起立不耐症と筋痛性脳脊髄炎との関係について

Download Report

Transcript 起立不耐症と筋痛性脳脊髄炎との関係について

起立不耐症と筋痛性脳脊髄炎
との関係について
ミワ内科クリニック
三羽
邦久
三羽邦久:
演題発表に関連し、開示
すべきCO I 関係にある
企業などはありません。
30歳女性
主訴:
既往歴:
背景:
大学院生(医療系)学生
ふらつき、浮遊感、悪寒、冷汗、動悸、呼吸困難
なし
タバコ:なし
1年位前より(入学後)夜間から朝に動悸。
H22年9月に結婚して楽になった。 大学院が忙しい。
現病歴: 主訴でH22年9月19日、近医(循環器専門)受診。
ホルター心電図施行。心室性期外収縮はあるが少なく、
「心の問題」ではないかと言われた。
9月26日、結婚式場で着物を着ていた時、10月6日、
仕事中、立って いられなくなって倒れた。意識あり。
10月18日、当院受診。問診より、立位時に症状あり。
身体所見: 159cm、43kg、血圧111/79、脈拍:78、体温: 37.2度
4LSB: 収縮期雑音2/6
胸部X線: CTR42%
心電図: 高度洞不整脈
検査所見: K:3.5
起立試験:「揺れる、物が白く見える」遅発性起立性低血圧あり。
起立不耐症と診断
23年1月18日
4月に結婚式、披露宴の予定
「折り入ってご相談が・・・・・
神父の前で30分位、立っていられるか?」
2月18日
院卒業発表は座位でやらせてもらった。
昼食後に血圧が下がって揺れる
静止立位が調子悪い
弾性ストッキングを試す
2月23日
痒い
弾性ストッキング、メーカー変更
弾性ストッキング ノーマル(20-30mmHg)
4月12日
結婚式、リハーサルで30分ぐらい、立って
いられた。
週2日勤務+非常勤講師週1回
4月29日
挙式、披露宴
24歳女性
主訴:
保育士
全身倦怠感、易疲労感、全身関節痛
既往歴: 不眠症(2008年より眠剤常用)1年前より保育士
家族(特に祖父)の過干渉がストレス。タバコ:なし
現病歴: 2010/1/8 初診。 約2年前より、全身倦怠感、易疲労感、
四肢関節痛あり。卒業を控え、多忙で不眠。心療内科
で眠剤処方される。 最近、症状悪化、ふらつき、
息苦しさあり。だるくて起き上がれなくなる。
月1回位、休暇をとっていたが、 年明けより
就業不能。体を起していられなくなった。
身体所見: 160cm 44kg 血圧:98/61 脈拍:64 心尖部: 収縮期
雑音2/6 上腹部振水音(+) 圧痛(+) 足先冷
頸部、鼠径部リンパ節数個触知、圧痛点8/18
胸部X線: CTR40%、心電図: 異常なし
診断:
慢性疲労症候群、起立不耐症
2010/6/5
25歳女性
起立試験
血圧
脈拍数
症状
(mmHg) (拍/分)
臥位
100/49
55
立位 直後 97/57
93
少し、ふらっと
(体位性起立頻拍症候群)
3分 103/60
84
少し、ふわふわ
継続可能
2010/7/22
臥位
立位 直後
3分
108/67
102/70
105/72
67
77
75
ふわふわ
ふわふわ
「横になってもいいですか」
検査中止
起立不耐症 (Orthostatic Intolerance: OI)
原因:
起立時の脳血流不足
交感神経の高度緊張
立位時の循環異常:
血圧低下(+)
遅発性起立性低血圧
神経調節性低血圧
血圧低下(-)
体位性起立頻拍症候群 (POTS)
その他
背景①
強度の疲労、めまい、ふらつき、集中力低下、
身震い、悪心などの症状により、立位維持困難を
訴える起立不耐症患者が、近年、認識され出した。
日常生活の大きな障害となる起立不耐症は、
慢性疲労症候群の立位時症状として、生活機能を
障害する最重要因子となっている。
慢性疲労症候群、起立不耐症は、若年女性に
好発するという点でも共通する。
背景②
慢性疲労症候群の原因として、筋痛性脳脊髄炎
に伴う中枢神経系の機能異常が提唱された。
Myalgic encephalomyelitis:
International Consensus Criteria
B. M. Carruthers1,M. I. van de Sande2, K. L.DeMeirleir3, N. G. Klimas4, G.Broderick5, T.Mitchell6, D. Staines7,8,
A. C. P. Powles9, N.Speight10, R.Vallings11, L. Bateman12,13, B. Baumgarten-Austrheim14, D.S.Bell15, N. Carlo-Stella16,
J. Chia17,18, A.Darragh19, D. Jo20, D. Lewis21, A.R. Light22, S.Marshall-Gradisbik8, I. Mena23, J.A.Mikovits24, K.Miwa25,
M. Murovska26, M. L.Pall27&S. Stevens28
(J Int Med 2011; 270:327-338)
公表された診断基準には、Cardiovascular
symptomsとして起立不耐症を含み、Small heart
と低心拍出量についても言及。
目 的
起立不耐症患者のどれほどが
筋痛性脳脊髄炎の診断基準を満たすか、
逆に、筋痛性脳脊髄炎患者のどれほど
が起立不耐症を有するか、
を検討することにより、
両者の関係を明らかにする。
対象と方法
過去5年間の症例で、
18歳以上で中等症以上(Performance Status 3)
の起立不耐症(OI)、
または病歴から筋痛性脳脊髄炎(ME)と診断でき、
心エコー検査を施行しえた、連続38例。
結果
OI患者28例(男6、女22、平均年齢3110才)
内、22例(79%)がME
ME患者32例(男10、女22、平均年齢3111才)
内、22例(69%)がOI
ME
A. 労作後の極度の消耗
(必須)
B. 神経系機能障害
1a.情報処理障害
1b. 短期記憶障害
2a. 頭痛
2b. 疼痛
3a. 睡眠障害
3b. Unrefreshed sleep
4a. 感覚知覚障害
4b. 運動障害
C. 免疫系、胃腸管系、泌尿生殖系機能障害
1. 風邪症状の繰り返し、慢性化、悪化
2. ウイルス感染症に易罹患性、遷延化
3. 消化器系障害
4. 排尿障害
5. 食物、薬物などへの過敏性
D. エネルギー産生/イオン輸送障害
1. 心血管系
2. 呼吸器系
3. 恒温調節不全
4. 四肢温度不耐性
OI(+)
OI(-)
22 (100%)
10 (100%)
22 (100%)
15 (68%)
22 (100%)
12 (55%)
17 (77%)
20 (91%)
20 (91%)
20 (91%)
10 (100%)
8 (80%)
10 (100%)
5 (50%)
6 (60%)
9 (90%)
9 (90%)
8 (80%)
22 (100%)
15 (68%)
21 (95%)
5 (22%)
14 (64%)
10 (100%)
6 (60%)
8 (80%)
6 (60%)
8 (80%)
22 (100%)
21 (95%)
12 (55%)
9 (41%)
9 (90%)
6 (60%)
7 (70%)
4 (40%)
mm
LVEDD
60
p<0.05
50
40
30
OI(+)
(22)
ME
OI(-)
(10)
l/min/m2
Cardiac Index
p<0.05
OI(+)
(22)
ME
OI(-)
(10)
ME
OI(+)
OI(-)
__________________________________________________________________
N
年齢 (歳)
心胸郭比 (%)
心拍数 (拍/分)
22
3210
374*
6712
10
308
426
6611
左室拡張末期径 (mm)
396*
447
一回拍出量係数(ml/m2) 308
368
心係数 (l/min/m2)
2.00.4*
2.30.5
左室拡張末期径 < 40
かつ 心係数 < 2
12 (55%)*
1 (10%)
左室駆出分画 (%)
698
696
左室筋量係数 (g/m2)
5515*
6816
_______________________________________________________
*: p<0.05 vs. OI(-)
ME(+)
OI
ME(-)
__________________________________________________________________
N
22
6
年齢 (歳)
心胸郭比 (%)
心拍数 (拍/分)
左室拡張末期径 (mm)
1回拍出量係数 (ml/m2)
心係数 (l/min/m2)
3210
374
6712
396
308
2.00.4
258
394
668
411
335
2.20.5
左室拡張末期径 < 40
かつ 心係数 < 2
12 (55%)
1 (17%)
左室駆出分画 (%)
698
688
左室筋量係数 (g/m2)
5515
6511
_______________________________________________________
結 語
OI例の多くは、MEの診断基準を満たし、
小左室を伴い、低心拍出量状態になっている。
OI症状はしばしば“不定愁訴”と誤解される。
広く、医療、健康管理従事者がOIについて
充分、認識を深める必要がある。
起立不耐症の治療
立位時下肢の動作(足踏み、交又、踏み上げ、蹲踞など)
上半身を挙上した睡眠
起立調節訓練法(Tilt-training)
運動
下肢筋肉トレーニング
塩分、水分の摂取
Fludrocortisone
弾性ストッキング
交感神経α1受容体刺激薬
交感神経β受容体遮断薬(少量)