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2004年3月12日 日本学術振興会 人文社会科学振興プロジェクト
「青の革命と水のガバナンスプロジェクト」 第2回研究会
環境政策過程における認識のズレ
ー兵庫県武庫川の河川政策を事例としてー
京都大学大学院地球環境学舎修士課程
地球環境政策論分野
大野智彦
発表の全体像
1.何がズレているか?
(研究背景)
2.どのようにズレているか?
(環境アセスメントにおいて重視されたもの、
されなかったもの)
3.なぜ、ズレが生じたか?
(認識のズレの形成過程)
4.ズレた認識の下での河川政策
(今後の研究展望・ガバナンスとのつながり)
武庫川の位置
全長約65キロ、二級河川
上流部: 篠山市
平坦な農村地域
三田市
急速な都市化
中流部: 宝塚市
武田尾渓谷
下流部: 西宮市・尼崎市
高度に都市化
兵庫県ホームページ
(http://web.pref.hyogo.jp/hanshinkita/kendosei
bi/takarazuka/mukogawa/f_ryuuiki03.html)より
最近の武庫川(河川政策)
1983年頃から
2000年9月
武
総
庫
合
川
治
ダ
水
ム武庫川を巡る対立
の
計
検
画 ダム問題 討
開
始
2003年3月
議武
庫
川
委
員
会
準
備
会
武
庫
川
委
員
会
武庫川ダム計画
• 治水・レクリエーショ
ンを目的
• 中流部の武田尾渓
谷に計画
武庫川ダムについての言い分
行政
住民
これ以上の開
発は要らんね、
水も余っとる
やろ。
治水の為にはダム
が必要です、環境に
も配慮します。
市民団体
ダムが無くても
治水は可能。ダ
ムによって環境
が破壊される。
最近の武庫川(河川政策)
1983年頃から
2000年9月
武
庫
川
ダ
ム
計
画
総
合
治
武庫川ダム
水
の
一時中止
検
討
開
始
2003年3月
議武
庫
川
委
員
会
準
備
会
武
庫
川
委
員
会
ダムの一時中止
• 一時中断 3つの理由
– アセス概要書への反対意見多数
– 改正河川法(環境保全・住民参加)
– 都市型洪水の頻発
• 武庫川委員会の設立
– 河川整備基本方針をこの場で議論
– 住民・専門家が主なメンバー
発表の全体像
1.何がズレているか?
(研究背景)
2.どのようにズレているか?
(環境アセスメントにおいて重視されたもの、
されなかったもの)
3.なぜ、ズレが生じたか?
(認識のズレの形成過程)
4.ズレた認識の下での河川政策
(今後の研究展望・ガバナンスとのつながり)
武庫川ダム 環境アセスメント
• 兵庫県条例によるアセス
• アセス(評価)をするには、基準が必要
– 2000年「環境影響評価概要書」
• 行政の環境認識、基準が現れている
– 市民団体を中心に207通の反対意見
• 市民団体の環境認識、基準が現れている
行政の認識(環境アセス)
• 大気汚染・文化財・廃棄物
– 影響が予測されるが、調査を行わない
その理由
「既存資料の収集・整理により大気質の把握を行う」
「事業予定地内に指定文化財が存在しない」
「埋蔵文化財が存在しない」
既存の自然科学の知見・手法
フォーマルな情報
定式化された手法
これらを重視
市民団体の認識(環境アセス)
• 「環境影響評価に対する意見書」
– 実地調査に基づかないデータを使用していること
に異議
– 「必死になって、あらゆる人に(意見書提出を)呼
びかけた」(市民団体代表者)
地域に基づいた情報
環境破壊に対する危機感
これらを重視
発表の全体像
1.何がズレているか?
(研究背景)
2.どのようにズレているか?
(環境アセスメントにおいて重視されたもの、
されなかったもの)
3.なぜ、ズレが生じたか?
(認識のズレの形成過程)
4.ズレた認識の下での河川政策
(今後の研究展望・ガバナンスとのつながり)
認識のズレの形成過程
河
川
と
の
関
わ
り
の
変
化
相互作用
相互作用
相互作用
認識のズレ
管
理
者
と
利
用
者
の
分
離
関わりの変化(写真)
現在
明治時代
http://hitohaku.jp/news/docs/hm14-1.html より
関わりの変化
聞き取り調査から
• 昔は、うなぎやしじみが取れた。それを食べ
たりもした。【女性、西宮市】
水利用の変化(急速な水道普及)
100.00%
90.00%
80.00%
70.00%
60.00%
50.00%
40.00%
西宮市 普及率
宝塚市 普及率
30.00%
20.00%
10.00%
0.00%
昭和27年
昭和37年
昭和47年
昭和57年
図1 水道普及率(宝塚市・西宮市)
認識のズレの形成過程
河
川
と
の
関
わ
り
の
変
化
相互作用
相互作用
相互作用
認識のズレ
管
理
者
と
利
用
者
の
分
離
管理と利用の分離(市史・町史から)
河
川
管
理
主
体
の
変
化
明治期
旧村・区が管理
大正期
県による管理始まる
昭和期
市町村の管理無し
平成期
関係住民・市町村長が意見を言える
管理と利用の分離(河川法)
法改正年
対象となる河川
主な管理者
明治29年
公共の利害に重大な関
係のある河川(淀川・筑
後川の指定区間)
地方行政
昭和39年
「一級河川」(15水系)
「二級河川」
国
県
平成9年
「一級河川」(109水系)
国
「二級河川」(7,057河川) 県
(学識者・関係住民)
認識のズレを生んだ要因
• 人と河川とのかかわりの変化(生活レベル)
– 直接的な河川の利用から、間接的な利用へ
• 管理者と利用者の分離(法・政策レベル)
– 分権的な河川管理から、集権的な河川管理へ
認識のズレの形成過程
河
川
と
の
関
わ
り
の
変
化
相互作用
相互作用
相互作用
認識のズレ
管
理
者
と
利
用
者
の
分
離
役割のズレ・認識のズレ
住民
利用者
行政
管理者
市民団体
行政の認識
• 管理を重視
– 川は管理の対象
– 限られた人数で治水を担う
一ヶ所で大量の水を管理できるダムは、
効率的な管理方法
住民の認識
• 利用者
– 治水、利水、レクリエーションなど様々に河川を
利用する
– しかし、これらのサービスは、行政(管理者)に
よって供給される為、直接的関わりは少ない
よくわからないが、なんとなくダムには反対
(下流での聞き取りより)
市民団体の認識
• 市民
– 環境破壊に対する危機感
– 河川への強い愛着
環境に大きな影響を与えるダムに
は頼らない治水を目指す
武庫川についての認識
行政
住民
利用
管理
市民団体
危機感
愛着
小括:認識のズレと、その形成過程
• 行政・市民団体・住民の間では、武庫川
に対する基本認識がズレており、それが
環境アセスに対する意見の違いや、ダ
ム建設に対する賛否の違いとなって現
れている。
• 基本認識のズレは、アプリオリなもので
なく、明治以降の日本の社会状況の変
化によって、形成されてきたものである。
発表の全体像
1.何がズレているか?
(研究背景)
2.どのようにズレているか?
(環境アセスメントにおいて重視されたもの、
されなかったもの)
3.なぜ、ズレが生じたか?
(認識のズレの形成過程)
4.ズレた認識の下での河川政策
(今後の研究展望・ガバナンスとのつながり)
どんな制度が必要か?
• 河川法の改正 = 理念の転換
– 現場での混乱 どうやって、理念を実現させる?
– 各地での試行
(淀川流域委員会、武庫川委員会など)
理念を実現するような、制度構築が必要
いくつかの理論的 ヒント
1.ガバナンスという概念
2.コモンズ論(オストロームの制度研究)
ガバナンスの辞書的定義
• 語源: gubernantia(ラテン語)=帆船などの
steering(舵取り)を意味する言葉(堀 2001)
『政治学辞典』 弘文堂
民主主義の進展・進化とともに支配と
同義にとれる統治という言葉が回避さ
れ、ガバナンスという英語でしかない言
葉がよく使われるようになった。ガバナ
ンスは統治とか政府に比して広く、抽
象的な意味で使われる。なぜ英語でし
かないかは、おそらく米国と英国では
国家や政府と並んで市民社会の力が
はじめから相対的に強く、近年では地
球市場の力とより強く調和する市民社
会を強調しているからであろう。
『現代経済学辞典』 有斐閣
公権力の行使のあり方のこと。1980
年代以降の途上国における政府の役
割に関する議論の中で、効率的かつ公
正な開発を進めるためには、説明責任、
透明性、予測可能性、公開性、民主主
義、法の支配などを要件とする「良いガ
バナンス」が確立されるべきであるとの
主張がなされた。
ガバナンス概念の共通項
コーポレート
ガバナンス
グローバル
ガバナンス
パブリック
ガバナンス
議論の盛んに
なった時期
対象
1990年代中頃
企業組織とその内外での利
害関係者の関係
機関投資家の台頭
各国間での企業競争力の格差
経営不祥事問題
1990年代中頃
国際社会における国家や
NGOなどのアクター間の
関係と、その相互関係に
よって創出された秩序
東西冷戦の終結と、アメリカの覇権
の弱体化
1990年代中頃
国内での政府とNGOある
いは企業などのアクター間
の関係
公共政策における政府の役割の縮小
と、その他のアクターの台頭
背景
 議論の盛んになった時期=1990年代中頃
 対象=ある組織・制度と、それによって支えられているアクター間の関係性
 背景=ある組織・制度を管理してきた主体の政治的権力が失われ、それに
関わるアクターの関係性に変化がおきている
規範的な側面と、分析・記述的な側面の存在
流域ガバナンスの定義
• 分析・記述的
– 流域社会の政策形成における関係性の分析・記述
• 規範的
– 流域社会の政策形成における関係性のあるべき姿
の提示
現場では「あるべき姿の提示」(規範的ガバ
ナンス)が求められているが、一足飛びに規
範的な議論を始めるのではなく、まず分析・記
述をすることが必要ではないか?
今後の研究計画
• 研究手法
– 聞き取り調査(行政担当者、流域委員会参加者等)
– 資料調査(行政資料、流域委員会議事録等)
– 先行研究調査(ガバナンス論、行政学、政治学、環境社会学)
• 研究スケジュール
2004年3月
インターン研修
レ
ポ
ー
ト
作
成
2004年9月
各
地
の
流
域
委
調
査
(
琵基
琶礎
湖的
集資
水料
域収
)集
レポートのブラッシュアップ
対
(
琵象
琶を
湖絞
集っ
水た
域調
)査
2005年1月
聞き取り調査
資料収集
先行研究調査
論文執筆
修
士
論
文
提
出
おわり
ご意見・ご質問は
[email protected]まで