三宅島2000年噴火における防災情報伝達--とくにネット上での

Download Report

Transcript 三宅島2000年噴火における防災情報伝達--とくにネット上での

三宅島2000年噴火における
防災情報伝達の問題点
―特にネット上での情報交換過程の分析―
静岡大学教育学部総合科学教育課程
総合科学専攻
小山研究室 遠藤美穂
研究目的
三宅島2000年噴火は、インターネットの普及により、
島の住民と専門家が直接データを交換したり、議論しあ
う場が自然発生した。
中でも、千葉達朗によるBBS「ある火山学者のひとりご
と」と「早川由紀夫の三宅島ページ」が有名である。
前者については、平塚(2002)による分析もなされてい
るが、ネット上に交わされた情報交換過程全体を見据え
た研究はなされていない。
三宅島2000年噴火における災害情報伝達の全
体像を様々な視点から分析し、火山危機に際した
情報交換過程の問題点や改善方策について考え
ることを目的とする。
三宅島2000年噴火
18日 噴煙高度が14000m、最大
6月26日 火山異常が観測
規模かつ最も激しい噴火
緊急火山情報
21日 噴火予知連拡大伊豆部会
6月27日 西方沖海底で海底噴火
24日 を招集
山頂での小規模な火山
7月8日
29日 噴煙高度が8000m、大規
灰放出、山頂にカルデ
模かつ激しい噴火、火砕流
ラを形成.その後徐々
が発生
に拡大し、最終的に直
31日 噴火予知連拡大伊豆部会
径1.7km、深さ約500m
を招集
に達した
8月10日 噴煙高度が8000m、爆 9月1日 東京都が9月4日までに島
民全員を島外避難させる
発的な噴火、火砕流が
旨を呼びかける
発生
7月22日
撮影
小山(2002)
8月18日
撮影
8月29日
撮影
写真:アジア航測株式会社
ホームページより
研究方法
 BBS「ある火山学者のひとりごと」と「早川由紀
夫の三宅島ページ」の内容を時系列に沿って
分析。
 三宅島現地調査を実施し、被災地の現地状況
の把握。
 三宅島2000年噴火における災害情報伝達の
全体像を様々な視点から分析。
 火山危機に際した情報交換過程の問題点や改
善方策を考察。
BBS「ある火山学者のひとりごと」とは
専門家の見解
(後略)
一般の人(三
宅島の住民)
からの情報
BBS「ある火山学者のひとりごと」より
三宅島ページとは
行政への
意見・批判
(後略)
マスコミへの
批判・一般の人
への呼びかけ
「早川由紀夫の三宅島ページ」より
BBS「ある火山学者のひとりごと」をまとめた表(抜粋)
番号 日付 発言者
1901 7/13
びんた切れの
水晶
1903 7/13 ちば
内容の種類 内容概要
見解
情報
リンク先
震研のEIC地震学ノートをみると、三
宅島の陥没の時の地震波の解析を
すると、体積収縮の答えの方が良く
合うそうだ。空洞ができていたのか
も。
1日からの震央の動きは、キーポイ
ントのような気がする。
EIC地震学ノート No.82
[http://kea.eri.utokyo.ac.jp/EIC/EIC_News/000708.
html]
下司さん作成のベクトル解析図。
画像
[http://www.tk.airnet.ne.jp/tchiba/
miyake/caldera-vector-i.jpg]
登山道の謎が解ければ、ベクトル
の数はもっと増える。
地形分類図だが、今回の火口は割
画像
れ目火口的な印象をもっているの
[http://www.tk.airnet.ne.jp/tchiba/
だがどうか。
miyake/caldera-vector-i.jpg]
陥没前の雄山に会った直線的な断
層崖や、火口とは思えない怪しげな
窪地もいわくありげ。
tenki.jp
また三宅が噴煙をあげたようだ。
[http://tenki.or.jp/usu/data/MIY_C
臨時火山情報がでている。
200007140645.html]
1904
6月26日から9月4日までの全2706件で
7/14 ちば
見解
発言者数が182人
1906
情報・見解・意見・質問・疑問・返答・その他
7/14 おおさと
情報
の7項目
1907 7/14 早川
見解
当分噴火しないと思ったけど、噴火
した。それも不気味な噴火。
可能性は次の二つだと思う。
・直径1.4kmの八丁平火口全体が陥
没している
・深い地下から火道をマグマが上昇
してきている
早川由紀夫の三宅島ページ
[http://www.edu.gunmau.ac.jp/~hayakawa/news/2000/miy
ake/index.html]
雨雲レーダー-ウェザーニュース-
[http://www.wni.co.jp/cww/docs/ra
dar/rknt_b.html]
BBS 「ある火山学者のひとりごと」
350
情報
6月26日
300
8月29日
火山異常
緊急火山情報
250
意見
質問
その他
全島避難の
呼びかけ
7月8日
山頂噴火
カルデラ形成の開始
6月29日
疑問
9月1日
8月18日
避難勧告
解除
50
返答
噴煙高度が8000m
大規模かつ激しい噴火
火砕流が発生
避難勧告
発 200
言
件
数 150
100
見解
噴煙高度14000m
最大規模かつ最も激しい噴火
9月4日
全島
避難
8月10日
噴煙高度8000m
爆発的な噴火
火砕流が発生
0
6月26日 7月3日 7月10日 7月17日 7月24日 7月31日 8月7日 8月14日 8月21日 8月28日 9月4日
日付
情報
見解
返答
意見
質問
疑問
その他
100%
80%
60%
40%
20%
約1%
約27%
噴煙高度8000m
爆発的噴火
噴煙高度8000m
火砕硫発生
噴煙高度14000m 大規模かつ激しい
山頂噴火
最大規模かつ最も
噴火
カルデラ形成
激しい噴火
火砕流発生
0%
6月26日~7月7日
7月8日~8月9日 8月10日~8月17日 8月18日~8月28日 8月29日~9月4日
段階ごとの割合
BBS 「ある火山学者のひとりごと」と「三宅島ページ」
早川
ある火山学者のひとりごと 発言者割合
その他
300
250
発 200
言
150
件
数 100
2706件中706件
50
0
6月26日
7月3日
7月10日 7月17日
7月24日
7月31日
8月7日
8月14日 8月21日
8月28日
9月4日
日付
コ
メ
ン
ト
数
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
火山異常
6月26日
7月3日
山頂噴火
カルデラ形成
7月10日
7月17日
三宅島ページ 日ごとのコメント数
最大規模の
噴火
爆発的な噴火
火砕流が発生
7月24日
7月31日
8月7日
8月14日
大規模な噴火
火砕流が発生
8月21日
8月28日
全島
避難
9月4日
三宅島ページ コメント一覧(8月24日~8月29日まで)
日付
臨時火山
8/24
情報16号
8/25
8/26
島の建設
会社(音丸 NHKは
土建)
ビラとチラ 全島避難を 三宅島の
シ
希望する声 山頂火口
NASAの
8.19画像
順序と内容
伊ヶ谷都道 3条でなく60
三宅村議
に落ちた大 条を使って
会は
岩
ほしい
資料14:神
津島、三宅 三宅村長
島間の岩 「全島避難
CNN.co.jp
脈に原因を をお願いし
押しつける たい」
モデル
三宅島にて
けさ前橋に
村営牧場 マグマ後退
届けられた
の焼け落ち 期にこそ甚
毎日新聞
た牛舎
大な災害
一面
18日の噴
火で伊ヶ谷 NHK8.25.12 さだぞうカメ
電話相談
都道に落ち 00
ラ
た大岩
きのう島に
山頂陥没 ふじたさん 運び込まれ
噴火からの
けさのさだ
火口底での @アジア航 たコンク
きのう1415,
8/27 NHKテレビ
Asahi.com 逃げ方:実
ぞうカメラ
小火口の 測による判 リート製(転 NHK
践編
移動
読結果
用)シェル
ター
8.29.1400説 東京都が
朝日新聞
明会@坪田 考えている 火砕流がく
けさのさだ
8/28
8.28社説の
のための想 と思われる だる方向
ぞうカメラ
筆者へ
定質問集 シナリオ
災害対策 噴火予知
三宅島の 神着沖の
本部を再設 連 渡辺秀
村営牧場を
三宅島測
火砕流から 海面を火砕
気象レー
8/29 置した東京 文部会長
飲み込んだ
候所員との
身を守るヒ 流が前進し
ダー
都へのおね のテレビ発
火砕流(
電話会話
ント
ました.
がい
言
行政…青
マスコミ…緑
気象庁…桃
予知連…橙
行政
10
マスコミ
気象庁
予知連
その他
9
8
コ
メ
ン
ト
数
7
6
5
4
3
2
1
0
6月29日
7月6日
7月13日
7月20日
7月27日
8月3日
8月10日
8月17日
8月24日
8月31日
日付
避難勧告
解除の遅れ
についての
コメントが多
い。
8月20日から、早
川氏が全島避難
の働きかけを始
めたため、行政に
注目したコメント
が増加した。
島外避難者数
自主避難者数も増加している。
「早川由紀夫の三宅島ページ」より
三宅島現地調査
三宅島自然ふれあいセンター
アカコッコ館webページ
2008年9月21日~9月23日
ベースのマップは
火山ガスの防災マップ
三宅島測候所
椎取神社
ひょうたん山
阿古小・中学校溶岩埋没跡
三七山
阿古集落跡
火の山峠
ハンドル
三宅島郷土資料館
富賀神社
牧場公園
新澪池
火山ガスにより金属部分が溶け
てしまった自動車(牧場公園)
2000年噴火災害中に東京都三宅支庁長
新鼻新山
大路池
室に掲示されていたスケジュール
2000年噴火に伴い発生した泥流によ
り埋没した椎取神社
現地調査(ヒアリング調査)
村議会議員1名、学校教員3名、三宅島測候所所長へのヒ
アリング調査を実施した結果、2000年当時は島民のイン
ターネットの普及率が低く、他の手段(島内放送、人伝など)
で情報を遅れて受け取っていた人達がいたこともわかった。
未だに掲示板や三宅島ページの存在を知らない島民もいる
という。
インターネットの普及率とサイトの認知度が低ければ、災
害発生時に一部の人しかネット上の情報を受け取ることが
出来ない。
全国的に見ても、インターネット人口普及率は2000年度が
37.1%であるのに比べ、2007年度では69.0%と上昇してい
る。(出典:総務省 通信利用動向調査)
災害時に活用するためには、サイトの認知度が課題。
まとめ①
1.最大規模の噴火が起きた8月18日以降発言件数が
増加。
2.発言件数が一番多かった8月29日は、危機感が高
まっていた中で発生した噴火であったため、やり取り
が活発になり増加。
3.6月26日から7月7日の176件中、「意見」が約1%で
あったが、8月29日から9月4日の958件中、約27%
と増加。
「意見」が増加する傾向は、7月8日以降見られ、これ
は噴火という目に見える形で火山活動が起こったこ
とに起因する。
まとめ②
4.6月29日から7月7日→避難勧告解除の遅れにつ
いてのコメントが多いため、行政に関するコメント
が多い。
5.8月20日から8月31日→ 8月20日から全島避難の
働きかけをしていたため、行政に注目したコメント
が増加した。
この間、自主避難者も増加している。
6.災害時にインターネット上での情報交換の場を活
用するためには、サイトの認知度が課題。