5-13 No. 1 - 大阪大学大学院生命機能研究科

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Transcript 5-13 No. 1 - 大阪大学大学院生命機能研究科

General design for the series - I
• In principle, I will speak only English, but slides will be
mixed.
• I would like to make the entire process as interactive
as possible, and therefore, interrupting lectures with
questions, comments and criticisms is strongly
encouraged at any time. This is NOT being impolite.
• Students should try to speak English as much as
possible, but if necessary, Japanese is allowed. It is
better to speak up in Japanese than to stay silent.
• Do NOT remain passive. Learning should be an
active process. Always think and express yourself.
Remember, if you just sit and keep your mouth open,
you get nothing.
General design for the series - II
• 将来サイエンスで身を立てようとする若い方々に何らかの
お手伝ひになるやうなことをする。 「知識」の伝達は目的
ではない。
• なるべく、私自身で経験したことを中心とする。 何故ならば、
• 自分の目で見て、自分の手で触ったものだけが本物なん
だ。 本で読んだことなんか、風が吹けば吹っ飛んじゃふん
だ。 (私が 「恩師」と呼ぶ二人のうちの一人、木村雄吉先生)
• 異なった社会で異なった Paradigm の下に生きて来た
「個」 は全く同一の物理的刺激を受けても、全く異なったも
のを見、理解し、異なった反応をするものである。 (Thomas
Kuhn: The structure of scientific revolutions, Second enlarged edition,
University of Chigago Press, 1970 より、私の要約)
“International” is a state of mind.
Science is by its very nature,
“international”. The only standard is the
“world”. “First in Japan (本邦初演)” has
no meaning in science.
 You can never be truly international as
long as you keep shouting “international”
as a slogan. Once truly international, the
psychological distinction between we
(Japan) and they (other countries)
disappears.

Plan for the three sessions



First session: Today I will discuss a general comparison of the
American and Japanese systems of scientific research and
their consequences as I see them.
Second session (June 3): “Self-Expression”. In science one
must constantly express oneself in person-to-person discussins,
posters and oral presentations in meetings, writing grants and
publishing papers. The basic principle and skills are essential
for correct and honest but not self-aggrandizing communication.
Third session (June 15): REQUEST SESSION; I would like to
select the subjects from those you request. Send to me at the
e-mail address below any subject matters you are interested in
and would like to hear discussed (OK in Japanese). Other
comments and criticisms are also most welcome.
[email protected]
大阪大学 Global COE series
No. 1, May 13, 2009
今浦島の見た
日本と米国の研究者社会の比較
Kunihiko Suzuki
Professor Emeritus, Neurology and Psychiatary
Director Emeritus, Neuroscience Center
University of North Carolina, Chapel Hill, NC, USA
何故 「今浦島」 なのか?
1955 東京大学教養学部教養学科、科学史・科学哲学分科卒業
1959 東京大学医学部、医学科卒業
1960 Resident in Neurology,
Albert Einstein College of Medicine
1965 Assistant Prof. Neurology,
Albert Einstein College of Medicine
1969 Associate Prof. Neurology,
Univ. Pennsylvania School of Medicine
42年
1972 Prof. Neurology and Neuroscience,
Albert Einstein College of Medicine
1985 Prof. Neurology and Psychiatry
Univ. North Carolina Chapel Hill
Director, Neuroscience Center
Univ. North Carolina Chapel Hill
2002 Univ. North Carolina 退職 名誉教授
2003 東海大学未来科学技術共同研究センター教授
同、糖鎖工学研究施設長
4年
米国研究制度の根底=「初めにグラントありき」
• 日本と米国の研究者社会の多くの相違点は 研究
費制度(グラントの申請、審査、予算構成、配分)
の違ひに反映されてゐるやうに思はれる。 鶏・
卵??
– 研究者としてのスタート
– 大学・研究所での職の安定性・不安定性
– 大学や教室の構造、ボス と 手下の社会制度
– 職の流動性。縦割り 対 横への流通性
– お流派の保持 対 他流試合の勧め
– 愛校精神 対 新たな血の導入
研究者としてのスタート (MD, PhD., DDS, DVM)
Ph.D. = 博士
M.D. = 医学士
M.D と Ph.D. は同等
 M.D. は postdoc
四
年
M.D.
Ph.D.
医
学
部
大
学
院
D. Med. Sci.
M.D.
四
年
四
年
四
年
大
学
=
大
学
四
年
二
年
医
学
部
(教養)
Ph.D.
大
学
院
四
年
大
学
四
年
独立研究者としてのスタート
• 1.通常、Postdoc として、ボスの下で2-3年を
過す = 「徒弟期間」。
• 2.自分自身のアイデアに基づいて、自分の名前
で グラントを獲得する。
– グラント取得=独立研究者
– 自分のグラントを持ってゐれば、教授、教室主任でも、
その内容、運営に関して干渉することは出来ない。
– 現在の環境が自分の将来の発展にマイナスであると
判断した場合、転職する自由度が増す。
– 但し、良くも悪くも、全ての結果は自分の責任。
グラント審査システム
• NIH の場合、Study Section と各々の
Institute の Council の機能は厳密に区
別され、Study Section は サイエンスの
みに基づく審査、決定権は Council に
ある
• 審査委員会(分野毎に15-20名の専
門家、任期4年)、年に三回、毎回 3日、
100 申請程度を審査
• 二名の委員が詳細に審査して、委員会
で報告、質疑応答、それに基づいて全員
が投票
• Conflict of interest の問題 (later)
• コメントの詳細は スコアと共に申請者に
伝へられる
• 審査に誤りがある場合、抗議出来る。
価値判断に対しては抗議出来ない
私の知らない面です。情報、コメン
ト、討論をお願ひします
• 科研費審査に幾つの委員会が
あるのか? その構成は? 任期
は? 委員会としての会合は?
• 審査委員は、他の委員・外部審
査員のコメントを聞く機会がある
か?
• Conflict of interest の問題をど
の程度まで、考慮してゐるか?
• 事実上の決定権は誰に?
• 現在の「切り捨て御免」は 審査
側、申請者側、サイエンスその
ものにとって、望ましくない。
グラントの期間、更新
• 期間: NIH の場合、最低3年、4年、5
年もあり、特別例として、7年間といふも
のもある (Jakob K. Javits Award for
Neuroscience; Merit Award など)
• 大規模グラントの場合は、5年が通常
• 多くの場合、グラントは同じテーマを追
求して、複数回に亙って更新されること
が多い。私の場合、私の主な NIH グラ
ントは 1960年代末以降、退官まで、約
35年間継続更新された。
• 更新の際、最も重要視されるのは 現期
間に於ける実績 (=Progress Report)
である。
• 実績なし=非更新 のシステムでは 永
年掛けて、大きな問題に挑戦することは
困難 → “Life saver research”
• 特別の 大規模グラント (COE な
ど) 以外は、2年間の場合が多い。
• 一つのテーマを永年に亙って、追
求するより、毎回、更新の度に 新
たな目標を設定することも多い。
• 従って、現期間中の実績は 次の
グラントを獲得するために、必ずし
も、必須ではない。
Conflict of Interest
現在の米国の基準では、「Conflict of Interest があっては
いけない」 のみならず、「Conflict of Interest があり得る、
あるのではないか?」 と疑はれ得る状態も許されないので、
例へば、先年話題になった 製造会社から研究費の援助を
受けて Tamiflu の研究をすることは、事前に全てを公開し
て審査を受け、然るべき監視機構を設定しなくては不可能。
「研究費援助は客観的な研究結果、その報告には影響しな
い」 といふ事後説明では不充分。
此処までする必要があるか? 論文に研究費の援助を明記すれば良
いのではないか? サイエンスは相互の信頼の上に築かれるべきも
のではないのか?  研究者性善説 対 性悪説;最近の傾向は 研
究者性悪説に傾いてゐる。 責任は何処にあるのか?
Conflict of Interest
以下の申請の審査には関与しない。
委員会中は室外に出る
• 現在又は過去5年程度自分
が所属する(した)大学、研究
機構 (州立大学などは、全て
のキャンパスを同じ大学とす
る)
• 過去10年以内に共同研究を
行った研究者 (論文共著者)
• 師弟の関係にある研究者
• 現在鎬を削ってゐる競争相手
私の知る限り、同じ大学から
の申請、自分の弟子からの
申請、共同研究者からの申
請、競争相手からの申請、
などを審査することは日常
的にある。審査しないまでも、
室内に留まる。
何処まで推し進めるかは決
して単純な問題ではないと
思ひます。 米国のやり方は、
既に、行き過ぎであると言ふ
見解にも一理あると思ひま
す。
グラントの予算
(単なる予算総額の比較は全く意味を成さない)
• 原則: その研究をするために
必要な経費は全て賄ふ。
• 直接経費→研究者(私の例)
間接経費→研究機関
(40%~100+%)
• 人件費 (研究者、技術員、
Postdoc、時に秘書など) = 給
与及び Fringe Benefit (保険な
ど) 屡々 総額の 85±%
•  機器類、Supplies, 旅費、出
版費、など
• 原則: 必要な研究費を賄ふ。
• P.I.の給料は含まない。人件
費も原則として含まれない。
• 間接経費の概念が曖昧
•  機器類、Supplies, 旅費、
出版費、など
• 結果として、大部分の場合、
人件費は大学、研究所に頼
る二元システムになり、若い
研究者が自分の研究をする
ために必要な人件費を確保
することが難しい。
職の安定性
• Tenure を得るまでは、
職の安定性はない。
Tenure があっても、安
定とは言へない。
• Life saver research を
強ひられる。
• 常時爪先立った、自転
車操業は productivity
を促進する。
• 給料をグラントに頼る
必要がない=停年まで
職は安定してゐる。
• 長期計画で、大きな問
題に挑戦できる。
• 停年まで適当に流して
行ける。
グラント制度の功罪
• グラントは 「通る」もの
= 自分次第
• グラント取得=独立研
究者
• 研究者の流動性増加
• 人件費:あり
職の安定性無し
• 成果最優先
– 秘密主義
– “勝てば官軍”
• グラントは「当る」もの =
賭け? 籤引き?
• グラント取得は必ずしも
研究者としての独立を
意味しない
• 人件費:通常なし
職の安定性あり
研究者の流動性低下
Academia の構造
• 誰でも教授になりたい
• 誰でも教授になりたい
• 教授  教室主任
• なりたい人だけが教室主
任になる
• グラント=研究者として独
立
• 教室員は自分のグラントの
研究をする。教室主任は干
渉出来ない
• 師弟関係は薄く、機能で結
ばれた関係
• 教授 = 教室主任
• 教室主任になりたくない人、
•
•
•
•
不適任な人も教室主任になる
独立に時間がかかる
教室主任は教室員に「教室の
研究」をさせることが出来る
緊密な師弟の関係
現在の構造の転換は「損をす
る」世代を作る
対人関係 (ボス, 手下、大学院生、技術員)
• 皆、我が田に水を引く
• 皆、我が田に水を引く
• 出て行ける  忍耐・我慢はし
ない
• 出て行けない  忍耐・我慢が
肝心
• 教授と喧嘩しておん出たら、将
来にマイナスに響く
• ボスには逆らはない
• 波風は立てない、ボートは揺ら
さない
• 出る釘は打たれる。もの言はば、
唇寒し秋の風
• 沈黙は金, 謙虚であれ
• 同僚は競争相手、足を引っ張る
• 教授と喧嘩しておん出ても、
将来には響かない
• 黙ってゐれば、満足してゐる
と思はれる。“Squeaky
wheels get greased”.
• 昨夜人から聞いたことでも、
昔から知ってるやうな顔をし
て喋る
• 同僚は競争相手であるが、足
は引っ張らない
或る「外人」の見た
日本の教授と教室
員の関係;
「何故、教授は教室から出
て来る全ての論文の著者
になるのか?」「内容に本
当に責任を持てるのか?」
「万一、誤りや捏造があっ
たら?」
(Cartoon from Samuel Coleman:
検証:なぜ日本の科学者は報われ
ないのか、岩館葉子訳)
「お上=権威」 と Academia
• 「お上」  Academia の両
方交通
• 「政策」 決定には 限られた
所謂 「学識経験者」 のみな
らず、現場からの意見を広く
募り、取り入れる。
• 「お上」 特に 中堅は 「外部
評価」 には免疫を持つ
• 「お上、権威」 には文句をつ
けて当然, その結果、意地
悪される恐れはない。
• 「お上」  Academia の一方通行
• 「政策」 決定には 限られた所謂
「学識経験者」 の意見は徴しても、
現場から、特に若い人達の意見は
入らない。
• 「お上」 特に 中堅役人は 「外部評
価」 には免疫を持つ
• 「よろしふ御座ゐます。 お上の事に
間違ひはござゐますまいから」 鴎
外、「最後の一句」
• 「寄らしむべし、知らしむべからず」
「科挙」が日本を滅
ぼす?
現場を知らない所謂 elite が
自分は知らないといふことす
ら知らないで、知ってるつもり
で、政策を立て、下々を 「指
導」 しようとする。
(Cartoon from Samuel Coleman:
検証:なぜ日本の科学者は報われ
ないのか、岩館葉子訳)
お流派の保持 対 他流試合の勧め
愛校精神 対 新たな血の導入
• 卒業した大学、教室、に
は原則として留まらない
• 師弟の関係・意識が低い
• 若いうちに個人として武
者修行に出る
• 給料・研究費をグラントで
賄へる 雇用が容易
• 受入側も、新たな血を導
入することに重きを置く
• 真の「愛校精神」とは?
• 卒業した大学、教室、に留
まる傾向が強い
• 師弟の関係・意識が強い、
他流試合も先生の紹介
• グラントで人件費を賄へな
いので、雇用が困難
• 「愛校精神」 の名の下に、
「身内」 を導入する傾向が
強い
Sabbatical のシステム
• 多くの大学に Sabbatical のシ
ステムがある。
• 通常7年間勤務すると、
Sabbatical の権利が出来る。半
年間、 full salary 又は、一年間
half salary
• 何をやっても良い → 新たな研
究、管理職からの一時逃避、本
を書く、何もしない
• 私は この制度を NIH で、一年
間、自分の手で分子生物学を学
ぶことに使った。
私の知らない面です
が、日本には 米国の
制度に対応する「権利
としての」 Sabbatical
制度は存在しないと聞
いてゐます (学内応
募、選考などによるも
のはある?)
言語帝国主義 (Do NOT trust “native speakers”)
• 何処でも、誰でも、何でも英語が
当然。それが如何に相手の負担
になるかを考へて見ようともしな
い。( 「口惜しかったら日本語で書
いてみやがれ」)
• 東洋人の論文だといふだけで、自
動的に 「英語がダメだ」 と言ふ
Reviewer が依然として存在する。
• Umlaut、accents、ましてや東欧
の diacritical marks などは 無視
する。
• 然し、最近の米国の医学生は論
理的な、どころか文法に則った文
章も書けない。 (私の知る全ての
国で年寄は同じことを言ふ)
• 本来、自分の言葉ではない言
葉で意思の疎通を図ることを
強制される。
• 英語圏外に共通の問題である
が、例外はあっても、西欧の言
語は一つマスターすれば、次
は易しい。 日本語のハンディ
は大きい。
• 現実: 少なくとも自然科学の分
野では、最早、英語で書かな
ければ、時間と労力の無駄。
• だからと言って、 “Native
speaker” を崇拝するな。
定年制の功罪
• 米国には 定年制は最
早存在しない。年齢に
よる差別=違法。
• プラス: 能力に応じて、
何時まででも現役で活
動できる
• マイナス: dead wood
を排除することが難しく、
職・予算の重荷になり、
若い人たちの進路の妨
げになる。研究所など
にとっては特に問題
• 日本のみならず、大部分
の国には定年制度が存
在する。
• プラス: 潤滑な人員の回
転を可能にする。
• プラス: dead wood を自
動的に排除できる。
• マイナス: まだ、充分活
動できる人材をも年齢に
よって、現役から排除す
る。
いづこも同じ研究者 (?)
「
鈴(
あ
木る
先う
ら
生若
はき
時日
本
代人
遅女
れ性
研
で究
す者
!の
コ
」メ
ン
ト
)
This is SCIENTIST
!!
?
?
(Cartoon from Samuel Coleman: 検証:なぜ日本の科学者は報われないのか、岩館葉子訳)
歴史・伝統の尊重と改革、現実との折合ひ
• 盲目の尊敬は 仮にそれを差し向ける対象が正鵠を得てゐて
も、何にもならぬのである。 鴎外、「寒山拾得」
• あるがままの世の中と折合ひをつけることが出来なくて、い
つも、うつけた夢ばかり見てゐるのは、それは狂気に違ひな
い。 然しな、本当の狂気といふものは、あるがままの世の中
と折合ひをつけるだけで、あるべき世の中のために戦はうと
しないことなのさ。 Cervantes、「Man of La Mancha」
• 現実は屡々不便で不愉快なものである。然し、我々はまづ現
実を正しく認識することから始めなくてはならない。 何故なら
ば、現実に無知であったり、現実を無視したりしても、現実は
なくならない。いづれは、現実は我々に追ひついて来る。 (出
典不詳、私の座右銘)
Guiding Principle
それぞれの国には独自の歴史、伝統、社会
のしきたりがあります。単に、どこかの国が
やってゐるといふだけで、安易にそれに追従
することは危険です。然し、それと同時に、現
状維持は誰にとっても気楽なものですが、そ
れを盾にとって、良いお手本が目の前にある
のに、やるべき改革をしないのも、間違って
ゐます。 鈴木 「今浦島の目に映る日本の科学研
究制度 -- 束の間の幻影」 蛋白質・核酸・酵素
49:2303, 2004)
触れなかった重要な問題 (第二回、三回用?)
• 人種、女性問題
• 人間としての研究者の教育
– 高等教育 対 職業教育
– 大学  専門学校
• 研究発表の訓練 (学会での発表、論文)
• 研究者としての Science Administration への参与
– Editorial Boards, 原稿査読
– グラント審査
– 学会運営
• 管理職 (“雑用“)対 現役研究者
• 企業経営者としての研究者 (比較的最近の現象)
• その他、その他、その他