心理学Ⅱ

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心理学Ⅱ
12月18日
反応の条件づけ②

前回のおさらい
レスポンデント条件づけ
例:パブロフの犬
 無条件刺激・・・肉
 無条件反応・・・唾が出る(唾液分泌)

条件づけ操作(作業)
・・・肉をあげる前にはいつもベルを鳴らす
(専門用語では「ベルと肉との対提示」)
ベルは、唾液分泌という無条件反応に対
する無条件刺激ではない
(生まれつき、ベルの音を聞いただけでよ
だれをたらす犬はいない)
 しかしベルと肉との対提示を何十試行と繰
り返していると、
 やがて、ベルの音を聞いただけでよだれが
出るようになる






このとき、唾液分泌反応は「ベルの音に条
件づけられた」と言い、
そのときの唾液分泌を「条件反応」、
ベルの音を「条件刺激」と言う
条件反応はこのときレスポンデント反応と
も呼ばれる
そしてこの一連の操作(作業)のことをレス
ポンデント条件づけと言う


パブロフの犬だけでなく、
ほとんどあらゆる種の生物の、
ほとんどあらゆる無条件反応に対して、
レスポンデント条件づけが可能である
と言われている
ただし・・・


まず最初に無条件刺激・無条件反応がな
ければ、レスポンデント条件づけはできな
い
つまり、ある刺激に対する反射反応として
生まれつき備わっているような反応につい
てしか、レスポンデント条件づけはできな
い



しかし動物の行動は反射反応が全てでは
ない
走る、声をあげる、拾う、投げる、などの反
応は、必ずしも反射ではない
これらは動物が自発するもの



こうした、自発される反応についても、学習
は成立している
それはどんな原理によってか?
そのひとつが、オペラント条件づけ
オペラント条件づけ

簡単に言うと・・・
3.
何かの行動をする
何らかの結果が伴う
それ以後、行動が変化する

行動 → 結果 → 次の行動が変化
1.
2.

例
たまたまレバーを押してみた (行動)
↓
餌が出てきた! (結果)
↓
またレバー押す!
(レバー押し反応の増加) (行動の変化)




このように、ある行動にある結果が伴うこと
により、その行動が増加するとき、
「その行動は強化された」と言い、
それをもたらした結果(例えば餌)を強化子
と言う
そしてこのように、ある行動に対し何らか
の結果を随伴させることによってその生物
の行動を変化させる手続きを一般にオペラ
ント条件づけと言う
※ 「行動の変化」は、大抵、「特定の行動の
増加」と考えられる
例) 歌を練習していたら、歌が上手くなった。
→ 「いい発声」の増加
オペラント条件づけの例


ネズミの実験
・・・レバーを押したら餌をあげる →ネズミ
は頻繁にレバーを押すようになる
犬がお座りをしたら餌をあげる
→ 犬がお座りをするようになる


左わき腹を意識しながらボールを投げてみ
たら、いい球を投げられた
→ また同じように左わき腹を意識しながら
ボールを投げてみる
自分の思考やイメージを何でもいいから
ノートに書きながら問題を解いてみたら、
問題が解けた
→ 次からの問題もそれでやってみる




レバー押し(反応) → 餌(強化子)
お座り(反応) → 餌(強化子)
左わき腹を意識しながら投げる(反応)
→ いいボールを投げられた(強化子)
文章化・図化しながら思考を進める(反応)
→ 問題が解けた(強化子)


簡単に言うと(専門家には怒られるが)
「何かをして、いいことがあったら、またそ
れをする」
(あるいは逆に、「何かをして、嫌なことが
あったら、もうそれをしない」)


1.
2.
3.
あまりにも単純であまりにも当たり前なこ
とのように見えるが、
この原理ひとつからの発展で、
たいていのことを動物に学習させること
ができる
自然界の動物の自発的行動の多くが説
明できる
一見複雑なヒトの行動も結構これで説明
できたりする
人間での例



ヴァープランクの発話条件づけ実験
アメリカの教室でのいたずらのエピソード
バイオフィードバック
ヴァープランクの発話条件づけ



アメリカのヴァープランクが1955年に行
なった実験
友達がその友達自身のことについて話し
たときにだけ、「うんうん」と積極的にうなづ
いたり賛同したりする
その友達が自分自身のことについて話す
頻度が増えた

1.
2.
ヴァープランクの実験の意義
ヒトの会話という、一見複雑な行動につ
いても、オペラント条件づけの原理がは
たらいている可能性を示唆
オペラント条件づけに本人の意識は関係
ないという可能性を示唆
(友達は、自分が条件づけされているなど
とは気づかなかった)



アメリカの教室でのいたずら(作り話?)
教壇から落ちた教員
多弁になった教員
注意点
1.
2.
3.
強化子 ≠ 快楽刺激
「本能に反する行動」の形成は困難
オペラント条件づけ以外の要因で形成さ
れる自発反応もあるらしい
オペラント条件づけからの発展的研究

たくさんのものがあるが、
2.
バイオフィードバック
学習性無力感

をここでは紹介
1.
バイオフィードバック
確立された技術ではないが、興味深い
例:緊張性頭痛の改善
1.
前額部の筋肉の無意識的な緊張が原因
の頭痛。厄介なことに、これは普通自分の
意志で制御することは困難
2.
しかしオペラント条件づけでその制御を学
習することができる

1.
この筋肉に器具をとりつける。筋肉の緊
張度がクリック音の速度で知らされるよう
になる
2.
筋肉の緊張を緩和する反応が学習され
た(どうやったかは人それぞれ)
→頭痛が治った



普通は自分の意志で制御できないような
身体反応でさえも、
オペラント条件づけによって、それの制御
を学習できる
現在のところバイオフィードバックがうまく
いく事例は限られているが、医療やリハビ
リの分野で注目され始めている
成功例があるもの(100%成功ではないが)
頭痛
片脚麻痺のリハビリ
心拍率・不整脈
血圧
皮膚温度
腸の過敏性活動
過呼吸
β波の増加(落ち着きのない子供の集中力増進)





バイオフィードバックの意義
生物は自分の行動の結果何が起こったか
分からなければ学習できないが、
それが分かりさえすれば、学習しうる
普通は自分の意志で制御することが不可
能な身体反応の一部さえも、オペラント条
件づけによってコントロールできるようにな
る場合がある
余談:霊感は「伝染」する?



母親に霊感があると、子供も霊感を持つこ
とが多いという話
霊感のある女性と結婚して一緒に生活し
ていたら、自分も霊を感じるようになったと
いう話
それらがもし本当だとしたら、バイオフィー
ドバックで説明できるかも??
学習性無力感

オペラント条件づけの一種である、
「回避学習」の研究中に発見された現象
回避学習
例
 イヌの電気ショック実験
イヌが檻に入れられる
 檻はしきいによって2区画に区切られている
 ブザーが鳴ってから10秒以内にもう一方の区画
に飛び移らないと、電気ショックをくらう
→イヌは飛び移ることを学習した
(反応・・・飛び移り、強化子・・・電気ショック回避)



しかし、何をしても絶対に電気ショックを回
避できないような状況に置かれていたとし
たら、イヌはどうなるのか?
という実験をした研究者がいた
結果、
1.
イヌはショックを回避することを諦めた
2.
ただクンクン鳴くだけであった
しかも、さらに重要なことに、
3.その後、「飛び移りさえすれば回避でき
る」檻に移された後も、そこでの学習が他
のイヌに比べて著しく遅くなった

研究者セリグマンはこれを、
 イヌが、「自分は無力である」ということを
学習したのだ、と解釈した
→ 学習された自己無力感
「学習性無力感」
(learned helplessness)

(その後の研究で、ゴキブリでさえもこの
「学習」が生じることが示された)


人間に対する示唆
「人は、自分の力ではどうしようもない嫌悪
刺激にさらされ続けていると、学習能力や
人生の困難に立ち向かう能力が著しく損な
われる可能性がある」





実際にその可能性(学習障害)を示唆した
実験
学生を2グループに分けて、それぞれ別室
へ。
一方のグループは、そこで回避できない一
連の騒音にさらされる
もう一方では、回避可能
その後、数学パズルを何問か解かせる


騒音が回避可能であったほうの学生たち
はすぐにパズルのコツをつかんで全問解
答することができたが、
騒音が回避不可能であったほうの学生た
ちはこのパズルを解くことに困難を覚え、
多くは時間内に全問解くことを放棄した
(方法上は問題点もあるが、興味深い実験)



学習性無力感が形成される恐れがある例
何をしても誰も認めてくれない子供
絶対的力を持つ看守に徹底的に苛め抜か
れた囚人
(あくまでも可能性。そうした逆境の中でも各
種能力が低下しない人もいる)



学習性無力感は、生物としては適切な反
応なのかも??
じっとしていても、ジタバタしても、どっちに
せよ災いを避けられないならば、
ジタバタしないでじっとして災いが通り過ぎ
るのを待つほうが、エネルギーの損耗が少
ない

しかし現代の価値観に照らしてみれば、学
習性無力感はやはり望ましくない
学習性無力感の治療・予防


簡単に言えば、
成功経験を多く積ませる
(例)数学の勉強
 いきなり難しい問題の連続だと失敗続き
→ 思考能力自体が低下する恐れ
 あるいは、人によっては「自分はバカだ」
「だから考えてもムダだ」という信念を発達
させ、ちょっと難しいとすぐに諦めるクセが
つく



なので、
いきなり難しい問題をやるのではなく、比
較的簡単に解ける問題を数多く解かせ、
数多くの成功経験を積ませる
そして段々ステップアップ
(実は学習性無力感とは関係なく以前からオ
ペラント条件づけのコツとして言われてい
たことだったりするが)