Transcript ヤマダ電機の企業研究
株式会社ヤマダ電機の戦略分析
ポーターの3つ基本戦略とブルーオーシャン戦略をもとに
13-mc002 ウ・ナ
2015/9/24
ヤマダ電機の概要
会社名
株式会社ヤマダ電機
創業
1973年4月
設立
1983年9月
代表者
代表取締役 山田昇
業界
小売業
上場区分 東証一部
事業内容 国内メーカーおよび海外有名メーカーの家庭電化製品
ならびにオーディオ機器・健康器具・介護関連機器・OA機器の販
売と修理、ビデオソフトレンタル、ソフトセル、書籍の販売
資本金
71,058百万円(平成24年)
従業員数 10,298人(平成23年)
店舗数
2,729店舗(グループ計 平成23年3月)
売上高
1,835, 454百万円(平成24年3月)
(資料) http://www.yamada-denki.jpより
業界動向
(資料)gyokai-search.comにより
家電量販店業界の動向
(資料)gyokai-search.comにより
ヤマダ電機の売上高推移(2000年-2012年)
ヤマダ電機の年別売上推移
2500000
2153259
2016140
2000000
1871828
1835454
1767818
1500000
1443661
1283961
売上(百万円)
1102390
1000000
939137
793829
560881
471246
500000
332169
0
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
ヤマダ電機の有価証券報告書により作成
競合他社売上高
2012 家電量販店売上高ランキング
/百万円
決算期
売上高
ヤマダ電機
ビックカメラG
12年3月期
ビックカメラ
11年8月期
612,114
ベスト電器
12年2月期
コジマ
3
1
2
前期比 営業利益 経常利益 当期利益
1,835,454 -14.8%
1,244,199
88,979
26,124
102,225
28,538
58,235
10,146
19,929
22,329
9,049
261,705 -23.2%
2,535
2,009
589
12年3月期
370,380 -17.6%
3,660
4,200
508
エディオン
12年3月期
759,025 -15.8%
9,286
16,384
3,697
4
ケーズデンキH
12年3月期
726,015
34,086
42,123
23,754
5
6
ヨドバシカメラ
上新電機
11年3月期
12年3月期
700,500
420,000
-3.5%
12,400
61,000
12,300
6,400
7
ノジマ
12年3月期
211,051
-1.1%
743
3,262
2,119
-5.8%
各社発表資料等により作成
5つの競争要因分析
家電量販売の業界構造
出所:M.E.Porter(1998), On Competition, Harvard Business School Press, 竹内弘高訳『競争戦略論Ⅰ』
(ダイヤモンド社、1999年)より作成
5つの競争要因分析
家電量販店業界では一番強い競争要因となっているのは既存の競合企業間
の競争である。
競争者が多い環境では、競争者間でのコスト、品質、納期などの差別が求め
られる。
どの家電量販店でも同じ商品を売っているため、商品の差別化ができない、
つまり、商品自体の差別化戦略がとれないことになる。さらに、販売する対象
が’家電’という点にあり、これ以上ドメインを細分化することも難しく、集中戦
略もとりずらくなる。
結局的に、業界全体が低価格化に指し、コスト・リーダーシップ戦略をとること
になる。コスト・リーダーシップ戦略は、経営資源が豊富な強者にのみ有効な
戦略で、業界NO1のヤマダ電機がこの戦略をとり競争優位を維持している。
ヤマダ電機の経営戦略
コスト・リーダーシップ戦略
常に絶えまないコスト削減の取組、業界でトップクラスのローコスト・オペ
レーション企業を目指す。
↓
ローコスト・オペレーションができれば、ローコストを武器とした低価格販
売ができる。
↓
低価格販売で販売数量を拡大できれば、販売量を武器として大量仕入れがで
きる。
↓
大量仕入れができれば、さらなる仕入れ価格の削減につながる。
↓
仕入れ価格が削減できれば、さらなる販売数量の拡大で、販売シェアを上げ
ることができる。
↓
販売シェアが拡大し、収益が拡大できれば、その収益をさらなるコスト削減
のための投資に注ぎ込むことができる。
コスト・リーダーシップ戦略
ローコスト‐オペレーション 【low-cost operation】 とは:
むだな費用の発生を極力抑えた業務活動。
ヤマダの販売費および一般管理費比率は2011年では17.8%となっている。
コジマの18.9%、ケーズホールディングスの18.0%に比べると大きな違いはな
い。しかし、ヤマダの一般管理費の中には、ポイント販促費858億円(売上
対比3.98%)が入っている。ポイント販促費を引いて考えると、実際の一般管
理費は13.8%である。この数値は、流通業としての驚異的な数字である。世
界の流通業の大手であるアメリカのウォルマートの一般管理費は19.3%
(2011年)となっている。専門のディスカウント・ストアでさえも、19%を超える
一般管理費に対してヤマダは14%を切る低さである。イオンやダイエー、イ
トーヨーカドなどの一般管理費は25%-30%程度である。ヤマダはその半分
のコストで運営ができている。
ヤマダは、家電量販店企業ではトップの低い一般管理費で店舗運営を
行っている。このローコスト・オペレーションは店頭での低価格販売を支えて
いる。
コスト・リーダーシップ戦略
自社流通システムにより在庫削減を実現。
まず、ヤマダはメーカーとの販売契約をする。
目標販売量を明確になった商品をPOSデータ
に登録し、商品を仕入れ、各店舗に必要数量を配
送する。各店舗へ配送される数量は、販売計画に
基づいて最低在庫量がまず納入される。納入され
た商品は店頭で販売され、販売された商品はメー
カーに対して自動発注される。メーカーは販売計
画と実際の販売データを見ながら生産を行う。更
に、自社で物流倉庫を確保し、一括在庫管理がで
きることにより、コスト・リーダーシップ戦略を
支えている。
差別化戦略
どの家電量販店でも同じ商品を売っているため、商品の差別化ができない
しかし、ヤマダ電機は他の面で差別化—出店により戦略
2000年ー2011年、12年間で440店舗を出店していた。平均年間約
37店舗を出店している。
なぜ、ヤマダ電機はこれだけの店舗を出店する必要があったのか?
2000年3月期からの業績を見てみると、大量出店が他の家電量販
店企業との大きな差になったことは分かる。そして、少なくとも
2008年頃まではどの家電量販店企業もついて来られていないため、
この期間は他企業との差別をつけた。この大量出店によってシェア
を拡大でき、直接に売上拡大につながる。
ソリューションビジネスにより差別化
法人向けビジネスの展開
ヤマダは約30万件の法人顧客リストを持っている。この法人顧客
リストに対し、パソコンなどIT機器販売や設置サービスを行う窓口
を約300店に設置してサービス内容を定型化している。現在年間約
1000億円の売り上げを誇っている。この利益率は一般消費者向けビ
ジネスより、さほど厳しい安売り戦争がないこともあり、粗利益率
が高いため重要な収入源となっている。
ソリューションビジネスにより差別化
ヤマダは「The安心」という修理サービスを行っていること
である。ヤマダ電機に会員登録し、毎年3,832 円支払うとテ
レビ、エアコン、冷蔵庫など指定した家電商品が故障した場
合、他社から購入した製品であっても無料で修理してもらえ
る。100万人の会員を集めれば、それだけで年間に38億円の
売上に繋がることになるため、高収益の要因の一つである。
こういう利益がヤマダ電機の全体の収益の約半分を占める。
しかし、こういうビジネスは短期的にはできない。それぞれ
のノウハウの積み重ねがあるので、すぐに真似できるのもで
はない。上記に二つの「The安心」のように十何年をかけて
ここまできている。さらには、数多くの店舗数を持っていな
いと、なかなかビジネスとしてのスケールメリットができな
い。この特別なやり方でヤマダ電機の競争優位ができたと思
われる。
新規市場の開発 ブルー・オーシャン戦略
省エネ・環境事業への進出
2011年10月に住宅メーカーの『エス・バイ・エル』を子
会社にした。それは、スマートハウスを実現させるためで
ある。スマートハウスとは、家庭内のエネルギーを効率的
に発生、運用する住宅のことであり、未来住宅といわれて
いる。他の家電量販店では、ソーラー発電システム、蓄電
池、エコキュートといった商品を販売しているが、単に商
品単体で販売されることが多い(レッドオーシャン)。し
かし、ヤマダはエコ商品と住宅を一体化させて、お客さん
に光熱費ゼロを目指す住み方を提案を推進している。
このプロセスこそがブルー・オーシャン戦略と言えよう
。
戦略の限界と課題
①コストがゼロになることはなく、コスト・リーダーシップ戦略にも限界
があります。後発組が低価格戦略で参入し、急激な低価格競争を行っ
た通信業界では、この競争に限界を感じて戦略転換をする企業も出て
います。ここで、顧客のニーズをいちはやく読み取り、低価格商品を提
供し続けるか、サービスなどを積極的に進化させ、新規市場を創造で
きるかが生き残るための鍵である。
②ヤマダ電機はグローバル戦略の一環として、2010年から、中国の瀋
陽をはじめ天津や南京へ進出した。
しかし、対日デモなどの要因により、今年2店舗を閉鎖した。
一方、昨年12月にベスト電器の子会社化に成功した。ベスト電器は
、1985年にシンガポールに進出した後、マレーシア、台湾、インドネ
シアに出店し、現在約60店舗を海外で展開している。この経験は、
今後のヤマダ電機のグローバル戦略には欠かせないものとなるだ
ろう。
新たな提案
交渉力はポーターの競争要因の一つであることに基づいて、新たな発想をさ
せて頂きます。もし、私がヤマダ電機の経営者なら、業界一位だからこそ、
ヤマダしかできない競争戦略を考えます。今までは大量出店などの戦略で大
量販売を実現でき、大量仕入れによって仕入れ価格が安くなった。しかし、
メーカーがヤマダに安く売るならば、競合他社も同様に安く売るように要請
してくるだろう。メーカー側も製品を売りたいので、仕方なく安くして他社
にも販売することになる。ここで、今後ヤマダはメーカーに交渉を増し、コ
ストリーダーシップ戦略を維持し続けるため、仕入れ価格を同一させるべき
だと考えています。すなわち、メーカーはヤマダ、ヨトバシ、アマゾン、ケ
ーズなどのすべての企業に対し同じ価格で販売する。そうすると他社はメー
カーに対しての仕入れ価格への不満を解消することができ、メーカーも製品
を販売しやすくなるというメリットがある。一方、ヤマダはメーカーと特別
約束を取り、販売数を契約し、達せしたらキャッシュバックさせれば、利益
を獲得できるのである。ヤマダは日本国内の家電を一番多く販売しているの
で、製品販売利益と販売数によるキャッシュバックが競争優位性を支えるこ
とができると思う。この交渉がうまくいけば、ヤマダとメーカー双方ともメ
リットを獲得することができ、新たな競争相手である通信販売にも負けるこ
となく競争優位性を維持し続けるであろう。