生命科学研究の規制

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Transcript 生命科学研究の規制

1 科学とは何か
科学の特性
• 1 客観性 価値やイデオロギー、先入観とは無
縁
• 2 普遍性 誰が見ても同じ
• 3 経験主義 データ中心 datum(ラ) 与えら
れたもの
• 4 定量的 数式であらわさられる 定量的取
り扱いは正確さを増す
• 5 唯物論 物質の動きですべてが理解できる
パラダイムParadigm
• パラダイムとは ある集団における支配的な考
え方(例 Samner 酵素はタンパク質である)
• 科学教育はパラダイムの教育(酵素の構造と
機能をタンパク質構造に基づいて教育)
• 科学の進歩はパラダイムを転換すること
(Chech リボザイムを発見)
2 安全と規制
カルタヘナ法
• 正式には「遺伝子組換え生物等の使用等の規制
による生物の多様性の確保に関する法律」
• [1]生物多様性の保全、[2]生物多様性の構成要
素の持続可能な利用及び、[3]遺伝資源の利用
から生ずる利益の公正な配分、を目的とする
• 2000年、「生物の多様性に関するバイオセーフ
ティに関する条約のカルタヘナ議定書」が採択、こ
れに基づき6月にカルタヘナ法が公布、翌年(平成
16年)2月から施行
カルタヘナ法ー2ー
• 執るべき拡散防止措置が定まっている場
合、それにしたがって実験
• 執るべき拡散防止措置が決まっていない
場合には、大臣の確認を受ける(大臣承認
実験)
• 遺伝子組み換え生物の輸出入の規制、実
験等の違反者への罰則
生命科学研究の規制ーその他
の例
• 病原微生物:日本細菌学会セーフティ指針ほか
レベル1ー4に分類し規制
• 動物実験
苦痛を与えない 数を減らす 代替を考える 魚、
微生物、培養細胞に代える
法律「動物愛護に関する法律」、「大学等におけ
る動物実験について」文部省通達 委員会を設
置し、実験計画の承認を得る。
ヒトを対象とする実験の規制
5原則 自発的同意、説明と同意、無償の提
供(交通費などは別)、個人情報の保護、
倫理委員会の設置
• ゲノム情報ではDNA提供者の人権保護、
「知りたくない権利」の設置
生命科学研究の規制例(続)
• 臓器移植は臓器移植法 脳死については
各個人が決める
• 生殖医療は指針作成中
• 日本ドイツは代理母Surrogate Mother禁止、
英は金銭授受を禁止、
3 知的財産権
知的財産権
• 特許は最初イギリスから。印刷技術を導入
する引き替えに専売権を与えた。
• 目的は技術の公開。これがさらに技術を発
展させる。
• 技術発展の障害とならないよう期限をつけ
る
• 1985年、レーガン政権下のアメリカは「強
いアメリカ」を取り戻すため」知的所有権の
保護と強化、多くの法律が成立
特許の条件
• 1.産業上利用できる発明である:特許制
度の目的は産業の発展
• 2.新規性のある発明である:学会発表に
留意
• 3.進歩性のある発明である:材料を変え
てみただけ、形状が変わっただけ
• 4.先願の発明である:アメリカは違う
• 5.不特許事由に該当しない発明である:
風俗、公衆衛生を害するような発明
知的財産権の種類
出願手続
弁理士
出願料
特許料
国際特許
4 研究とは何か
1 学会
• 成果の認知が必要:特許と矛盾
• 学会は任意団体:いくらでも作れる
• 年会費を払う:昔は推薦や資格審査があっ
た
• 多くの学会は「年会」を開催し、「学会誌」を
刊行している→研究成果の発表=認知
2 論文
• 論文には原著論文Original paperと総説
Review articleがある
• 共に審査を経るのが普通:無審査の場合
は論文数に数えない
• 論文に関わる倫理はWriting Ethics
論文審査
• 担当編集委員がざっと読んで、2人の論文審査
員(refereeまたはreviewerという)を決める。審査
員は独立に意見を述べる。ポイントは新規性、波
及性、先導性
• 判定は担当編集委員が独断で行う。運が左右す
る
• 採択、小修正(担当編集委員のみが再度審査)
大修正(また審査員を決めて審査) 却下
• 却下に対し異議を述べることは可能、ただし悪い
印象を与えることが多い
• 審査に伴う盗作の問題
論文の形式
• 雑誌ごとに形式が決まっている(特に文献)
• カバーレター:概要、審査員の候補、審査されたく
ない競争関係にある研究者名
• 以下の順に書く
• Title 題名、Authors 発表者、Affiliation 所属
ここまで表紙
• Abstract/Summary 要約
• Introduction 序文=目的と背景
• Materials and Methods 実験方法 再現できるよ
うに詳しく
論文の形式(続)
•
•
•
•
•
•
•
•
Results 結果
Discussion 検討 結果と一緒にまとめてもよい
Acknowlegdements 謝辞 表紙に書くこともある、
学位論文では一番最後
References 文献 書き方が決まっている
Tables 表
Figure Legends 図の説明 表紙からここまでは
通しのページ番号
Figures 図
学位論文などでは図、表は適宜、本文中に挿入
論文に関する問題点
• 著者は全員が内容について責任をとるべ
きだがーーー。
• 審査の途中で内容が盗まれるーー科学者
の世界ではアイディアを尊重する風潮は消
滅してしまったようだ
4 研究費
• 東薬大生命科学部の場合
• 大学から 授業料と税金 5-700万円
• 文部科学省から 科学研究費補助金
そのほかの基金、特に私学振興事業団が
主 文部科学省は科学技術振興機構を通
しても研究費を出している
• 他省庁の研究助成金(例 経産省)
• 民間企業からの寄付金 実は税金、使い
やすい
研究費の獲得法
• 大部分は申請、ごく少数はトップダウン
• 審査はPeer Review 仲間内審査
• 問題点:1 審査員は適正か
2 秘守義務は守られているか
3 適正な採択率か 科研費では採択率は25%、
CRESTでは5%
審査
• 審査の内容:1 計画に独創性はあるか
2 実績はあるかー過去の研究実績の乏
しい人は採択されない
3 要求している経費は適正か
• 問題点 1 革新的な計画は評価が低い
2 成果主義のため長期にわたる雄大な研
究は採択されない Sangerは12年、Perutz
は25年
4 研究評価
•
•
•
•
評価委員会 これもpeer review
公募、評価、任期制
弊害は伝統が育たない
評価項目 論文の質と量、 研究費獲得実
績、教育の実績、学部、大学(研究所)へ
の貢献、 学会や社会への貢献
• Inpact factor
5 研究室を選ぶ
研究室を選ぶ(続)
6 研究テーマの選び方(グリンネルによる)
研究テーマの選び方2
研究テーマ選択の問題点
• 社会的な制約と内的な好奇心の葛藤
• 好奇心を捨てては科学の本質を損なう
• 好奇心の質的な変化が求められている 科学の
ための科学から社会のための科学
• 基礎研究のための研究費が公的資金であること
は世界共通の事実 なぜ?
7 大学院の問題点(白楽から引用)
• 1991→2000年で倍増以上→レベルの低下
• 職がない
• 教員もレベル低下、「大学院生はどの教授が有
能かを驚くほど知らない」
• 大学院教育をしていない
• 院生側の問題
• 1)やる気がないー研究室にいない
• 2)自分で考える能力がない
• 3)もともと社会的に不能力者がいくから
• 4)生命科学研究者としての資質を欠いていな
いか?
博士課程学生への白楽のお薦めコー
ス
• 1 並 研究に没頭して博士2年を終わる前に論文を
発表する。春から就職活動をして翌年3月博士号を
とり、就職する。女性は2年で結婚し学位取得後出
産する。
ポスドクにしかなれなかったら、毎年論文を書き、助
手の職があったらすぐ転職する。
• 2 秀才コース 博士課程の間は学振の特別研究員
になる。博士在学中は月20万余もらえる。競争率は
13%。博士課程修了後のPDは37万+、SPD(特に
優れた者)は45万5千円 採択率は4% その後海外
に出て、グラントをとりPIになる。
• 失敗コース 博士課程中退の理由は就職、結婚、進
路変更、先生と合わない、病気
8 研究における不正行為
Misconduct
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•
税金であるから犯罪である
科学の社会的信用を失墜させる
3種ありFFPということがある
Fabrication でっち上げ
Falsification 変造
Plagiarism 盗作
米NSFの調査では年3件=0.01%
不正の源:独創的な研究
• 「科学は真理を追究する」は科学の一面
• 例 なぜ「よい」雑誌に発表したがるの
か?真実はどの雑誌でも変わらないのに
• 科学研究には2種類ある 後追いの研究と
先駆けの研究
• 真理はあり得るか?多くの場合、多数派の
意見が真理でないか?Ribozymeのケース、
「真理」は証明より論争により決定されてい
る
よく見られる不正行為
• 仲間がデータの改ざんなど不正をしている
のを見逃した
• 自分の過去のデータと矛盾したデータが出
たが、それ以上追求していない
• 他人のアイディアを利用したが、それを
断っていない
• データの改ざんまたはねつ造
• 再現性のないデータを発表
よく見られる不正行為ーその2
• 研究に関する記録が不十分
• 同じ研究の結果を2つ以上の論文に重複
して記載した
• 提案書、研究計画書に詳細を書かなかっ
た
問題点
• 立証が困難、疑義を払うことはもっと困難
• 疑われると科学者は生命を絶つー保護がない
• どこまでが不正か境界が曖昧ーセミナーでヒント
を得た:これは不正か
• 論文に肝心のコツを書かないーこれは不正
• 投稿論文は普段より遅く掲載されたー1週間後、
雑誌の審査員の一人の研究室から類似論文が
出た???
• 実験科学者は過ちを犯すと不正なのかーNIHは
損害が生じたときは犯罪としているー誤りは実験
科学の属性でないか
企業でも同じ
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自己診断(ロッキード・マーチン社)
*あなたの行為は合法ですか
*あなたは正直ですか
*あなたの行為は時の試練に耐えられますか
*自分に対しどんな気持ちでいますか
*子供が同じことをしたら親としてどうですか
*あなたの行為を家族が知ったらどうですか
5 生命科学とは何か
生命科学とは何か
• 生命の研究は、近代自然科学から取り残さ
れ「博物誌(史)」であった
• やがて総合的な研究が必要となった
• 生命科学とは:
• 1 生命を貫く一般則を明らかにする 物理
科学の一員であり総合科学である
• 2 その上でヒトの特性を明らかにする
• 3 その上でヒトがヒトらしく生きる道を探る