情報の伝達と評価 - 青山学院大学附置情報科学研究センター

Download Report

Transcript 情報の伝達と評価 - 青山学院大学附置情報科学研究センター

第13回 情報デザイン(5)
情報の伝達と評価
寺尾 敦
青山学院大学社会情報学部
[email protected]
1-1 伝える目的
• 他者と信頼関係(ラポール)を築くうえで大切
なことは,相互理解を図ること.
– 相互理解:お互いが理解しあっている状態
• 相互理解を図るためには,「自己表現」(情報
をわかりやすく伝える)と「他者理解」(相手の
考えや思い,気持ちを聴く)が必要.
– 双方向のコミュニケーション
ビジネス社会における情報のやりとり
• ビジネスでは,1人で物事を進めることはまれ.
メンバー全員の協働によって仕事を行う.
• 情報を正しく伝え,交換,共有することが重要.
• 正確な情報のやり取りを行うためには,情報
をわかりやすく伝えることが重要.
• 共同の仕事をする何人かは,自分たちが共
同でとりあげている問題をお互いに十分わか
りあったつもりでいる.ところがこれはしばし
ば誤った思いこみなのである.すなわち,各
自の頭のなかには,それぞれに問題の構図
を各人各様にぼんやりと描いているのであ
る.(川喜多二郎『発想法』p.31)
「伝えるべきこと」「伝えたいこと」
• 情報伝達において考慮すること
– 伝える相手=誰に伝えるのか
– 伝える目的=何のために伝えるのか
– 伝える内容=何を伝えるのか
• 相手が求めている「伝えるべきこと」と,自分
が伝える必要があると感じている「伝えたいこ
と」を伝える.
新しい価値の創造
• 情報の活用とは,情報に振り回されるのでは
なく,情報の使い手となって,情報をデザイン
すること.
• 情報に付加価値をつけていくことで,新しい
価値が生まれる.
• 情報を相手に伝えるためには,コミュニケー
ション力とプレゼンテーション力(提案力)が
必要.
1-2 コミュニケーションの重要性
• コミュニケーション:「社会生活を営む人間の
間に行われる知覚・感情・思考の伝達.言
語・文字・その他,視覚・聴覚に訴える各種の
ものを媒介とする」(『広辞苑』)
• 相互理解のためには,情報の発信者と受信
者の間に,双方向のやり取りがあることが重
要.
• 人の第一印象を決めるのは,言語コミュニ
ケーションよりも非言語コミュニケーションの
割合が大きい(メラビアンの法則).
– 言語コミュニケーション:声の高さ,大きさ,話の
スピード,会話中のイントネーションと抑揚,会話
中の強弱,言葉づかい,会話の内容など.
– 非言語コミュニケーション:服装と身だしなみ,表
情,視線,動作,態度,距離(パーソナルスペー
ス),道具など
• 情報通信機器の普及により,言語のみに依
存したコミュニケーションの機会が増えている.
– 非言語のコミュニケーションを利用できない,難し
いコミュニケーション
– 対面でのコミュニケーションはあらためて重要に
なった.
コミュニケーションの役割
• 双方向のコミュニケーションにより,相互理解
を行い,信頼関係(ラポール)を築くことができ
る.
• コミュニケーションの役割
– 情報交換と情報共有
– 相互理解
– ラポールの構築
• コミュニケーション能力とは一体何か.私の考
えでは,それは,自分の特性を活かして,他
者と心地よい関係をつくれる力のことだ.その
意味では,別にみんなが盛り上げ上手で誰と
でも仲良くなれる必要があるわけではないし,
それを望んでいるわけでもないだろう.(苫野
一徳,日本教育新聞2012年11月19日「教育
ウォッチ」)
1-3 聴く力
• 傾聴:相手に意識を向け,耳,目,心を集中さ
せて,「しっかりと聴く」こと.
• 傾聴(聴く)のスキル:「話を聴いている」と伝
えるためには?
– 相手が「承認された」と感じられることが必要.あ
いづちを打つ,最後までしっかり聴く,など.
– 繰り返し,ペーシング,ミラーリングなどの手法も
ある.← カウンセリングの技法
– 共感的理解.カウンセリングの技法.「同意・同
情」ではない.
質問(積極的傾聴)のスキル
• 質問(積極的傾聴)の手法
– 相手にとっての真実を引き出す.相手の考えを整
理したり,引き出したりするための質問をする.
– オープンクエスチョン:答えがはっきりと決まって
いない,発散系の質問.例:「仕事は何が(どのよ
うに)楽しいですか」
– クローズドクエスチョン:YES か NO など,答えの
決まっている収束系の質問.確認のために用い
る.
• 相手を責める質問(詰問)にならないように.
• 質疑応答で見られる,よくない質疑応答.
– あいまいなオープンクエスチョン.例:「そのあたり
のところどのようにお考えですか」
– クローズドクエスチョンに対して,Yes / No をはっ
きり答えない.
フィードバックのスキル
• フィードバック:相手の言語動作のすべてから,
自分が感じたことを素直に伝え返すこと.
– 肯定的なものも否定的なものもある
– I (We) メッセージ:自分が主語.
– You メッセージ:相手が主語.(相手はこれこれだ
という,自分の理解・感情)
– フィードバックには,You メッセージよりも I メッ
セージが適切という考えもある.
1-4 伝える力
• 会話の3要素
– 内容(コンテンツ)
– 組み立て(ロジック)
– 話し方(デリバリー)
• 組み立て
– 起承転結.小説以外ではおすすめできない.
– S-D-S (Summary-Details-Summary)
– 序論-本論-結論
序論-本論-結論
• 序論
– テーマと目的は何か
– どんな問題意識から出発したのか
– 結論を簡単に述べてもよい
• 本論
– 結論にいたる具体的な根拠や資料
• 結論
– スライドでは「結論」というスライドを1枚用意する.
S-D-S 法
• Summary – Details – Summary という構成で,
言いたいことを3回繰り返す.
• Tell ’em what you’re going to tell ’em, tell ’em,
then tell ’em what you told’ em. (Hinds, 1987)
(聴衆に,まずいまから何を言うかを伝え,次
に実際に伝え,最後に何を言ったかを伝え
よ.)
– 参考:富山真知子・富山健『理工系英語論文と口頭発表の実際』(コ
ロナ社)
クッション言葉の使用
• クッション言葉:会話の印象を柔らかくする表
現.
– 例:「おさしつかえなければ」「恐れ入りますが」
– クッション言葉を用いることで,好印象を与えるこ
とができる.
– ただし,プレゼンテーションの場によっては,使用
が不自然なこともある.(学会での質疑応答など)
• 否定形より肯定形.命令形より相談・依頼形.
1-5 グループコミュニケーション
• 「協働」で業務を遂行するためには,グループ
メンバーとの信頼関係を深めるコミュニケー
ションスキルと,チームワーク(チームで働く
力)が重要.
– 経産省「社会人基礎力」のひとつ
• 「聴く力」「伝える力」をベースに,グループコ
ミュニケーションに必要ないくつかのポイント
がある.
グループコミュニケーションに
求められる視点
• メンバー全員で情報を交換し,情報を共有
– 「報告」「連絡」「相談」(ホウレンソウ)
• グループ内の状況把握・人間関係の見極め
• 役割の分担
– リーダー,フォロアー
• さまざまな意見交換
– メンバー全員が機能するように支援する,ファシ
リテーターの役割が重要.
1-6 プレゼンテーションの基礎知識
• プレゼンテーション:発表者が伝えることを,
聞き手に適切に理解してもらい,その目的を
達成するための技術・技法.
– 相手に何かを「伝えること」が目的.
– 聞き手のためのもの.発表者の一方的な情報発
信や,意見を述べる場ではない.双方向のコミュ
ニケーションが重要.相手にとって価値の高い情
報を提供する.
プレゼンテーションの種類
提案・説得型
情報伝達・共有型
スピーチ・講和型
目的
・提案を受け入れても
らうよう,説得する.
・説明を聞き,納得し
て行動を起こしてもら
う.
・物事の内容,意見
や情報を伝える.
・現状や報告につい
て,情報を共有する.
・状況,立場にあわ
せたスピーチを行う.
・事柄,事実に対する
意見を述べる.
主な場面
新商品の発表と提案, 研究・論文発表,会
講演会での講演,結
企画の提案,選挙の 議での現状報告など. 婚式やパーティでの
演説など.
スピーチなど.
プレゼンテーションに必要なスキル
• コミュニケーションスキル
– 話し方,伝え方.機材の使い方.演出.
• コンセプトスキル
– 目標の明確化.ターゲットの選定.目的にそった
シナリオの作成.資料の構成.
• ヒューマンスキル
– 人柄や印象を形成するもの.
1-7 プレゼンテーションのコンセプトと
企画の立案
• 企画の立案では,コンセプトを設定する.
– コンセプト:物事全体を貫く統一的な視点や考え
方.キーワード.
• コンセプトを明らかにすることで,「これはこう
いう思想の製品です」「他社の製品とはここが
違います」という共通認識を持つことができる.
• デザインコンセプト:コンセプトを目に見える形
に表現したもの.マーク,コンセプトカラーなど.
早稲田祭2007コンセプトカラー http://www.wasedasai.net/2007/about/conceptcolor.html
• 企画進行の5W2H.(参考:旧テキスト p.35)
– Why:何のために行うのか?
– What:何をどこまで行うのか?
– Where:どこで行うのか?
– When:いつ行うのか?
– How:どのように行うのか?
– How much: 予算は?
企画進行の5W2Hだが,
プレゼンテーションの構
成を考えるときにも使
える.
1-8 プレゼンテーションの構成と
シナリオの作成
• 会話の3要素
– 内容(コンテンツ)
– 組み立て(ロジック)
– 話し方(デリバリー)
• 基本的な構成は,序論-本論-結論.
• シナリオ作成での注意点
– 伝える内容を絞る.
– 具体的な話をする.
– 相手が理解できる言葉を使う.
1-9 プレゼンテーションの事前準備
• 聞き手を見て話す.アイコンタクトをとる.
• 身振りや手振りといったボディーランゲージは
コミュニケーションにおいて一定の役割を果
たすが,無駄な動きをしないように注意する.
• 序論部分(オープニング)で,プレゼンテー
ションに対する興味・関心を持ってもらう工夫
をするとよい.
1-10 プレゼンテーションの
リハーサル
• 発表会場の確認
– 機材
– 机やいすのレイアウト
• できるだけ本番に近い状況で,本番のつもり
で練習を繰り返す.
• 練習を通して,あるいは,何回もの本番を通
して,PDCAサイクルを機能させる.
– Plan, Do, Check, Act
発表の成功・失敗を決める要因
• 内容,組み立て
– シナリオ(序論,本論,結論),資料の構成(文
字,イラスト,アニメーション),聞き手にあわせた
内容.
• 人物,話し方
– あいさつ,目線,態度,身だしなみ
– 発声,スピード,メリハリ(重要なポイントを強
調),アイコンタクト,ジェスチャー
実習課題(スライド作成)
• 「教員としての自分」を表すコンセプト
– 「教員としての自分」を貫く統一的な視点や考え
方
– キーワード
• そのコンセプトをあらわす色
– なぜその色になるのかの説明
– 色に加え,コンセプトを形に表現してもよい.