補修用タイヤ

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Transcript 補修用タイヤ

ブリヂストンとタイヤ業界に見る
日本企業の海外生産
柳瀬ゼミ
1章.イントロダクション
世界シェアの約4割を上位3社が握る
• トップのブリヂストン
– 海外生産が8割のグローバル企業
– 売上、シェアともに世 界 1 位
– 営業成績を順調に伸ばし、2013年には最高売上を記録
しかし、その上位3社のシェアは近年縮小している
• 中国や韓国等、新興国メーカーが台頭、シェアを拡大
• シェア縮小の反面、営業成績は上昇傾向
タイヤの市場構造に変化が起きている?
上位メーカーの海外戦略の転換?
2-1.寡占市場
• 日本企業に限れば、国内シェアではブリヂストンが56%と他社を圧倒
• さらにブリヂストンを含む上位5社によって9割近くのシェアを占めている
ことがわかる
• 乗用車用タイヤの国内生産量と輸入量を比較すると、海外メーカーの国
内流通量は限られている。加えて、日本の市場の特徴を考えればそれも
上位メーカーに絞られると予想される。
国内タイヤ市場は寡占市場である
2-2.新車用と補修用
新車用タイヤ
• 中間財
• ほぼ独占供給
• 販売本数:38,295本
(42.4%)
• 買い手:自動車メーカー
補修用タイヤ
• 最終消費財
• 差別化された財
• 販売本数:52,190本
(57.6%)
• 買い手:ユーザー
 新車用が補修用を上回るのは日本をはじめとした自動車先進国の特徴
• 1人当たりの自動車の保有台数がすでに多く、安全に対する意識も高い
ため
 中国等の自動車新興国では新車用タイヤが占めるウエイトは高くなる
• 1人あたりの保有台数が少なく、新車の販売台数の伸びが大きいため
2-2.新車用と補修用
• 補修用タイヤの販売本数には、一年サイクルで一定の周期
がみられる
• 3~4月に一つ目、10~11月に二つ目のピークがあり、季節と
の連動性がある
• 一つ目のピークの要因は冬用タイヤから夏用タイヤへの換
装、二つ目のピークは夏用タイヤから冬用タイヤへの換装が
要因であると考えられる
2-3.自動車とタイヤの関係性
• 1950年から両者とも生産を伸ばし、非常にパラレルな動きをしている
しかし、1990年代から、動きが異なってくる
• タイヤの生産量は増減しつつも基本的には右上がりであるのに対し、自
動車は1990年をピークに横這い、もしくは下降傾向にあるといえる
• 自動車の販売台数を見ても、生産同様に1990年をピークに下降している
• 日本国内の自動車市場の成熟
– 自動車保有台数が増え、補修用タイヤの需要が拡大に伴ってタイヤ
の生産量が上昇している
2-3.自動車とタイヤの関係性
タイヤの需要に影響を及ぼす事象
• 天然ゴム価格と為替相場
– 天然ゴム価格の上昇や為替相場の影響により、国内メーカー各社は
2006年、07年、08年、11年のほぼ同時期に国内卸価格を値上げ
• 政府の各政策
– 上記の影響を考慮したうえで、自動車及びタイヤの需要に影響を与
えると考えられる政府の政策についていくつか分析を行う
– データの都合上、特に2011年以降について分析する
2-3.自動車とタイヤの関係性
• 高速道路休日1000円政策(2009年3月~11年6月)
– ETC搭載車のみ休日に高速道路を利用する場合、原則として1000円でどこまでも行く
ことができる政策
– 自動車で遠出する人が増えることによって走行距離が増加し、補修用タイヤの需要が
大きくなるのではないか
• 影響
– 政策期間中の2011年の多くの月で2012年を上回っている
– 7月以降を比べると2012年の方が販売本数が多くなっていることが分かる
– 各タイヤメーカーは2011年の3~6月、9月、10月に前に述べた国内卸価格の値上げを
行っており、通常ならば需要が下がると考えられるが、販売本数は多くなっている
•
以上より、高速道路休日1000円政策はタイヤ、特に補修用タイヤの需要に変化を
与えたことが分かった。
2-3.自動車とタイヤの関係性
•
第2回エコカー補助金制度(2011年12月~2012年9月)
– 一定の環境基準を満たす自動車を購入すれば、補助金として普通乗用車で10万円受
け取ることができる政策
– 自動車の販売台数の増加に伴って、新車用タイヤの需要も大きくなるのではないか
•
影響
– 2011年と2012年の比較
エコカー補助金政策実施中の時の方が終了後よりも販売本数が多い
– 2011年~2013年の比較
2012年の新車用タイヤの販売本数は大きいことが分かる以上よりエコカー
補助金制度も新車用タイヤの需要に大きな影響を与えたことが分かった。
これらの結果より、二つの政府の政策により間接的にではあるもののタ
イヤの需要が変化したことが判明した
3章.海外進出について
「タイヤ業界で3年連続、世界シェアナンバーワンのブリヂストン。生産の8割
を海外で行うなど日本でも有数のグローバル企業だ。だが、新興市場ではその
地位も盤石ではない。新興メーカーの台頭で業界は様変わりし、中国では百数
ものブランドが乱立する中、ブリヂストンは独自戦略を展開しようとしている。
(中略) ブリヂストンの強さの秘密は、80年の歴史の中で、川上から川下まで一
貫した事業をつくり上げ、グローバルに展開してきたことにある。今後は、こ
うした垂直統合モデルを新興市場でも展開し、圧倒的に有利な地位を占めよう
というわけだ。」
――週刊ダイヤモンド2012/07/07 『企業レポート』より
• 上記記事では、ブリヂストンの強みは垂直統合にあると指摘
されているが、その理由とは何か
• 新興国市場におけるシェア縮小という事実を背景に、新興国
市場の構造を分析するとともに、ブリヂストンの海外戦略を
考察する
3-1.垂直統合について
垂直統合の概念
• 原材料の調達から最終製品となって消費者にわた
るまでには数多くの段階がある
⇒垂直連鎖、垂直的な流れ
開
発
原
料
部
品
組
立
物
流
販
売
• 連続する複数の段階を同一企業が行う
垂直統合
消
費
者
3-1.垂直統合について
メリット
デメリット
• 取引費用を考慮する必要
がなくなる
• 技術的な点
– 不確実性や情報の不完全性
があるような市場を利用する
場合には取引費用が発生す
る
• 市場取引がもたらす以下
の非効率性を解消する
– 最終製品への需要が不確実
な状況における部品発注の
不確実性
– 取引企業が機会的行動に出
たことによる非効率性
– 生産効率規模の事業ごとの違
いから、統合により不利益を被
り得る
• 経営資源や能力的な点
– 異なった事業間で必要な経営
資源が非共通または非補完的
な関係にある場合、統合にメ
リットがない
• 垂直統合により新たに生じる
コスト
–
–
–
–
インセンティブコスト
モニタリング費用
インフルエンスコスト
エージェンシーコスト
3-1.垂直統合について
海外直接投資のその他の利点
• 資源開発拠点の建設
天然資源の確保
– 価格変動リスクを回避
– 市場調達による不安定な供給の回避
• 販売拠点の設立
消費者のニーズに応える
– 現地の需要動向や消費者のニーズをつかむ
– 企業から直接的なアフターサービスが行える
• 上記以外にも、関税障壁回避などのメリット
3-2.タイヤ市場と垂直統合
ⅰ)タイヤという財が持つ性質
– タイヤの原材料はゴムが約5割を占め、タイヤの製造費もゴム
加工が生産コストの7割を占めている
– 天然ゴムの生産地が限られている(東南アジアに多い)
東南アジアにおけるゴム生産地の確保の重要性
• 主要産出国小規模農家が多く、生産体制も未整備
– 非効率な生産
– 物流機能が未発達
垂直統合により生産工程や物流機能を内部化、効
率化を実現
3-2.タイヤ市場と垂直統合
ⅱ)タイヤ市場が持つ性質
• 補修用タイヤ市場においては、強い販売チャンネルを持つことが
必要
– 補修用タイヤの販売本数は新車用よりも多い
– 補修用タイヤは一般のマーケットで販売されるため、新車用タ
イヤと比べ他社との競争の側面が強い
そのため物流や販売網を内部化し、効率化を図っている
• ブリヂストンの例
日本:ブリヂストンタイヤショップ
ミスタータイヤマン
タイヤ館
COCKPIT
中国:車之翼(273店舗、2012年時点)
3-2.タイヤ市場と垂直統合
(ⅲ)海外市場の分析
• 新興国は市場の拡大・成長が予想でき、タイ
ヤ業界に限らずとも魅力的な市場
• 先進国から新興国へその主戦場を移す企業
があっても不思議ではない
そこで、新興国の市場が拡大しているときの、
先進国および新興国での企業の生産量に与え
る影響を、経済モデルを用いて分析する
3-2.タイヤ市場と垂直統合
3-2.タイヤ市場と垂直統合
3-2.タイヤ市場と垂直統合
3-2.タイヤ市場と垂直統合
3-2.タイヤ市場と垂直統合
• ブリヂストンの売上の地域ごとの内訳
– 日本とヨーロッパ⇒減少傾向
– アメリカ⇒微増
– アジア含むその他地域⇒増加
前述の分析はある程度正しいのではないか
※ただし、アメリカも同様に大きな市場
アメリカとアジアの工場数を比較
–
–
–
–
共にタイヤ工場は大きく増加
アジアのみ多角化製品工場が増えている
原材料工場:アジアでは天然ゴム関連、アメリカでは合成ゴム工場
製造品目は、アジアでは大半が通常のタイヤ、アメリカでは約半数が
リトレッドタイヤという再利用タイヤ
アメリカとアジアではタイヤ工場数の増加意味合いは大きく
異なる
3-3.新興メーカーの台頭
• 世界の乗用車販売台数は増加傾向にある
– 先進国
生産数に大きく変化がない⇒タイヤ需要も成熟
– 新興国
生産数が大幅に増加⇒モータリゼーションに伴い
需要拡大
タイヤ市場の主戦場が先進国から
新興国に移った
3-3.新興メーカーの台頭
各メーカーの戦略
• 新興メーカー
– 中国に大規模な工場を作り、汎用品を多く売るこ
とでシェアを拡大
• 先進国メーカー
– 高付加価値戦略で差別化
– 新興メーカーにシェアを奪われたが、必ずしも
シェア獲得競争をする必要はない
3-4.ブリヂストンの戦略
ブリヂストン 荒川詔四元会長
「土俵を変えた取り組みをしなければいけない」
• 新興メーカーの汎用品を多く売るというスタイル
• ブリヂストンの戦略 「高付加価値商品を売る」というスタンス
– 巨大タイヤなど、特殊な技術を要する部門
– 低燃費タイヤの新興国への投入
• シェア争いを続けるよりも、「付加価値を伴う高い商品性」
• 利益率を維持する経営の長期安定化を目指した戦略
このような「持続可能な企業経営」のモデルの今後は?
4-1.国内市場の今後について
• 日本の国内タイヤ市場
– 上位5社+ミシュラン、グッドイヤーがほとんどを供給
• 海外市場
– BIG3と呼ばれるブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤー
がシェアを落とし、代わって特に新興国地域において
新興メーカーが台頭
日本のタイヤ市場では今後…
• 現在のような状態が続くのか?
• 海外の新興メーカーが進出してくるのか?
4-1.国内市場の今後について
新興メーカーの進出の際の問題は日本への参入障壁
• 参入方法
– 直接投資をし工場を建設
– 貿易で製品を輸入販売
費用面を考えれば、恐らく貿易
• 新興国メーカーの多くは、
– 中国に巨大な工場を持っており、輸送もそれほど難しくは
ない
– しかし、日本での新興国メーカーの販売網の確立は容易
ではない
4-1.国内市場の今後について
• 新車用タイヤ
– タイヤメーカーと自動車メーカーの関係は密接
⇒新車用タイヤを新興メーカーに受注することは考えづらい
• 補修用タイヤ
– 販売場所はタイヤショップ・ディーラー・カー用品店・ガソリンスタンド
タイヤショップ :
ディーラー
:
ガソリンスタンド :
カー用品店
:
する店もある
タイヤメーカーが運営
自動車メーカーが運営
タイヤメーカーと提携している店が多い
プライベートブランドとして低価格タイヤを生産・販売
新興国メーカーの日本での市場確保は容易ではない
4-1.国内市場の今後について
• 新興国で手を緩めてまで日本に進出してくることはないのではな
いか
– 新興国市場は現在需要の拡大が著しい
– 現在、新興メーカーは新興国でのシェアを高めている最中
– かつてのブリヂストン
• 北米への進出を目指したブリヂストンはアメリカのファイアストンを買収し、そ
の販売網と生産拠点を手に入れた
巨大な新興メーカーが日本の中規模メーカーを
買収する可能性
新興メーカーが新興国である程度成長し、手詰まりに
新たな進出先として日本を選択
4-2. ブリヂストンの地域戦略
アメリカのファイアストンを買収、世界最大タイヤメーカーに成長
成長の歴史からみると、海外へ進出することは重要な一環
• アジア
⇒世界の自動車市場はリーマンショック以降新興国へ転換し続けることを背景としブリジ
ストンはベトナ
ム、中国における工場の生産能力を倍増
• 欧州
⇒ギリシア危機以来、欧州全体の経済が低迷したため、営業利益率を高めることを目的と
し欧州事業
を組織再編
• 米州
⇒多角化事業を推し進めながら付加価値を高める
このほかブリジストンは原材料価格上昇リスクを吸収するために垂直統合
の強化と新事業開発(リトレッドタイヤ)を積極的に行っている
4-3. 今後の戦略について
ⅰ)さらなる脱シェア戦略
• 要因:
– 新興メーカーのシェアが上昇した際、利益率の低い汎用品で
シェアを争わず割合を下げ、高付加価値製品をさらに売り込む
ことが必要
• 事例
前章(3-4)の 低燃費タイヤの例
– 先進国で展開しているリトレッドタイヤは環境負荷低減と製造
コスト削減というメリットを持っているため、製造コストの削減を
販売価格低下へ反映できれば、新興市場でも大きなマーケット
を作れる可能性がある
• まとめ
汎用品を排除し新興国市場でも売れる高付加価値商品
を進めるという、さらなる脱シェア戦略を実行しようと考え
ている。
4-2. ブリヂストンの地域戦略
ⅱ)市場開拓
アジアでシェアをさらに縮小させた場合は、市場開拓をする必要
ブリジストンが有する利点
• 資金力
市場開拓の際、莫大な資金が必要となるため、新興メーカーと比べ既存の大手
メーカーが有利
• 影響力
市場開拓のメリットは、開拓した地域においてシェアを大きく持つことができる点
例:ロシアでは、日本メーカーでいち早く進出した横浜タイヤが現在でもシェア一
位
潜在的市場への予想
• 中央・北アフリカ地域
– トヨタやヒュンダイなど自動車メーカーの中にはアフリカ進出を考える企業も
多く、タイヤメーカーにとっても潜在的な市場
– 中央アフリカは天然ゴムの産地であるが、疫病が多い等の理由により東南ア
ジアより開発が遅れたが、逆に言えば問題が解決できれば現地生産・現地
消費が可能