生体管理医学1-3

Download Report

Transcript 生体管理医学1-3

全身疾患患者の診察法
森實敏夫
重症度と緊急度
• 重症度
–生命危機の程度
–臓器機能不全の程度
• 緊急度
–救急処置を要する時間
意識、血圧、
呼吸?
心血管系、
脳神経、肝
臓、腎臓?
何らかの治療を、
すぐにしないとい
けないのか?
救急患者の診療手順
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
緊急度(急性危険状態)の瞬時把握
一次救命処置/患者情報の聴取
全身診察/神経学的診察/専門的診察
補助診断法の選択/検体採取・提出
病態の把握
治療方針決定
治療の開始
即座に評価すべき項目
•
•
•
•
•
•
気道
呼吸状態
脈拍
血圧
心拍動
意識状態
Japan Coma Scale
Grade I 覚醒している
1 大体清明だが、今一つはっきりしない。
2 時、場所、人の見当識障害がある。
3 名前、生年月日がいえない。
Grade II 刺激で覚醒する (R:不穏、I:糞尿失禁)
10 ふつうの呼びかけで容易に開眼する。
20 大きな声または体をゆさぶることによって開眼する。
30 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する。
Grade III 刺激しても覚醒しない
100 痛み刺激を払いのける動作をする。
200 痛み刺激で手足を少し動かしたり、顔をしかめる。
300 痛み刺激にまったく反応しない。
全身状態の視診
•
•
•
•
•
•
•
皮膚の色調・温度
皮疹
出血斑
腫脹
変形
着色
創傷
胸部の診察
•
•
•
•
•
胸郭の呼吸性運動
呼吸音
呼吸型
心拍動
心音
腹部の診察
•
•
•
•
腸雑音
圧痛
デファンス(筋性防御)
肝腫大
ミニ神経学的検査
• 意識レベル
• 眼の所見
– 眼球の位置
– 眼球運動
– 瞳孔の大きさ、左右差、対光反射
• 運動障害
– 命令に応じた四肢の運動
– 疼痛刺激に対する反応
緊急検査
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
動脈血ガス分析
末梢血、血液型
血清生化学
血清電解質
血糖
血液凝固
尿一般
動脈血ガス分析
•
•
•
•
•
pH
(7.35-7.45)
PaCO2
(35-45 mmHg)
HCO3-
(23-28 mEq/L)
PaO2
(95, 100-0.3×年齢)
SPO2
パルスオキシメータを人差し指
の先に装着し、簡単に測定ができる。正常
値は安静時で93%以上。90%以下になると
チアノーゼを呈しはじめ、50%以下になると
組織損傷を起こす。
末梢血
• ヘモグロビン Hb
– 男性 13.5-17.5 g/dl
– 女性 12-15
• ヘマトクリット Ht
– 男性 40-50%
– 女性 35-45
• 白血球数
WBC
血清生化学ほか
•
•
•
•
•
AST
ALT
LDH
CK
Amylase
•
•
•
•
•
NH3
CRP
BUN
Na, K, Cl, Ca
血糖
血液凝固
• 血小板数
• プロトロンビン時間(PT)
• 活性化部分トロンボプラスチン時間
(A-PTT)
• フィブリノーゲン
• フィブリン分解産物(FDP)
• Dダイマー(D-dimer)
尿検査
•
•
•
•
•
•
•
•
尿量
比重
潜血反応
糖
蛋白
ケトン体
ビリルビン
ウロビリノーゲン
補助診断法
•
•
•
•
•
•
•
•
•
心電図
胸部X線撮影
CTスキャン
超音波検査(エコー、US)
内視鏡検査
血管造影
MRI
RI検査
脳波検査
内科的疾患と全身管理1
森實敏夫
ショック
ショック
血圧低下により末梢循環が著しく障害され、そ
の結果、末梢組織の代謝が 損われた状態。
1. 神経原性ショック(neurogenic shock)
2. 循環血液量減少性ショック(hypovolemic
shock)
3. アナフィラキシーショック(anaphylaxy
shock)
4. 敗血症性ショック(septic shock)
5. 心原性ショック(cardiogenic shock)
6. その他のショック
ショックの状態では、
• 収縮期圧<90mmHg、
または通常の血圧より30mmHg以上低下
• 臓器循環障害
– 尿量<20ml/時間
– 意識障害
– 末梢血管収縮
アナフィラキシーショック
• I型アレルギーによる
• 薬剤が原因のものが最も多い:キシロカイン、抗生物質、造
影剤
• 抗原暴露後1-30分後に起きる
• 症状
– 蕁麻疹様皮疹
– 気管支喘息様症状
– 血圧低下
– 痙攣
• 重症の場合:ボスミン(エピネフリン)0.2-0.5mgSC,症状に
応じて15分から20分間隔で再投与
• 気道確保、人工呼吸、心マッサージなど必要に応じて
• クロルトリメトン1AゆっくりIV、ハイドロコルチゾン200-
500mgIV
神経原性ショック
• 疼痛などが引き金になりVaso-vagal reflexを
起こし、除脈・心収縮力低下が起きる
• 末梢血管拡張で四肢の温感あり
• 多くの場合、頭を低くして衣服をゆるめ、しば
らく観察するのみで改善する。改善が見られ
ないときは、ラクテックにて血管確保を行い、
硫酸アトロピン1A(0.5mg)静注。 更に改善
が見られないときは、エホチ-ル1A/生食2
0mlを1/5ずつ繰り返し静注する。
循環血液量減少性ショック
• 出血や脱水によるもの
• 輸液・輸血の指標
– 収縮期血圧100mmHg以上
– 脈圧30mmHg以上
– 中心静脈圧(CVP)3-10cm水柱
– 尿量30ml/時間以上
高血圧
高血圧の定義
• 140/90 mmHg以上
– 治療目標 140/90未満
– 糖尿病、慢性腎疾患などがある場合は130/80未
満
• 高血圧前症 120-139/80-89 mmHg
• 正常 120/80 mmHg 未満
*2003年JNC-VII
高血圧
• 成人の30%、虚血性心疾患患者の60%が高
血圧
• 待機的手術後の心血管系の疾患による死亡
オッズ比4
• 全身麻酔中の血圧が不安定
• 周術期の心不全、腎障害、脳血栓・塞栓、心
筋梗塞のリスクが高くなる
高度の高血圧
• 無治療の高血圧患者(平均211/105mmHg)では麻酔時の
血圧低下が著しく、さまざまな刺激による昇圧が起きやすい
• 術前の血圧の半分以下まで低下すると、心筋虚血が起きや
すい
• 術前の拡張期血圧が110mmHg以上の場合、不整脈、心筋
虚血、心筋梗塞、脳卒中、腎不全のリスクが高い
• 170/110mmHg以上の場合は治療して140/90mmHg未満ま
でコントロールするのが望ましいが、緊急手術が必要な場合
は、カルシウム拮抗薬を点滴静注して徐々に低下させる
高血圧性緊急症
• 定義:血圧の著しい上昇により、脳・心・腎な
どの臓器障害をきたすか、それが
進行し
つつある状態。高血圧性脳症、脳出血、進行
性腎障害、急性肺水腫を伴う
急性左心不
全、眼底出血などがみられる。多くの場合、2
20/130mmHg
以上のことが多く、緊
急かつ適正な降圧を必要とする。
診断基準
1)拡張期血圧が130mmHg以上
2)眼底うっ血乳頭
3)腎機能が進行性に悪化
4)意識障害、頭痛、悪心、嘔吐、局所神経症状
治療
• ニフェジピンの舌下のように急速に血圧を下げると、
脳卒中や心筋梗塞が誘発されるリスクが高い。
• 点滴静注
– Nitroprusside— 0.25 to 0.5 µg/kg per min; maximum
dose: 8 to 10 µg/kg per min.
– Nicardipine— 5 mg/h; maximum dose: 15 mg/h
• 2-6時間で拡張期圧を100-105mmHg間で下
げる。最初の降下が25%を越えないように徐々に
下げる。
服薬中の高血圧患者
• 原則として手術日当日も服薬させる
– 利尿薬は48時間前から中止、ただし水電解質の
管理が十分できる場合は続けさせる
– ACE阻害薬、カルシウム拮抗薬は周術期のリス
クを高めるが続けさせる方が無難
– βブロッカーは中止させてはいけない
糖尿病
血糖のコントロール
• 200mg/dl以下にコントロールする
– 食事療法のみの2型糖尿病→特に治療必要なし。術前と
術後すぐに血糖を測定。200mg/dlを超えていた場合、少
量の短時間作用型インスリン投与。
– 経口糖尿病薬投与の2型糖尿病→前日まで服用させ、当
日は服用しない。>200mg/dlは同上。
– インスリン投与2型および1型糖尿病→当日は量を調整し
てインスリン投与。(中間型に変更する場合もある)。
• ICU入院急性心筋梗塞患者では80-110mg/dlの厳
重なコントロールの方がアウトカムが優れている
インスリン投与2型および1型糖尿病
• 早朝の手術・処置で朝食が遅れるだけの場合はイ
ンスリン投与をその分遅らせる。
• 朝食が取れない場合
– 1日1回投与の場合は3分の2に減量
– 1日2回投与の場合は半分に減量
• 朝食・昼食ともに取れない場合
– 1日1回投与の場合は半分に減量
– 1日2回投与の場合は3分の1に減量
• 午後に手術・処置が行われる場合
– 半分に減量 + 5%ブドウ糖100ml/時間
インスリン投与2型および1型糖尿病
• 複雑・長時間の手術
– インスリンの静脈投与
– 固定レート
• 血糖 201-250mg/dl 1単位/時間
• 血糖 251-300mg/dl 2単位/時間
インスリン投与2型および1型糖尿病
• 短時間作用型インスリン皮下注射のスライディング・
スケール Sliding scale:増量する
– 0 ~ 70 mg/dl – 医師にコンサルテーション
– 0 ~ 200 -- no insulin
– 201 ~ 250 -- 1 X (1日量/30) 単位の短時間作用型イン
スリン
– 251 ~ 300 -- 2 X (TDI/30)単位増量
– 301 ~ 350 -- 3 X (TDI/30)単位増量
– 351 ~ 400 -- 4 X (TDI/30)単位増量
– 401 ~ 450 -- 5 X (TDI/30)単位増量
– >450 --医師にコンサルテーション
待機的手術時のインスリン投与
• 5%グルコース+KCl 20meq/Lを持続点滴(100ml/hour)
し即効型インスリンを側管から持続注入する。
• 血糖は120~180mg/dlに保つ。(点滴中は血糖値は実際
の値より50mg/dl以上高目にでる。)
• 術前1日使用量が40U/dayでは1.0U/hで注入,40~80
U/dayでは1.5U/h,80U/day以上では2.0U/hとする。
• 血糖は1~2時間おきに測定し120~180mg/dlに保つよう
に,インスリン量を調節する。
– 血糖が180mg/dl以上では持続注入インスリン量を0.5U/h増量する。
– 120mg/dl以下では持続注入インスリン量を0.5U/h減量する。
– 血糖が下がりすぎてもインスリンは術中最低0.5U/hは必ず注入する。
この場合は点滴するブドウ糖の量を増量して対処する。
緊急手術時のインスリン投与
血糖
70以下
インスリン(U/h)
0.5
70-99
1.0
100-200
1.5
201-250
2.0
251-300
3.0
即効型インスリン6U皮下注
301-350
4.0
5.0
即効型インスリン8U皮下注
即効型インスリン10U皮下注
350以上
その他の対応
50%ブドウ糖20ml静注
糖尿病性昏睡
• 原因不明の昏睡の患者をみたら、常に低血糖と高
血糖の両者を考慮する。
血糖
尿ケトン
陰イオン
ギャップ*
低血糖
<50mg/dl
-
<12
ケトアシドーシス
300-1000
+++
>12
非ケトン性昏睡
>600
-~+
<12
乳酸アシドーシス
150-250
-~+
>25
-
*Na+ - HCO3 - Cl-
低血糖性昏睡
• 糖尿病の治療中の患者に見られることが多い
• 血糖値と症状はあまり相関しないが一応の目安とし
て
–
–
–
–
70mg/dl:副交感神経優位(空腹感・悪心・あくび・徐脈)
50 :大脳機能低下(会話減少・嗜眠)
35 :交感神経優位(頻脈・血圧上昇・過呼吸)
20 :昏睡、痙攣
• 高血糖よりも低血糖の方がすみやかな処置を必要
とする。
低血糖の治療
• 軽症(経口摂取可能)
– ペットシュガー1袋(8g)、氷砂糖、ジュースなどを摂取さ
せる
– スナック、菓子などなんでもよい。
• 重症(経口摂取不可能)
– 50%ブドウ糖20ml(10g) 静注
• 多くは数分~15分で回復する。効果がなければ追加投与する。
• 経口糖尿病薬による低血糖は遷延する傾向があり、注意が必要
• 血糖は150mg/dl位になるように、5~10%ブドウ糖の点滴
静注によりコントロールする。
内科的疾患と全身管理2
森實敏夫
肝疾患
軽度のリスクがある患者1
• 軽度の慢性肝炎
– 無症状の軽度の慢性肝炎患者はリスクが低い:
14例の34件の手術では主要な合併症はなかっ
た
• 脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
– 待期的手術ではリスクの上昇はない
– 飲酒者は禁酒させる
軽度のリスクがある患者2
• 自己免疫性肝炎
– 代償性の自己免疫性肝炎患者はリスクが低
い:ステロイド服用患者はHydrocortisoneを投
与する
• ヘモクロマトーシス
– 糖尿病、心筋症の合併をチェックすること
• ウィルソン病
– 精神神経系異常がある場合、インフォームド・
コンセントに注意。D-penicillamineは創傷治
癒を遅延させるので、一時減量する
待期的手術の禁忌1
• 急性肝炎
– 昔の研究で開腹による肝生検を受けた例の1013%が死亡との報告がある
• 劇症肝炎
– 治療としての肝移植以外の手術はできない
• アルコール性肝炎
– 開腹による肝生検による死亡率は55-100%
– 可能であれば12週間待つこと
待期的手術の禁忌2
• 重度の慢性肝炎
– 慢性肝炎の手術リスクは臨床的、生化学的、組
織学的な疾患重篤度と相関する
– 特に、合成能、排泄能の低下、門脈圧亢進、架
橋形成性壊死や多小葉性壊死の認められる者
はリスクが高い
術前の介入1
• PT延長
– Vitamin Kあるいは新鮮凍結血漿の投与により
改善させる(3秒以内)
• 血小板
– できれば10万/mm3を保つ
• 出血時間延長
– Diamino-8-D-arginine vasopressin (DDAVP)投
与
術前の介入2
• 腹水
– 利尿剤投与により改善
• 電解質異常
– 低カリウム血症、代謝性アルカローシスを是正→
不整脈、脳症の防止。
• 肝性脳症の誘因、増悪因子
– できるだけ是正する。ただし、予防的治療が術後
の脳症を抑制するエビデンスはない。
術前の介入3
• 腎機能
– 血清クレアチニン、BUNが正常であることを確認
するが、肝障害があると、これらは低目になるこ
とに注意
• 胃・食道静脈瘤
– 予防的に硬化療法、結さつ療法を行う。手術が
出血のリスクを上昇させるわけではないが、輸液
がオーバーロードにならない様に注意する
術前の介入4および術後の注意
• 低栄養
– 栄養状態を改善することは、周術期あるいは術
後短期の死亡、合併症の発生を低下させる
• 術後は非代償性にならないよう注意深く経過
を観察する:特に、プロトロンビン時間、ビリル
ビン値そして電解質、腎機能
– 複雑な手術、多くの輸血、多量の出血、循環系の不安定、
全身性の感染があるとTBが上昇しやすい
血液疾患
出血傾向に関する問診項目
• 口の中に大量に出血したことがあるか?
• ちょっとぶつけただけで内出血が起きるか?
• 抜歯したことがあるか?
– 出血はどれくらいで止まったか?出血はすぐか、遅れて起きたか?
• 今まで手術を受けたことがあるか?
– 出血があったか?出血はすぐか、遅れて起きたか?
• 肝臓、腎臓、血液の病気をしたことがあるか?
• 輸血を受けたことがあるか?どんな成分の輸血だったか?
• 服薬しているか?ワーファリンなどの抗凝固薬は?アスピリ
ンなどの鎮痛剤は?サプリメントや漢方薬は?
• 血縁者に出血傾向のある人や、手術後に出血が止まりにく
かった人がいないか?
診察
•
•
•
•
•
点状あるいは斑状出血の有無
毛細血管拡張、蜘蛛状血管腫の有無
関節の拘縮など過去の出血の後がないか
血腫の有無
関節の過伸展の有無
臨床検査
•
•
•
•
プロトロンビン時間(PT)
活性化部分トロンボプラスチン時間(A-PTT)
血小板数
出血時間
• 問診で問題なく臨床検査で異常の患者で出血に関する治療
を要したのは0.3% -- 問診で問題あり臨床検査でも異常
の患者では15%
• 問診で問題なく臨床検査でも問題ない患者の死亡率0.87%
-- 問診で問題なく臨床検査で異常の患者2.06%
• 術前の出血傾向の検査は周術期の出血の予測因子ではな
い!
低リスク手術・処置
•
•
•
•
•
主要臓器ではない
手術部位は露出している
切開が小さい
局所止血が可能
局所のフィブリン分解が起きない
• 抜歯、リンパ節生検、ヘルニア縫合術など
• 問診で問題なければ、臨床検査は不要。
• 診察で問題があれば、PT、A-PTT、血小板数、他
抗凝固薬服用患者
• ワーファリン
– 脳卒中、血栓・塞栓症の予防
– 心房細動
– 人口弁
– 静脈血栓塞栓症
– 肺梗塞
ワルファリン
• 続けると、手術時の出血のリスクが高い
• やめても抗凝固作用が消えるまで数日要す
る
• 急に中止した後、凝固亢進のリバウンドが来
る
• やめた後、再開しても、同じ抗凝固作用が得
られるまでは数日要する
心房細動で人工弁なし
• ワーファリン服薬無し:1年に4-5%の血栓のリスク
(脳塞栓など)
• ワーファリンは1/3にリスクを低減する
• INR (International Normalized Ratio) 2.0から3.5
に維持
• 中止してINRが2.0以下なら手術は問題なく施行可
• 抜歯はワーファリンを中止しなくてよい
代表的病態における検査結果
病態
BT Plt
血管疾患、膠原病
↑
血小板減少
TT Fib
正
PT PT
T
正 正
正
正or↑
↑
↓
正
正
正
正
血小板機能異常
↑
正or↑
正
正
正
正
血友病A
正 正
正
↑
正
正
正
正
↑
正
正
↓
↑
↑
↑
↓
von Willenbrand病 ↑
DIC
↑
好中球数 /μl 対処(リスク管理)
>1500
なし
1000-1500
明らかな感染リスクなし
発熱は外来で治療
軽度の感染リスクあり
発熱はしばしば外来で治療
明らかな感染リスクあり
発熱は必ず入院治療、抗生物質の注射投与、
感染の臨床症状に乏しい
高度の感染リスクあり
発熱は必ず入院治療、抗生物質の注射投与、
感染の臨床症状は乏しいか無い
500-1000
<500
<200
心疾患
Goldmanの心リスク指数
古典的な評価法
•
•
•
•
•
•
•
•
>70歳
過去6ヶ月以内の心筋梗塞
術前の第III音/頸脈怒張
大動脈弁狭窄
緊急手術
開腹、開胸、大動脈手術
術前いずれかの時点の心室性期外収縮>5/分
術前心電図における洞性リズム以外のリズム
心房性期外収縮
• 悪い全身状態
5点
10点
11点
3点
4点
3点
7点
7点
3点
心疾患以外による臥床、慢性肝疾患、腎不全、低酸素血症、高炭酸ガ
ス血症、低カリウム血症(<3)、低重炭酸イオン濃度など
Goldmanの心リスク指数
古典的な評価法
• クラスI
0-5点
1.3%
(死亡、大きな合併症)
• クラスII
• クラスIII
• クラスIV
6-12点
13-25点
26点以上
4.7%
15.3%
56%
術前評価
•問診
健康な患者の評価1
• 気付いていない疾患で手術のリスクを上昇さ
せるものを発見することが重要。
• 健康な人の手術のリスクは非常に低い。
• 質問票のすべての項目の回答が“いいえ”の
場合、問診、診察、検査をさらに行っても、手
術のリスクは変わらない。
健康な患者の評価2
• 運動能力
• 正常であれば:
– 平らな場所で4ブロックを症状なく歩ける
– 階段を2段飛びで症状なく登れる
• 術後の合併症は正常10%に対してそれ以外
は20%、心血管系の合併症は10%対5%、
呼吸器系の合併症は9%対6%
健康な患者の評価3
• 服薬状況
– Aspirin、Ibuprofen、その他のNSAIDsは出血量
を増加させる
• 肥満
– 肥満は手術に伴うリスクを上昇させない
健康な患者の評価4
• 年齢
– 50,000例の高齢者の調査では、待期的手術の死亡率
は、60歳未満で1.3%に対し、80-89歳では 11.3%
であった。
– 一般に、70歳以上の高齢者ではリスクが上昇すると考えられている
が、それが合併症が多いためか、高齢のためか分からない。
– 90歳以上の795例の検討では2年生存率はマッチした
対照群と同じであった。別の4,315例の検討では、周術
期死亡、合併症はより高齢で高かったが、死亡率は全体
として低値であった。
術前質問票
具合が悪いですか?
重い病気にかかったことがありますか?
同じ年のほかの人と比べて運動時に息切れがひどいと思いますか?
咳が出ますか?
息がぜいぜいすることがあますか?
運動時に胸が痛くなることがありますか(狭心痛)?
足がむくむことがありますか?
過去3ヶ月に薬を飲んだり注射されたことがありますか?(アルコール多
飲も含む)
9. 何かアレルギーがありますか?
10. 過去2ヶ月に麻酔を受けたことがありますか?
11. あなたまたはあなたの血縁者で麻酔で問題が起きたことがありますか?
12. 最後の生理はいつでしたか?
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
術前評価
•検査
健康な患者での臨床検査:まとめ1
• スクリーニング用質問票:全員
• 運動能力の問診:全員
• 血圧、脈拍:全員
• 上記3つのいずれかで異常が見つかった場合、
60歳以上の場合、大手術を受ける場合→問診、
診察を行う
• 妊娠している可能性のある女性:妊娠検査
• 大量の出血が予期される手術:ヘマトクリット
健康な患者での臨床検査:まとめ2
• 大手術、低血圧が予期される場合、腎毒性の薬
剤を使用する場合、50歳以上の場合:血清クレ
アチニン
• 心電図:上記(ただし、1ヶ月以内にとってある場
合には必要なし)
• 胸部X線検査:60歳以上、あるいは心疾患、呼吸
器疾患が疑われる場合(ただし、6ヶ月以内に
とってある場合には必要なし)
• 臨床的評価により、疾患が疑われる場合には、
それぞれ必要な臨床検査を行う
歯科診療と感染予防
歯科処置と菌血症
•
•
•
•
•
抜歯
スケーリング
知歯手術
歯内治療
両側 扁桃摘出
100%
70%
55%
20%
55%
細菌性心内膜炎のリスクが高い病態
(AHA)
• 心臓弁置換術後
• 心内膜炎の既往
• 複雑な先天性心疾患でチアノーゼのある状
態(ファローの四徴、大血管転位、単一心室
など)
• 導管形成(Conduit)を受けた患者
細菌性心内膜炎のリスクが中等度の
病態(AHA)
•
•
•
•
•
その他の先天性心奇形の大部分
後天的弁機能不全
肥大型心筋症
僧坊弁閉鎖不全
心室中隔欠損などの術後6ヶ月以内で循環
系が不安定な患者
細菌性心内膜炎予防に対する抗菌薬の
投与が推奨される歯科的処置(AHA)
1. Dental extraction
2. Periodontal procedures including surgery,
scaling and root planing, probing, and
recall maintenance
3. Dental implant placement and
reimplantation of avulsed teeth
4. Endodontic (root canal) instrumentation
or surgery only beyond the apex
JAMA 1997;277:1797.
細菌性心内膜炎予防に対する抗菌薬の
投与が推奨される歯科的処置(AHA)
5. Subgingival placement of antibiotic fibers
or strips
6. Initial placement of orthodontic bands
but not brackets
7. Intraligamentary local anesthetic
injections
8. Prophylactic cleaning of teeth or
implants where bleeding is anticipated
細菌性心内膜炎予防に対する抗菌薬の
投与が推奨されない歯科的処置(AHA)
1. Restoration dentistry (operative or
prosthodontic with or without retraction
cord)
2. Local anesthetic injections
(nonintraligamentary)
3. Intracanal endodontic treatment; post
placement and buildup
4. Placement of rubber dams
JAMA 1997;277:1797.
細菌性心内膜炎予防に対する抗菌薬の
投与が推奨されない歯科的処置(AHA)
5. Postoperative suture removal
6. Placement of removable prosthodontic
or orthodontic appliances
7. Taking of oral impressions
8. Fluoride treatments
9. Taking of oral radiographs
10. Orthodontic appliance adjustment
11. Shedding of primary teeth
予防的抗菌薬投与(AHA Guideline)
• Amoxicillin 2g、処置の1時間前に経口投与
• 小児:50 mg/kg、最大で2g
• ペニシリンアレルギーの場合
– Clindamycin 600mg、Cephalexin 2g、Cefadroxil 2g、
Azithromycin 500mgのいずれかを1時間前に経口投与
• 経口投与できない場合
– Ampicillin 2g を静注または筋注、処置の30分前
– ペニシリンアレルギーの場合
• Clindamycin 600mg静注またはCefazolin 1g静注
インフォームドコンセント
• 心疾患があるか尋ねる
• 予定している歯科処置によって菌血症が惹
起され、それが細菌性心内膜炎の原因となる
可能性があることを説明する
• そのリスクは小さいことを説明する
• リスクとベネフィットを考えて予防的抗菌薬投
与を行なうか決定する
*予防的抗菌薬投与のベネフィットはそれほど大きくない?
Durack DT: Inn Intern Med 1998;129:829.
Backup Slides
健康な患者での臨床検査
• 健康な場合、臨床検査は法的な意味以外の意
味はそれほどない。
– 2000人を対象に臨床検査を行った結果、術前のマ
ネージメントに影響を与えうる結果を得たのは0.2
2%のみであった。
– 手術前4ヶ月以内に行われた臨床検査の結果があれ
ばそれで十分:3096人を対象にして調査した結果、
0.4%のみが新たな異常を呈したが、既往歴から推
測可能であった。
– 年齢の中央値21歳、ASA Class Iの健康な患者104
4人で、術前臨床検査を行わないで手術をした結果、
周術期の死亡、疾患発症はゼロであった。
健康な患者での臨床検査1
• CBC
– 貧血があると周術期死亡率が高い
• Hb>12g/dl 1.3% VS Hb<6 g/dl 33.3%
– 出血が予想される大手術の場合にはルティンの検査
が正当化される
– 血小板、白血球数:必要なし
• 電解質
– 異常の頻度0.6%
– 利尿剤の服用など電解質異常のリスクファクターがあ
る場合には検査が正当化される
健康な患者での臨床検査2
• 腎機能
– 腎疾患のないあるいは既往のない例で、血清クレア
チニン値上昇は0.2%の頻度
– 年齢とともに異常の頻度は上昇:46-60歳で9.8%
– 50歳以上、あるいは低血圧が予期される手術、ある
いは腎毒性のある薬剤を投与する場合には検査が正
当化される
• 血糖
– 年齢とともに異常の頻度は上昇
– 血管の手術あるいは冠動脈バイパス術以外では、ル
ティンの検査は意味がない
– 糖尿病と手術のリスクには関連がない
健康な患者での臨床検査3
• 肝機能検査
– 異常の頻度は0.3%
– ルティンの検査は正当化されない
• 出血傾向の検査:PT、A-PTT、出血時間
– 出血傾向がある患者と出血傾向を来す恐れのある疾
患の患者では検査する意味がある
– 出血時間の結果は周術期の出血と関連がない
• 検尿
– 特に必要なし
– 腎機能の評価は血清クレアチニンの測定で十分
健康な患者での臨床検査4
• 心電図
–
–
–
–
–
–
45歳以上の男性
55歳以上の女性
心疾患を有するもの
問診、診察の結果心疾患の可能性が示唆される場合
利尿剤の服用など、電解質異常のリスクがある場合
糖尿病、高血圧などの冠動脈疾患のリスクファクター
があり、未診断の心疾患の可能性がある場合
– 大手術を受ける場合
– 上記以外は必要なし
健康な患者での臨床検査5
• 胸部X線撮影
– 21の研究のメタアナリシスの結果:
– 14,390例の内、1,444例で異常が見つかった
– 問診、診察から予測されなかったのは140例のみで
あった
– 14例(0.1%)のみで治療の変更が必要となった
– 60歳以上で心疾患あるいは呼吸器疾患が疑われる
例ではルティンの撮影が正当化されるが、胸部X線撮
影の所見と周術期の疾患発生との関連はよく分かっ
ていない
健康な患者での臨床検査6
• 肺機能検査
– 問診、診察後に説明不能の呼吸困難がある例では正
当化される
– 呼吸音の減弱、呼気相延長、ラ音聴取、水泡音聴取、
喘鳴聴取<>肺機能検査:価値は同じ
Glasgow Coma Scale (GCS):E
開眼
自発的に開眼する
4
呼びかけにより開眼する
3
痛み刺激により開眼する
2
まったく開眼しない
1
Glasgow Coma Scale (GCS):V
最良
見当識あり
5
言語
混乱した会話
4
反応
混乱した言葉
3
理解不能な音声
2
まったくなし
1
Glasgow Coma Scale (GCS):M
最良
命令に従う
6
運動
疼痛部へ手を移動する
5
反応
痛みに避難する
4
痛みに上肢の異常屈曲
3
痛みに上肢の伸展
2
まったくない
1