金融システムの比較: 市場型と相対型(銀行中心のシステム)

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○金融システムの比較:
市場型と相対型(銀行中心のシステム)
– ①資金提供者・資金余剰主体にとっての選択肢
– ②資金調達者・資金不足主体にとっての選択肢
– ③リスクの社会的分担
1
④コーポレート・ガバナンス機能
– 株価(や社債利回り)は、企業の投資計画、経営
戦略、現行の経営陣の質に対する投資家の判断
を示す
• 株価低迷は買収される危険性を高める→経営陣に対
する株式市場からの強い圧力
– 特にPBR(株価純資産倍率)が1以下といった企業は買収の対
象になりやすい
2
– 経営に対して積極的にモノを言うファンド
(
)の登場
• 株主提案
– 運用会社(投信会社・アセットマネジメント会社)
による株主議決権の行使:
• 議決権行使も資金受託者の責任の一部という考え
方の浸透、投資対象企業の長期的成長を期待
→議決権の積極的行使
– 格付け会社による信用力・リスクの評価
3
日経08.05.09.
4
○投資信託でも議決権は行使されている
・議決権の指図行使、行使方針の策定と開示が義務付けられている。
・株主総会(2006年度)での議決権行使
5
日経08.05.09.
6
○サブプライム問題とシティのコーポレート・ガバナンス
・07年10月:シティ、07年7-9月期サブプライム関連で60億ドルの損失発表
・損失額は08年1-3月期までの総額、日経08.04.27.
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・Citigroup の株価下落
・シティの格付け引き下げ
Moody’s: :Aa1→Aa2 (07年11月5日)→Aa3 (07年12月13日)
→ Aa3:outlook,negative (08年4月18日)
8
黒沢義孝
『格付けの経済学』
PHP新書
9
• シティの増資策
– 07年11月:75億ドル(アブダビ投資庁)
– 08年1月:154億ドル(クウェート投資庁、シンガ
ポール政府投資公社GIC等)
– 4月21日発表:60億ドルの優先株発行
– 4月29日発表:30億ドルの普通株公募増資
• コーポレート・ガバナンス
– 07年11月4日:チャールズ・プリンス会長兼最高
経営責任者CEO、経営悪化の責任を取り辞任
– 米地方公務員組合等の有力株主:個人部門と法
人部門の分社化、外部資本を仰ぐなどの会社分
割の要求
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• シティのリストラ策
– 08年1月:4.5万人規模の人員削減を検討中(全
従業員37万人)
– 3月6日:住宅ローン債権450億ドル削減、店舗網
の整理・統合
– 4月8日:LBO融資(M&A向け)債権120億ドルを
投資ファンドに売却
– 4月17日発表:傘下のリース・商業金融会社を
GEキャピタルに売却(100億ドルの資産圧縮、
1000人程度の人員削減)
– 5月9日発表:非中核事業を縮小し、資産4000億
ドル売却
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⑤取引のタイムスパンと事後的対応能力
• 相対型:
– 銀行は企業の長期的存続可能性を重視し、経営危機が
一時的なものであれば救済
– 借手企業に問題が生じれば、弾力的に対応
– 慣れ合い・先送りになり易い
– 大胆なリストラや産業構造転換が難しい
• 市場型:
–
–
–
–
–
ドライな取引、変化に応じて取引を見直し
市場からの圧力による大胆なリストラや産業構造転換
契約ベースの取引・多くの投資家が資金提供
→問題が生じてからの弾力的対応が難しい
短期的市場圧力による企業淘汰の可能性
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⑥市場の動きとリスク管理
• 相対型:
– 市場の動きから隔離されているため、銀行・借手
企業に
、
リスク管理意識が弱い
• 市場型:
– 市場の動き・市場価格変動の中で金融取引参加
者が
になる。
– 金融機関にとって、リスク管理が競争上の決め手
• cf. サブプライム問題では、リスク管理の不十分性が明
らかになる
– 市場の動きに振り回される危険性
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⑦市場の不安定性
• 市場型
• 投資家はいつでも市場に参加(買い)・退出(売り)でき
るポジションにある
• 投資対象の長期的収益性より短期的利益を重視
• 買いが買いを呼び、売りが売りを呼ぶという一方方向
の動きが生じやすい
• cf. サブプライム問題では、証券化商品の市場価格下
落が金融機関の保有証券評価損を拡大する
• 相対型(銀行型)
– 長期的取引重視、短期的に大きな利益を得よう
という行動をしない(安定性)
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○今後の日本の金融システム
• 大きな方向性:市場型金融システムの要素を
強化する
• 理由
–①
→資産運用手段の多様化の必要性
–②
→多様な投資家からの資金調達
–③
• 証券化、クレジット・デリバティブ、シンジケートローンと
ローンの売買
–④
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アメリカ家計資産保有GDP比
2007
2005
2003
2001
1999
1997
1995
1993
1991
1989
1987
1985
1983
1981
1975
1965
1955
家計資産保有GDP比
倍
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
日本家計資産保有GDP比
16