めまいとは? BPPVとは?

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Transcript めまいとは? BPPVとは?

第25回 耳の日のイベント 2012.03.04
耳からくるめまい
東北大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科
日本めまい平衡医学会 めまい相談医
宮崎 浩充
本日の講演内容
 平衡感覚に関係する耳の機能(総論、解剖、生理)
 耳からくるめまい
危険な中枢性めまい
 お勧めの、めまいリハビリテーション
平衡感覚に関係する耳の機能
(総論、解剖、生理を簡潔に)
めまいとは?
自分ないし周囲が運動していないのにもかかわらず、
運動しているように感じる錯覚ないしは異常感覚で、
空間での身体に関する空間識が障害された状態
(肥塚、2008)
(めまいナビ)
平衡覚の制御
大脳、小脳
網様体賦活系、錐体外路系
空間識
視覚情報
眼球運動制御
中枢積分器
体性感覚
深部知覚
前庭平衡覚
姿勢制御
運動制御
めまいの原因、分類
末梢性
(耳性)
良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭型メニエール病
前庭神経炎、突発性難聴
中耳炎、内耳梅毒、帯状疱疹、薬物中毒(ストレプトマイシンなど)
手術後遺症、外リンパ瘻、その他
中枢性
片頭痛関連めまい
脳腫瘍、脳循環障害(椎骨脳底動脈循環不全)
脳外傷
多発性硬化症、脊髄小脳変性症、脳炎、てんかん
薬物中毒(抗痙攣薬など)、その他
前庭性
めまい
非前庭性
精神科的(不安、抑うつ、神経症など)、自律神経失調症
婦人科的(妊娠、更年期障害)
内科的(血液、循環器、内分泌)
眼科的(弱視、調節障害)
(五島、2012)
外来でのめまい患者さんの割合
 耳鼻咽喉科、神経内科を受診する患者さんの約10%
(城倉、2008)
 聖マリアンナ医科大学病院救急外来の0.4%
救急車で搬送される患者さんの2.6%
(箕輪、2008)
 神戸市立医療センター救急外来の1.7%(650人/39030人/年)
(十名ら、2011)
耳の構造
(めまいイラストレイテッド)
内耳のかたち
半規管
卵形嚢
球形嚢
蝸牛
哺乳類
鳥類
両生類
魚類
内耳の解剖(…簡単に)
半規管系
耳石器系
卵形嚢
球形嚢
蝸牛
半規管:それぞれが三次元的に直交。頭の回転を感知する。
卵形嚢:水平に位置
頭の傾き、動きを感知する。
球形嚢:垂直に位置
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半規管膨大部の模式図
半規管は頭の回転を感知する
(回転加速度を感じる)
耳石器平衡斑の模式図
球形嚢、卵形嚢:
頭部の傾きと動きを感知する
(重力、直線加速度を感知する)
耳石の形態(ヒト)
(炭酸カルシウムの結晶)
前庭器の感覚細胞
半規管刺激と出現する眼振
後半規管
後半規管
前
・
後
半
規
管
左側
両側後半規管
右側
外側半規管
外側半規管
前半規管
前半規管
両側前半規管
前
・
後
半
規
管
眼振が起こる仕組み
眼振所見
水平性眼振
回旋性眼振
水平回旋混合性眼振
垂直性眼振
水平回旋混合性眼振
(ポイント:急速相、緩徐相
眼振は右向き)
垂直性眼振(要注意!!)
(ポイント:急速相、緩徐相
眼振は下眼瞼向き)
めまいの診断
 詳細な問診
 眼振の観察
(フレンツェル眼鏡)
 聴力検査
 平衡機能検査(カロリックテストほか)
 画像診断(MRI、CT)
 採血、心電図など
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めまい問診のポイント
どんなとき
に
(何をしたときに)
どんなめまい
が
(ぐるぐる回る? ふわふわする? 目の前が暗くなる?)
どのくらいの持続時間
でおきたか?
(めまいはどれくらい続いたか)
めまいにどんな症状を伴ったか?
(耳の聞こえは? 耳鳴は? 手足の麻痺は? ろれつは?)
カロリックテスト
 外側半規管を温度刺激して内リンパの対流を起こす
 前庭機能を反映
外耳道に温水、冷水を
入れて眼振の左右差をみる
耳からくるめまい
危険な中枢性めまい
めまいの原因、分類
末梢性
(耳性)
良性発作性頭位めまい症、メニエール病、前庭型メニエール病
前庭神経炎、突発性難聴
中耳炎、内耳梅毒、帯状疱疹、薬物中毒(ストレプトマイシンなど)
手術後遺症、外リンパ瘻、その他
中枢性
片頭痛関連めまい
脳腫瘍、脳循環障害(脳梗塞、椎骨脳底動脈循環不全など)
脳外傷
多発性硬化症、脊髄小脳変性症、脳炎、てんかん
薬物中毒(抗痙攣薬など)、その他
前庭性
めまい
非前庭性
精神科的(不安、抑うつ、神経症など)、自律神経失調症
婦人科的(妊娠、更年期障害)
内科的(血液、循環器、内分泌)
眼科的(弱視、調節障害)
(五島、2012)
良性発作性頭位めまい症
Benign Paroxymal Positional Vertigo (BPPV)
良性発作性頭位めまい症の病態
(めまいイラストレイテッド)
良性発作性頭位めまい症とは
どんなめまいか?
頭を動かすと目がぐるぐるまわる
(頭の位置によっては眼振の向きが逆転する)
1回のめまいの持続は2~3分間程度
めまいには難聴、耳鳴を伴わない
2~3週で自然治癒することが多い
良性発作性頭位めまい症の分類
半規管結石症
外側半規管型
後半規管型
前半規管型
クプラ結石症
良性発作性頭位めまい症の診断
詳細な問診
フレンツェル眼鏡下での
頭位眼振検査、頭位変換眼振検査
患側、責任半規管を同定する
良性発作性頭位めまい症の治療
薬物治療
理学療法(浮遊耳石置換法)
後半規管型 : Epley法、Semont法
外側半規管型: Lempert法
手術療法
半規管遮断術
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Epley法(後半規管型BPPV)
(座って顔を患側45度)
(そのまま後ろに、30秒)
(ゆっくり顔を健側45度、30秒)
(健側に90度寝返り)
(すっと起きる)
(顔を下に向けて100秒)
(右が患側の場合)
Semont法(後半規管型BPPV)
(座って顔を健側45度)
(そのまま患側に倒れる。
できるだけ顎を高く上げる。3分間)
(そのまま健側に倒れる。
できるだけ顎を引く。3分間)
(そのまま体を起こして、顔を正面へ)
(右が患側の場合)
Lempert法(外側半規管型BPPV)
(右が患側の場合)
理学療法の注意点
1.正しく患側を判定すること
2.以下の方には適応に十分注意する
①高齢者、頸椎の整形外科的疾患がある方
②椎骨脳底動脈循環不全のある方
BPPVのリハビリテーション
Brandt-Daroff 法
責任半規管に関係なくリハビリを
行っても有意差はみられなかった
(北島、2011)
メニエール病
メニエール病の歴史
Prosper Ménière (1861)
白血病の女児、なくなる前にめまい
剖検にて内耳出血あり
めまいは内耳に原因があると指摘した初めての報告
内リンパ水腫の報告
Kyoshiro Yamakawa (1938)、Hallpike (1938)
同僚の産婦人科教授の剖検標本
ドイツ語で報告したため、1989年まで評価されず
メニエール病の病態
 本質は内リンパ水腫(機序は詳細不明)
内リンパ嚢の機能不全(内リンパの吸収障害)
内リンパの産生過剰
ストレスホルモンの影響
メニエール病の症状
 回転性めまい発作(数時間程度)を反復する
 めまい発作時に変動性の難聴や耳鳴を伴う
(主に低音~中音部領域)
 蝸牛症状だけの蝸牛型メニエール病
前庭症状だけの前庭型メニエール病もみられる
メニエール病の診断基準
① 回転性めまいを反復
② 耳鳴り、難聴などの蝸牛症状が反復、消長
めまいの発作と一致して起きること
③ ①、②の症状をきたす中枢神経疾患,ならびに原因
既知のめまい、難聴を主訴とする疾患が除外できる。
診断基準
Ⅰ. 確実例;①、②、③の全条件を満たすもの
Ⅱ. 疑い例;①と③、または②と③の条件をみたすもの
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メニエール病の治療
 薬物治療:利尿剤を中心として
 有酸素運動(ジョギング、水泳、エアロビクスなど)
 水分負荷
 ステロイド剤の全身投与、局所投与
 鼓膜換気チューブ留置
 (中耳加圧療法)
 鼓室内ゲンタマイシン投与、ステロイド剤投与
 内リンパ嚢開放術
 前庭神経切断術
メニエール病の予防(生活習慣の改善)
 メニエール病患者に多くみられる行動特性
徹底的にやる
熱中しやすい
親や上司の期待に沿う
嫌なことでも我慢する
事前にいろいろ心配しやすい
イライラしたり怒りやすい
 行動習慣の指導が再発予防となりうる
その他のめまい疾患
前庭神経炎
 蝸牛症状を伴わない突発性の激しい回転性めまい
 第Ⅷ脳神経以外の神経症状がみられない
 めまい、眼振の持続は数日間程度
 先行する感冒様症状がみられる場合がある
 原因は不明
 治療は急性期のステロイド剤投与、対症療法
 予後は良好(前庭代償が進む)
遅発性内リンパ水腫
一側耳が何らかの理由で高度難聴になると
(突発性難聴、中耳炎、ウイルス、外傷、音響
外傷、薬剤性難聴など)、その後数年ないし
数十年(平均20年)後に、同側または対側耳
が責任耳となってメニエール病類似症状を呈
することがある
病態は内リンパ水腫とされる
聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)
比較的緩徐に大きくなるため
めまいで気づかれることが少ない
立ちくらみ 眼前暗黒感(椎骨脳底動脈循環不全)
上行性網様体賦活系の血流障害
脳幹網様体
大脳を賦活させる
血流が減ると “くらっ”
後大脳動脈の血流が落ちると
眼前暗黒感
脳幹梗塞、小脳梗塞によるめまい
めまい患者さんの数%は脳血管障害
脳血管障害ではないかと疑って診察する
小脳梗塞
脳幹梗塞
小脳出血
中枢性を疑うめまい
 突然の発症
 頭痛を伴うもの(特に後頭部痛)
 景色が上下に動く
 片側の手足が動きにくい
 顔の片側の感覚が違う、口の周りがしびれる
 飲み込みにくい
 ものがだぶって見える
 診察所見に比べて具合が悪そう
その他の危険なめまい
 狭心症、心筋梗塞、不整脈
 大動脈解離/動脈瘤破裂
 肺塞栓
 TIA(一過性脳虚血発作)
 脳梗塞/脳出血
 クモ膜下出血/脳動脈瘤/頭頸部血管解離
 細菌性髄膜炎
 脱水/溢水/電解質異常
 低血糖、貧血
 副腎不全
 アルコール禁断症状、CO 中毒
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(Newman-Toker DE et al. 2008)
めまいリハビリテーション
めまいの経過(中枢代償が進む場合)
片側の前庭機能の急激な低下
(激しいめまい)
(内服治療)
前庭系(バランス)の左右差を改善するように
小脳の中枢代償が働く
めまいの改善
(急性期)
めまいの経過(中枢代償が進まない場合)
片側の前庭機能の急激な低下
(激しいめまい)
(急性期)
(内服治療)
前庭系(バランス)の左右差を改善するように
小脳の中枢代償が働く
中枢代償が進まない
めまいが治らない
めまいの経過(リハビリの重要性)
片側の前庭機能の急激な低下
(激しいめまい)
(急性期)
(内服治療)
前庭系(バランス)の左右差を改善するように
小脳の中枢代償が働く
中枢代償が進まない
めまいリハビリ
めまいが治らない
めまいの経過(リハビリの重要性)
片側の前庭機能の急激な低下
(激しいめまい)
(内服治療)
前庭系(バランス)の左右差を改善するように
小脳の中枢代償が働きはじめる
めまいリハビリ
めまいの改善
(急性期)
めまいのリハビリテーション
 耳(前庭系)
 眼(眼運動系)
 関節・筋・腱の感覚、足の裏に加わる圧力
(深部知覚系)
を有効に刺激することで小脳の中枢代償を促進する
(参考図書:めまいは寝てては治らない、新井基洋、中外医学社、2012)
めまいのリハビリテーション
めまいのリハビリテーション
めまいの悪化因子
 睡眠不足
 風邪などの体調不良
 寒さや、低気圧の接近
 仕事や介護などの身体的、精神的な疲れ、ストレス
 人ごみ、ラッシュ時の交通機関
 生理の前後、更年期(女性ホルモンの変化)
(新井、2011、改編)
日常生活での注意点
 十分な睡眠
 規則正しい生活リズム
 ストレスをためこまない(うまくつきあう)
 バランスのとれた食事
 アルコール(たしなむ程度)、コーヒーはOK、タバコはよくない
 適度な運動(メニエール病の方は有酸素運動がお勧めです)
 調子が悪い時には自動車の運転はしない
 人ごみやラッシュ時の外出は避ける
 家事は控えめに
 めまいリハビリは短時間でよいので、継続することが大切です
60
(新井、2011、改編)
ご静聴ありがとうございました