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クジャクの雄はなぜ美しい?
人工生命の雄は美しくなれるだろうか? 松田裕之(東京大学海洋研究所)
クジャクの尾羽根と性淘汰
• • • • 人間以外の生物において、美しいのはお おむね雄である(クジャク、シカ、ライオン) これらは直接生活の役に立っているわけ ではない。むしろ不便である。 不利な形質を備える雄が雌に好かれ、交 尾して子を残す機会が増えるから 長生きしてももてなければ子孫を残せない
なぜ雌は強い雄を選ばない?
• ランナウェイ(暴走)共進化=たまたま 多くの雌が美しい雄を好み始めると、 ますます美しい雄が雌に好まれ、雌も 美しい雄の子を産まないと息子が伴 侶に恵まれない
Handicap理論
生存に不利な形質が雌に好まれ やすい 不利な形質は強さの証拠 頭市) 突然変異の偏り (座
量的遺伝模型
Iwasa & Pomiankowski (1994) Nature
d x dt
y
G x
B xy B xy G y
log
W x
log
W y
/
x
/
y
x:雄の尾の長さ y:雌の雄への好み
G x
、B xy
:
相加遺伝分散、共分散
W x
:雄の適応度(生存率×交尾成功度) u:突然変異の偏り 巌佐庸「数理生物学入門」(HBJ)
u
0
雌の雄選びの神経回路模型
雄の模型 雌の網膜上の像 正常雄 尾の長い雄 尾の短い雄 • 正常雄を選ぶように雌の神経回路を 学習させる。 • 学習した雌が尾の長い雄や短い雄 をどの程度選ぶかを調べる
超正常刺激
Superstandard Stimulus
尾の短い雄を避け、正常雄模型を選ぶよ うに学習した雌の神経回路模型は、初め て見た尾の長い雄を正常雄以上に好んだ。
Enquist & Arak (1993) NATURE 361: 446-448.
追試した結果、正常雄を選ぶようさらに学 習した雌は、正常雄>尾の長い雄>尾の 短い雄の順に好んだ。 加茂、未発表
人工生命の共進化
人工生命で性淘汰を再現するには、雄と 雌の人工生命を作り、雄の美しさと雌の好 みの共進化を考える必要がある 雄の美しさと雌の好みの間に遺伝的な交 流(相加遺伝共分散)が必要である。 美しい雄は突然変異で生まれにくく、不便 である必要がある。
適応は善悪とは無関係
進化は流行り廃りの科学であり、善悪の科 学ではない(憎まれっ子世に憚る) 進化した結果、個体数が減ることがある (雌雄はなぜ同じ数ずついるか?) もっとも好適な生息地から追い払うと、カワ ウの数が増える?
→
利己的な遺伝子
生物の適応戦略と人工生命
• 生物の生き方を最適化理論で説明する • パズルを生物進化の真似をして解く
生物
最適化 人工生命
工学
巡回販売員問題
Traveller‘s Salesman Problem A B C D
rank 1 2 : 11 12
Next generation ABCD, ACBD, ABCE, ACBH,....
path ABCD...
ACBD...
: FBED...
GCBE...
days 23 25
:
35 40
自分の得
≠
相手の損
ゼロサム社会 自分の得=誰かの損 非ゼロサム社会 病原体は宿主を生かさぬよう 殺さぬように搾取 する
生物の種間関係 競争
Competition
(
—,— )
縄張り争い 搾取
Exploitation
(+
,— )
捕食
predation
寄生
parasitism
双利
Mutualism
(+
,
+
)
双利共生
Symbiosis
競争
≠
自由競争 生物の競争、搾取、双利関係は、 すべて適応進化(自由競争)の産物である。
共生にも利害対立がある
盗蜜 週間朝日百科「動物たちの地球」(朝日新聞社)より
人間と機械との共生
人間が一方的に機械を設計するのではな く、機械が自ら人間の欲求にあわせて学 習、改良、創造する? 現在のところ、このような便利な機械、便 利なソフトは、開発に膨大な人力を要する (だし昆布の法則) 人間に好まれる機械が進化すればいい?
ロボットは美しくなれるか?
人間が「美しい」ロボットを買えば、それに あわせてロボットも美しく進化する? 何が美しいかは、この場合は人間だけで 決まる。(これで満足か?)
問題点
美しさは、点数化が困難(何がいいかがす ぐに評価できない) 何が美しいかは、作り手と受け手(集団) の相互作用で決まる。 機械に点数化が困難な作品も作らせたい それが「役に立つ」とは限らない