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日本の災害経験と被害者
–日本の責任と役割-
中須 正
自然災害情報室自然災害情報室
防災科学技術研究所
Source:毎日新聞社
今此処で巨大地震が起こったら、自分の周り
がどうなるか、何が起こるか言えますか?
1 秒後
10秒後
20秒後
1 分後
60分後
想像力、そしてそれを引き出す知識の重要性
貴方は何時でも災害弱者になりうる
ことを知っていますか?
災害弱者(災害時要援護者)とは?
1.自分の身に危険が差し迫った時、それを察知する
能力がない、または困難な者
2.自分の身に危険が差し迫った時、それを察知して
も適切な行動をとることができない、または困難
な者
3.危険を知らせる情報を受け取ることができない、ま
たは困難な者
4.危険をしらせる情報を受け取ることができても、そ
れに対して適切な行動をとることができない、ま
たは困難な者
出所:平成3年度版防災白書
理論: どう考えるか?
つぎの二つの選択肢から、あなた
はどちらを選びますか?
質問1
・A) 確実に5000円もらえる
・B) 1/2の確率で1万円もらえる
質問2
・A) 確実に5000円はらう
・B) 1/2の確率で1万円はらう
6
普通、
質問1
・A) 確実に5000円もらえる
・B) 1/2の確率で1万円もらえる
質問2
・A) 確実に5000円はらう
・B) 1/2の確率で1万円はらう
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これが我々のリスク感覚
認識の歪み
願望
思い込み・偏見
無知
→ Normality Bias
→ ここに教育の重要性と可能性
9
林春男「一元的な危機管理の必要性」
Contents
1.導入
2.日本の災害経験の概観
3.伊勢湾台風とその教訓
4.阪神・淡路大震災とその教訓 1
被害者分析
5.阪神・淡路大震災とその教訓 2
防災ゲーム
(実践的な議論)
6. まとめ
1. 導入
1959年の伊勢湾台風災害はどのような災害
であったのか知っていますか?
1995年の阪神・淡路大震災はどのような災害
であったのか知っていますか?
→これらの経験を概観し、議論などを通して教
訓を共に学びます。
Natural HazardsとNatural Disasters
(ナチュラルハザーズ)
の違いは何か?
(ナチュラルディザスターズ)
Natural Hazards and Natural Disasters
(ナチュラルハザーズ)
(ナチュラルディザスターズ)
ユネスコの定義
ナチュラルハザーズ(Natural Hazards):
「自然的に発生する物理現象で,地震,火山噴火,地すべり,津
波,洪水,及び干ばつを含むもの」
ナチュラルディザスターズ(Natural Disasters):
「ナチュラルハザードによる結果もしくは影響を示し,持続可能性
の深刻な切断及び,経済社会発展の崩壊」
Source:http://portal.unesco.org/science/en/ev.phpURL_ID=6004&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html
Natural HazardsとNatural Disasters
(ナチュラルハザーズ)
(ナチュラルディザスターズ)
災害は社会が作る
災害は社会の仕組みを可視化する
Natural HazardsとNatural Disasters
(ナチュラルハザーズ)
(ナチュラルディザスターズ)
Natural Hazards
(ナチュラルハザーズ)
自然災害は、「自然」災害ではない
Social Condition(社会条件)
(Science and Technology, Social
Systems, Culture, etc)
Natural Disasters
(ナチュラルディザスターズ)
考え方の枠組み(Flamework)
分析視角:開発・環境・災害の関連図
開発
破壊・汚染
援助・計画
復興災害
被害者
環境
災害
自然災害・公害
発生・拡大
Contents
1.導入
2.日本の災害経験の概観
3.伊勢湾台風とその教訓
4.阪神・淡路大震災とその教訓 1
被害者分析
5.阪神・淡路大震災とその教訓 2
防災ゲーム
(実践的な議論)
6. まとめ
2.日本の災害経験の概観
Those who cannot remember the past are
condemned to repeat it.
<Geoge Santayana (Spanish Philosopher), 1905>
Hard(Infra.,ST.)
Soft (Soc.)
出典:内閣府「日本の災害対策」
伊勢湾の前に・・・
何故1945年の枕崎台風によって被害
が拡大したのか ?
When :
Where :
→何時何処で起こったか?
第二次大戦後、日本は、急速な経済
発展を経験し始めたが、災害に対す
る対策は十分とはいえなかった。
そして,
1959年、伊勢湾台風に遭遇した。
1959年の伊勢湾台風による被害は何
故拡大したのか?
この災害後、日本政府は、防災に関する政策
を大きく転換することとなった。
伊勢湾台風後の対応
災害写真年表
映像
その後日本は大きな自然災害を経験
せず経済発展を謳歌した。
日本政府は、自然災害を防ぐことに成功した
と思い始めていた。特に科学技術やインフラ
整備によって防災は可能であると慢心し始め
た。
しかし,
兵庫県南部地震 1995
(阪神・淡路大震災)
①ハードからソフトへ
② 防災から減災へ ③人文・社会科学研究
出典:読売新聞
Focus
→ ① 1959年の伊勢湾台風の教訓とは何だっ
たのか?
→ ② 1995年の阪神・淡路大震災の教訓とは何
だったのか?
Contents
1.導入
2.日本の災害経験の概観
3.伊勢湾台風とその教訓
4.阪神・淡路大震災とその教訓 1
被害者分析
5.阪神・淡路大震災とその教訓 2
防災ゲーム
(実践的な議論)
6. まとめ
3. 伊勢湾台風災害とその教訓
① 1959年の伊勢湾台風の教訓とは何だっ
たのか?
伊勢湾台風における開発・環境・災害のサイクル
開発
急激な経済活動
災害対策基本法
(1961)
被害者
環境
災害
伊勢湾台風災害
(1959)
地盤沈下
木材の輸入
伊勢湾台風による被害拡大の原因
① 急速な工業化での地下水のくみ上げによる地盤沈下
② 緊急時の避難への対応
③ 輸入木材が流木となって市街地を襲った
この木材はどこから来たのか?
港区と南区の被害の違い (流木による被害)
死者/人口
368/88062=0.00418
1454/144494=0.0101
人口(昭和34年)
防災基礎講座 災害事例編
http://www.bosai.go.jp/library/saigai/s10isewan/f1higai.htm
世帯数
人口
南区
33844
144494
港区
19166
88062
出典:名古屋市統計年鑑 昭和35年版
このグラフから何を気づきますか?
名古屋港における主な貯木場の変遷
名称
水面積
(m2)
運営期間等
管理者
8号地貯木場
約43万
昭和2年供用開始~昭和63年閉鎖
名古屋港管理
組合
天白川口貯木場
約65万
昭和37年供用開始~昭和62年閉鎖
名古屋港管理
組合
西部木材港
約97万
昭和43年供用開
始~
平成11年閉鎖
名古屋港管理
組合
第1貯木場
第2貯木場
約36万
第3貯木場
約36万
第4貯木場
約22万
昭和45年供用開始~
第5貯木場
約22万
昭和50年供用開始~
第6貯木場
約13万
昭和55年供用開始~
第7貯木場
約8万
昭和53年供用開始~平成5年閉鎖
加福貯木場
約29万
大正12年~平成2年閉鎖
名港貯木場
約45万
大正2年~平成7年閉鎖
平成14年、南半
分を閉鎖
民間(名古屋
木材倉庫
(株))
民間((株)
名港貯木場)
Source:名古屋港管理組合
伊勢湾台風災害の教訓は何か?
二度と同じ被害が起こらないように堤防によ
る対策等がなされた。
→貯木場の新設及び木材の大量輸入は災害後むしろ
加速していった。
→現在の環境破壊・自然災害と広く繋がっていくこと
になった。
全体的な結果の概説
伊勢湾台風では何故流木による被害が拡大したか?
・・遠くから視る
(縦と横のつながり)
何故木材が貯木場にあふれる程多量にあったのか?
-(縦:時間軸)戦後の高度経済成長、開発、環境との関係
-(横:地域軸)戦後復興過程における貿易政策、アメリカ、
フィリピンとの関係
日本・フィリピンの開発・環境・
災害及びアメリカの位置図
アメリカ合衆国
住宅ブーム
開発
開発
被害者
災害
伊勢湾台風
環境
地盤沈下
森林放棄
(流木被害)
被害者
森林破壊
多量の流木
合板輸出
地すべり,土砂崩れ
花粉症
日本
災害
多量の木材輸入
洪水・地すべり
地球環境問題
フィリピン
4.データによる概説
一方、南洋丸太の供給元の
フィリピンでは
フィリピン材の生産量と輸出量
2000000
1800000
1600000
1400000
1200000
1000000
1950
1957
800000
600000
400000
1957
200000
0
1950
生産量
輸出量
Source:林野庁調査課(1959):南洋材の貿易構造「日
本林業の全貌」資料第6号
フィリピンの森林面積
フィリピンの森林面積
20
18
16
百万ha
14
12
10
8
6
4
2
0
1934
1970
1990
1980
1993
1995
年
Source:日本環境会議/「アジア環境白書」編集委員会
(2000):アジア環境白書 2000/01.東洋経済新報社.
1900年代初頭・・・・・・・・・・・・・・・全土の70%
1990年代
・・・・・・・・・・・・・・・全土の20%未満
1957年
フィリピン材丸太1957年中の輸出先総量
と日本の割合
日本
730,304
総量
837,369
割合
87.2%
Source:林野庁調査課(1959):南洋材の貿易構造「日本林業の全貌」資料第6号
フィリピンの自然災害
1989年 サマール島における台風による河川
氾濫により100人以上の犠牲者
1991年 レイテ島オルモック市を襲った台風による
大洪水により8000人以上の犠牲者
2004年 ルソン島を中心に台風による洪水・土砂崩
れにより約1500人の犠牲者
2006年 レイテ島で起こった地すべりにより約2000
人の犠牲者
→これらはいづれも森林伐採が影響したとされる。
→2004年、ルソン島の洪水・土砂崩れ災害を受け、フィリピン下院は
アロヨ大統領が求める25年間の「森林伐採を禁じる法律」を承認
2009年 9月 10月
台風オンドイ、台風ペペン
日本の自然災害
2004年10月23日 新潟中越地震
2007年3月25日 能登半島地震
2008年6月14日 岩手・宮城内陸地震
→これらはいづれも森林管理の問題との関係性の
指摘がなされている。
日本の木材自給率
120
100
96.1
89.2
自給率
80
73.7
60
46.7
37.4
40
32.9
37.1
27.6
20
18.9
20.5
2000
2005
0
1955
1960
1965
1970
1975
1980
1985
1990
年
Source:財団法人矢野恒太記念会編(2006):数字で
みる日本の100年 改訂第5版.矢野恒太記念会
伊勢湾台風の教訓のまとめ
1.流木被害は戦後の日本の経済成長過程から生み出された。
2.伊勢湾台風災害の流木被害へと繋がった根底にある環境
社会システムは伊勢湾台風後も続いた。
3.流木被害は、今日の日本の自然災害や花粉症問題、フィリ
ピンの自然災害、そして地球環境問題とも密接に繋がってい
る。
→この流木被害から見えてくる現在の日本の自然災害、アジア
の森林破壊と災害、そして地球環境問題、さらには、日本の
責任や日本の役割を今一度考える必要がある。
写真:毎日新聞社
Contents
1.導入
2.日本の災害経験の概観
3.伊勢湾台風とその教訓
4.阪神・淡路大震災とその教訓 1
被害者分析
5.阪神・淡路大震災とその教訓 2
防災ゲーム
(実践的な議論)
6. まとめ
4.阪神・淡路大震災とその教訓 1
被害者分析
② 阪神・淡路大震災から何を学んだの
か?
阪神大震災の経験
阪神大震災
被災者分析
阪神・淡路大震災 概要
Date and Time
January 17,1995,05:46
Earthquake
Southern Hyogo-ken
Earthquake
Great Hanshin-Awaji
Earthquake Disaster
Disaster
Epicenter/Depth
34°36’N,135°02’E /13 Km
Magnitude
7.3
Tsunami
None
Nakabayashi 2006
何が言えますか?
犠牲者の場所 ( 2週間)
WHY?
WHY?
Medical Examiner Report , Hyogo Prefecture
被災者救助活動
Kawata 1995
何が言えますか?
犠牲者の年齢分布( 2 週間)
Female
Male
Male
Unknown
WHY?
Unknown
Medical Examiner Report , Hyogo Prefecture
地域住民の救出活動
要救援者
:
約 35,000人
公的な機関による救出者
約7,900人(全体の23%)
地域住民による救出者
約27,000人(全体の77%)
防災の基本:日常の地域との繋がり、ご近所づきあい
まとめ:伊勢湾台風災害と阪神・淡路大
震災
日本政府は二つの大きな災害によって二度
大きく政策を転換した。
阪神・淡路大震災によって、災害は防げない、
防災ではなく、減災という考え方になった。少
なくとも命を守るという考え方になってきた。
Contents
1.導入
2.日本の災害経験の概観
3.伊勢湾台風とその教訓
4.阪神・淡路大震災とその教訓 1
被害者分析
5.阪神・淡路大震災とその教訓 2
防災ゲーム
(実践的な議論)
6. まとめ
6. まとめ(1)
1959年の伊勢湾台風災害はどのような災害
であったか知っていますか?
1995年の阪神・淡路大震災はどのような災害
であったか知っていますか?
→ これらの経験を概観し、議論などを通して教訓を
共に学んだ。
→ 災害は社会がつくる、災害は社会のしくみを可視
化する、という視点を深めた。
6. まとめ(2)
自身の興味範囲と自然災害と結びつけて考え
てみてくださったら幸いです。
Many Thanks
ありがとうございました。
中須 正
自然災害情報室
防災科学技術研究所