感染症論からみた日本のBSE

Download Report

Transcript 感染症論からみた日本のBSE

リスク科学
(Risk Science)
Social risk science
(社会科学)
Natural risk science
(自然科学)
リスク評価
1)過去の事例の分類、分析(自然科学+社会科学)
2)モデルの作成と予測(マクロ経済学)
基本的には定量的分析(ゼロリスクはない)
人命のような場合は問題(倫理学、哲学)
リスク管理
実験リスク科学
(Experimental
risk science)
仮説ー実験ー結果ー仮説
1)予防措置:リスク回避とリスク軽減
( risk avoidance, risk reduction )
2)危機管理 ( crisis management )
短期的対応(緊急避難的・対症療法的措置)
長期対策(静止的対策と動的対策)
(上記の2つは分けて考える必要がある。行政学、法律学)
リスク・コミュニケーション
1)情報の収集・提供
(情報のfeed forward, feed backシステムが必要:国民 -メディア-行政)
2)バリデーションの説明責任(risk-benefit, cost-benefitが必要)
3)国内、国外標準化
(政治学、社会学)
4)リスク評価、リスク管理の再評価
BSEのリスクアセスメント・チャート
リスク評価の方程式を作る
リスク評価は動的にする(管理は対応マニュアルを複数用意して可変にする)
フィードバック方式を導入する
1)地域別、国別リスク評価
情報収集(ウェッブサイト)
過去数年間のBSE発生規模
により、リスク分析(可動的)
例: 大量発生国 (10点)
中規模発生国(5点)
小規模発生国(3点)
監視非実施国(3点)
清浄国
(0点)
2)輸入実績
(品目 x 輸入数量)
例:肉骨粉、獣脂、生ウシ
輸入目的:食料 (7 点)
飼料(5点)
肥料(1点)
3)感染症論に基づく評価
例:動物-ヒト-ヒト感染症(5点)
動物-ヒト感染症(2点)
動物での保有率高い(5点)
ヒトでの重篤度(5点)
治療法なし(5点)
発症数
アウトブレイク
1)感染症は突然起きる(アウトブレイクする)
ように見えても離陸前の期間があって立ち
上がる通常、そのカーブは指数関数的
である
時間
2)感染症が拡がるためには必ず感染因子を
増幅するポジティブ回路の存在が必要で
ある。
感染因子
宿主
宿主
感染因子
種の壁
BSEの場合:バリアーの高さ
(高いほど伝播しにくい)
食品
輸血
飼料
医薬品
種の壁
代用乳
種の壁 (肉骨粉)
*
*
ヒツジ
ヒツジ
ウシ
ウシ
ヒト
1)同じ宿主の中では
2)同じ肉骨粉でも、飼料より
バリアーは低い
人工乳の方が伝播しやすい
ヒト
3)食品より、医薬品のほうが
直接体内に投与することが
あるので伝播しやすい
(理由)英国例
(いったん種の壁を
1、人工乳のほうが肉骨粉の含有量が高い
越えると同じ宿主では
2、新生仔の方が腸管から未消化の大型
容易に伝播する)
タンパク質を吸収しやすい
何故イギリスにBSEが起こったか
牛と羊の飼育頭数(万)
英国 米国
スクレイピー発生数
日本
1990 牛
羊
1200
4400
9600
1135
476
3
1995 牛
羊
1170
4280
10280
899
490
2
1999 牛
羊
1142
4470
9910
724
466
1.2
3.9
0.07
0.003
羊/牛
英国
1990
1992
1994
1996
1998
2000
米国
日本
70
80
58
38
63
57
1
2
2
1
0
0
374
595
235
459
248
568
肉骨粉
英国
米国
日本
肉骨粉生産量(トン)
うち羊由来(%)
40万
14
330万
0.6
40万
0・006
12
1200万
13
9700万
0.03
470万
牛への給与(%)
牛飼育頭数
羊由来肉骨粉
給与量(g) /牛1頭
561
27
0.0014
リスク管理(日本の対応、何を狙い、何故しなければならないか?
飼料
ヒツジ
ウシ
肉骨粉
食品
ウシ
人工乳
a
ヒト
ヒト
医薬品
b
c
ポジティブ回路
農水省
輸血
ポジティブ回路
厚生省
BSEの根本対応は1)aとcのポジティブ回路を完全に断つこと、
2)bのウシからヒトへの伝播を絶つことに尽きる
特に肉骨粉使用禁止は、感染阻止対策としては根本対応であり1番重要である
日本の対策
ウシのポジティブ回路
a)肉骨粉
ウシ飼料への使用禁止通達(1996)
牛由来肉骨粉の使用禁止(2001,9)
肉骨粉製造全面禁止(2001,10)
ウシからヒトへ
b)食品
全てのウシ牛脳、脊髄、眼等廃棄
(2001,10)
ウシはと殺時全頭検査(01,10)
24ヶ月齢以上の異常ウシは検査(01,10)
ヒトのポジティブ回路
c)輸血*
英国に1980~96年6ヶ月以上滞在者
は献血禁止(1999,12)
1980年以降英国、フランス、ドイツ、
スイス、アイルランド、ポルトガル、
スペインに6ヶ月以上滞在者は
献血、臓器提供禁止(01,3)
医薬品
英国ウシ由来医薬品輸入・製造禁止(1996)
ハイリスク国ウシ由来材料使用禁止(2000)
全てのウシのカテゴリーI,II組織由来材料使用禁止
(2001,10)
低リスク国由来のウシのカテゴリーIII,IV組織由来材料
のみ使用可能(2001,10)
* 輸血禁止の根拠:vCJ患者(1例)が発病前8ヶ月に虫垂摘出。
検査の結果、摘出虫垂が異常プリオン蛋白陽性であった。
白血球を介してプリオンが伝播される理論的可能性が出たため、禁止措置を取った
対策にも拘わらず、BSEに関連して日本でこれから起こること
1)日本は2001年10月で全てのBSE伝播ルートを絶った
従って今後起こることは全て過去の負の遺産がこれから出現するものである。
(対策の意義が理解されないと不測の事態が生ずる)。
この時間的ズレ(タイムラグ)を理解する必要がある。
(潜伏期の長い感染症の特徴)。
2)パニックはこれから起きることが予想できないために
不安が拡大される反応である。
BSEの流行に関しては英国およびEU高汚染国というモデルが
すでに存在し、シミュレーション可能。
従って予想が可能であればパニックに陥る必要はない。
質の高い情報が伝わらないことがパニックの原因となる。
ウシの場合 (英国モデル )
BSE確認症例
3500/月
発症最盛期は1992~93年(3500頭/月)
2001年現在18万頭が確認
(20万頭が公式確認されるか?)
感染ウシの実数は公式確認の4~5倍
80~100万頭近いと推定される。
1500
BSE確認
86
餌の規制実施
88
餌の規制強化
92 93
96
00
英国肉骨粉使用量
40万トン
平均潜伏期間を約5~6年
英国の肉骨粉のBSE汚染は1980年頃 ?
規制の始まった88年までには、高率に汚染した
その後、餌への使用規制、(88年96年)
により使用量は減少した 。
80
86
88
92 93
96
00
1)両パターンの類似性から、汚染肉骨粉の使用が主な原因と考えられる
2)英国は最初のBSE発生国であったため、危機管理体制は後手に回り、自然発生的モデルに近い
3) EU諸国、日本は英国の情報を得ており、流行にバイアスがかかっている。
モデルとしてはEU諸国が信頼性は高いが、規模の大きさ、時間経過に伴うデータでは英国モデルのほうが正確になる。
英国以外のモデル
各国のBSE発生頭数
フランス
デンマーク
イタリア
アイルランド
オランダ
ドイツ
ポルトガル
スペイン
ベルギー
ギリシャ
チェコ
スイス
リヒティンシュタイン
ルクセンブルク
オーストリア
フィンランド
日本
1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 Total
0
0
5
0
1
4
3
12
6
18
31
161 258 499
0
0
0
1(c)
0
0
0
0
0
0
0
1
6
7
0
0
0
0
0
1(c)
0
0
0
0
0
0
42
42
15
14
17
18
16
19
16
73
80
83
91
149 220 811
0
0
0
0
0
0
0
0
2
2
2
2
17
25
0
0
0
1(c)
0
3(c)
0
0
2(c)
0
0
7
123 130
0
1(c) 1(c) 1(c) 3(c)
12
14
29
30
106 170 163
67
591
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
82
84
0
0
0
0
0
0
0
0
1
6
3
9
46
65
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
2
0
2
8
15
29
64
68
45
38
14
50
33
33
399
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
2
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
3
OIE報告(2002年1月)
EU発症牛の時系列 (汚染牛、汚染肉骨粉:英国からEUへ)
2000
BSE発症数と推計数
2000年までの推計数は
公式数を4倍した。
1000
2万
輸入牛数
1万
汚染牛から肉骨粉として利用
3万トン
輸入肉骨粉
85
破線はEUへの輸入が停止した
あとEU以外の国に輸出された
90
95
00 01
700
アイルランド
600
ポルトガル
1)汚染ウシの輸入による
500
発生頭数
EUでのBSEの伝播
400
スイス
自国の肉骨粉の汚染
フランス
300
(アイルランド、ポルトガル)
200
100
スペイン
ベルギー
イタリア
ギリシャ
オランダ
0
デンマーク
0
5000
2)汚染肉骨粉の輸入
ドイツ
10000
15000
20000
25000
英国からの牛の輸入頭数(86~92年)
(フランス、ベルギー)
3)英国以外を経由して汚染
(スイス)
700
アイルランド
600
発生頭数
500
400
スイス
フランス
300
200
100
ドイツ
イタリア
デンマーク
0
0
ベルギー
オランダ
10000
20000
30000
英国からの肉骨粉輸入量(87~90年:トン)
40000
(動衛研:筒井氏提供)
英国からの輸出牛、肉骨粉と発症牛
アイルランド
ウシ(頭)
肉骨粉(ト
1985~92
ン)
1988~96
23000
7190 *
フランス
4600
25500 *
ポルトガル
6850
650 *
ドイツ
6600
1200
スペイン
2830
270
602
12000
イタリア
1556
4200
オランダ
3235
24100
ベルギー
公表感染牛
2001年まで
(推定値:計算値)
811( 2580 : 2410)
499( 740 : 840)
591( 2160 : 700)
130( 150 : 225)
82( 90 : 95 )
65( 120 : 80)
42( 42 : 73)
25( 50 : 230)
推定値はアクティブサーベイランス(2001年)前の発症牛数を4倍した。
英国からの輸入ウシx1/30+肉骨粉x1/200t=計算値
*:肉骨粉の広範使用国で初期より発症牛あり(ポジティブ回路の可能性)は計算値を3倍した。
日本の場合 (ウシ)
英国からのウシの輸入(1987年9頭、1988年19頭)
英国からの肉骨粉輸入(なし)
英国以外からの肉骨粉輸入(20万トン/年)
日本が肉骨粉等を輸入した国
(日本貿易月表)
韓国
中国
台湾
香港
ベトナム
タイ
インド
パキスタン
デンマーク、イタリア、オーストリア
カナダ、アメリカ
1986~2000年
5390(230?)
90100
18400(350
0?)
91200(240?)
520
770(770?)
900
1470(40?)
80500
各国の英国からの肉骨粉
輸入 (1988~1996年)
1350 (91~93年)
345
4600 (90,91年)
240
0 ?
18560
0 ?
40
5260
コメント
EUによるリスク評価
時期的に重なる輸入量
年間60万トン生産
6万トン輸入、2万トン生産
レンダリング工場はない
レベル2
レベル2
レベル3
283500
0 ?
レベル2
4060
0 ?
レベル1
ウルグアイ、アルゼンチン
1216250
0 ?
レベル1
オーストラリア、ニュージーランド
1387150
0 ?
レベル1
ペルー、チリ、ブラジル
インドネシア
フィリピン
スリランカ
0 ?
120(120?)
50(50?)
66000
2000(92~96年)
3300
レンダリング工場はない
レンダリング工場はない
日本のBSE発生リスク
1)英国から生牛の輸入頭数 28頭 (1987,88年)
2)英国からの肉骨粉再輸入の最悪シナリオ(1986年~2000年)
韓国、台湾、香港、タイ、パキスタン、フィリピン、スリランカから4950トン
3)デンマーク、イタリア、オーストリアから80500トン
英国の肉骨粉汚染度推定:1987年から1996年まで年間200万頭と殺=2000万頭
そのうち推定汚染80万頭が肉骨粉に再利用(4/100)
上記3カ国の推定:1991~2000年まで年間500万頭がと殺=5000万頭
そのうち推定汚染は100頭(1/50万):英国の危険率の1/2万
4)英国からの輸入ウシx1/30+肉骨粉x1/200t=推定発症頭数を使用すると
28/30 + 4950/200 + 80500/200/2万=26頭 となる。
肉骨粉の再輸入量が少なければ発症頭数はこれより少ない?
ヒトの場合
1)英国BSEは80年代初期に種の壁を越え、2~3年後からウシのポジティブ回路に入った。
2)1996年英国政府は変異型CJD(vCJD)の発生とBSE感染による可能性を示唆。
vCJDは1995年の発生以来、年20%ずつ増加、英国での発生は2001年6月で102名。
3)この経緯からみると、潜伏期は短くて10年。
ウシ由来組織を食用にしたためヒトの感染が起きたとすれば、ウシとヒトの発症パターンは類似する。
しかし、ウシではポジティブ回路が回ったが、ヒトでは回路は回らない。
4)下図のようになれば250人くらいの発症が予想される。
しかし、現在出ているvCJDの患者は129番目のコドンはMet/Metである。
Val/ValやMet/Valの患者が遅れて同じパターンで発症するとすれば、その数は500~750人。
オックスフォード大学のグループは、発症までの潜伏期が20年以下なら1300人と予想。
メチオニン/メチオニン型
30人
メチオニン/バリン型など
20人
95
00
2010?
ポジティブ回路の回らなかったネコのモデル
2000年6月現在84頭、初発は90年12頭
ピークは94年16頭
99年は2頭
10匹
90
95
2000
日本のvCJDリスク
1)英国では1980年から1996年まで約75万頭のBSEウシが食用に解体された。
英国のBSEは自然発生的、EUや日本はバイアスが入り、同一条件ではない
2)情報の多寡から考えると、後からBSEが発現した国ほど対策が早く、
ヒトへの伝播は低い(vCJDのリスクが低い)と考えられる。
3)しかし、ここではそうした要素を入れないで、単純比例計算をした。
英国
EU高汚染国
日本
BSEウシ 75万頭
BSEウシ 5~6千頭
BSEウシ
vCJD 500~1300人
? 2001年現在4名
(英国滞在者を含む)
vCJD 0.017~0.045人以下
26頭以下
結論:日本で感染したBSEウシに由来するvCJD患者は発生しないと推察される。
ただし、英国やEU高汚染国に1980年以降、長期滞在した日本人でvCJDを
発症する可能性は否定できない。
BSEに関連して、これから日本で起こらないこと
重要なので繰り返すが、日本は2001年10月で全てのBSE伝播ルートを絶った。
従って、今後起こることは全て過去の遺産が、これから出現するもののみである。
1)ウシ
予想される範囲では数頭のBSEウシが数年間、検出される可能性がある(2010年頃まで)
これらは発症していてもいなくてもBSE検査で検出され、。肉骨粉として再利用されない。
従って、ポジティブ回路に入らず、散発的に検出され、そのまま終わる。
英国のような感染症の離陸(アウトブレイク)は起こらない。
2)ウシーヒト
EU同様に危険部位の臓器は廃棄。BSE検査陰性の個体のみが食用に回る。
従って、BSE感染ウシからヒトに感染が起こることは考えにくい。
3)ヒト
前述したように、日本で汚染したBSEウシからvCJDが出ることは考えられない。
しかし、英国・EU高汚染国で感染し、vCJDを発症するケースは否定できない。
ヒトのプリオン病という立場から見れば弧発性CJDは100万人に1人の率で起こる。
日本でも毎年100人以上発症している。vCJDの患者が日本で出ても、公衆衛生上
特に異常事態が生じることはない。統計的にはプリオン患者数が1%増えることになる。
1980年以降英国、EU高汚染国に6ヶ月以上滞在したヒトからの献血、臓器移植を禁じている。
従って、ヒトからヒトへのポジティブ回路は動かない。
vCJD患者探しをしたり、異常事態のように報道する姿勢は決して事態の解決にはならない。
リスクコミュニケーションの問題(SN比)
BSEの検査結果について:風評の被害と情報公開論はどちらも間違い
現在のELISAシステムでスクリーニングした場合、初期1%、慣れて0.1%の偽陽性が出る。
これは感度を上げるためのシステム上起こる誤差である。
年間100万頭のウシを全国200の検査所で調べる場合。土日は休みとして年間250日。
1日4000頭検査する体制となる。
この場合、精密検査で陰性になる個体でも1日4頭は1次検査で陽性になる。
これを発表すると、毎日4都道府県がBSE陽性を疑うウシが見つかったと報告し、
次の日に精密検査で陰性でしたと発表することになる。
また同じ日に新たに4都道府県がまたBSE陽性を疑うウシが見つかったと報告し、
次の日に精密検査で陰性でしたと発表することになる。
毎日のこの繰り返しに意味があるのであろうか?
推計上BSEウシが検出される機会は少ない(年間数頭と思われる)。
そうであれば、速やかに精密検査を行うシステムを確立し、その検査結果を公表するのが当然、
1次スクリーニングの結果の公表は意味のある情報とは考えられない。
1次スクリーニングの結果を公表しないことが情報の隠匿にあたるとは考えにくい、
また風評の被害を起こすとも考えられない。
精度の悪いノイズ情報を垂れ流された結果、国民の混乱を招くだけである。
検査方法の特性
検査は方法の違いにより特性がある。
感度と精度は同じ性格のものではない。
ELISA
ウエスタンブロット(WB)
組織検査、免疫染色
結果は液の色の濃さ
濃い薄いという1次元情報のみ
平面上の3本のバンド
本数と太さ・細さのパターン情報
バーコード情報に似る
感度は中等度
濃縮すれば感度は上がる
判定までの時間は1~2日
病変
神経細胞空胞変性と
病巣での異常プリオン蛋白検出
(2次元画像で情報は最も多い。
形態的にプリオン検出可能)
感度は高い、判定までに短時間
(数時間)
精度の確認が難しい
1次スクリーニング向き
精度は高い
操作が煩雑
ある程度の熟練必要
確定診断向き
感度は高くない。
判定までの時間は数日
精度は非常に高い。
特別の施設・設備と技術が必要
最終診断向き
提起された問題
2)廃用牛について
日本に当てはめた場合(n=26)
年齢別BSE発症牛(EUモデル 2001年、総計1817頭)
600
300
1
3
5
7
9
11
13
15 歳
年齢(歳)
頭数
2歳以下
0
3
1以下(0.04)
4
1以下(0.44)
5
3.2
6
8.6
7
7.3
8
2.9
9
1.5
10歳以上
2.0
日本のウシ飼育頭数(万頭)
150
肉牛
年間15万頭増加する。
9歳以上の廃用牛35万頭
乳牛
1頭買い上げ4万で合計140億円
と殺しないと毎年(15万頭)60億円増加
100
廃用牛
50
発症牛の補償、1頭5億円のほうが安い
1
3
5
7
9
11
13歳
提起された問題
そして解禁はいつになるのか?
食肉等に関しては、10月18日の検査体制が出来たあとは問題ない。
輸血、臓器移植提供に関しては平均潜伏期がまだ明瞭でない。
BSE汚染ウシを摂取した可能性のある期間後20年は解禁出来ない?
肉骨粉と医薬品は2001年10月よりあとに生まれたウシからの材料は問題ない。
早ければ24ヶ月あるいは30ヶ月で解体されたものは再利用可能である。
特に根拠はないが2倍の安全を考えると5年後は問題ない。
収支決算と選択(科学でなく政策の問題)
今回のBSE問題により直接的に出た損失は
100万頭x5年の検査として検査キット費=150億円
検査の人件費:最小200人(給与年間700万)が係り切りで5年=70億円
牛肉年間(100万頭、1頭200kgの肉、100g500円)で1兆円 1割減で1000億
廃用牛買い上げ 140億円他
1360億円の損出。焼却費、施設などを含むと2000億円?
もし、もう1度BSE問題が起こると2000億円以上の損失が考えられる。
肉骨粉の代替のための補償費、代替法の開発費、設備投資費に2000億を使って
植物性蛋白、魚介類由来の動物性蛋白質やカルシウムにすれば、
ウシからウシのポジティブ回路は永遠に止まる。
選択権は誰にあるのか?誰がきめるのか?
よくある質問
BSE汚染肉骨粉は飼料だけでなく、肥料として使用されていた。
土壌汚染・汚染牧草を介して伝達したのではないか?
またBSEは土壌では分解されないので汚染がすすむのではないか?
英国のBSEが肥料による土壌汚染を介して伝播したことが原因という仮説を取る。
肉骨粉生産
反芻動物飼料
反芻動物以外
への飼料
魚類を含む動物
への飼料
1988年まで
○
○
○
○
1988年7月
○
×
○
○
1990年9月
○
×
×
○
1996年3月
○
×
×
×
1996年4月
○
×
×
×
肥料
×
英国肉骨粉の肥料への使用量
40万トン生産の一部が肥料へ
潜伏期5~6年とすると、前半は飼料の肉骨粉ケースと
同じカーブになる。しかし、88年以降肥料への転用は飼料
への禁止に比例して増加したと思われる。
96年の肥料への利用禁止まで増加した。
その後、使用量は激減したと考えられる。
88年を1として考えると図のようになる。
80
88
90
96
BSE確認症例
発症最盛期は1992~93年(4万頭/年)
3500/月
肥料が原因 であれば2001年は約8万頭/年
実際には約1000頭以下
1500
BSE確認
餌の規制実施
86 88
餌の規制強化
92 93
96
2001
土壌中で蓄積したとすれば8年間で(1+2)x8/2で結局12倍(不活化されないという仮説をとる)となり、
推定年間発生数は2001年で48万頭/年となる。
現実とのズレは 480,000:1000で480倍となる、こうした仮説は棄却される。
土壌で分解されない場合の予想
BSE確認予想
48万
分解されずに蓄積性があると48万頭は
今後も発症し続けることになり、現実とあわない。
12万
6万
86
88
92.93
96
2001
リスク科学から見た日本のBSE
リスク評価
1)過去の事例の分類、分析:日本でのBSE発生リスクに読み間違いがあった。
2)モデルの作成と予測:プリオン病、BSEに関する解説は多かったが、予測とモデルに関する議論はなされなかった。
リスク管理
1)予防措置:リスク回避とリスク軽減:肉骨粉の輸入禁止措置が取れなかった(1966年)。
医薬品、輸血などの対応はとれた。
2)危機管理:BSE牛発生後の飼育牛検査、屠場での全頭検査、特定危険部位 の廃棄等の措置は迅速であった。
短期的対応:検査開始前の肉買取り、廃用牛買取り、死亡牛検査等の対応はとれた。流通過程のモラル崩壊が明らかになった。
長期対策:肉骨粉生産の可否、廃用牛処理等、具体的提言なし
リスク・コミュニケーション
1)情報の収集・提供:英国のBSE、vCJD症例の情報が強烈な印象を与えた。
検査方法をめぐる風評被害と情報隠匿説(SN比の説明不足)
日本でのvCJD初発例フィーバー
北海道の獣医師の自殺と報道の無視
2)バリデーションの説明責任:リスク・ベネフィット、コスト・ベネフィットの説明がない(廃用牛、肉骨粉など)
3)国内、国外標準化:擬似患蓄、全頭検査(30ヶ月齢以下の個体:OIEとのズレがあるが安心感への投資)
4)リスク評価、リスク管理の再評価(今後の問題)