第1章 キャリアを考える:個人の欲求と会社の目的

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Transcript 第1章 キャリアを考える:個人の欲求と会社の目的

キャリアで語る経営組織
第1章
キャリアを考える
ー個人の欲求と会社の目的ー
テキスト1~26ページ
プロローグ
小学生や中学生のとき,「将来の夢」といった
テーマの作文をよく書かされ,自分の将来に思いを
馳せた。しかし最近はあまり考えなくなった,とい
うより考えるのを避けている気がする。しかし,そ
の頃考えていた「将来」は,着実に近づいている。
仕事はどうやって選んだら良いのか?,そもそも
なぜ働くのか ? , 会 社 と は 何 を す る と こ ろ だ ろ う
か?,どこで自分は働くのだろうか?,そんな問い
が頭の中でときどき浮かぶ。
何事も調べてみてから。そう考えたあなたは,書
店 に 立 ち 寄 る 。たまたま開いたページにあった「人
が働くのはなぜだろうか」という問いが頭に引っか
かり,『キャリアで語る 経営組織』と書かれたこの
本を購入し,読んでみた。
疑問1−1
(テキスト3ページ)
人はなぜ働くのだろうか?
なぜ仕事をするのか?
• 日々の糧を得るために
• 憲法で定められた勤労の義務があるから
• 仕事自体も人生の目的
社会に出て自分が得たいこと
• 何か専門的な知識を追求したい
• お金がほしい
→お金を貯めて旅行に出る?
→好きなだけ服を買う?
• 出会いと人間関係
• 家庭
→だからお金がいる,相手も必要
• 何かでかいことをやって賞賛を浴びたい
• 権力がほしい
• 漠然と幸せがほしい
• 夢を叶えたい
• 人のために何かをしたい,貢献
個人の欲求と行動
欲求(needs)
行動(action)
図1-1 マズローの欲求階層説
(テキスト3ページ)
働き方と仕事の多様性
社会ではどのような働き方があるのだろうか?
• サラリーマン
– 企業と雇用契約を交わして,長期的な雇用関係に入る
• フリーター
– 短期的な仕事を,内容や時間を自分で設定して働く
• 起業する
– カフェからソフトウェア開発会社まで
• プロフェッショナル
– 資格を取得して働く(弁護士や会計士)
– コンサルタント,ジャーナリスト,シェフ,スポーツ選手,アーティスト
• そのほか
– 慈善団体・NPO・NGOなど非営利組織に所属,あるいは独立したボラン
ティア
疑問1−2
(テキスト7ページ)
会社とはいったい何をするところか?
企業とは
• 企業(営利民間企業)とは
「市場危険のもと,
利益獲得を目指しつつ商品生産を行う組織」
• 市場危険(リスク) :取引される商品が市場で
確実に売れるかどうかわからない状況
• 商品:有価で売買される財やサービス
• 利益:1.内部留保,2.従業員へのボーナス,
3.株主への配当,として使われる。
企業の特徴
1. 活動目的:自身の存続(ゴーイング・コンサー
ン)・成長・発展とそのために必要な利益の確
保(必ずしも利益の最大化を意味しない)。
2. 企業は商品生産を行い,存続,成長,発展に
必要な利益を確保する。
3. 企業はこのような商品生産を市場危険のもと
で行う。
4. 企業は組織体であり,複数の人々の協働に
よって活動が維持される。
Column1:企業と会社
• 企業(営利民間企業)=自営業+会社
• 自営業:個人事業,無限責任
• 会社:「営利を目的とする社団法人」(法人格を
持った企業)
• 株式会社:出資者はすべて有限責任 →出資
者はリスクを計りやすい。会社は,本を広く浅く
集められる。
cf. 会社の成り立ち(東インド会社)
出資者
船主(事業者)
事業資金
事業リスクの分担
出資者
船や積荷の
所有権を細分化
出資者
出資
出資者(株主)
利益の分配
事業リスクの分担
東インド会社
船主
(事業者)
船主
(事業者)
出資者
船主
(事業者)
出資者
出資者
価値を生み出す
• 利益確保のためには商品を市場で購入してもらう必要
がある →商品に付加価値を加える必要性
• 付加価値:生産過程で新たに付け加えられる価値
すなわち,
付加価値=生産活動におけるアウトプットとインプットの
差額
付加価値が増すには・・・
• インプットを少くする(→コストダウン)
• アウトプットを大きくする(→製品やサービスの高付加
価値化)
疑問1−3
(テキスト14ページ)
付加価値をどのようにして大きくするのか?
3.付加価値を生むプロセス
eg. 金属シリコンと集積回路
付加価値を高くするためには
• 例:半導体チップ
–
–
–
–
材料のシリコンはただ同然の鉱石
これを精製して高純度にする
ここにハイテクを駆使した微細加工技術によって演算回路を焼き付ける
数千円から数万円の半導体チップ
• 例:デジタルカメラ
– 原料はこのような半導体チップ
– 少量の各種金属,ガラス,プラスチックをカメラの構造にする
– 5万円以上もするデジタルカメラ
• 例:高級腕時計
– 材料はステンレスや鉄などの少量の金属
– 数十万から数百万円の時計
高い付加価値を生むには
• 高付加価値商品:生産過程で多くのステップを経て
実現(誰でも簡単に作れる=付加価値は低い)
• 例:デジタルカメラの付加価値 →良いデザイン,優
れた画質を実現するレンズ,使い勝手の良いソフト
ウェア,製品のアフターサービスなど
• 付加価値が発生する流れ:バリューチェーン
研究開発
原材料
の確保
部品加工
組立
サービス
流通
検査
経営資源:
付加価値を生むための条件①
• 経営資源(ヒト,モノ,カネ,情報):付加価値を実現す
るための資源と能力
表1-1 (テキスト15ページ)
大きな付加価値を生む分業:
付加価値を生むための条件②
• 経営資源があれば自然に付加価値が生まれ
るということはない。
• 行列のできるラーメン店,人間国宝etc.
→単独でも大きな付加価値。ただし誰にでもで
きるわけではない。
• 浮世絵の工房 →多数の職人の協業による
製品作り
企業での分業
• 高い付加価値を生むためには膨大な専門知
識とノウハウが必要 eg. 自動車,デジカメ
→分業による付加価値の実現
• 企画,設計,開発,購買,生産,販売,経理,
法務などの専門知識や能力,スキルを持つ人
を雇い,分業する。
分業と調整
•
分業
– 共通目標と合理性,それに従った分業の設計(部門化と
職能化)
– 権限と責任の体系付け(階層化)
•
調整
–
–
–
–
–
分業したら調整しなくてはならない
コミュニケーション
モチベーション
ルール
組織文化,非公式組織のマネジメント
疑問1−4
(テキスト20ページ)
会社で働くことと個人で働くことの違いは
どこにあるのか?
会社で働くことと個人で働くこと
•
•
•
•
•
付加価値活動における集団と個
仕事を与えられるか,自分で探すか
選択や意思決定の自由度
責任の及ぶ範囲と成果の分配
安定性
表1-2 会社で働くことと個人で働くことの違い
(テキスト21ページ)
会社と個人の関係
• 個人:給与や福利厚生,夢,個人的な欲求の
実現などの誘因(inducement)
• 組織:組織目標の達成への貢献
(contribution)
• I-Cバランス(C. バーナード)
組織と個人の相互作用としてのキャリア
図1-2 シャインによるキャリアと会社での仕事の調和過程
(テキスト24ページ)
(出所) Schiein [1978] p.4より筆者作成。
次回の問い
なぜ,就職した先輩たちは雰囲気が
変わっていくのだろうか?
さらに学びたい人のために
1.村上信夫(2004)『帝国ホテル厨房物語』日経
ビジネス人文庫
2.浜口隆則(2008) 『心の翼の見つけ方』フォレス
ト出版
3.鈴木竜太(2007) 『自律する組織人—組織コ
ミットメントとキャリア論からの展望』生産性出版
主要参考文献
Barnard, Chester I., (1938) "The Functions of the
Executive." Harvard University Press. (チェスター・
I・バーナード(1968)山本安次郎・田杉競・飯野春樹
訳『経営者の役割』ダイヤモンド社)
Maslow, Abraham(1943) "A Theory of Human
Motivation" Psychological Review, Vol. 50, pp. 370396.
(http://psychclassics.yorku.ca/Maslow/motivation.htm
で閲覧可能)
Schein, Edgar H., (1978) “Career Dynamics” AddisonWesley Publishing.(エドガー・H・シャイン(1991)二村
敏子・三善勝代訳『キャリア・ダイナミクス』白桃書房)