
依存する傾向が高まり、多様化は進みにくい。
④価格は当然振れ、高くなることもあり、高止まりすることもある。
(3)小売市場
・卸市場は自由化しても,小売市場が規制されると事業者のリスクは格段に高まるとともに、
市場メカニズムが働かなくなる。
(4)全般
①電気という財の特質を十分認識する必要がある。
②失敗した場合の社会的影響は、急激かつ大きい。
③関係者、利用者の徹底した議論が必要。
25
(参考)他州における自由化方針見直し状況
州
州当初予定
00年 11月 か ら
ネバダ
01年 12月 まで
段階的に実施
アーカンソー
ニュー メキ シコ
オクラホマ
2002年 1月
2002年 1月
2002年 1月
見直し状況
2001年 2月 、知 事 が 無 制 限
の延期を決定
2003年 10月 へ 延 期 。
2001年 3月 法 制 化 。
2007年 1月 へ 延 期 。
2001年 3月 法 制 化 。
2004年 1月 へ 延 期 す る 法 案
が審議中。
26
27
【 参考資料 】
わが国電力自由化の概況
電気事業法の改正
28
技術革新や国際化が進む中、産業の高コスト構造是正のための規制緩和政策の
一つとして、電力供給システム全般の見直しが実施され、平成7年に引き続き、大
幅に電気事業法が改正されることとなった。
H11.2月
H11.5月
H12.3月
電気事業法改正 国会提出
▼
同案 国会可決
○改正電気事業法 施行
部分自由化制度スタート
H15年頃
○制度実施の約3年後、部分自由化制度の検証
・自由化の範囲、制度内容についての検証
<検証の視点>
①部分自由化の実績、②海外の自由化の動向、
③系統安定技術の状況、④公益的課題への影響
・全面自由化、電力プール制度導入の是非についての検討
電気事業法改正の主要なポイント
○部分自由化の導入
・特別高圧受電(2万V)・2千kW以上のお客さまを対象に小売
分野での競争を導入(沖縄は6万V・2万kW以上)
・新規参入者は、経済産業省への届出のみで事業開始が可能
○料金改定手続きの簡素化
・非自由化分野のお客さまへの電気料金について、料金を引き
下げるなどお客さまの利益を阻害するおそれがない場合、届出
のみで料金改定が可能(従来は認可制)
・選択約款は、事業の効率化に資すると見込まれるものについ
ては広く設定が可能(従来は負荷平準化に資するものに限定)
29
わが国の自由化の方向性
30
• 「効率化」により安い価格で電力を供給することと、「公益的課題」という至上命
題を確保することとを両立してバランスがとれるところに、日本型の自由化の姿
があるといえる。今回の部分自由化は、これらの両立を大前提にしたもの。
<各国の固有の事情>
例:エネルギー自給率、周辺国(地域)からの融通の容易さ(流通インフラの整備
状況)、歴史的な電気事業発展の経緯(国営か民営かなど)
自由化
(効率化)
公益的課題
(ユニバーサルサービス、供給
信頼度、エネルギーセキュリ
ティ、環境保全)
主な新規参入(PPS)の状況
凡例 既存PPS新設予定 自家発
サニックス(苫小牧)
水力
7.4万kW/廃プラ/2002年
石炭
丸紅(三峰川)
3.22万kW/水力
石油
ガス
エネット(大ガス・日本製紙都島)
1.5万kW/都市ガス/2001年
その他
発電所名(地点名他)
発電規模/燃料/運開年
エネサーブ(舞鶴or滋賀)
1.5万kW/ディーゼル/2004年
イーパワー(宇部)
31
イーパワー(六ヶ所)
200万kW/LNG/2007年
呉羽化学工業(いわき)
5~10万kW/石油コークス/-
ダイアモンド・パワー(鹿島北)
3.5万kW/副生ガス
エネット(旭化成・川崎支社)
0.6万kW
100~150万kW/石炭/2006年
新日鐵(旭硝子・北九州)
1.7万kW/重油
エネット(東ガス・千葉袖ヶ浦)
サニックス(伊万里)
イーパワー(大牟田)
10万kW/LNG/2003年
ダイアモンド・パワー(NKK・京浜)
2万kW/高炉ガス
50万kW/石炭/-
エネット(東ガス・扇島)
5万kW/廃プラ/2002年
イーレックス(旭化成・九州延岡)
0.7万kW/石油
旭化成(日向)
10万kW/石炭/-
サミット・エナジー
(住友共火・新居浜西)
5万kW/石炭
80万kW/LNG/-
新日鐵(東邦レーヨン・三島)
0.4万kW
トクヤマ(トクヤマ・自家発増設)
14.5万kW/石炭/-
PPSの届出は現在7件。 2007年度で計約650万kW(報道ベース:設備比3%程度)
料金改定の実施(H12.10)
○規制部門 平均単価および改定率
電
電
灯
力
電灯・電力計
32
(単位:円 / kWh、%)
改定単価
22.17
改定率
▲ 4.04
(参考)
平成10年改定率
17.53
19.58
▲ 4.36
▲3.19
▲2.95
▲ 4.20
▲2.69
○標 準 的 な ご 家 庭 の 引 き 下 げ 額
1世帯あたりの
改 定 料 金
月平均使用電力量 (1か月あたり)
従量電灯A
310kWh
時間帯別
電 灯
はぴeタイム
710kWh
(全電化モデル) 785kWh
旧約款料金
(1か月あたり)
引き下げ額
月額 ▲341円(▲4.6%)
7,040円 7,381円 年額
▲ 4,092円
月額 ▲442円(▲4.4%)
9,686円 10,128円 年額
▲ 5,304円
月額 ▲ 1,123円(▲9.7%)
10,460円 11,583円 年額
▲ 13,476円
※料金は消費税等相当額含む。 改定料金には口座振替割引(▲50円)含む。
加州電力危機に対する国側のスタンス(その①)
1/19:平沼 経済産業相 会見要旨
• 「自由化制度の議論は進める。供給信頼度は大切だが、今回の加州に
ついては取引形態や環境規制など制度に問題があったと認識。」
• 「日本は将来の完全自由化に向かっていると思うが、今後も海外の事
例を十分検証していくべき。」
1/19:大井 エネ庁電力・ガス事業部長 コメント
• 「発電設備に対する需要想定の誤り、送電容量不足への対応、環境規
制、相対取引や先物市場がないこと、卸料金の設定など、ありとあらゆ
る制度設計のミスが重なった。卸電力会社同士のカルテルの疑いもあ
る。」
• 「日本の自由化が今後どう進展するか、現時点で何ら予断を持っている
訳ではないが、自由化を進める方向に変わりはない。自由化にバック
ギアはない。」
33
加州電力危機に対する国側のスタンス(その②)
34
• 経済産業省も2/25~3/11にかけて、加州電力危機に関する現地調査団を派遣
し、電事連と合同で4/19報告書を記者発表した。
カリフォルニア電力危機の教訓
①設備投資が円滑に行われる仕組み
・カリフォルニア州は発電設備の形成が進んでいないが、ペンシルバニア州は自由化後も順調に推移。
・発電容量確保義務、長期契約の自由、新規参入促進、市場原理以外の投資誘因が必要。
②安易・硬直的な価格規制の危険性
・競争移行期間の暫定的料金規制の適用には慎重な検討が必要。
③リスク管理手段の制限が安定供給を阻害する問題
・電力事業者が安定供給を目指してリスク管理できる手段、異なる取引サービスの競争が重要。
④環境規制が投資に与える影響
・発電所や送電設備建設の制約要因にならないよう、今後も調査検討が必要。
⑤需要家の選択肢としての分散型電源
・安定供給確保のためには、需要家側にも電源調達選択肢が必要。(加州の需要家は導入に積極的)
⑥電力系統の安定性を確保する仕組み
・例えば、送電の混雑料金、リアルタイム市場、アンシラリーサービスのあり方等。
⑦需要を価格に弾力的に反応される仕組み
・需要家が価格に需要を反応させられれば問題は相当緩和されうるとの指摘あり。
⑧電力市場における価格操作を監視・防止する仕組み
・事後的監視とともに、価格操作が起きにくいシステム設計、市場構造も重要。
⑨電力供給システムのガバナンス
・外的環境の変化やシステム運用の展開に伴い、見直しが機動的に行われる体制が重要。