講義資料(6/24修正版) - 京都大学 大学院経済学研究科・経済学部
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経済原論IA 第10回
西村「ミクロ経済学入門」
第9章 完全競争市場と効率性
京都大学経済学部
依田高典
1
1. 消費のパレート最適性
AとBの初期保有量:
w A (x1A , x 2A ), w B (x1B , x 2B )
各財の総量:
x1 x1A x1B , x 2 x 2A x 2B
市場価格:(p1,p2)
効用最大化点:
E A (x1A , x 2A ), E B (x1B , x 2B )
2
純粋交換モデル
エッジワース・ボックス
x1
0B
x2
uB
uA
(x1B , x 2B )
A
1
A
2
w
(x , x )
0A
x2
x1
3
2. 契約曲線
AとBの無差別曲線の接点の軌跡:
消費の効率性条件:MRSA= MRSB
パレート最適性(効率性):
他の消費者の効用を減少させずに、ある消費者の効用を高
めるように財を再配分することが不可能
契約曲線上の点は、パレート最適
4
0B
x1
x2
契約曲線
uB
0A
uA
E
w
l*
x2
x1
5
3. 厚生経済学の第一定理
「任意の市場均衡はパレート最適である」
予算制約式(初期保有点wを通り、傾き-p1/p2)
i
i
i
i
p1x1 p2 x 2 p1x1 p2 x 2
均衡点Eで、無差別曲線uAとuBは予算制約線l*に接する
市場均衡の条件:
p1*
A
B
MRS
MRS
*
p2
市場均衡の条件は、消費の効率性の条件を満たす
6
4. 厚生経済学の第二定理
「財の総量を所与として得られる任意のパレート
効率的な配分は、適当に初期保有量を再配分
して得られる経済の市場均衡として達成される」
7
4. オファー曲線
価格比(p1/p2)の変化に対応した需要の軌跡
純粋交換モデルのAとBの交点Eは、第1財と第
2財の市場で同時に均衡が成立する一般均衡
解となり、一般均衡解は安定的である
8
0B
x1
x2
オファー曲線
E
オファー曲線
w
l*
x2
0A
x1
9
5. 生産のパレート最適性
2生産物(y1,y2)と2生産要素(x1,x2)からなる企業IとIIの等生産
量曲線も、同様に、エッジワース・ボックスで分析可能
生産の効率性条件:
RTS RTS
A
市場均衡の条件:
B
w1*
A
B
RTS
RTS
*
企業の利潤極大化条件は市場均衡の条件を満たす。市場均
w2
衡の条件は生産の効率性条件を満たすので、生産要素の
配分においても、競争均衡解はパレート最適となる
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6. 社会的生産可能曲線(生産可能性フロン
ティア)
パレート効率的な生産要素の配分から得られ
る財の生産量(y1,y2)
(1)企業I,IIの生産関数が上に強く凸 → PPFは原点に強く凹
(2)企業I,IIの生産関数が1次同次で、
(a)契約曲線が各原点を結ぶ直線(対角線)と一致 →
PPFは直線
(b)対角線と一致しない → PPFは原点に強く凹
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y2
O
原点に凹なPPF
y1
12
7. 生産可能曲線のパレート最適性
PPFの接戦の傾き:限界変形率MRT=-Δy2/ Δy1
生産の効率性条件:
生産関数を用いた場合:
費用関数を用いた場合:
市場均衡の条件:
生産関数を用いた場合:
費用関数を用いた場合:
MP1II
MP2II
MRT
I
MP1
MP2I
MRT
MC I
MC II
p1
MP1II
MP2II
MRT
I
p2
MP1
MP2I
MC I
p1
MRT
p2
MC II
企業の利潤極大化条件は市場均衡の条件を満たし、市場均
衡の条件を満たすと、生産の効率性条件を満たす。PPF上
の組み合わせが市場を介して実現。
13
y2
生産物の価値(相対価格)と限界変形率
の均等
p1y1+p2y2= p1y1*+p2y2 *
O
PPF
y1
14
8. 消費と生産のパレート最適性
効率性条件(無差別曲線と生産可能曲線が接
する):
MRS=MRT
市場均衡の条件(効用最大化条件=利潤最大
化条件):
p1*
* MRS MRT
p2
15
y2
限界代替率と限界変形率の均等
無差別曲線
O
PPF
p1/p2
y1
16
9. 生産物と生産要素のパレート最適性
効率性条件(無差別曲線と生産関数が接す
る):MRS=MP
市場均衡の条件(効用最大化条件=利潤最大
化条件):
*
w
* MRS MP
p2
17
10. 今までのまとめ
効率性条件
完全競争均衡
消費者A,B
MRSA=MRSB
=P1/P2
同じ財を生産す
る企業I.II
MPA=MPB
wi/p
RTSI=RTSII
異なる財を生産
する企業I,II
MRT=MPII/MPI
=w1/w2
=p1/p2
MRSA=MRSB=
MRT
=p1/p2
消費者と生産
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11. 効用可能性フロンティア
効用可能曲線:契約線上の2消費者にとって
可能な効用の配分(uA,uB)
効用可能性フロンティア:生産可能曲線から得
られる効用可能曲線の包絡線。パレート効
率的な効用の組み合わせ。
シトフスキー・フロンティア:効用可能性フロン
ティア(uA,uB)を財平面(y1,y2)に置き換えたも
の。原点に対して凸。シトフスキー・フロン
ティアは交差する。
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12. カルドア基準・ヒックス基準
U=(uA,uB), V=(vA,vB)
パレート優越的: uA≧ vA, uB≧ vB → U>PV
カルドア基準(補償原理):Uと同じ効用可能性フロンティア上の
U’に関してU’>PV → U>KV
ヒックス基準:いかなるVもUをパレート優越できない →
U>HV
シトフスキーの二重基準: U>KVとU>HVが共に満たされること
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uB,vB
U>KV & U>HV
U’
V
O
U
uA,vA
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13. シトフスキー・パラドックス
U>KV & V>KU または
V>HU & U>HVが成立すること
社会厚生関数W(uA,uB)による評価
→ アローの不可能性定理
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