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生活環境の変化と学校教育の役割
内
閣
府
「青少年の育成に関する有識者懇談会」
第10回
(2002年11月29日)
藤 田 英 典
東京大学大学院教育学研究科
1 80年代以降の教育改革の動向(初等・中等教育)
~(×):報告者批判的、(○):報告者支持~
①「ゆとり教育」「学校スリム化」と新しい学力観(×)
~完全学校週五日制と新学習指導要領の実施(2002年4月~)
②学力重視への政策転換(×○)
~アピール「学びのすすめ」(2002年1月17日)
③エリート主義・能力主義と市場的競争原理による教育再編(×)
~学校選択制、中高一貫校、アピール「学びのすすめ」など
④治療的アプローチと懲戒的アプローチの拡大(×○)
~スクール・カウンセラー、少年法改正、問題生徒への厳格な対応
⑤復古的ナショナリズム・道徳主義の台頭(×)
~「心のノート」、奉仕活動等の推進、教育基本法の見直し
⑥地方分権化の推進-2つの方向-
~現場裁量権の拡大と住民参加=「開かれた学校づくり」(○)
~教育委員会による管理統制の強化と新たな集権化(×)
⑦学校評価・教員評価-2つの方向-
~外部評価・第三者評価、管理的評価(×)
~当事者評価、形成的評価(○)
2 教育改革は効果的だったと言えるか?
1)80年代以降の教育改革の理由・目的
①「教育病理」
~「学校性ストレス」学校批判・教師批判
「ゆとり教育」「学校スリム化」政策
心の教育、スクールカウンセラー、少年法改正
②「変わる社会」
~知識社会=IT化・グローバル化、国際競争の新展開
「ゆとり教育」「学校スリム化」政策(新学力観)
アピール「学びのすすめ」、エリート教育
2)改革の目的は達成されたか?
①「教育病理」は改善・解決されたか?
~不登校、校内暴力・いじめ、学級崩壊、少年犯罪、キレる子ども
「教育病理」か「社会病理」か?社会病理(図表①)
~日本の問題行動水準の低さを支えているのは何か(図表②)
中間集団の崩壊と生活圏(コミュニティ)の分断化・脆弱化
②「変わる社会」に対応できるか?
~「学力低下」への危惧・不安(図表④⑤)
「学びのすすめ」、新たなテスト主義の台頭
~学校五日制・中高一貫校・学校選択制の拡大は何を意味するか?
エリート育成・安全圏確保の手段
 ①学力・努力・意欲・生活態度の二極分化
②早期選抜・学校格差・階層差の拡大
人材の浪費、人的資源の分断化・質的低下
③教育サービスの低下と家庭の教育費負担の増大
図① 生活環境の変容と教育問題青少年問題の展開
日本語版出所:藤田英典「学校化・情報化と人間形成空間の変容」北海道社会学会『現代社会学研
究』
第4巻、1991年(1-33頁)、図1(5頁)
①「教育病理」は改善・解決されたか?
~日本の問題行動水準の低さを支えているのは何か(図表②)
中間集団の崩壊と生活圏(コミュニティ)の分断化・脆弱化
図②-1 主要な犯罪の少年検挙人員人口比の推移(1987年~1996年)
6,000
5,548.7
5,000
ドイツ
4,000
3,000
イギリス
アメリカ
2,000
フランス
3,063.3
2,310.7
2,045.0
1,100.0
988.3
日本
1,000
0
1987
韓国
88
89
90
91
92
93
94
95
96
図②-2 殺人の少年検挙人員人口比の推移(1987年~1996年)
12
アメリカ
10
8
7.1
6
ドイツ
4
フランス
2
韓国
0
1987
88
89
日本
90
91
92
93
94
3.0
2.6
2.4
イギリス0.5
0.5
95
96
図②-3 強盗の少年検挙人員人口比の推移(1987年~1996年)
250
217.4
ドイツ
200
アメリカ
133.0
127.9
124.4
150
イギリス
100
フランス
50
0
1987
韓国
88
89
90
91
92
日本
25.0
6.2
93
94
95
96
(注) 各国の統計書による。
アメリカ
Crime in the United States 及びアメリカ商務省経済統計局の資料
イギリス
Criminal statistics England and Wales 及びイギリス中央統計局の資料
ドイツ
Polizeliche Kriminalstatistik 及びドイツ統計局の資料
フランス
Aspects de la criminalité et de la délinquance constatées en France 及び La Slluation émographique
韓国
勧告犯罪分析、韓国犯罪白書及び韓国統計年鑑。
日本
警視庁の統計及び総務庁統計局の人口資料。
出所: 『犯罪白書』平成10年版。
藤田英典「戦後日本における青少年問題・教育問題:その展開と現在の課題」藤田・黒崎・片桐・佐藤編
『教育学年報 8 子ども問題』世織書房、2001年(73-114頁)、図11a、b(99頁)
図③- 1 少年鑑別所新収容者(凶悪事犯少年)の非行時の教育程度別
構成比・殺人(1 9 9 0 年~1 9 9 9 年)
小中学校在学
1990
(55)
中学校卒業
3.6
41.8
1991
2.0
(51)
高等学校等中退
5.5
9.6
1993
(56)
5.4
1994
(36)
5.3
26.3
31.5
1997
(41)
15.5
1999
(57)
8.8
12.2
28.2
22.8
5.4
10.5
5.3
11.1
26.8
21.1
3.7
9.8
25.4
28.1
0.0
13.2
29.6
31.7
3.8
8.9
34.2
22.2
17.1
1998
(71)
23.7
23.7
3.9
9.6
33.9
15.8
1.8
5.9
23.1
8.9
39.5
1996
1.9
(54)
27.5
17.3
37.5
その他
10.9
9.8
36.5
2.6
高等学校等卒業以上
36.4
51.0
1992
(52)
1995
(38)
高等学校等在学
26.3
2.4
0.0
9.9
10.5
3.5
図③- 2 少年鑑別所新収容者(凶悪事犯少年)の非行時の教育程度別
構成比・強盗(1 9 9 0 年~1 9 9 9 年)
小中学校在学
1990
(365)
6.6
1991
(362)
2.5
1992
(352)
2.1
1993
(426)
中学校卒業
5.6
1996
(716)
6.4
8.4
9.4
6.1
17.4
34.7
26.9
33.1
24.1
24.7
24.1
28.7
28.5
30.8
24.5
23.5
28.3
その他
7.1 0.5
9.4
31.4
28.5
32.1
34.3
31.7
33.4
0.8
5.8 1.6
10.6
20.5
30.4
21.2
26.3
20.9
35.4
1995
(484)
1999
(1,172)
14.1
41.1
6.3
高等学校等卒業以上
13.4
44.5
1994
(522)
1998
(1,103)
高等学校等中退
46.0
4.0
1997
(1,197)
高等学校等在学
1.9
6.9 0.2
8.5
6.8 0.3
7.2 1.0
9.7
5.5 2.6
1. 矯正統計年報による。
2. ( )内は、実数である。
出所: 『犯罪白書』平成12年版。
藤田英典「戦後日本における青少年問題・教育問題:その展開と現在の課題」 藤田・黒崎・片桐・佐藤編
『教育学年報 8 子ども問題』世織書房、2001年(73-114頁)、図12a~c(105頁)
(注)
0.2
1.0
②「変わる社会」に対応できるか? ~「学力低下」への危惧・不安
「学びのすすめ」、新たなテスト主義の台頭(図表④⑤)
図④IEA国際学力比較調査(第3回、1995年、通称TIMS
S)
中学校2年数学
国・地域
シンガポール
韓国
日本
香港
ベルギー(Fl)
チェコ
スロバキア
スイス
オランダ
スロベニア
ブルガリア
オーストリア
フランス
ハンガリー
ロシア
オーストラリア
アイルランド
カナダ
ベルギー(Fr)
タイ
イスラエル
スウェーデン
国際平均値
ドイツ
ニュージーランド
イギリス
ノルウェー
デンマーク
アメリカ.
スコットランド
ラトビア
スペイン
アイスランド
ギリシャ
ルーマニア
リトアニア
キプロス
ポルトガル
イラン
クウェート
コロンビア
南アフリカ
平均得点
643.3
607.4
604.8
588.0
565.2
563.7
547.1
545.4
541.0
540.8
539.7
539.4
537.8
537.3
535.5
529.6
527.4
527.2
526.3
522.5
521.6
518.6
513.0
509.2
507.8
505.7
503.3
502.3
499.8
498.5
493.4
487.3
486.8
483.9
481.6
477.2
473.6
454.4
428.3
392.2
384.8
354.1
(1000点満点)
中学校2年理科
国・地域
シンガポール
チェコ
日本
韓国
ブルガリア
オランダ
スロベニア
オーストリア
ハンガリー
イギリス
ベルギー(Fl)
オーストラリア
スロバキア
ロシア
アイルランド
スウェーデン
アメリカ.
ドイツ
カナダ
ノルウェー
ニュージーランド
タイ
イスラエル
香港
スイス
スコットランド
スペイン
国際平均値
フランス
ギリシャ
アイスランド
ルーマニア
ラトビア
ポルトガル
デンマーク
リトアニア
ベルギー(Fr)
イラン
キプロス
クウェート
コロンビア
南アフリカ
平均得点
607.3
573.9
571.0
564.9
564.8
560.1
560.1
557.7
553.7
552.1
550.3
544.6
544.4
538.1
537.8
535.4
534.4
531.3
530.9
527.2
525.5
525.5
524.5
522.1
521.7
517.2
517.0
516.0
497.7
497.3
493.6
486.1
484.8
479.6
478.3
476.4
470.6
469.7
462.6
429.6
411.1
325.9
(1000点満点)
(注) ベルギーのFlとFrは言語圏の違いによる。
出所:IEA(国際教育到達度評価学会)の調査『数学教育・理科教育の国際比較』国立教育政策研究所、2002年
OECD国際学力比較調査(2000年、通称PISA)
図⑤-1 数学的リテラシー及び科学的リテラシーの平均得点(標準化済み)
数学的リテラシー
科学的リテラシー
1
日本
557
韓国
552
2
韓国
547
日本
550
3
ニュージーランド
537
フィンランド
538
4
フィンランド
536
イギリス
532
5
オーストラリア
533
カナダ
529
6
カナダ
533
ニュージーランド
528
7
スイス
529
オーストラリア
528
8
イギリス
529
オーストリア
519
9
ベルギー
520
アイルランド
513
10
フランス
517
スウェーデン
512
11
オーストリア
515
チェコ
511
12
デンマーク
514
フランス
500
13
アイスランド
514
ノルウェー
500
14
リヒテンシュタイン
514
アメリカ.
499
15
スウェーデン
510
ハンガリー
496
16
アイルランド
503
アイスランド
496
17
ノルウェー
499
ベルギー
496
18
チェコ
498
スイス
496
19
アメリカ.
493
スペイン
491
20
ドイツ
490
ドイツ
487
21
ハンガリー
488
ポーランド
483
22
ロシア
478
デンマーク
481
23
スペイン
476
イタリア
478
24
ポーランド
470
リヒテンシュタイン
476
25
ラトビア
463
ギリシャ
461
26
イタリア
457
ロシア
460
27
ポルトガル
454
ラトビア
460
28
ギリシャ
447
ポルトガル
459
29
ルクセンブルグ
446
ルクセンブルグ
443
30
メキシコ
387
メキシコ
422
31
ブラジル
334
ブラジル
375
出所:文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/b_menu/link/index.htm)
OECD国際学力比較調査(2000年、通称PISA)
図⑤-2
総合読解力
得点
読解力の平均得点(標準化済み)
情報の取出し
得点
解 釈
得点
熟考・評価
得点
1 フィンランド
546
フィンランド
556
フィンランド
555
カナダ
542
2 カナダ
534
オーストラリア
536
カナダ
532
イギリス
539
3 ニュージーランド
529
ニュージーランド
535
オーストラリア
527
アイルランド
533
4 オーストラリア
528
カナダ
530
アイルランド
526
フィンランド
533
5 アイルランド
527
韓国
530
ニュージーランド
526
日本
530
6 韓国
525
日本
526
韓国
525
ニュージーランド
528
7 イギリス
523
アイルランド
524
スウェーデン
522
オーストラリア
526
8 日本
522
イギリス
523
日本
518
韓国
526
9 スウェーデン
516
スウェーデン
516
アイスランド
514
オーストリア
512
10 オーストリア
507
フランス
515
イギリス
514
スウェーデン
510
11 ベルギー
507
ベルギー
515
ベルギー
512
アメリカ.
507
12 アイスランド
507
ノルウェー
505
オーストリア
508
ノルウェー
506
13 ノルウェー
505
オーストリア
502
フランス
506
スペイン
506
14 フランス
504
アイスランド
500
ノルウェー
505
アイスランド
501
15 アメリカ.
497
アメリカ.
499
アメリカ.
505
デンマーク
500
16 デンマーク
494
スイス
498
チェコ
500
ベルギー
497
17 スイス
494
デンマーク
498
スイス
496
フランス
496
18 スペイン
493
リヒテンシュタイン
492
デンマーク
494
ギリシャ
495
19 チェコ
492
イタリア
488
スペイン
491
スイス
488
20 イタリア
487
スペイン
483
イタリア
489
チェコ
485
21 ドイツ
484
ドイツ
483
ドイツ
488
イタリア
483
22 リヒテンシュタイン
483
チェコ
481
リヒテンシュタイン
484
ハンガリー
481
23 ハンガリー
480
ハンガリー
478
ポーランド
482
ポルトガル
480
24 ポーランド
479
ポーランド
475
ハンガリー
480
ドイツ
478
25 ギリシャ
474
ポルトガル
455
ギリシャ
475
ポーランド
477
26 ポルトガル
470
ロシア
451
ポルトガル
473
リヒテンシュタイン
468
27 ロシア
462
ラトビア
451
ロシア
468
ラトビア
458
28 ラトビア
458
ギリシャ
450
ラトビア
459
ロシア
455
29 ルクセンブルグ
441
ルクセンブルグ
433
ルクセンブルグ
446
メキシコ
446
30 メキシコ
422
メキシコ
402
メキシコ
439
ルクセンブルグ
442
31 ブラジル
396
ブラジル
365
ブラジル
400
ブラジル
437
(日本は2位グループ)
(日本は2位グループ)
(日本は2位グループ)
出所:文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/b_menu/link/index.htm)
(日本は1位グループ)
②「変わる社会」に対応できるか?
~「学力低下」への危惧・不安(図表④⑤)
「学びのすすめ」、新たなテスト主義の台頭
~学校五日制・中高一貫校・学校選択制の拡大は何を意味するか?
エリート育成・安全圏確保の手段
 ①学力・努力・意欲・生活態度の二極分化
②早期選抜・学校格差・階層差の拡大
人材の浪費、人的資源の分断化・質的低下
③教育サービスの低下と家庭の教育費負担の増大
3 共生時代の学校づくりの指針と課題
1)現代社会における学校の基本的役割
①生活の場
~安全・健全(適切な配慮)・許容性(居場所)・楽しい
②学力形成の場
~基礎基本、専門的能力、学習の構えの形成
③アイデンティティ形成の場
~自尊心・誇り、帰属感・他者関係、
自己イメージ・将来展望の形成
2)教育改革・教育実践の指針と課題
①努力と賞賛のカルチャーの再構築=「名誉の等価性」
~参加・努力・挑戦意味の発見、興味・関心・積極性の形成
②地方・現場からの改革
~現場裁量権の拡大、当事者の参加・協同・創意工夫
③制度設計の基本
~教育と社会の将来ヴィジョンをどう描くか?(図表⑥)
制度的価値:効率・平等・共生
実践的価値:自己実現
生活圏(ケアリング・コミュニティ)の再構築と
市民的共生の実現
図⑥ 四つの中軸原理と生活空間
自己実現
(活動の中で実現する価値)
効率
平等
生活と活動の基盤
(制度的構造)
共生
出所:藤田英典『教育改革』岩波新書、1997年、図1(56頁)
④教育=未完のプロジェクト現在と未来への投資
★すべての子どもが尊厳的存在・有為な人材
★金も人手も時間もかけずに教育がよくなることはない