JointWS_Motogi

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VLBIを用いた
大質量星形成研究の可能性
北海道大学 修士2年
元木業人
大質量星形成の問題
• 質量降着問題
→非常に高い降着率が必要。
• 電離領域の寿命問題
→「超コンパクト」段階の寿命が長い(~105yr)
• アウトフロー形状問題
→ジェットのコリメーションが天体によって異なる。
• 低質量星形成との初期条件の違い
→分子雲のパラメータの違い?
• 誘発的星形成定量評価
→トリガーはUV光のみ?アウトフローの影響は?
VLBIと大質量星形成
• メーザーを介した降着円盤の発見
→やはり質量降着で形成されている。
• 原始星ジェット / アウトフローのパラメータ導出
→根元での構造(速度、開き角)
分子雲に埋もれた天体に関して
•三次元的ガス運動を追える
•個々の星スケールで理論との比較ができる
現行で唯一のツール
JVNによる観測結果:
大質量形成領域 IRAS 06061+2151
のH2Oメーザーマッピング観測
(Motogi et al. 2008, in press)
元木業人、渡邉祥正、徂徠和夫、羽部朝男、南谷哲宏(北海道大理)、
本間希樹、小林秀行、柴田克典(国立天文台)、
藤澤健太(山口大理)、面高俊宏、今井裕(鹿児島大理)、
若松謙一、高羽浩、須藤広志(岐阜大工)、
川合栄治、小山泰弘(情報通信研究機構)
IRAS 06061+2151
•距離 2.0 kpc
•Gem OB1 cloud complex の最北
•7000 M☉(C18O)のcloud 中に埋没
•0.5 pc 内に7つのMYSOが存在
☆3 UCHII 領域(VLA, 3.6 cm)
☆5 近赤外線源(Ks‐band)
うち共通天体1つ
Carpenter et al. 1995
0.1 pc
Kurtz et al. 1994
Saito et al. 2007
0.5 pc
Anandarao et al. 2004
•原始星ジェットによるノットが存在
(2.1 μm : H2)
観測
観測期間: 2005年 5月 ‐ 2007年 10月 (全6回)
周波数: 22.23508 GHz (H2O 616 → 523)
観測帯域: 16 MHz
速度分解能:
0.21 km s-1
空間分解能: 1.0 ‐ 1.5 mas (2.0 - 3.0 au)
参加局:
VERA 4局、鹿島、苫小牧
データ解析: AIPS
結果1:空間分布&固有運動
•分布範囲:1200×600 au2
⇒VLAの3.6 cm連続波源内
•北西‐南東の双極分布
⇒励起星からの双極流を示唆。
•南方に弓形の連続分布を検出
⇒衝撃波面を反映。
•最大で100 km s-1を超える
相対固有運動を検出
⇒電離ガスの膨張としては
高速すぎる。
四角:VLA連続波ピーク。三角:モデル
フィッティングから得られた分子流の根
元。
結果2:速度勾配
• 空間スケール~200 au
⇒ 一枚の圧縮ガス層
• 高速部(V-wing)と低速部(Hwing)が存在。
⇒ ガス層の形状が変化
(弓→直線)
• 繋ぎ目(Kink)で最低速&強度最大
⇒最もコヒーレンスが取れている?
南側メーザー群の拡大図。色は青
⇒赤の順にエポックを表す。
各wingの速度変化。横軸はKink
からの距離。縦軸は各位置での
固有運動の平均値。最大で五倍
の速度差有り。
議論1:速度勾配の起源
前提:
メーザー群の運動=圧縮ガス層の運動を見ている。
⇒ とりあえずガス層の運動方程式を考えて見る。
単純なモデル:平行面近似
母体
分子雲
圧
縮
ガ
ス
層
ラ
ム
圧
アウトフロー
原始星
☆単位面積あたりの
ガス層の運動方程式
:圧縮距離
運動量の時間変化=ラム圧
☆分子雲の密度に時間変化なし
母体分子雲に密度ムラがあ
れば速度勾配が発生する。
☆衝突直後(R=0)の初速度
今回の例:最大5倍の速度差
密度で25倍の差!
IRAS 06061+2151の構造 (イメージ図)
H2Oメーザー衝撃波励起の下限密度:107 cm-3 (Elizur
1992)⇒ 108 cm-3 級の塊が100 au スケールで存在?
議論2:ジェット / アウトフロー
Best fit solution
PA Inclination Opening angle
37°
54°
120°
☆アウトフローの軸が
赤外のジェットと一致!
☆原始星ジェットとアウトフロー
の根元での二重構造を示唆
観測 :(Beuther & Shepherd 2005)
MHD :(Lery 2002 など) と一致。
大きなスケールで見ると…
☆ジェット上に3個の
MYSOが並んでいる!
何か因果関係がありそう?
☆UCHII領域の
励起星が最年長らしい
UCHII region
& masers
•ジェット / アウトフロー
によるトリガー?
Comparison of three sources
Spectral type
Source 1
Source in
UCHII region
Source 4
Ionized region
B0*
No
~ B3**
< 0.01 pc
> B1*
No
~
⇒今後要検討。
以上、結果報告でした。
☆なぜこんなことができたのか?
• 幸い天体が地味だった
⇒ ごく若いUCHII領域:geometry がシンプル
• 地味なわりに周囲環境の情報が豊富だった。
⇒ VLA連続波、近赤外のマップ
• メーザーをガス層として取り扱えた。
⇒ 少数のメーザー源で議論するのは困難
今後の展望
•まずはサンプル数を増加させる。
•励起星の質量や進化段階、周囲の環境に応じて構
造が変化するのかを系統的に調べる。
•理論モデルやシミュレーションと比較する。
VSOP2に期待すること
1.特にメーザーそのものに対するサイエンス
☆運動解析の重要「ツール」⇔まだまだ謎だらけ。
たとえば…
内部構造の変化と強度変動の関係
⇒「どこで」励起されているのかを知る手がかり
2.当然サンプル数も増やせる。
☆例えばマゼランの星形成領域
⇒金属量に応じて構造に違いがあるかも?
JVNに期待すること
• 可能な限り感度を上げる必要あり。
⇒少数のメーザークランプでは十分な議論はできない。少なくと
も拾いうるものは全て拾いたい。
⇒30m級アンテナに期待(鹿島、山口、つくば、高萩)
• 強い(というよりコンポーネント数が多い)天体は
⇒長期的モニターで固有運動の変動を追う。
• 弱い天体も
⇒数ヶ月でも大きくスペクトルの形状、強度は変わりうる(Felli
et al. 2007)。
⇒単一鏡のモニターと連動して効率を上げる努力が必要。
• 系統的に天体を選んで観測する。
※天体選択の判断基準が少ない。
単一鏡メーザースペクトルからの構造を推定するには限界あり
⇒むしろ周囲環境や原始星の進化段階などに着目すべき。
VLBIからの発展
• 系内の星形成領域ではVLBI以外の情報を取り入れる工夫
が絶対必要。
• 今後熱放射の欠損は埋まっていくはず。
⇒ALMAの最長基線なら50 masを切る分解能。
☆ガス層を直接観測できる。
☆MYSO間の構造も検出できる。
• 一方ALMAでも固有運動は見えない!
⇒VLBIとのコラボで大質量星周囲の構造がかなり明確にな
る。
• VLBI側から観測対象、テーマを供給すること
を目標にしたい。
まとめ
• IRAS06061+2151に対するVLBI観測から領域内の密
度構造&ジェット / アウトフローの二重構造が明らかに
なった。
• 今後は質量、進化段階、環境などを基準に系統的に観
測することが望ましい。
• VSOP2にはメーザーそのものについてのサイエンスが
最も望まれる。(特にどこで励起されるのかについてが
第一。)
• JVNは感度を最優先に、天体選びや観測タイミングの
観点で観測効率をあげる工夫が必要。
• ALMAとの組み合わせで、大質量星形成領域の構造
がかなり明確にできると期待される。
御静聴ありがとうございました。