Transcript 副作用・相互作用
薬 の 副 作 用 ・ 相 互 作 用
間接干渉-検査値に及ぼす影響
藤田保健衛生大学病院薬剤部
矢野裕章
医薬品の作用
作
有 害 作 用
用
副 作 用
副作用の種類(1)
1.主作用の過剰な発現
◆過剰な投与量
◆有効血中濃度の狭いもの
◆血中濃度に非線形性が見られるもの
◆相互作用により濃度に変化を来すもの
副作用の種類(2)
2.主作用と無関係の副作用
薬物の作用が、特定の受容体でなく
他の受容体にも作用する
◆問題は、一過性か否か 主作用に勝るか劣るか
3.薬物の感受性の亢進
アレルギー
フロセミドの副作用
◆利尿作用によるもの
循環血流量減少
電解質・代謝異常
低カリウム血症
低ナトリウム血症
代謝性アルカローシス
高窒素血症
血糖値上昇
◆利尿作用と無関係
聴力障害
大量投与により高濃度
のフロセミドが聴覚系
末梢に一時的に作用
主な副作用
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
肝障害(肝実質性、胆汁うっ帯)
腎障害
消化管障害
造血器障害
内分泌障害
神経・精神障害
末梢神経、筋肉
代謝障害
その他(催奇形性、発癌性など)
医薬品等の重篤度分類基準
◆薬事法では製造業者に、
重篤な副作用や、使用上の注意として記載されて
ない副作用で、軽微でない副作用の報告の義務
◆厚生省通知(平成4年6月)
副作用報告の一層の適正化、迅速化を図るため、
報告を行う症例の範囲についての判断のための
具体的な目安として作成
医薬品等の重篤度分類基準
グレード1:
軽微な副作用と考えられるもの
グレード2:
重篤な副作用ではないが、軽微な副作用でないもの
グレード3:
重篤な副作用と考えられるもの、すなわち、患者の
体質や発現時の状態によっては、死亡又は日常生
活に支障をきたす程度の永続的な機能不全に陥る
恐れのあるもの
医薬品等の重篤度分類基準
◆副作用の重篤度分類基準:
肝臓
腎臓
過敏症状
血液
呼吸器
◆医薬品副作用の重篤度分類:
消化器
循環器
代謝・電解質異常
精神神経系
副作用の重篤度分類基準:肝臓
副作用のグレード
グレード1
グレード2
グレード3
総ビリルビン(mg/dL)
1.6以上~3.0未満
3.0以上~10未満
10以上
GOT,GPT(U)
1.2 X N以上~
2.5 X N未満
50以上~100未満
2.5 X N以上~
12 X N未満
100以上~500未満
12 X N以上
500以上
AL-P
1.25 X N以上~
2.5 X N未満
2.5 X N以上~
5 X N未満
5 X N以上
γ-GTP
1.5 X N以上
-
-
LDH
1.5 X N以上
-
-
PT
-
-
40%以下
γ-GTP
1.5 X N以上
-
-
症状等
N:施設ごとの正常値上限
-
黄疸
肝腫大
右季肋部痛
脂肪肝
出血傾向、意識障害等の
肝不全症状(劇症肝炎)
肝硬変、肝腫瘍
6ヶ月以上遷延する黄疸
副作用の重篤度分類基準:腎臓
副作用のグレード
グレード1
グレード2
グレード3
BUN(mg/dL)
1 X Nを越え25未満
25以上~40未満
40以上
クレアチニン(mg/dL )
1 X Nを越え2未満
2以上~4未満
4以上
蛋白尿
1+
2+~3+
3+を越える
血尿
顕微鏡的
肉眼的
肉眼的、凝血塊
尿量
-
500mL/24hr以下
又は乏尿
多尿(腎性尿崩症)
100mL/24hr以下
又は無尿
血清K値(mEq/L)
-
5.0以上~5.5未満
5.5以上
症状等
N:施設ごとの正常値上限
-
-
ネフローゼ症候群
急性腎不全
慢性腎不全
尿毒症
水腎症
副作用の重篤度分類基準:血液
副作用のグレード
グレード1
グレード2
グレード3
赤血球
350万未満~300万以上
300万未満~250万以上
250万未満
Hb(g/dL )
11未満~9.5以上
9.5未満~8以上
8未満
白血球
4000未満~3000以上
3000未満~2000以上
2000未満
顆粒球
2000未満~1500以上
1500未満~1000以上
1000未満
血小板
100000未満~
75000以上
75000未満~
50000以上
50000未満
出血傾向
軽度出血(皮下出血)
中東度出血(粘膜出血)
重度出血(臓器内出血)
症状等
N:施設ごとの正常値上限
-
-
汎血球減少症
(再生不良性貧血等)
赤芽球ろう
無顆粒球症
医薬品副作用の重篤度分類
代謝・電解質異常
副作用のグレード
グレード1
グレード2
グレード3
血糖値上昇
随時血糖120~200
又は
空腹時120~140
食後160~200
随時血糖201~300
又は
空腹時141~200
食後201~300
随時血糖301以上
症状
-
-
糖尿病性昏睡
血糖値低下
69~60
59~51
50以下
-
めまい、頭痛、空腹感、
イライラ感、著明な発汗
等の低血糖症状
糖尿病性昏睡
症状
医薬品副作用の重篤度分類
代謝・電解質異常
副作用のグレード
グレード1
グレード2
グレード3
代謝性アシドーシス
動脈血pH
7.35未満~7.20以上
7.20未満~7.15以上
7.15未満
症状
-
-
意識障害、血圧低下、
痙攣、呼吸障害
代謝性アルカローシス
動脈血pH
7.46以上~7.50未満
7.50以上~7.60未満
7.60以上
症状
-
-
痙攣、テタニー、
高血圧、不整脈
医薬品副作用の重篤度分類
代謝・電解質異常
副作用のグレード
グレード1
グレード2
グレード3
血中カルシウム上昇
(mg/dL)
10.6以上~12.1未満
12.1以上~15.0未満
15.0以上
意識障害
8.5未満~8.0以上
8.0未満~6.5以上
6.5未満
テタニー、血圧低下、
不整脈、精神症状
5.0以上~5.5未満
5.5以上~6.0未満
6.0以上
不整脈、筋麻痺
3.5未満~3.1以上
3.1未満~2.5以上
2.5未満
脱力、筋麻痺、不整脈
150以上~155未満
155以上~160未満
160以上
中枢神経症状
135未満~125以上
125未満~115以上
115未満
精神障害、痙攣、意識障害
同
低下
(mg/dL)
血中カリウム上昇
(mEq/L)
同
低下
(mEq/L)
血中ナトリウム上昇
(mEq/L)
同
低下
(mEq/L)
医薬品の情報(1)
① 添付文書(公的な情報源)
◆副作用は治験時に、多く集められる
(但し、症例数は少ない、因果関係はあるか?)
◆発売後は、企業、現場の姿勢と努力のみ
◆企業間の足並みがそろわない
さらに、相互作用時の処置が明確でない
医薬品の情報(2)
② 緊急安全性情報(ドクターレター、イエローペーパー)
製薬企業が厚生労働省からの指示により
各医療機関へ配布する
* ジクロフェナクによるインフルエンザ脳症
* チクロピジンによる血栓性血小板減少性紫斑病
* 高カロリー輸液によるアシドーシス
医薬品の情報(3)
③ 改定のお知らせ、Drug Safety Update
◆医薬品安全対策情報
◆年間10回
◆日本製薬団体連合会(厚生労働省監修)
④ 医薬品・医療用具等
安全性情報
◆以前は医薬品副作用情報
◆1~3ヶ月毎に厚生労働省医薬安全局
から発行される
医薬品の添付文書(使用上の注意)
【警告】
致死的、重篤、非可逆的
特に注意を喚起するもの
【禁忌(次に患者には投与しないこと)】
【相互作用】
【副作用】
以前は、「まれに」、「ときに」、副詞なし
0.1%未満、0.1~0.5%、5%以上
リポバス開発時の副作用
リポバスの副作用(添付文書より)
(1) 重大な副作用:横紋筋融解症、ミオパシー
肝炎、黄疸、末梢神経障害、過敏症
(2) その他:
0.1~5%未満
0.1%未満
GOT、GPT,AL-P、
LDH、γ-GTP上昇
総ビリルビン上昇
BUN上昇
浮腫、口渇
CPK上昇
筋肉痛
リポバスの副作用(2)
ー治験時の副作用と使用成績調査の比較ー
臨床成績
(治験)
症例数
1002例
44例(4.39%)
副作用
159例(15.8
7%)(臨床検査値
異常)
使用成績調査
(4年次まで)
8218例
218例(2.65%)
(副作用と判定した臨
床検査値異常値含
む)
承認時の副作用と
市販後の使用成績調査
① 治験時は1000例前後、使用成績調査は数倍
② しかし、副作用報告例は203例対218例で
ほとんど変わらない
症例数が多いにもかかわらず報告例が少ない
→ 義務?無関心?
③ 市販後は検査値と副作用をまとめて報告で、
検査値異常の頻度不明
④ 実態は?
医薬品の開発(治験)
1. 基礎研究
2. 非臨床試験
スクリーニング等
基礎実験、動物実験等
3. 臨床開発(治験)
↓ ↓
第Ⅰ相
小数の健常成人での薬物動態と安全性
第Ⅱ相
前期:小数の患者での薬物動態と安全性
後期:多数の患者での薬物動態と安全性
第Ⅲ相
大多数の患者で有効性と安全性
市販直後調査
① 平成13年10月から発売の新医薬品について
② 発売開始後6ヶ月間すべての症例
③ 迅速な情報把握、必要な安全対策の実施
なぜ:承認前では情報の限界がある
◆ 患者数、併用薬、合併症、年齢等
エースコールの副作用
治験時と安全性定期報告時の副作用の比較
臨床成績(治
験)
症例数
918例
安全性定期報告
(6回)
5175例
82例(8.9%)
548例(10.6%)
104件
658件
副作用
医薬品併用時の作用
作
作
用
有害作用
副 作 用
A薬
用
有害作用
副 作 用
B薬
患者さんは多くの薬を飲んでいる
ソリブジン事件(平成5年)
◆ソリブジンと5-FUの相互作用で白血球減少や、
血小板減少などの重篤な血液障害で、発売後
1ヶ月で死亡例3例を含む、7例の副作用報告
原因:抗ウイルス剤のソリブジン(ユースビル)と、代謝
拮抗剤の5-FUの併用で、ソリブジンの代謝物が5-FU
の代謝酵素であるジヒドロチミンデヒドロゲナーゼを阻害
し、5-FUの血中濃度を上昇させる
◆平成5年10月薬安指示
緊急安全性情報の配布、添付文書の警告新設
ソリブジン事件(平成5年)
症例1 73才 男 大腸癌でフルオロウラシル系薬剤
を使用。 更に、帯状疱疹でソリブジン使用
9日後に発熱、口のただれ
死亡
WBC 2900→400
RBC 3490000
ヘモグロビン 12g
血小板 1000
症例2 66才 男 肺癌でフルオロウラシル系薬剤
を使用。 更に、皮疹でソリブジン使用
9日後に口内炎、肛門周囲の発疹
WBC 1200→300(12日後)
血小板 32000→3000
薬物の相互作用
◆2種類あるいはそれ以上の薬物を同時に使用した
場合、お互いの薬物の影響で作用が変わったり、
有害作用が出現したりする
吸収:吸着、難溶性物質(キレートなど)の形成、
消化管の運動、消化管の液性
分布:蛋白結合率
代謝:代謝の促進・抑制
排泄:尿細管分泌の変化、尿の液性変化
人と薬物の関係
◆ 剤形
投与量
内服薬
注射薬
外用剤
◆ Pharmacokinetics
吸収
分布
代謝
排泄
変動が大きい
◆ Pharmacodynamics
受容体との関係
変動が少ない
薬物の体内動態(ADME)
吸収
( Absorption )
吸収率
分布
消化管の状態
( Distribution )
蛋白結合率
代謝
相互作用
( Metabolism )
肝機能
排泄
相互作用
代謝酵素
相互作用
( Excretion )
腎機能
肝機能
相互作用
薬物の体内動態(ADME)
分布
吸収
吸収率
蛋白結合率
結合型・非結合型
分布
排泄
胆汁
作用
代謝
肝臓
受容体
Pharmacodynamics
腎臓
薬物のパラメーター
◆半減期
薬物の投与間隔
血中濃度が半分になる時間 → 一定
定常状態に達するのに、半減期の4~5倍かかる
◆分布容積
初期投与量
血中濃度で体を満たした場合の体積
薬によって決まっており、〇〇L/kgで表される
◆クリアランス
維持投与量
単位時間あたりに薬が消失する量
代謝、腎排泄、胆汁排泄による
体内動態と相互作用の原因
吸収
7%
薬物動力学的
35%
分布
2%
不明
12%
代謝
37%
排泄
7%
↓
合計
53%
(薬物動態学的)
千葉 寛:ファルマシア31.992.1995
吸収における相互作用
① キレートなどの複合体形成
テトラサイクリンと鉄、アルミニウムがキレート
ノルフロキサシンなどのキノロン系抗菌剤と
鉄、マグネシウム、アルミニウムが複合体
鉄;貧血治療薬
② 消化管内の pH
制酸剤やH2ブロッカーでpH上昇
イオン型か非イオン型か
Mg、AL;制酸剤
吸収における相互作用
③ 胃内容排泄速度の変化
メトクラプラミド、抗コリン剤
④ 腸内細菌叢の変化
ジゴキシンと抗菌剤(エリスロマイシン、クラリス
ロマイシン、テトラサイクリン)
腸内細菌の減少 → ジゴキシンの不活化抑制
→ ジゴキシン吸収量増加 → 血中濃度増加
→ ジゴキシンの副作用 ← 低K血症で増悪
更に、クラリスロマイシンは腎排泄阻害
分布における相互作用
① 蛋白結合率
酸性薬物
塩基性薬物
結合型
→
高いほど問題となる
アルブミン
アルブミンとα-酸性糖タンパク
: 薬効を発揮しない
非結合型 : 薬効を発揮、代謝・排泄あり
代謝における相互作用
① 代謝の阻害
1つの酵素を2種以上の薬物が共有し、
代謝を阻害する
② 代謝の誘導
反復投与で酵素誘導を起こし、代謝亢進
その結果代謝を受け、作用減弱
また、代謝物に活性がある場合は、代謝物が
増えその作用の増強
肝細胞中のCYPの割合
CYP3A
30%
CYP2A6
4%
CYP2C
20%
CYP2D6
2%
CYP1A2
13%
CYP2B6
1%
CYP2E1
7%
その他
23%
◆CYP3A4、CYP2D6、
CYP2C19、CYP2C9、
CYP1A2の頻度で関与
Shimada:J Pharmacol Exp Ther 70.414.1994
排泄における相互作用
① 胆汁排泄
② 腎排泄
P糖蛋白輸送系
陽イオン輸送系:塩基性薬剤を分泌
陰イオン輸送系:酸性薬剤を分泌
(P ; permeable 透過性の)
検査値に影響を及ぼす因子
① 検査の反応系に影響
② 薬そのもの自体が検査に影響
③ 薬自体の薬理作用で検査値が影響される
④ 薬が作用し、それによって生体の代謝、生理機能
が変わり、その結果検査値に影響
⑤ 薬物の効き方が変化した場合(過量投与、相互
作用、ADME異常)上記の全てに影響
ロキソニンの副作用(1)
【禁忌】 【慎重投与】
消化性潰瘍、血小板機能障害、肝障害、腎障害
心機能不全、過敏症、アスピリン喘息のある患者
【副作用】 総症例13,486例中409例(3.03%)
ショック
皮膚粘膜眼症候群
喘息発作
消化管出血
間質性肺炎
◆ 溶血性貧血:血液検査をする
◆ 急性腎不全、ネフローゼ症候群、間質性腎炎
◆ 肝機能障害、黄疸:GOT,GPTの上昇、
劇症肝炎
ロキソニン添付文書
ロキソニンの相互作用(1)
【相互作用】
◆リチウム製剤 → 血中濃度上昇
腎におけるPG生合成抑制作用でリチウムの
腎排泄が減少
リーマス
◆チアジド系利尿薬 → 利尿・降圧作用減弱
腎におけるPG生合成抑制作用で、水・Naの
排泄減少
ロキソニン添付文書
ロキソニンの相互作用(2)
◆クマリン系抗凝固剤 → 抗凝固作用の増強
PG生合成抑制作用により血小板凝集が抑制
ワーファリン
◆SU系血糖降下剤 → 血糖降下作用増強
ロキソニンの蛋白結合率は97%で競合
ダオニール、オイグルコン、グリミクロン
◆ニューキノロン剤 → 痙攣誘発
ニューキノロンがGABAの受容体への結合を
阻害し、ロキソニンがその阻害を増強
クラビット、シプロキサン
ロキソニン添付文書
横紋筋融解症
病態:何らかの原因で横紋筋が壊死・融解し、
筋細胞成分が血中に流出
◆筋細胞成分のミオグロビンや
筋細胞内酵素のクレアチニンホスホキナーゼ
(CPK)、GOT、GPT、LDHが血液中に流出
カリウム、リンなどの電解質も放出
横紋筋融解症の原因
◆細胞膜抵抗の上昇と膜の不安定化
◆コレステロール含量の低下により、細胞内ユビ
キノンの減少が起こり、ミトコンドリアの機能異常
が起こり筋障害が起こる
横紋筋融解症原因薬物
HMG-CoA還元酵素阻害剤
メバロチン、 リポバス、 ローコール
フィブラート系高脂血症用剤
べザトールSR
ニューキノロン系抗生物質
テオフィリン類
トランキライザー
ブチロフェノン系向精神薬
クロフィブラート系高脂血症薬
① 中性脂肪、コレステロールの低下
② 脂肪組織からの遊離脂肪酸の遊離抑制
③ 肝臓での脂肪酸の合成抑制
④ 胆汁中へのコレステロールの排泄促進
⑤ クレアチニンホスホキナーゼ、血清クレアチニン
尿中のミオグロビン
⑥ 他剤との併用や、腎障害時に注意
HMG-CoA還元酵素阻害薬
① コレステロールの生合成を低下
② LDLの肝臓へのとりこみ増加
③ 副作用は筋炎と睡眠障害
④ メバロン酸から合成されるユビキノンの合成阻害
高血圧用薬-チアジド系利尿薬
① 遠位尿細管のNa+、Cl-の再吸収抑制
② 低K血症、高Ca血症
③ 耐糖能異常、脂質代謝異常
④ ACE阻害剤やβ遮断薬やK保持性利尿薬併用
フルイトラン(トリクロロメチアジド)
高血圧用薬-K保持性利尿薬
① 遠位尿細管のアルドステロン依存性のNa-K
交換部位に作用
② Na+と水を排泄し、K+ 排泄抑制
アルダクトンA(スピロノラクトン)、ソルダクトン(カンレ
ノ酸カリウム)
高血圧用薬-β遮断薬
① カテコールアミンの受容体への結合阻害
② 心拍数減少、心収縮力減少
③ グリコーゲンの分解阻害
血糖低下
テノーミン(アテノロール)、メインテート(フマル酸ビソ
プロロール)
降圧剤-ACE阻害薬
① レニンーアンジオテンシン系が電解質、心血管系
の調節
② アンジオテンシン変換酵素の中心に存在するZnと
複合体を形成
③ アンジオテンシンⅡの生成抑制し、血管収縮と、
アルドステロンの分泌抑制でNa排泄
④ ACEの測定に影響、EDTAとZnの結合
エナラプリル(レニベース)、カプトプリル(カプトリル)
降圧剤-Ca拮抗剤
ジヒドロピリジン系
① 平滑筋のCaイオンの流入を阻止し、緊張抑制
② ジゴキシン、カルバマゼピン、リチウムの血中
濃度上昇
③ グレープフルーツジュースでフェロジピンの血中
濃度上昇
ニフェジピン(アダラート)、ニルバジピン(ニバジール)
糖尿病治療薬
① 食事療法、運動療法
② スルホンアミド系
グリベンクラミド;オイグルコン、ダオニール
グリクラジド;グリミクロン
③ インスリン製剤
④ 食後過血糖改善薬
アカルボース;グルコバイ
ボグリボース;ベイスン
⑤ DM性末梢神経障害治療薬
エパルレスタット;キネダック(神経内ソルビトール)
糖尿病用薬-スルフォニル尿素
① 膵臓β細胞を刺激し、インスリン分泌促進
② 肝臓での糖新生・糖放出の抑制
③ 低血糖、溶血性貧血
グリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール)
糖尿病用薬-食後過血糖改善薬
αグルコシダーゼ阻害薬
① 腸管内でαグルコシダーゼまたはアミラーゼを阻害
② 糖質の吸収遅延
③ 食後の急激な血糖上昇を抑制
④ 低血糖、重篤な肝機能障害
アカルボース(グルコバイ)、ボグリボース(ベイスン)
ボグリボースの副作用、相互作用
【副作用(重大な副作用) 】
1)低血糖
他の糖尿病薬との併用で(0.1%~5%未満)
併用しない場合(0.1%未満)
2)重篤な肝機能障害
黄疸、GOT,GPTの上昇等を伴う重篤な
肝機能障害( 0.1%未満)
その他の副作用
血清アミラーゼ上昇、DHLコレステロール低下
高K血症
ベイスン能書
ボグリボースの副作用、相互作用
【相互作用(併用注意) 】
SU剤、インスリン製剤等の血糖降下剤で、低血糖
の報告があるので、低血糖発現の可能性を考慮
糖尿病薬及びその血糖降下作用を増強させる薬剤
β-遮断薬、サリチル酸製剤、MAO阻害剤、
フィブラート系高脂血症薬、ワーファリン
糖尿病薬及びその血糖降下作用を増強させる薬剤
副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン
エピネフィリン等
ベイスン能書
ボグリボースの副作用、相互作用
低血糖の症例(他の糖尿病剤併用なし、肝障害なし)
1) 男 48才 NIDDM
併用;エパルレスタット、プラバスタチン
10日後に冷汗、めまい、頭痛
血糖値 49mg/dl
2) 男 69才 NIDDM
併用;なし
2日後に脱力感、フワーとする感じ
血糖値 38mg/dl
ベイスン能書
糖尿病用薬-αグルコシダーゼ阻害薬
(グルコバイ)
アカルボース
(ベイスン)
肝機能障害
報告例数
203例
5年9ヶ月
GOTかGPT上昇
(500IU/L以上)
GOTかGPT上昇
(1000IU/L以上)
服用期間
ボグリボース
80例
5年2ヶ月
103例
33例
46例
14例
0~6ヶ月
0~3ヶ月
ボグリボースの副作用、相互作用
肝機能障害の症例; 男 52才 糖尿病 ボグリボースと
グリベンクラミド投与(ボグリボース10.18から)
7.26
9.20
11.15
12.13
12.26
GOT
18
22
663
818
197
GPT
16
23
1655
1938
614
AL-P
98
94
259
222
161
LDH
156
144
660
183
直ビリルビン
2.6
1.3
総ビリルビン
3.9
2.3
ボグリボース肝機能障害のメカニズム
◆原因は不明
アレルギー症状ではない
肝細胞毒代謝異常
体内に吸収された薬物あるいは、代謝物が
肝毒性を示す可能性あり
◆1ヶ月~1年が多い
◆薬剤の中止により回復
ビタミンD製剤の作用
1) 骨粗鬆症
2) ビタミンD代謝異常に伴う諸症状の改善
腸管からのCa吸収促進作用
血中Caの上昇
副甲状腺ホルモンの分泌抑制作用、
および骨形成作用
高Ca血症の発症
→
ジギタリス製剤の副作用
Mg製剤の併用で、高Mg血症
ビタミンK製剤の作用
1) 骨粗鬆症における骨量・疼痛の改善
2) 骨中のVK依存性非コラーゲン性蛋白を増加
オステオカルシンを増加させ
骨形成促進
骨吸収抑制作用
◆ 副作用:0.1~5%未満
GOT、GPT、γ-GTP、BUNの上昇
メーカー資料
ビタミンK製剤の作用
◆相互作用;ワーファリンの作用減弱
肝臓でのVK依存性血液凝固因子の阻害で、
抗凝血、抗血栓作用を示す
◆併用禁忌:ワーファリン
プロトロンビン時間、トロンボテスト
メーカー資料
ワーファリンの副作用
【禁忌】
出血している、出血する可能性のある患者
重篤な肝障害・腎障害のある患者
【慎重投与】
肝炎、下痢、脂肪の吸収不全、VK摂取時など
【副作用】
出血、皮膚壊死、肝機能障害、黄疸
その他過敏症、GOT、GPTの上昇、消化器症状
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ワーファリンの相互作用
予備知識
作用機序:肝細胞のミクロゾームで
VK依存性凝固因子Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹの合成阻害
吸収:良好 約100%
分布:アルブミンと97%結合するが、結合力が弱い
97%が結合型、3%が遊離型
代謝:CYP2C9が主で、CYP1A2、CYP3A4も関与
排泄:尿中に1/3、その他胆汁中へ排泄
半減期:41~45時間
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ワーファリンの相互作用(2)
◆吸収:約100%
下剤で吸収低下
◆分布:アルブミンと97%結合
NSAIDS、ニューキノロン剤、アダラート
が蛋白と結合しワーファリンを追い出す
◆代謝:CYPで代謝
バルビツレート、リファンピシンがCYP誘導
タガメット、マクロライドがCYP阻害
メーカー資料
ワーファリンの相互作用(3)
◆排泄:尿中に1/3、その他胆汁中へ排泄
サイアザイド系、スピロノラクトンで凝固因子の濃縮
①納豆菌は、VKを産生
②緑黄野菜、クロレラ食品などはVKが多い
③SU剤(オイグルコン、ダオニール、グリミクロン)
蛋白と結合しワーファリンを遊離
肝臓でのワーファリンの代謝促進
ワーファリンがSU剤の代謝阻害
血清尿酸値を上昇させる薬剤
1) 産生増加
抗悪性腫瘍剤
2) 排泄減少
サイアザイド系利尿剤、ループ系利尿剤
ピラジナミド、サリチル酸、エサンブトール、レボドパ
3) ?
テオフィリン
血清尿酸値を低下させる薬剤
1) 産生減少
アロプリノール
2) 排泄増加
プロベネシド、ベンズブロマン(再吸収抑制)
サリチル酸の大量(タンパク結合)
ウラリットU (クエン酸K、クエン酸Na)
3) ?
シクロスポリン
薬と嗜好品、食品との関係
① グレープフルーツジュース
② セントジョーンズワート
③ INAHはMAO、DAOを阻害
ヒスチジンを多く含む魚でヒスタミン中毒
チラミンを含む食品で血圧上昇
④ 納豆
⑤ 意外にも・・
糖尿病の漢方薬、ジギタリス
薬とグレープフルーツジュース
① Ca拮抗剤
ニフェジピン、バイロテンシン、カルスロット
② シクロスポリン
P糖タンパク輸送系を活性化(消化管)
CYP3Aを阻害し代謝阻害(肝臓)
薬とセント・ジョーンズ・ワート
① セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)
健康食品として、米国や欧州で広く流通
② シクロスポリン、ジゴキシン、抗HIV薬などの
効果を減弱
③ 薬物代謝酵素のCYP3A4とCYP1A2を誘導し、
併用薬品の代謝を促進
P糖蛋白輸送系も関与
④ 他にワルファリン、経口避妊薬、抗てんかん薬、
テオフィリン
医薬品・医療用具等安全性情報No160
漢方薬による検査値への影響(1)
【副作用】
① 間質性肺炎
発熱、咳、呼吸困難、肺音の異常
② 偽アルドステロン症
低K血症、血圧上昇、Na・体液の貯留
浮腫、体重増加
③ ミオパシー
低K症の結果、脱力感、四肢痙攣・麻痺
CPK上昇、血中及び尿中ミオグロビン
の上昇
アルドステロン
① 副腎皮質球状帯から分泌される鉱質コルチコイド
② 強力なNa貯留、K排泄で浮腫や高血圧
③ 抗アルドステロン薬 → スピロノラクトン
④ カプトプリル、甘草、グリチルリチン
漢方薬による検査値への影響(2)
【副作用】
① 間質性肺炎
大柴胡湯、小柴胡湯、柴朴湯、柴苓湯 外6剤
② 偽アルドステロン症
K値の低下
葛根湯、小柴胡湯、小青竜湯、麦門冬湯
補中益気湯、桂枝加芍薬湯 外89剤
③ ミオパシー
葛根湯、小青竜湯、麦門冬湯、補中益気湯外 89剤
漢方薬による検査値への影響(3)
【相互作用】
① 甘草、グリチルリチン
② ループ系利尿薬、サイアザイド系
③ キサンチン製剤、エフェドリン、MAO阻害薬、
マオウ、カテコールアミン、甲状腺製剤
副作用例(葛根湯)
偽アルドステロン症例; 74才の女性、感冒で葛根湯を
服用し始め、医師にすすめられ6ヶ月間服用
歩行時の下肢筋肉痛、高血圧、全身倦怠感出現
検査の結果、低K血症、高血圧症と診断
併用薬無し
後日、芍薬甘草湯で負荷試験
(甘草は葛根湯の3倍)
葛根湯中止
1ヶ月後
芍薬甘草湯
3週間後中止
中止後1ヶ月
血清K値
2.4
3.8
4.8
2.8
回復
血圧
180/90
142/80
不明
170/110
不明
アルドステロン値
18
50
不明
低下
92
腎と透析 Vol.34 No.5 1993
副作用例(甘草)
低K血性横紋筋融解症; 78才の男性
88.5 :グリチルリチン280mgを含んだ製剤服用開始
88.7 :血圧上昇 150~160/85~100
89.6 :発熱、食欲低下、血圧180/100、血清K1.8
退院後再投薬
90.5 :下肢、上肢筋力低下、顔面浮腫、心不全
血圧200/110、血清K1.8
90.6 :貧血、白血球増加、血小板減少、血清K1.8
血清Ca5.8、GOT5660、GPT2700、
LDH13530、CPK8310
臨床体液 Vol.22 No.1 1995
重大な副作用(小柴胡湯)
肝機能障害の症例; 50代の女性、C型慢性肝炎
小柴胡湯を81日間服用し、食欲不振、全身倦怠感
その8日後服用中止
併用薬はなし
臨床検査値
投与31日前
発現9日後
22日後
49日後
白血球
6600
6300
9500
5900
好酸球(%)
1.8
2.1
2.0
2.2
GOT
41
907
157
50
GPT
57
1095
181
75
Al-P
277
544
328
271
γGTP
39
261
84
41
LDH
206
371
197
206
T-Bil
0.75
17.92
9.8
1.34
ツムラ資料
重大な副作用(補中益気湯)
肝機能障害の症例; 40代の男性、昜疲労感、食欲不振
で補中益気湯を14日間服用したが、眼球の黄染、
嘔気で服用中止
併用薬は、クロナゼパム、スルピリド、トリアゾラム等
臨床検査値
投与前
発現日
12日後
26日後
48日後
白血球
-
8200
8100
9500
6400
好酸球(%)
-
2
1
2
6
GOT
35
152
93
49
27
GPT
25
89
36
36
19
Al-P
186
437
426
439
318
γGTP
144
299
321
828
216
LDH
326
503
397
302
285
T-Bil
0.7
9.9
9.4
3.0
1.3
ツムラ資料