Transcript ミンツバーグ戦略論
ミンツバーグ戦略論
2007年8月3日
ミンツバーグによる戦略論分類
デザイン・スクール(design school)
コンセプト構想プロセスとしての戦略形成
・プラニング・スクール(planning school)
計画策定プロセスとしての戦略形成
・ポジショニング・スクール(positioning school)
*1)創発(emergence)とは、
部分の単純な総和にとどまら
分析プロセスとしての戦略形成
ない性質が、全体として現れ
・アントレプレナー・スクール(entrepreneur school)
ることである。局所的な相互
ビジョン創造プロセス*1)としての戦略形成
作用が複雑に組織化すること
・コグニティブ・スクール(cognitive school)
で、個別の要素の振る舞い
認知プロセスとしての戦略形成
からは、説明できないシステ
・ラーニング・スクール(learning school)
ムが生まれる。
創発的学習プロセスとしての戦略形成
・パワー・スクール(power school)
交渉プロセスとしての戦略形成
・カルチャー・スクール(culture school)
集合的プロセスとしての戦略形成
・エンバイロンメント・スクール(environment school)
環境への反応プロセスとしての戦略形成
・コンフィギュレーション・スクール(configuration school)
変革プロセスとしての戦略形成。ミンツバーグは、7つのコンフィギュレーションの類型を示している。
・
ラーニング・スクールと学習組織
・組織は成功だけでなく、失敗からも学ぶことができる。
自社と他社の成功だけではなく、自社と他社の失敗経験も組織学習の教材になる。
・組織学習は、「壊れていなければ直すな」のことわざを却下する。
組織学習は、定期的にシステム、ルーチン、手順を点検し、改良することからスタートする。
・組織学習は、製品の設計、製作、流通、販売の現場に深く関わるマネジャーや従業員が、彼らの上司よりも
活動内容についてよく知っていることを前提にしている。
トップマネジメントに問題を直接伝達することを奨励するオープンドア・ポリシー、経営トップが現場において
従業員と接触する機会を増やす。
・組織学習は、積極的に組織の一部から他へ知識を伝え、組織の中でその知識を最も必要としている組織に
伝わるようにする。
社内的な会合、部門間でも人材のローテーション、多機能的または多部門的なプロジェクトチーム等によって、
戦略的な意見交換を奨励する。
・組織学習は、外側に目を向けて、知識を探すことを重視する。
組織は、リバース・エンジニアリングやベンチマーキング*2)、競合企業の政策やカルチャーの分析から学ぶこ
とができる。
*2)ベンチマーク(benchmark)は、「基準点」という意味であるが、経営学では「ベストプラクティス」(最善の実
践事例)に学ぶ、という意味で使用されている。
ミンツバーグの「変革のキューブ」
図 ミンツバーグの「変革キューブ」
非形式的
ミンツバーグの「変革のキューブ」の前面の左側は
戦略に関する変化であり、右側は組織に関するもの
であり、組織の状態を表している。
キューブの上方に位置するほど概念的であり、下
方に位置するほど具体的である。
形式的
また、キューブの前面は形式的、奥に向かうにした
がって非形式的で黙示的である。
概念的
戦略
ビジョン
ポジション
プログラム
製品
具体的
組織
カルチャー
組織構造
システム
人材
例えば、戦略的ポジションは形式的なポジショニン
グから、より非形式的で創発的なポジショニングもあ
る。
要は、組織が真剣に取り組むには、このキューブ
のすべてをカバーしなければならない、ということで
ある。
戦略と組織は、概念的と具体的、形式的と非形式
的なもののすべてを含むのである。
ミンツバーグのコンフィギュレーション(configuration)
(注)ミンツバーグのコンフィギュレーションは、
組織の構成要素の配置構想の意味である。
企業文化や価値観
ミンツバーグは、次の7類型を示している。
①起業家コンフィギュレーション
②官僚機構的コンフィギュレーション
戦略の司令塔
③多角化コンフィギュレーション
経営トップ
④プロフェッショナル・コンフィギュレーション
⑤イノベーション・コンフィギュレーション
価値観
⑥ミッション・コンフィギュレーション
⑦政治的コンフィギュレーション
テクノストラクチャー
サポート・スタッフ
職能スタッフ
事務管理
価値観 ミドル・ライン
ライン・マネジャー
オペレーションの主役
価値観
現場の人々
価値観
起業家コンフィギュレーション
・ 構造
①シンプルかつインフォーマルであり、柔軟性に富んでいる。本社スタッフやミド
ル・マネジャーの数は少ない。
②組織内の諸活動は、CEOなど一人の経営トップを中心に動いている。
・ 文脈
①モノ・カルチャーであり、事業環境の変動によって育成されていく。
②知識と権力がトップマネジメントに集中しているため、強力な、時としてカリスマ
的な
リーダーシップが存在する。
③スタートアップすると、やがて危機に見舞われそのまま衰退するか、起死回生
する。
・ 戦略
トップマネジメントのビジョンに基づいており、大まかな戦略的計画はあるが、細
部は創発的に形成され、柔軟に対処する。
・ 問題点
①組織構成員の使命感やコミットメントは強いが、組織は脆弱である。
②戦略優先かオペレーション優先に傾きやすい。
イノベーション・コンフィギュレーション
・ 構造
①流動的、有機的、分権的なアドホクラシー(adhocracy)
②スタッフ、オペレーション担当者、およびマネジャーで構成されるマルチ・チームにお
いて、各参加者が革新的なプロジェクトに従事する。
③各参加者を調整する「リエゾン担当者」(仲介者)と「インテグレーション・マネャー」を
配置する。
・ 文脈
①複雑にして可変的な組織。
②2つの基本パターンがある。ひとつは、契約にもとづくプレおジェ区とを遂行するため
の「業務的アドホクラシー」であり、もうひとつは、独自のプロジェクトを遂行するための
「管理的アドホクラシー」である。
・ 戦略
①主に草の根的な学習によって形成させる。
②概して創発的であり、ボトムアップによって進化する。マネジメントは、指示や命令を
下すというよりも、具体化のための支援活動を行う。
・ 問題点
①曖昧なままの人間関係が温存される。
②効率性がしばしば犠牲になる。
知識経営における暗黙知と形式知-SECIモデル
暗黙知
暗黙知
暗黙知
暗黙知
共同化(S)
(Socialization)
表出化(E)
(Externalization)
内面化(I)
(Internalization)
連結化(C)
(Combination)
形式知
形式知
形式知
形式知
知識創造のコンテンツ
暗黙知
共同化(Socialization):直感
暗
黙
知
・社内外の活動による現実直視
・感情移入・気づき・予知の獲得
・暗黙知の伝授、移転
内面化(Internalization):実践
暗
黙
知
・反省的実践を通した形式知の体化
・目標-成果の持続的追及
形式知
暗黙知
表出化(Externalization):対話
・暗黙知の言語化
・暗黙知から形式知への置換、翻訳
・言語から概念・仮説・原型の創造
形
式
知
連結化(Combination):体系
・概念間の関係形成とモデル化
・形式知の伝達・普及・共有
・形式知の編集・操作化、IT 化
形式知
形
式
知
知識創造のプロセス
• 共同化
「自分たちは何のために存在するのか」という問いから浮かび
上がるリーダーの絶対価値が知識創造を方向づけるビジョ
ンになる。リーダーは、自己の暗黙知を他のメンバーと対話
等を通して共有する。
・ 表出化
共同化に参加するメンバーの増加につれ、暗黙知は言語化さ
れ、形式知の形成へと向かう。
・ 連結化
リーダーは、組織内外に存在している他の形式知とリンクをは
り、その組み合わせにより、一つの知の体系としての新たな
形式知を創造し、コンセプトを具体化する。
・ 内面化
コンセプトの具体化のプロセスで、メンバーそれぞれが新たな
暗黙知を吸収し、やがて組織に埋め込まれる。
フロネシス(実践知)のイメージ
善
暗黙知
形式知
客観
主観
(固体・具体)
知覚体験
対話・実践
直感的・自他非分離
場
文脈共有の動態
場の重層的ネットワーク
野中郁次郎他(2007)『イノベーションの作法』日本経済新聞社
(普遍・抽象)
言語認識
分析的・自他分離
フロネシス(実践知) の醸成
①善悪の明確な判断基準をもつ
②場作りの能力をもつ
③現場で個別事象の背後にある本質や真実を直感する
④直感を対話を通して言語化し、概念化して相手を説得する
⑤概念を「善」に向けてあらゆる手段を講じて実現する
組織のリーダーには、フロネシスを重視を組織文化に埋め込む
普不断の努力が求められる。
フェイストゥフェイスのコミュニケーションの重要性
セブン&アイにおける実践知涵養
~operation field counselor (OFC)~
仕事内容OFCは、店舗経営相談員として、7~8店の加
盟店への経営コンサルティングを行なっています。
お店の立地や客層、天候や気温、地域の行事、催事など
の情報に加え、リアルタイムの商品発注・販売データを確
認し、お客様に満足していただける品揃えのポイントをアド
バイスしています。また、従業員さんの教育など店内体制
の構築のアドバイスを行い売上を改善し、利益を上げるた
めに活動しています。
組織学習のための統合フレームワーク
レベル
個人
プロセス
直感
経験
イメージ
メタファー
解釈
言語
認知地図
会話/対話
統合化
理解の共有化
相互調整
双方向システム
制度化
プラン/ルーチン/規律
診断型
手順と規律
グループ
組織
インプット/結果
Crossan, M., Lane, H., and White, R. “Organizational Learning: Toward Theory.” Working
Paper(London, Ontario: Richard Ivey School of Business, University of Western
Ontario,1997)
組織的知識創造のスタイル-日本と欧米企業
<日本型組織>
・グループ中心
・暗黙知志向
・共同化と内面化
・経験重視
・「集団浅慮」と「過去の成功体験への
過剰適応」の危険性
・多義的に解釈可能な組織の意図
・職能横断的チームによる最小有効多様
性
<欧米型組織>
・個人中心
・形式知志向
・表出化と連結化に強い
・分析重視
・「分析麻痺症候群」に危険性
・一義的で明確な組織意図
・個人間の差異による最小有効多様性
形式知
形式知
暗黙知
暗黙知
出所:野中郁次郎他(1996)『知識創造企業』(東洋経済新報社)
ミンツバーグのマネジャー論
労務管理のパイオニアであるファヨールは、マネジャーの役割を「計画」
、
「組織」
、
「調整」
、
「統制」と定義して以来、これら4つの役割がマネジャー役
割として基本的であると考えられている。
しかしながら、カナダ・マギル大学のミンツバーグ(Henry Mintzberg)は、
マネジャーとは
「組織または組織を構成する小単位の成果に責任を負っている
人物」と定義し、彼らが現実に果たしている役割から、より具体的な役割を指
摘している。
ミンツバーグは、マネジャーの共通点として、以下の4点を挙げている。
①ある組織単位に属する公式の権限が付与されている。
②権限を付与されていることにより、さまざまな対人関係が生まれる。
③さまざま対人関係から、多様な情報にアクセスできる。
④多様な情報を活用して、
組織のために意思決定を行い、
戦略を策定している。
以上の性格を有するマネジャーは、以下の 10 種類の役割を担っている、と
ミンツバーグは主張している。
図 ミンツバーグによる マネジャーの仕事
対内的
情報のレベル
監視者
伝達者
人のレベル
リーダー
行動のレベル
妨害排除者
資源配分者
企業家
交渉者
対外的
スポークスマン
リエゾン
看板
交渉者
図 変革のリーダーシップ
第1幕:変革への目覚め
組織のダイナミクス
個人のダイナミズム
変革の必要性
過去の終わり
・ 変化の必要性の認識
・ 変化への抵抗
・ 応急措置の回避
・ 過去からの解放
・ 過去との決別
・ 夢からの覚醒への対処
第2幕:ビジョンの構築
組織のダイナミクス
個人のダイナミクス
動機付けのポジション
過渡期
・ ビジョンの創出
・ コミットメントの獲得
・ 再生への過程
・ 終わりと新たな始まりへ
の展望
第3幕:組織の再構築
組織のダイナミクス
個人のダイナミクス
社会的組織の構築
新たな始まり
・ 創造的破壊
・ 社会的要素の組み直し
・ 人々の動機付け
・ 心構えの調整
・ 新たなシナリオ
・ 新たなエネルギー
エピローグ:歴史は繰り返す
ソフトバンクのミッション
ブロードバンド時代のライフスタイルカンパニー
多岐にわたる事業領域─しかしいずれもが、デジタル情報
革命による「新たなライフスタイルの創造」を実現するため
の手段という意味ではひとつの領域です。インフラ、ポータ
ル・プラットフォーム、さらにその上のサービス・コンテンツ
が、それぞれの価値を高めながら、シナジーを発揮し、グル
ープ全体の企業価値を高めていきます。
連結化のためのフィッシュボーンチャート(例)