Transcript まちなかキャンパスとは
日本における教師教育及び 教師教育研究の動向 「社会科教師の成長をどのように捉えるか? 教師教育研究の方法論を問う」 第7回「社会科教育研究の方法論の国際化 プロジェクト」シンポジウム 2013年1月26日(土)CIC東京 報告者:桑原敏典 (岡山大学大学院教育学研究科) 発表の構成 Ⅰ.はじめに Ⅱ.日本における社会科教師教育研究の動向 Ⅲ.日本における教師教育の動向 Ⅳ.おわりに はじめに 1.これまでのシンポジウムで明らかになった こと 2.社会科教育研究における教師教育研究 3.社会科の教師教育 4.本報告の目的 これまでのシンポジウムで 明らかになったこと (1)日本の社会科教育研究のアプローチ: 独自性の追求 (2)授業やカリキュラムの分析・論理の解明 (3)教育現場への寄与を目的とし、「どうある べきか」を問う。 社会科教育研究における 教師教育研究 1.教師を対象とする研究成果は圧倒的に少ない。 カリキュラム 授業 社会科教育理論 教師 子ども 2.近年、社会的・学問的要請に基づき増加:多領域の アプローチを応用=方法論の多様化 日本における教師教育研究の動向 (p.8,№1) ① 2000年代になって教師教育研究が報告さ れ るようになった。 ② 日本社会科教育学会『社会科教育研究』 は、 教師教育研究をよく取り上げている。特に、 2009年の第59回全国研究大会のシンポジウ ム を特集した2010年110号の貢献は大きい。 ③ 研究対象の取り上げ方によって、文献研 社会科教師(教育)研究の 分析枠組み ① 質的か量的か ② 記述的か規範的か 社会科(教師)教育研究の類型 質的 記述的 草原 豊嶌 規範的 田中 渡部 量的 草原和博(2012)の方法 (№2,3) ◎目的 多様に捉えられる地域について教える際に、教師は どのような工夫をしているか? ◎方法 ア)モデル地理教科書を開発し、それに基づく授業 実践を5名の教師に依頼し実践を観察・記録 イ)インタビューにより、授業の意図等を聞き取り ウ)授業記録の分析。 豊嶌啓司(2011)の方法(№4) ◎目的 授業において社会認識形成を促すために、教 師は子どもとどのように関わっているか。 ◎方法 ア)同一計画・内容の授業を未習熟教師と熟 達教師に行ってもらい、VTRに記録 イ)記録を分析 田中伸(2011)の方法(№5,6) ◎目的 子どもが持っている認識が、その子どもに対 して行われる教育の目的や方法にどのように影 響するか。 ◎方法 ア)日本の子どもたちが持っている市民性意 識の実態を、2つの中学校において実施し たアンケート調査から解明 イ)日本と英国のシティズンシップ教育を 比較 渡部竜也(2010)の方法 ◎目的 大学では、社会科教員養成のために、社会科 教育法についてどのようなカリキュラムが用意 され、何が教えられているのか。 ◎方法 ア)全国の旧国立大学教育系大学・学部の 社会科関係の講義計画の調査 イ)担当者へのアンケート調査 社会科教師(教育)研究の 特質と課題 1.よりよい社会科授業がなされるための諸条件の 解明:学校・子ども・教師の関係 2.目的(データの蓄積)に合わせた、アプローチの 選択 3.蓄積したデータの相互比較をふまえた、アプローチ の見直しの必要性 ・授業の違いは、教師の経験年数によるのか、教育観 によるのか? 4.教師の資質と、教師自身の学習履歴の関係の検討 社会科の教師教育 1.教員免許法によって規定されてきた。 2.近年、各大学で独自の取り組みが増える →教育現場との連携 近年の日本の教員養成改革のながれ ①「今後の国立の教員養成系大学・学部のあり 方 について」報告書 (平成13年) ②教職大学院制度の発足(平成20年) ③「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の 総合的な向上方策について(答申)」(平成 24年) ④大学改革実行プラン(平成24年) 「今後の国立の教員養成系大学・学部の あり方について」報告書(2001年) ・教員養成カリキュラムの新たなモデルの必要 性。 ・教員養成学部にふさわしい教員の確保 ←(背景)教員養成学部を構成する大学教員 の多様性 ・現場と連携した教員養成 教職大学院の発足(2008年) ・指導的役割を果たす教員=スクールリーダー の養成 ・特定の科目を超えた、広く総合的な力量の 形成 教員の資質能力向上策について の答申(2012年) ・時代に合った指導力の育成 ・教員養成の修士レベル化 ・教育委員会・学校と大学の連携 大学改革実行プラン(2012年) ・各都道府県に配置されている教員養成 学部の役割の点検 岡山大学における教員養成の改革 ①教員養成コア・カリキュラムの作成 ②積み上げ方式による教育実習 ③全学教職コア・カリキュラム ④修士課程のカリキュラムの実質化 ⑤教職大学院における教育実践研究をコアと す るカリキュラムの作成 教育学部Diploma Policy (例)小学校教育コース等における教師 としての専門性 1.学習指導力 2.生徒指導力 3.コーディネート力 4.マネジメント力 教育学部のカリキュラム 1.実践的指導力育成を核として、4つ の力を育成。 2.教育実習とインターンシップを組み 合わせ、教育現場と連携したカリキュ ラムを構築 修士課程のカリキュラム 1.教職の意義や役割についての意識を高める ための研究科全体の共通基礎科目の設置。 2.教科の研究方法と内容を中心とするコース ごとの専門基礎科目の配置。 2年 2月 修士論文審査会 修士論文 1年後期 専門基礎科目10単位 専門 科目 16単位 組 織 的 指 導 体 制 1年前期 課題 研究 4単位 高度な 専門性を 培う 教科 教育学特論と 教科 内容特論に 関する 豊富な 選択科目 の設定 専攻・コースの教育目標に 応じたコースワーク 教育研究 特論Ⅴ :実践研究 附属学校 教育研究 特論Ⅲ :教科教育 教育研究 特論Ⅵ :教科内容 教育研究特論Ⅱ :研究方法論 (コース単位) 教育研究特論Ⅰ :基礎理論 (専攻単位) 共通基礎科目2単位「学校教育の理念と今日的課題」 全専攻共通 研究者・高度な専門性を持つ教員の目的・使命に関する 院生への意識付けを教員・院生参加の討論により行う 入学前 研究指導計画書 25 教職大学院のカリキュラム 1.現場の教育課題とのリンク 2.教育課題の発見と解決 3.学校支援 4.教育現場の意見を取り入れたカリキュラム の点検・評価 岡山大学における社会科教員養成 の改革 (1)教育現場と連携した教育内容開発力養成(2010年度~) 学生や院生が、附属学校や公立学校の教育活動に定期的・継続 的に関わったり、現職教員との交流を行うことによって、授業構 成・授業実践に留まらない社会科教員としてのトータルな資質を 育成する。 (2)地域社会との連携による大学院教員養成プログラム(2011 年度~) 地域社会と連携をしながら,各学校の実態にあった教育活動を創 造・展開することができる高度な資質を身につけた教員の育成。 (3)教員の社会力の育成を目指した取り組み(2012年度~) 他者と関わり社会の問題について考えその解決に積極的に取り 組み自ら社会を作っていこうとする力を身に付けた教員としての 社会力と、地域社会の一員として社会の問題解決や改善に積極的 に取り組むことができる力を育成するための教育プログラム開発 力の育成。 2010年度からの取り組み (№11) 1.目的 教育現場との連携に基づく、 カリキュラム、教育内容開発のための 力量養成 2.成果 ア)環境教育のためのカリキュラム開発、 授業実践 イ)現職教員との共同作業による教材開発 2011年度からの取り組み (№12、13) 1.目的 地域社会との連携に基づく、カリキュラム 開発力の育成 2.成果 ○岡山市、NPOと連携し、下記のような環境教育 プログラムを開発し実施 ア)海のごみについて学ぶ体験学習プログラム イ)山の産業廃棄物について学ぶ体験学習プログラム ウ)環境問題をテーマとするアニメーションの作成 と、 環境学習のための市民ミーティングの開催 2012年度からの取り組み(№14) 1.目的 教員としての資質の基盤となる、 社会力(社会や他者とコミュニケー ションをとる力)の育成 2.成果 市民と学生が共に語り合うイベント 「ティーチイン岡山」を大学の事業 「まちなかキャンパス」の一環として実施 まちなかキャンパス事業 • まちなかキャンパスとは、大学の教員・職 員・学生が地域の人々の自由な語り合い を通じた対話の場です。 • すなわち、まちなかキャンパスを通じて、 お互いを信じ合い対話する空間、岡山の 地に信頼的対話の空間を創造することが まちなかキャンパスの最も重要な目的と なります。 大学院教育学研究科 社会科教育講座 ティーチイン岡山のコンセプト • 学生と市民の方が一緒に議論。 • 社会問題を、私たちの問題として捉え 直す。 • 問題「を」知るだけではなく、 問題「で」知ることが大切。 • 問題に対して「私」ができることを考 える。 ティーチイン岡山の成果(№14) • 多くの方の参加をいただくことができた。 – ティーチイン3回目 43名 – ティーチイン4回目 41名 • うもれかけていた森永事件を教材化することができ た。 • いじめ問題を構造化するプログラムを開発した。 • 森永事件資料館の岡崎久弥さん、NPOセンターの渡 辺 泉さん、チャイルドライン岡山の方などと協力 し、プログラムを作ることができた。 岡山大学における 社会科教員養成に関するまとめ 1.教育現場との連携から、 地域社会との連携へ 2.一市民として社会のあり方を問い直す経験 →社会科の教育内容開発力の基盤形成