末梢性めまいの診断と治療 - 日本耳鼻咽喉科学会宮城県地方部会

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Transcript 末梢性めまいの診断と治療 - 日本耳鼻咽喉科学会宮城県地方部会

“ぐるぐる”“ふわふわ”“くらっ”
めまいの耳よりな話
吉田 尚弘
東北公済病院 耳鼻咽喉科
耳の日 平成20年3月2日
本日の内容
1. “ぐるぐる”“ふわふわ”“くらっ” の原因と診断
2.“耳より”なめまいの代表的疾患
良性発作性頭位めまい症
メニエール病
前庭神経炎
突発性難聴 など
3.めまいの平衡訓練と生活指導
“ぐるぐる” ;景色が回る
“ふわふわ” ; 雲の上を歩いているような感じ
“くらっ” “まっくら”
めまいを起こす疾患
めまいの分類
中枢性めまい
末梢性(内耳性)めまい
脳血管障害
椎骨脳底動脈循環不全
脳梗塞
Wallenberg症候群
小脳出血、小脳梗塞
Sunclavian steal syndrome
腫瘍
変性疾患
薬物中毒
炎症性
先天異常
メニエール病
前庭神経炎
良性発作性頭位めまい
めまいを伴う突発性難聴
炎症性(中耳炎内耳波及、
ウイルス感染など)
外傷性
内耳循環障害
小脳橋角部腫瘍
頸性めまい
全身性、心因性など
どんなめまいが中枢性?
どんなめまいが末梢(内耳)性?
めまい診断のポイント
どんなとき に どんなめまい が
どのくらいのあいだ おきたか?
めまいにどんな症状を伴ったか?
どんなときに?
 頭を動かしたとき、頸をひねったとき、
寝返りをうったとき
 突然に
 急に立ったとき
どんなめまいが?
“ぐるぐる” ; 景色が回る
どちら向き?
どちらまわり?
 “ふわふわ” ; 雲の上を歩いているような


“くらっ” “まっくら”
立ちくらみ 眼前暗黒感

上行性網様体賦活系の血流障害
脳幹網様体
大脳を賦活させる
血流が減ると “くらっ”
後大脳動脈の血流が落ちると
眼前暗黒感
中枢性を疑うめまい
突然の発症
 頭痛を伴うもの(特に後頭部痛)
 景色が上下に動く
 片側の手足が動きにくい
 顔の片側の感覚が違う、口の周りがしびれて
いる
 飲み込みにくい
 ものがだぶって見える

内耳性めまいを強く疑う症状
片側の耳鳴り、難聴、
耳がふさがった感じ(耳閉感)
前庭・三半規管
聴神経
蝸 牛
どんなとき に どんなめまい が
おきたか?
めまいにどんな症状を伴ったか?
(随伴症状)
検 査
めまいの診断
眼振の観察
(フレンツェル眼鏡
赤外線CCD眼鏡)
聴力検査
平衡機能検査(カロリックテストほか)
画像診断(MRI,CT)
フレンツェル眼鏡(赤外線CCD眼鏡)
日本めまい平衡神経科学会より
水平性眼振
Bruns眼振
末梢性めまいの分類
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
前庭神経炎
メニエール病
めまいを伴う突発性難聴
炎症性(中耳炎内耳波及、ウイルス感染など)
外傷性
内耳循環障害
小脳橋角部腫瘍
末梢性めまいの分類
良性発作性頭位めまい症(BPPV)
前庭神経炎
メニエール病
めまいを伴う突発性難聴
炎症性(中耳炎内耳波及、ウイルス感染など)
外傷性
内耳循環障害
小脳橋角部腫瘍
良性発作性頭位めまい症(BPPV)の
特徴
① 特定の方向に頭を動かす(傾ける)と、
“ぐるぐる”回る
② 頭を動かしてから数秒してからおこる
③ 何度もめまいのする方向へ頭を傾けていると
改善する
④ 耳鳴り、難聴、頸部の異常がない
 後半規管型BPPV
 前半規管型BPPV
きわめて稀
 外側半規管型BPPV
良性発作性頭位めまい症の
診断・治療
原因となる半規管部位の診断
薬物療法
理学療法
外科的治療
耳石
半規管膨大部
耳石器
回転加速度に反応
垂直性の変化に反応
良性発作性頭位めまい症の原因モデル
耳石
クプラ結石症
(Cupulolithiasis)
半規管結石症
(Canalolithiasis)
理学療法の注意点
1.正しく患側を判定すること
2.以下の人には適応に十分注意する
①高齢者、頸椎の整形外科的疾患の
ある人
②椎骨脳底動脈循環不全のある人
前庭神経炎
片方の前庭機能が低下
強い回転性めまい
耳鳴り、難聴など蝸牛
症状は伴わない。
カロリックテストに反応が弱く(無反応)になります
カロリックテスト

前庭機能を反映します
外耳道に温水、冷水を
入れて眼振をみます
メニエール病
メニエール病の診断基準
① 回転性めまいを反復
② 耳鳴り、難聴などの蝸牛症状が反復、消長
めまいの発作と一致して起きること
③ ①、②の症状をきたす中枢神経疾患,ならびに原因
既知のめまい、難聴を主訴とする疾患が除外できる。
診断基準
Ⅰ. 確実例;①、②、③の全条件を満たすもの
Ⅱ. 疑い例;①と③、または②と③の条件をみたすもの
メニエール病の疫学的特徴

性別; 女性の方が多い

発症年齢;40から60歳 40歳前後に多い

推定有病率;15~40人/人口10万人
メニエール病の発症機序
Menirettより図を改変
内服治療
イソソルビド(イソバイド®)
ATP(アデホス®)
利尿剤 (ラシックス® )
抗めまい薬(メリスロン®、セファドール®、
トラベルミン® など)
 抗不安薬
 7%重曹水(メイロン®)





ステロイド
日常生活の注意
日常生活でのストレスを避ける
規則正しい生活・十分な睡眠
外科的治療
非破壊的手術
内リンパ嚢開放術(Portmann手術)
 部分的破壊的手術
前庭神経切断術
 破壊的手術
迷路破壊術
ゲンタマイシン鼓室内注入

鼓室内投与
(ゲンタマイシン、ステロイド)
鼓室内投与
(ゲンタマイシン、ステロイド)
末梢性めまいの分類
良性発作性頭位めまい(BPPV)
前庭神経炎
メニエール病
めまいを伴う突発性難聴
炎症性(中耳炎内耳波及、ウイルス感染など)
外傷性
内耳循環障害
突発性難聴
突然に
片方の耳が
聞こえなくなる
ときに めまいを伴う
中耳炎が原因のめまい
急性中耳炎
中耳炎が原因のめまい
急性中耳炎
真珠腫性中耳炎
末梢(内耳)性めまい
良性発作性頭位めまい(BPPV)
前庭神経炎
メニエール病
めまいを伴う突発性難聴
炎症性(中耳炎内耳波及、ウイルス感染など)
外傷性
内耳循環障害
小脳橋角部腫瘍
聴神経腫瘍
比較的緩徐に大きくなるため
めまいで気づかれることが少ない
めまいの治療
めまいの薬物治療 (急性期)
– 抗ヒスタミン薬:
ジフェンヒドラミン(トラベルミン® )、
塩酸プロメタジン(ピレチア®)、
ジメンヒドリナート(ドラマミン® )、
ヒドリキシジン(アタラックスP® )など
– 抗不安薬:
ジアゼパム(セルシン® 、ホリゾン® )
めまいの薬物治療(急性期から慢性期)
– 抗めまい薬:塩酸ジフェニドール(セファドール® )、
メシル酸ベタヒスチン(メリスロン® )、塩酸イソプレナ
リン(イソメニール® )
– 脳循環改善薬:ATP(アデホス®) 、セロクラール® 、
ケタス® 、カルナクリン® など
– 抗不安薬、抗うつ薬
– 自律神経調節薬
– 利尿薬
など
左右の前庭機能は左右のエンジン
急に一方のエンジンが故障すると・・
一時的に姿勢がくずれる
姿勢を立て直して飛べる
一側の前庭機能の低下
(激しいめまい、平衡障害)
内服治療
代 償
めまいの軽快
急性期
一側の前庭機能の低下
(激しいめまい、平衡障害)
急性期
内服治療
代償の遅延
めまいの持続
平衡訓練
一側の前庭機能の低下
(激しいめまい、平衡障害)
急性期
内服治療
代 償
めまいの軽快
平衡訓練
平衡訓練
 前庭代償を促進
 自己受容器に積極的な反復刺激を
与えることによる前庭系、視覚系、
自己受容器の相互強化を図る
めまいの生活指導
急性期
体を動かさず楽な姿勢をとる
安静
目の前の動くものを見ない
 慢性期
バランスのとれた食事と規則正しい生活
ストレスをさける(うまくつきあう)
十分な睡眠
適度な運動
