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研修カリキュラム開発
東京大学医学教育国際協力研究センター
大西弘高
潜在的カリキュラム
例:ある指導医は教室で患者医師関係の重要性を説いて
いたが,研修医Aは後にその指導医が外来で患者に怒
鳴っているのを観察した
 ロールモデルがどう行動しているかは学習者の
将来の行動に対し大きな影響を与える
 本来のカリキュラムで教えようとしたこと以外に
学習者が学んでいる内容も少なくない
顕在的カリキュラム



指導者側が公式,非公式な教育場面で
学習者に学んで欲しいと思っている内容
研修の場やスケジュール?
診療内容や量?
カリキュラムの捉え方

カリキュラム:学習者が学びとった内容
教科課程
教科外課程
顕在的カリキュラム(教育課程)
潜在的カリキュラム

教育者側が意図
したカリキュラム
学習者が学び
とった内容
カリキュラムは,スケジュールや教育方法だけで
なく,患者とのやり取りから研修医が学んだこと
など全てが含まれる
従来のカリキュラム開発モデル
ニード
現実的制約
教育のプロセス
(吉岡, 1978)
目標
学習
評価
学
習
者
教授
教
員
 目標,方略,評価の
流れは一方向
方略
 評価がフィードバック
(方法・
情報を与える
資源)
教育目標分類(taxonomy)


教育目標の細分化
評価の信頼性重視(MCQへの強い依存)



細かな知識が重視される傾向がより強まる
高度認知領域や態度は相対的に軽視
OSCEによる表面的技能(コンピテンス)重視

態度変容の伴わないコンピテンスは実際の行動変容
(パフォーマンス)につながらない
 依然として教育目標分類は重要だが,その限界
を知ることはより重要
厚生労働省医師臨床研修制度
【到達目標】
I 行動目標
(1)患者-医師関係
(2)チーム医療
医療人として必要な基本姿勢・態度
(3)問題対応能力
II 経験目標
(4)安全管理
A 経験すべき診察法・検査・手技
(5)症例呈示
(6)医療の社会性
B 経験すべき症状・病態・疾患
C 特定の医療現場の経験
カリキュラム開発モデル
カリキュラム開発の6段階アプローチ(Kernら.1998)
1. 問題の明確化と一般的ニーズ評価
●
● 2. 対象学習者の
ニーズ評価
6. 評価とフィード ●
バック
● 3. 一般目標と個別目標
5. カリキュラム ●
の実施
●
4. 教育方略
カリキュラム開発の方法論

教育目標基盤型(プロセス重視)


(ニーズ)→目標→方略→評価
アウトカム基盤型(プロダクト重視)

教育アウトカム→評価→目標や方略
どのように教育目標を決定するのか
 いずれが学習結果をより担保可能か

教育目標基盤型教育の考え方
教育環境
What to learn
学習内容
サポート
How to learn
学習方法
教育アウトカム
医学生
評価
学習内容・方法とアウトカムの整合性??
アウトカム基盤型教育の考え方
教育環境
What to learn
学習内容
サポート
How to learn
学習方法
医学生
評価
教育アウトカム
アウトカム基盤型教育の例(1)

ACGME (米国卒後研修認定委員会)
ACGME Outcome Project: http://www.acgme.org/Outcome/






患者ケア
医学知識
診療の質管理と改善
対人・コミュニケーションスキル
プロフェッショナリズム
場やシステムに応じた診療
アウトカム基盤型教育の例(2)
IIME (Institute for
International Medical
Education)の
7アウトカムモデル Population
国際的な医学教育の
Minimum Essential
Med Teach 2002, 24,130–135
Health
Clinical
Skills
Information
Critical Management
Thinking
Scientific
Foundations
Communication
Skills
Professional
Values,
Attitudes
アウトカム基盤型教育の例(3)

スコットランド
医学部長会議
カリキュラムの
3つ輪モデル
Simpson et al.
Med Teach 2002,
24, 136-143
アウトカム基盤型教育の例(4)

米国医学研究所の5つのコア・コンピテンス
(IOM. Health Professions Education, 2003)
 患者中心のケア
 チームによる医療
 エビデンスに基づいた診療
 質改善
 情報の有効活用
アウトカム基盤型教育の特色


プロフェッショナリズム,批判的思考など
統合的な能力により焦点が当てられる
全般的パフォーマンスに対する評価が
より重視される
全般的能力と個別目標の関係
全般的能力
問題解決
レベルの知識
知識
態度
スキル
モデル・コア・カリキュラム(卒前)

個別目標が1200以上(←教育目標基盤型)

本来ならそれぞれに評価がなされるべき



患者の自己決定権の意義を説明できる
裂孔原性網膜剥離の症候、診断と治療を説明できる
特に統合的な領域における評価があいまいにな
りがちである
この目標が学習者の明確な指針となりうるか
 患者や社会が納得する教育につながるか

アウトカム基盤型教育重視の理由





情報の膨大化と教育目標の細分化
社会からの期待の増大と説明責任
学習目標,方法や内容,評価の一体化
学生,教員が学習目標を理解しやすい
臨床前,卒前臨床,卒後初期,生涯学習
の連続性を理解しやすい
ジェネラリズム

専門分化し断片化した医療へのアンチ
テーゼ


生物医学内の専門性の偏りに対するアンチ
テーゼ → 専門医に気遣ったジェネラリズム
生物医学と 心理社会的医学の間のバランス
の悪さに対するアンチテーゼ → より患者の
全人性を考慮したジェネラリズム
行動科学


Millerが1949年提唱
人間の行動を経験的に検証し得る一般理論の
展開をめざし,そこに含まれるであろう歴史学,
人類学,経済学,政治学,社会学,社会心理学,
心理学,精神医学,医学,生理学,生物学の間
に共通する言葉を作り,これら各分野の経験的
技術を用いて検証可能な形で相互に連関する
諸仮定,諸定理の系を作り出すこと
患者中心(Patient-centeredness)




1970年にBalintが提唱
全人的な存在としての患者
心身医学:行動変容の重視
Rogersのカウンセリング心理学の影響
生物心理社会モデル


Engelが1977年提唱
医学教育や医療が,還元主義的な生物
医学モデル(biomedical model)に偏って
おり,病の理解を制限していると論じた
生物心理社会モデル不使用の理由


1992年にSadlerが指摘

医師の時間的制限

手技を使わない側面の診療への関心

プロとしての満足感の源は何か

臨床問題解決への有用性の低さ
生物心理社会モデルに“認識”, “倫理”, “実践”
の三つの側面を加えたBiopsychosocial plus
three faces modelを提唱
Biopsychosocial + 3 faces model

BPSと3Fが各々取り扱える学問分野
BPS
General systems theory
Biology
Psychology
Sociology
Anthropology
Other natural/social sciences
3F
Health law
Ethics
Other philosophy
Informatics
Communication theory
Business management
Other disciplines
カリキュラム評価の要素
客観試験
ポートフォリオ等
指導医評価
指導医
研修医
(自己評価) 学習者評価 (自己評価)
研修状況の評価
・ 症例数やばらつき
・ 教材や情報アクセス
・ 業務への参加度
・ 学習風土や研修環境
患者評価
医療スタッフ評価
カリキュラム
管理責任者
カリキュラム開発の作業






問題の明確化と一般的ニーズ評価
対象学習者のニーズ評価
一般目標と個別目標
教育方略
カリキュラムの実施
評価とフィードバック
1. 問題の明確化と一般的ニーズ評価
2. 対象学習者のニーズ評価


現状アプローチと理想的アプローチの差
→埋めるべき教育ニーズ
このニーズは学習者にも認識されそうか
3. 一般目標と個別目標, 4. 教育方略
6. 評価とフィードバック

アウトカムによってさらに目標を細分化


知識,スキル,態度に分けると教育方法や
評価を明確化しやすいが時に文脈を損なう
アウトカム毎,目標毎に用いるべき教育
方法,評価方法を考慮


全般的能力の評価は下位
項目全てを包含可能
例―予防医学的視点に立っ
た患者教育コミュニケーション
全般的能力
グループ討論課題

1.
2.
3.

皆さんは医師2名からなる診療所の医師です.
300床の病院の家庭医療科(医師5名)から研修
医2名を請け負っており,患者とのコミュニケー
ションというアウトカムに関して後期研修3年間
のカリキュラムを開発します
より細かな目標の必要性の吟味
教育方法,スケジュールの決定
評価案(形成的,総括的)
注:実現可能性を考慮すること
3. 一般目標と個別目標, 4. 教育方略
5. 実施,6. 評価とフィードバック


常に目標,方略,評価が互いにズレを生じ
ていないかどうか確認する
実施段階で考慮すべき点



リソースの不足(特に指導医の時間)
ステークホルダー間でのコンフリクト
実施段階での問題が明らかになれば目標
を減らす,まとめるなどの対策を考慮
学習者の臨床評価のレベル
パフォーマンスに
ポートフォリオ 基づく評価
直接観察,
評
価
の
真
正
性
Does
Shows
How
OSCE スキルに基づく評価
Knows How
Knows
(Miller GE. Acad Med 1990; 65: S63-7.)
筆記試験や
CBTなど
医療面接教育の目標
(Rezler & Flaherty, 1985より改編)
学習者の要因
性格,過去の経験
態度,知識,技能
医療面接
技法教育
医療面接
技法向上
患者の要因
基盤の身体状態
疾患のプロセス
健康への態度/信念/知識
経済状態,性格,人生観
患者満足度の改善
医療の改善
コンプライアンス
状況の要因
医療システム,社会保障
文化的信念や態度,受けている治療
医療面接技法の一般的発達段階
(Weston & Lipkin, 1989)
1. 病歴を聴く
2. 診断的面接を行う
3. 患者を教育する
4. 患者のケアに包括的に責任を持つ
5. 患者との協力体制をつくる
6. 難しい状況や人格に対応する
7. 有能な治療者になる
医療面接の要素





診断,治療に向けた通常の面接
一歩踏み込む面接
患者教育
インフォームド・コンセント
精神科的問題を持つ患者との面接
教育方法(評価方法)

Role-playing between learners
患者役ができる.再実施が容易.

Role-playing with SP
SPからフィードバックが得られる.
評価の信頼性が高い.

Direct observation and discussion
現場で実施でき,リアリティが高い.
倫理的問題.指導者の能力を要する.