Transcript 消費者余剰
1 『世界市民』 by 矢根 真二 ([email protected]) 資料URL http://rio.andrew.ac.jp/~yane/class/water/ <5> ★ ミネラルウォーターの是非? エコノミストの見方 本日の課題 ■ ボトルの水の売買は禁止すべき? <2>市民派 1 増加する「ミネラルウォーター」 2 ★ ミネラルウォーターの変化を見るメガネ 3 ★ 価格規制か所得補償か? 例題 アナタは何を飲みますか? 2 1. 家庭の日常飲料に,アナタが主に使用する水は? 1. 2. (浄水器等の有無も含めた)水道水 (茶や料理使用分を含めても)容器入り飲料水 2. その理由は? 3. <2>市民派の「ミネラルウォーター類(容器入り飲料水)は,買うべ きではない」の論理を,簡潔に説明すると? 4. それに賛同? or 反対なら反論は? 1 ミネラルウォーター? 3 EUのナチュラル・ミネラル・ウォーター =厳しい基準を満たす原水から直接採取 ミネラル分・生菌数の基準( 殺菌禁止) 日本の「ミネラルウォーター類」ガイドライン 処理が前提: 1&2は濾過・沈殿・加熱処理のみ 1. ナチュラルミネラルウォーター ミネラル分が溶解した地下水 2. ナチュラルウォーター 地下水 3. ミネラルウォーター 1+ 「オゾン殺菌」や「ミネラル分調整」等追加処理 4. ボトルドウォーター 地下水以外でもOK,処理法にも限定なし 農林水産省の基準の解説 水大事典(SUNTORY) 米国のミネラルウォーター 欧州: 18C後: 王侯貴族 19C中: 鉄道 「スパ」名がブランド化: スパ,エビアン,ヴィッテル,‥ 米国: 19C中:同上ローカルブランド:ボーランド by ロイド(10, 2章) その後: 水道 輸入ボトル 水道水のボトル 1. ペリエ:1988年3億本(輸入シェア80%) 歴史 + マーケティング but 1990年ベンゼン混入 ネスレ 2. But 今や米国の5割弱は,水道水から作る「ボトルウォーター」 1994年ペプシコ:アクアフィナ, 1997年コカコーラ:ダサニ 美味しい水と硬度 5 美味しく感じる要素 主観的 but ミネラル・バランス(but 軟水),不純物分(水道水のカルキ・塩素) 温度,容器,炭酸,物語,体調,‥ 日本は軟水・欧州は硬水の傾向 水の硬度 カルシウム&マグネシウム濃度 WHO基準= Ca(mg/ℓ)×2.5+ Mg(mg/ℓ)×4 軟水(60未満),中軟水,硬水(120以上),超硬水 コントレックス: 1551, ペリエ: 401, ヴィッテル: 307 , エビアン: 291 天の川: 43, IKOMA Spa: 40, 六甲のおいしい水: 32 日本のミネラルウォーター 6 2011年ミネラルウォーター類(国内+輸入) 数量: 317万kl = 258万kl + 59万kl (19%) 2001年: 125万kl = 102万kl + 23万kl (18%) 金額:2348億円 = 2065億 + 283億 (12%) 2001年:1006億円 = 855億 + 150億 (15%) ∴需要拡大(8割国産・8割NMW) but 輸入は低額化 1. 1人当たりの消費量: 25ℓ 10ℓ 2. N.M.W.のシェア: 81% 95% 統計 日本ミネラルウォーター協会 Q1 ミネラルウォーター? 7 ミネラルウォーター類上での分類は? 軟水or硬水? 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. コントレックス(1591) ペリエ(401) エビアン(291) サントリー天然水 アルプス(30) 六甲のおいしい水(32) 室戸のおいしい深層水(30) キリン アルカリイオンの水(58) A1 ミネラルウォーター類の見方 8 日本の分類: NMW, NW, MW, BW 日本天然水(06) NMW: ミネラルを含む地下水で処理限定 欧州 欧州のミネラルウォーター 1, 2, 3 日本の販売量の8割 4, 5 BW: 地下水以外・限定処理以外でもOK 米国 海洋深層水,電気分解 6, 7 硬度120以上なら硬水 欧州は硬水(1-3)・日本は軟水(4-7)の傾向 例外的: ボルヴィック: 60, 月のしずく: 171 2 ★ ミネラルウォーターを見るメガネ 9 ミネラルウォーター(類)に関する「事実」 の変化 1. 「水はタダ(自由財) ⇒ ボトル販売(私的財)」 <4> 2. 成分はミネラルや水道水まで多様だが,需要は拡大 変化の原因: 需要と供給の(変化を捉える)理論(メガネ) 1. 需要の増加: 人口&所得↑,健康志向↑ 需要曲線の右方シフト 2. 供給の減少: 都市化 & (乱)開発 による汚染 供給曲線の左方シフト 私的財の「競争的な」需要と供給のイメージ 10 「競争」的な(2ℓ) ボトルの水市場 自由競争・完全競争 短期の(一般的な)競争市場 1. 需要曲線は,右下がり 2. 供給曲線は,右上がり 競争市場の均衡 1. 2. 価 需要曲線 格 均衡 150 均衡価格 P* 150円 均衡数量 Q* 12億本 長期: 供給曲線 ダイナミックな需要と供給のシフト 12 数量 Q2 競争的な私的財市場の変化 11 前頁の「ミネラルウォーター (ボトル入りの水)」市場で, 1. さらに自然・健康志向が高まり,需要が増加した場合の 市場価格 P と数量 Q の変化は? 2. Or さらに汚染が進み,供給が減少した場合の市場価格 と数量の変化は? 3. ★以上の逆を考え,自由財であった頃の美味しい水の需 要と供給を図示すると? A2 私的財の需要と供給のシフト 12 傾向継続なら,価格上昇 (★下落要因は?) 1. 需要→: 価格↑・数量↑ 価 需要曲線 2. 供給←: 価格↑・数量↓ 格 ∴両方なら,価格はもっと上昇 2 150 3. 供給曲線 1 自由財の場合のヒント 1.需要は,ずっと左 12 2.供給は,ずっと右 3.∴自由財=価格はゼロ (→ 次頁) 数量 ★A2 自由財の需要と供給のイメージ 13 自由財の市場: タダだった頃の美味しい水 なぜ経済財に変化? 前頁の2つの変化 1. 需要の増加: 右方シフト 2. 供給の減少: 左方シフト 価 格 需要曲線 供給曲線 150 新鮮な空気の現状と将来は? <4>財の性格 時代・環境の変化 12 数量 3 ★ 価格規制か,所得補償か? 14 価格規制(無料化・現物給付を含む)か,所得補償か? 1. 所得補償(eg. 生活保護) <4>日本の現行制度 個人の嗜好・必要に応じ,財・サービスを「自由に選択」可能 2. 価格規制(無料化・現物給付を含む) <2>市民派 選択の自由&市場機能を歪める政府介入 エコノミストの見方 資源配分の効率性 = 社会の余剰が大きいこと = 経済厚生(国民の満足度)の1尺度 <4>功利主義 個々人の余剰(= 便益 - 費用 = 純便益) ↑ 選択の自由 競争市場の社会余剰: 効率的とは? 15 社会余剰=消費者余剰 + 生産者余剰 1. 消費者余剰 = 支払意欲-購入価格 2. 価 需要曲線 格 生産者余剰 = 販売価格-生産費用 供給曲線 均衡 消費者余剰 150 生産者余剰 3. ∴市場均衡 社会余剰の最大化 =「支払意欲-生産費用」が最大 12 ⇒ できるだけ低い生産費で,できるだけ高い意欲を満たす ∴ できるだけ大きい国民の満足度 効率性: 自由選択の結果! 数量 ★Q3 ボトルの水の価格規制 16 競争市場の規制 社会余剰は? 図示できる? 1. 均衡価格\150は高すぎる,との消費者の声で, より低い\50に上限価格を設定すると? (上限価格規制) 2. 均衡価格\150は安すぎる,との生産者の声で, より高い\250に下限価格を設定すると?(下限価格規制) 3. ★効果のほとんどない価格規制の例は? 均衡価格より高い(低い)上限(下限)価格の効果 ★A3 価格規制の非効率性 17 1. 価格規制は社会余剰を減少させる 規制は非効率 1. \50の上限価格 ⇒ 生産余剰↓・消費者余剰?・社会余剰↓ 1. =死荷重の発生 非効率 2. \250の下限価格 ⇒ 生産余剰?・消費者余剰↓・社会余剰↓ 1. =死荷重の発生 非効率 3. ★均衡より上(下)の上限(下限)価格規制は効果がない 1. 下限価格規制: 地方の「最低賃金」水準 2. ★なぜ「時給=1万円」に下限設定しない?すればどうなる? 価格規制は,「死荷重」の分だけ非効率 18 上限価格: B 死荷重ABC 下限価格: A Q4 私的財の無料化政策の愚行 19 競争的な私的財(ボトル)無料化政策の効果は? <2> 政策の意図: 飲料水を買えない人にも飲めるようにすべき But 政策の効果: Q3の「上限価格がゼロ円」の特殊ケース 1. 「無料化は貧しい人を助ける」のは本当か? No; 需要量↑ but 供給量↓ 取引量↓ 超過需要↑ 2. 無料化政策は,低格政策より望ましいか? No: 「水の量↓ & 社会余剰↓ 死荷重↑」 の程度が拡大 3. ★★無料化による需要増を支援する補助金も含めると? A4 さらに非効率な無料化政策 20 1. 上限価格ゼロの規制: B 1. 需要量: C → D 2. 供給量: C → B 3. 均衡: B,超過需要: BD 貧しい人がOBに割当??? 価 需要曲線 格 A C 2. 非効率:取引↓& 死荷重↑ B↓ & ABC↑ 前々頁左図 供給曲線 超過需要 O B 12 D 数量 3. 補助金によって需要Dまで実現 非効率の拡大 ボトルの水の売買: 市民派 vs. エコノミスト 「ボトル水の売買」が罪な理由 <2> 環境・市民派 1. 2. 3. 全人類にアクセス権 ×商品化&売買 局所的な不足・水循環 ×移出&輸出 ボトルの水の売買↑ 公営水道の経営悪化 売買の自由は権利 かつ 効率を高める エコノミスト 1. 私的財の競争市場の価格規制は,非効率 = 社会余剰↓ 2. それでも必要なら,無償化より所得補償が自由かつ効率的 日本の現状: 水・食糧・教育・… 「全人類の所得補償」は? 本日の要点&次回の準備 22 ミネラルウォーターは買うべきでない? 判断は? アナタの 1. 増加するミネラルウォーター(類) 1. 2. 日本は,「軟水&NMW」が一般的 EUは,処理禁止 米国では,BWが増加 2. エコノミストの見方: 「自由財 私的財」 1. 2. 原因:所得増・人口増,都市化・汚染 ∴ 対策も違う? 自由な売買が効率的 (必要なら所得補償) 社会余剰大 次回:「情報 判断力」の自己診断 Quiz 提出日 例解 環境・市民派とジャーナリスト系 23 1. ミネラルウォーター販売↑ (水道水需要↓) 2. 容器: 美味,健康,便利 (Or 水道: 低価格) ロイド(10, p.51): 1: ブラインドテストではたいてい水道水が勝つ 2: ボトル入りの価格は,水道の240-1万倍 3. 市民派: ① 人権 売買×, ② 水循環 移出× ロイド(10, p.237): ③ 水道需要↓水道経営悪化 4. ロイド(10, p.245,58): ミネラルウォーターにも役割 1. but 本人: ニューウォーター(再生水), 家族: 水道水 2. ジャーナリスト系: 事実判断の複雑性 + 選択の自由 ジャーナリスト系の参照文献 1. ●ロイト(10) 『ウォーターショック』 河出書房新社 2. 中村靖彦(08) 『ウォータービジネス』 岩波新書 その他日本のミネラルウォーター事情 1. 日本天然水研究会(06)『知識ゼロからのミネラルウォーター入門』 幻冬舎 2. 松下和弘(08)『最新ミネラルウォーター完全ガイド』 だいわ文庫 注: 容器入り飲料水=Bottled Water ≒日本: ミネラルウォーター(類) ≒ ボトル入り飲料水 But ≠ ヨーロッパの「ミネラル ウォーター」 美味しい水の選択の自由かパターナリズムか? 25 美味しい??? ミネラルウォーター類 1. 水が自由財 であった頃・地域の「昔の日本」 生存には,豊富な自然の水が前提 人口増・都市化 混雑・汚染 <4>私的財・独占・共有資源 2. 美味しい水が私的財 になった「現代の日本」 所得制約下で,水道水や他の飲料から「自由に選択」可能 2ℓ\150 / 東京水道\0.5 = 300倍 <4> トレードオフ:機会費用 ∴ 自由選択の現状 vs. 現物支給のパターナリズム ★A4 超過需要を支援する補助金の非効率性 26 O A: 「価格=0 超過需要OA」を実現するには? 1. - 政府による「補助金 OABC」が必要 国民からの課税 2. + 産者余剰 OCB 3. + 消費者余剰 DOA ∴社会余剰は,非常に小さい = DOE ー EAB = DCA 死荷重 = EOD ー 社会余剰 供給曲線 価 D 需要曲線 格 F C B E A O 12 現実の補助金は,長期的に拡大傾向?(食管政策) 数量